カレッジフットボール界において最も偉大なる個人賞と言われるのがハイズマントロフィーです。このトロフィーを手にした選手は未来永劫カレッジフットボールの歴史にその名を刻むことになり、選ばれし人物しか触れることができないという超貴重なアワードです。
目次
栄光の証、ハイズマントロフィー
ハイズマントロフィーを獲得する選手が必ずしもNFLドラフトで総合ドライチになる選手とも限りませんし、ましてやプロの世界で活躍するという確証もありません。しかしたとえプロの世界で失敗したとしてもその選手は永久にハイズマントロフィー受賞者として世に知れ渡るわけで、そういった意味ではプロ選手になるよりもこの賞を獲得するほうが価値は高いのです。
大学で活躍することがプロで活躍することに直結するわけではありませんが、一方でカレッジだからこそ花開くという選手も大勢います。過去の受賞者を見ても下馬評通りNFLでも名を挙げた受賞選手もいればそうでない選手も少なくありません。
ちなみに過去10年間の受賞者を見てみると・・・
2023年:ジェイデン・ダニエルズ(ルイジアナ州立大QB)
2022年:ケイレブ・ウィリアムス(サザンカリフォルニア大QB)
2021年:ブライス・ヤング(アラバマ大QB)
2020年:デヴォンテ・スミス(アラバマ大WR)
2019年:ジョー・バロウ(ルイジアナ州立大QB)
2018年:カイラー・マレー(オクラホマ大QB)
2017年:ベーカー・メイフィールド(オクラホマ大QB)
2016年:ラマー・ジャクソン(ルイビル大QB)
2015年:デリック・ヘンリー(アラバマ大RB)
2014年:マーカス・マリオタ(オレゴン大QB)
2013年:ジェーミス・ウィンストン(フロリダ州立大QB)
2012年:ジョニー・マンゼル(テキサスA&M大QB)
2011年:ロバート・グリフィン・III(ベイラー大QB)
2010年:キャム・ニュートン(アーバン大QB)
ご覧の通り現在もNFLで活躍する選手が結構いますね。
今年のファイナリストたち
今年ファイナリストとして授賞式に招待されたのは4人。その4人の顔ぶれを紹介したいと思います。
フェルナンド・メンドーサ(インディアナ大QB)
【2025年度記録】
パス成功数/回数:226/316
パス成功率:71.5%(全米6位)
パスヤード:2980YD(全米23位)
パスTD:33(全米1位)
パスINT:6
QBレーティング:181.40(全米2位)
ラッシュヤード:240YD
ラッシュTD:6
インディアナ大QBフェルナンド・メンドーサ(Fernando Mendoza)は今季誰もが予想しなかった快進撃を続けているチーム(13勝無敗)の中心的選手として活躍。彼らは1967年以来初となるBig Tenカンファレンスタイトル(Big Tenカンファレンス優勝決定戦での勝利は史上初)獲得を達成。これよりインディアナ大はカレッジフットボールプレーオフ(CFP)において第1シードを獲得しました。
メンドーサは今季ここまで全米トップとなる33回のTDパスを記録。これはインディアナ大のシーズン最多TDパス記録を更新するもので、またパス成功率が71.5%でトータル2980ヤードを獲得し、インターセプトはわずか6回。さらに彼はラッシングでも貢献し、240ヤードのランと6個のランTDを記録しています。結果的に彼のトータルTD数(39回)およびQBレーティング(181.39)は、全米で2位にランクインしました。
そんなメンドーサの卓越したパフォーマンスは、カレッジフットボール界の主要な個人賞を総なめしています。
- ウォルター・キャンプ年間最優秀選手(Walter Camp Player of the Year)
- マックスウェル賞(全米年間最優秀選手)
- デイヴィー・オブライエン賞(全米トップクォーターバック)
- APカレッジフットボール年間最優秀選手
カンファレンスレベルでも、Big Ten年間最優秀攻撃選手(Graham-George Award)、Big Ten年間最優秀QB賞(Griese-Brees Award)、そして出場したBig TenチャンピオンシップゲームでMVPにも選ばれています。さらに各種のオールアメリカンおよびオールBig Tenにも選出されました。
