アメリカの大学スポーツには「レッドシャツ」という言葉があります。これは選手のプレー期間を引き伸ばすために、任意のシーズンにて試合に出場しない代わりにその1シーズン分を将来用に取っておけるのです。
例えば1年生で入ってきたQBがいたとして、チームにすでに4人QBがいたらこの1年生がすぐにプレーできるチャンスは非常に低くなります。そんな時この選手がレッドシャツとして最初の1年間を過ごすことにより、その1年間は試合には出場できませんが、翌年以降に丸々4年間のプレー資格を保持できるようになるわけです。レッドシャツの期間はチームで練習することはできますので、プレー資格をキープしつつ選手の育成に1年間当てられることを考えれば、非常に貴重なシステムといえます。
アメリカンフットボールコーチ協会はこの現行のレッドシャツのルールの改正を提案しました。これによるとレッドシャツ選手でも4試合までは試合に出れるようにするというものです。これはすでにNCAAに正式に提示されたようですが、FBSの強豪・サウスイースタンカンファレンス(SEC)のコーチたちもこの案に賛成のようです。
特にアラバマ大のニック・セイバン(Nick Saban)監督は選手をより本番の環境で育成させるためにはこの新ルールは非常に利益があると説いています。
「この案に私は大賛成です。選手としてもっとも難しいことの一つに、レッドシャツになると全く試合に出場できないということが挙げられます。もちろん彼らだってプレーしたいのです。この新ルールならば彼らが育成過程でも試合という現場で腕を試すことができます。現行のレギュラーシーズンの試合数(12から13)を考えれば4試合の出場というのは悪くないと思います。」
また現行のルールだと試合に1プレーでも出場してしまうとレッドシャツが無効となってしまうのですが、仮に間違って選手がフィールドに立ってしまった場合、それだけでこの選手のプレー資格はカウントされてしまう(ないようである話なのです)。そんなシチュエーションを防ぐために、新案では少しのプレーであればプレー資格にカウントされないように改正することを提案しています。
もし承認されればかなり大きなインパクトを与えるルールなため、NCAAの競技委員会は慎重にこの提案を吟味することでしょう。我々ファンにとってはどこまでこの新ルールの影響を感じることができるかは未知数ですが。