先日オクラホマ大QBカイラー・マレー(Kyler Murray)がMLBオークランドアスレティクスから総合9番目という高順位でドラフトされたというニュースをご紹介しました。そこでマレーの去就が注目されたわけですが、彼自身は来シーズンのカレッジフットボールもオクラホマ大でプレーすることを明言。チーム関係者やファンを安心させていました。
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そして今回マレーは正式にアスレティクスと入団契約を結びました。その内容は500万ドル(1ドル100円計算で5億円)の契約金に加え、先に報道されていたとおりアスレティクスが1年だけマレーにオクラホマ大での現役続行を許可するというかなり寛大なものでした。
なぜ寛大かと言えば、金額もそうですが500万ドルの価値あるマレーにフットボールという怪我の可能性が高いスポーツの続行を許したからです。もし次季シーズン中に大きな怪我でもしてみればそれはアスレティクスにとって大きな損害となりかねません。それでもマレーにあともう1年とは言えプレーしても良いとしたところに懐の大きさを感じます。もっとも大きな博打だと取る人もいるでしょうが。
マレーは2018年度シーズンを含めてあと2年間のプレー資格を有しています。QBとしてのポテンシャルは高いと言われていますが、すでに500万ドルを手にすることが決まっているMLBのディールを見せられれば、2018年シーズン後に晴れてフットボールから足を洗ってMLB入りしたとしても誰も文句は言えないでしょう。
マレーは昨年までハイズマントロフィー受賞QBであるベーカー・メイフィールド(Baker Mayfield)のバックアップとして1年を過ごしましたが、メイフィールドが去ったあとの新生オクラホマ大のオフェンスリーダーとしていよいよ自分の出番が巡ってきたと思っていたことでしょう。
昨年は限られた時間しかプレーする機会がありませんでしたが、それでも非凡な才能を見せ、コーチ陣としてもマレーに大きな期待を寄せていたに違いありません。そんな中彼が来季もチームでプレーすることになったのは彼らにとっては朗報だったといえるでしょう。
実際ヘッドコーチであるリンカーン・ライリー(Lincoln Riley)監督も安堵のコメントを残しています。
「MLBのドラフト前からカイラーと私は今後のシナリオについて話を重ねてきました。そんな折彼がまた来シーズンもチームに残ってくれることになり非常に嬉しく感じています。夏季トレーニングに彼が戻ってくることをとても楽しみにしていますし、カイラー自身も来るシーズンのチャンピオンシップ獲得のためチームに貢献できることを待ち遠しく感じているはずです。
「また彼がドラフトで総合9番目で選ばれ、将来MLBで活躍する機会が与えられたことにも我々は大変嬉しく思っています。カイラーにとってそれは大変な栄誉であり、彼の今後の進路にとって素晴らしいチャンスとなるはずです。」
一方マレーをドラフトしたアスレティクスのボブ・メルヴィン(Bob Melvin)監督は、オークランドからほど近いところにあるカリフォルニア大を引き合いに出してこう話しました。
「(マレーがオクラホマ大でプレーすることに際し)このことで私がカリフォルニア大ではなくオクラホマ大のファンに乗り換えるということにはならないでしょうが、確実に言えるのはこれまでよりもオクラホマ大フットボール部の動向に注目することでしょうね。」
おそらくメルヴィン監督にとってはマレーがサックされる度に気が気でない思いにさせられるのでしょうね(笑)。
ところでマレーの500万ドルという契約金額。相当な額となりますが、よくよく考えてみるとこの額はライリー監督の年収310万ドル(約3億1000万円)を上回る金額です。指導する選手が自分よりも稼ぎがいいというこの状況、ライリー監督の胸中はいかに?!
ちなみにマレーが500万ドルというお金を受け取っていながらアマチュアスポーツのカレッジフットボールを続けられるのはなぜかと疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。
これが可能になったのは、NCAAのルールしてプロとしてお金をもらうスポーツがカレッジでプレーするスポーツと同じでなければ両立できるという決まりがあるからなのです。ですからオクラホマ大の野球部員でもあるマレーにとって、アスレティクスと契約した時点で今後オクラホマ大で野球をプレーすることはできなくなりました。これまでもオクラホマ州立大出身で現ヒューストンテキサンズ所属QBであるブランドン・ウィーデン(Brandon Weeden)もMLB(マイナーでしたが)でプレーしていたというケースも有りました。
5億円のQB、カイラー・マレー。来る2018年度シーズンには是非注目したいですね。