メンドーサの最大の魅力は重要な局面でのプレーメーキング能力にあります。例えばペンシルベニア州立大戦やアイオワ大戦などの試合で見せた、勝利につながる決勝ドライブを演出したり、オハイオ州立大とのBig Ten優勝決定戦では、試合終盤に勝利を決定づけることになったファーストダウンパスを成功させチームを勝利へ導くなど、無敗のインディアナ大オフェンスを牽引し多くのファンの記憶に残る選手にまで成長したのでした。
FERNANDO MENDOZA TO BECKER AGAIN 🎯@Indianafootball pic.twitter.com/HMA75IKVHh
— FOX College Football (@CFBONFOX) December 7, 2025
【今季のハイライト動画】
ジェレマイア・ラヴ(ノートルダム大RB)
【2025年度記録】
キャリー数:199(全米20位)
ランヤード:1372YD(全米4位)
ランTD:18(全米3位タイ)
1キャリー平均ランヤード:6.80YD(全米5位)
1試合平均ランヤード:114.3YD(全米5位)
ノートルダム大の3年生RBジェレマイア・ラヴ(Jeremiyah Love)は、今季を代表するRBとしてフィールド内外で目覚ましい功績を収めましたが、歴史あるノートルダム大でも数々のスクールレコードを塗り替え、カレッジフットボール界で最も注目される選手の一人となりました。
彼はRBとして最高の栄誉であるドーク・ウォーカー賞を受賞。これは長い伝統を持つノートルダム大史上初の受賞者となりました。また、ウォルター・キャンプ・フットボール財団が定めるオール・アメリカンのファーストチームに選ばれるだけでなく、マックスウェル賞やウォルター・キャンプ年間最優秀選手などの主要な賞のファイナリストにも名を連ねました。
さらに今年彼が足で稼いだTD数18回はノートルダム大のシーズン最多ランTD数タイ記録となるだけでなく、レシーブヤードを含めたトータルTD数21回は同校のレジェンドRBであるジェローム・ベティス(Jerome Bettis)氏が1991年に打ち立てた20個を抜き新スクールレコードを打ち立てました。そして極めつけとして、複数シーズンで17回以上のラッシングタッチダウンを記録したプログラム史上初の選手にもなったのでした。
ラヴの今季の大活躍を象徴するハイライトの一つがサザンカリフォルニア大戦でのパフォーマンス。彼はこの試合で228ヤードのラッシングを記録し、これは本拠地であるノートルダムスタジアムの長い歴史において、ノートルダム大選手による1試合最多ランヤード新記録となりました。
さらに特筆すべきは、彼はディズニー・スピリット賞(カレッジフットボールで最も感動的な人物に贈られる)も受賞しており、これもノートルダム大史上初の快挙です。
彼はこれまでノートルダム大のキャンパスがあるインディアナ州サウスベンドで200人以上の地元の子どもを対象としたキャンプを開催したり、高校生向けに金融リテラシーのワークショップを主催したり、さらに彼は自身の人生と個性を基にしたコミックブック「Jeremonstar」を制作。このコミックブックは忍耐力や独自の才能を受け入れるという貴重なメッセージを伝えるためのもので、フットボール選手としてだけでなく、若い人たちの鏡となるような影響力のある活動をしてきたことも評価されている人物です。
【今季のハイライト動画】
ジュリアン・セイイン(オハイオ州立大QB)
【2025年度記録】
パス成功数/回数:279/356
パス成功率:78.4%(全米1位)
パスヤード:3323YD(全米10位)
パスTD:31(全米2位タイ)
パスINT:6
QBレーティング:182.14(全米1位)
オハイオ州立大QBジュリアン・セイイン(Julian Sayin)は、ルーキー(レッドシャツ)ながら今季のカレッジフットボール界に鮮烈な印象を残し、名門の快進撃を支えてきました。
その卓越したパフォーマンスによりBig Tenカンファレンス最優秀新人賞(Thompson-Randle El Freshman of the Year)を受賞。さらに数々の個人賞での評価につながりウォルター・キャンプ年間最優秀選手賞、マックスウェル賞、そしてデーヴィー・オブライエン賞(全米トップQB)のファイナリストにも名を連ねています。
