最近流行りの「ディフェンシブアナリスト」や「オフェンシブアナリスト」のポジション。現場で実際に選手を教えることが出来るコーチの数はNCAAによって制限されています。そのループホールとしてコーチではない「アナリスト」の存在が注目されていますが、それをここ数年利用しているのがアラバマ大。最近で言えば「オフェンシブアナリスト」だったスティーブ・サーキジアン(Steve Sarkisian、現アトランタファルコンズOC)氏、「ディフェンシブアナリスト」だったマイク・ロックスリー(Mike Locksley、アラバマ大OCに昇格)氏などが居ましたが、アラバマ大は今回また新たにオフェンシブアナリストを雇うことになったそうです。しかも今回もまたカレッジフットボール界ではよく知られた人物です。
元フロリダ州立大QB・ハイズマントロフィー受賞者のウィンキー氏
2000年にフロリダ州立大QBとしてハイズマントロフィーを受賞したクリス・ウィンキー(Chris Weinke)氏が今回アラバマ大攻撃陣のサポート役としてタスカルーサにやってくることが関係者の話で明らかになりました。
ウィンキー氏は28歳というカレッジフットボーラーとしては高齢でハイズマントロフィーをを受賞。というのも彼はフロリダ州立大に合流する前までMLBのマイナーリーグで野球選手としてプレーしていたからです。もちろん28歳での受賞は最高齢の記録となります。2000年シーズンには4000ヤード以上のパスを投げチームのナショナルタイトルゲーム進出に貢献。その舞台となったオレンジボウルでは惜しくもオクラホマ大に敗れますが、当時としてはベストQBの一人に数えられました。
2001年のNFLドラフトでは第4巡目でカロライナパンサーズに選ばれ、そこで6シーズン送ります。残念ながらNFLでは鳴かず飛ばずで最終的には2007年に移籍先のサンフランシスコ49ersで現役生活を終えます。引退後はコーチングの世界に進み、最近2年間はロサンゼルスラムズ(旧セントルイスラムズ)のQBコーチを務めていました。
アラバマ大のQBは昨年1年生ながらブレークしたジャレン・ハーツ(Jalen Hurts)ですが、まだまだパスゲームは上達が大きく見込まれますから、経験豊富なハイズマントロフィーQBであるウィンキー氏をアナリストに迎えるのはハーツにとってもチームにとっても大きなプラスになることでしょう。
スカーボローとの再会
ウィンキー氏とアラバマ大には別の繋がりも実はあります。ウィンキー氏がラムスに所属する前まで5年間、彼はフロリダ州にあるIMGアカデミーという全寮制学校のフットボール運営部長(Director of Operation)を務めていました。IMGアカデミーは才能あるリクルートの宝庫とも言われ、多くのカレッジチームが注目する場所ですが(ミシガン大が昨春IMGアカデミーでキャンプを張ったのは記憶に新しいところです)、ウィンキー氏がIMGアカデミーに居た同じ頃、アラバマ大のRBボ・スカーボロー(Bo Scarbrough)はここでプレーしていました。ということでウィンキー氏はスカーボローとアラバマ大で再会を果たすことになります。
先にも述べたようにアナリストはコーチと違い選手に指導することは許されません。が、練習のフィルムや相手チームのフィルムなどを解析したりすることは許されています。ウィンキー氏もおそらく裏方として最近雇われたOCブライアン・デイボール(Brian Daball)氏やロックスリー氏をサポートするものと思われます。
ウィンキー氏にすればアラバマ大のような常勝チームのチームづくりに関われるのは後のコーチ人生にとって大きなプラスとなることでしょうし、アラバマ大としてみれば将来デイボール氏やロックスリー氏が去ることになった場合に、彼らのオフェンスに精通した内輪のアナリストをOCに昇格させることはコーチが変わった際でもオフェンスがスムースに新体制(それがウィンキー氏になる可能性もある)に移行出来るという利点も含んでいます。