今季のセイインの最大の特徴はその並外れたパス精度です。
彼は全米トップとなるパス成功率(78.4%)を記録しましたが、この数字は2023年度に元オレゴン大QBボ・ニックス(Bo Nix、現デンバーブロンコス)が樹立した歴代最高記録(77.4%)を上回る数字。またQBレーティング(182.1)でも全米トップにランクインしています。
さらにシーズン中、セイインはオハイオ州立大のスクールレコードを次々と塗り替えました。例えば、彼はグランリング大戦では試合開始から16回連続パス成功という学校記録を樹立しましたし、プレーした13試合中4試合(グランリング大戦、ミネソタ大戦、ウィスコンシン大戦、ペンシルベニア州立大戦)でパス成功率85%以上を達成しましたが、これもオハイオ州立大の新記録となりました。
また彼のデビュー戦となったテキサス大(当時全米1位)戦で勝利し、1984年以来となるルーキーとしてデビュー戦で勝利したQBとなる快挙も成し遂げています。そんな彼の活躍により、オハイオ州立大は12勝1敗という成績を収め、CFPにおいて第2シードを獲得。将来が非常に楽しみなQBといえます。
【今季のハイライト動画】
ディエゴ・パヴィア(ヴァンダービルト大QB)
【2025年度記録】
パス成功数/回数:242/320
パス成功率:71.2%(全米8位)
パスヤード:3192YD(全米14位)
パスTD:27(全米9位タイ)
パスINT:8
QBレーティング:171.54(全米4位)
ラッシュヤード:826YD
ラッシュTD:9TD
長い間SEC(サウスイースタンカンファレンス)でお荷物扱いされきたヴァンダービルト大。しかし今季は歴史的な快進撃を見せチーム史上初となる10勝シーズンを終えましたが、その快進撃を支えたのがQBディエゴ・パヴィア(Diego Pavia)。元々短大でプレーをした彼はニューメキシコ州立大で名を挙げて2024年にヴァンダービルト大に転校。以来強烈な存在感を発揮し続けています。
彼はすでにQBに贈られる最高の栄誉の一つであるジョニー・ユナイタス・ゴールデン・アーム賞を受賞しました。これはヴァンダービルト大のプログラム史上初の快挙です。またSEC年間最優秀オフェンス選手に選ばれ 、オールSEC(ファーストチーム)に輝くなど、カンファレンス内で圧倒的な存在感を示しました 。そして主要な賞のファイナリストとしては、ウォルター・キャンプ年間最優秀選手賞やマニング賞にも名を連ねました
シーズン中の活躍として、彼はヴァンダービルト大のシーズン記録を数々更新する驚異的なスタッツを記録もしています。例えばパス獲得ヤード、タッチダウンパス数(27回)、そしてトータルオフェンス(4018ヤード)の3部門でヴァンダービルトの学校記録を塗り替えました 。特にトータルオフェンスの4018ヤードは、「パワー4」カンファレンス勢(ACC、Big Ten、Big 12、SEC)の全てのQBの中でトップの成績でした 。
またパスの精度も際立っており、パス成功率はSECトップとなる71.2%を記録 。またQBレーティングは171.5でSECトップ。全米でも4位にランクインしています。
そして彼の最大の魅力は、純粋なパサーとしてだけでなくラッシャーとしての能力にも秀でている事。ランヤードではチームトップの826ラッシングヤードを稼ぎ、さらに9回のランTDを記録しています。
独特のプレースタイルやここに至るまでの歩みなど全てを加味すれば、パヴィアは記録に残る選手だけでなく記憶に残る選手として今後も語りつかがれそうな非常にユニークな選手だといえます。
【今季のハイライト動画】
授賞式
この栄えあるトロフィーの授賞式は12月13日(土曜日)東部時間で午後7時から(日本時間では12月14日午前9時)ニューヨーク市マンハッタンにあるリンカーンセンターで行われます。
この投票を行えるのは870名のスポーツ記者、まだ存命の59人の過去のトロフィー受賞者、そしてファン投票(最多得票選手に1票入る)による合計930人相当の投票によって決められます。
果たして90代目のトロフィー受賞者となるのはこの4人のうちのどの選手となるか?






