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ディフェンスは何処へ?

ディフェンスは何処へ?

先週に限ったことではありませんが、ここのところ目につくのは多くの試合がハイスコアゲームとなっているところです。ハイスコアリングゲームは見ているファンにとってはエンターテイメント性が高い試合展開ということになるのでしょうが、ディフェンス通のファンにしてみれば苛立ちすら覚える展開とも言えるでしょう。

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ベースボール・マガジン社 (編集)

ハイスコアの乱打戦が続出

例えば先週だけで見ると以下の試合が点の取り合いゲームとなりました。

アラバマ大63、ミシシッピ大48
テキサスA&M大41、フロリダ大38
ノースカロライナ大56、バージニア工科大45
ミズーリ大45、ルイジアナ州立大41
オクラホマ大53、テキサス大45(4OT)

どれもランク入りしているチームが関わった試合ですが、力が拮抗しているだけでなくお互いがノーガードで点を取り合う乱打戦となったのです。

特に長年ディフェンスに定評のあるアラバマ大がミシシッピ大オフェンスになすすべなしのまま48失点も犯したことは非常に興味深いです。実際試合を見ていましたが、ミシシッピ大のハイテンポのRPOにまったくついていけず(もちろん基本的にRPO攻略は容易ではありませんが)、タックルも甘いものばかりでアラバマ大らしさが感じられませんでした。

このように各地でディフェンスが後手後手に回っているだけでなく準備不足感が否めないプレーが軒並み増えています。これは一体何故なのでしょうか。


後手に回るディフェンス陣

よく耳にするのは、「完璧な作戦がありその作戦を完璧にこなすことが出来るオフェンスがあれば、どんなに強力なディフェンスでも攻略することが出来る」という言葉です。

これはディフェンスは常にリアクティブ(受動的に反応すること)であることを余儀なくされるからだと思いますが、にしてもオフェンスにしたって試合開始から終了までパーフェクトにゲームを進めることなど出来るわけがありませんから、どこかで必ずボロが出るはずです。そのボロが出る確率を限りなく少なくすることが選手やコーチが日々鍛錬を重ねる理由だと思います。

そしてディフェンス側も相手のフィルムを解析してある程度相手オフェンスの「癖」を探し出してその攻撃に備えるわけですが、やはりどのスポーツでもそうだと思いますがディフェンスは相手がどう動くかを見定めてリアクションを取るというのが前提にあるとおもいます。

もちろんギャンブル的に予想を立ててアグレッシブな戦術を用いることも出来るでしょうが、それは諸刃の剣でありそればかりを当てにしてディフェンスすることは得策とは言えません。いざというときのブリッツが功を奏する事にしてみてもそれは一点勝負だから効果があるわけで、そればかりやっていたら逆にオフェンスに裏を取られて痛い目を見ますしね。

かつてカレッジフットボール界でオプションフットボールが全盛期を迎えていた時期がありましたが、何故オプションフットボールがオフェンスの顔だったかと言えば常にディフェンスを受け身にさせることが出来たからです。QBキープか、RBへのピッチか、はたまたFBへのハンドオフか・・・。もちろんプレーアクションからのQBパスも選択肢に含まれますから、これらの全パターンに完全に対応するのは至難の業だったのです。

しかし時は経ちオプションフットボールは廃れることになったのですが、それはパスオフェンスの進化という側面もありましたが、それと同時にディフェンス選手個々の能力が上がったということがあります。特にフロントセブンのスピードが格段に向上したためディフェンダーがリードブロッカーたちを交わしてボールキャリアに届くようになったからです。

それはフットボールの技術だけでなく筋トレやコンディショニングなどのトレーニングによって個人個人のポテンシャルが上がったからにほかありません。つまり後手後手に回りやすいディフェンスがオフェンスを凌駕するには戦略も当然必要ですが、選手の身体能力の高さが必須であることが浮かび上がってきます。

だからこそ選手たちはオフシーズンも冬から筋トレや走り込みを欠かしませんし、実戦的な動きを養うためにも春季トレーニングが重要になってくるのです。

コロナの影響がこんなところに

それを考えると今年はそれらのルーティーンが全てコロナウイルスのパンデミックのせいで崩されてしまいました。当然開幕するのかしないのかという状況でプレシーズンのキャンプインも遅れましたし、またキャンプインするも毎日ウイルスの脅威にさらされながらのトレーニングで100%集中できるはずもなく、中には部内感染が起こって部活動が休止になるチームも出てきました。

また基礎を作る時期でもある冬から春にかけての練習不足もたたっています。忘れている方もいらっしゃるかもしれませんが、今年のチームはどのチームも春季トレーニングを行うことが出来ませんでしたし、筋トレなどのセッションも満足に行うことが出来ていませんでした。

要するにこのコロナのパンデミックのせいで皆準備不足となってしまったのです。特にスピード、パワー、アジリティーを高いレベルで要求されるディフェンス陣としてはこれは致命傷です。それが今季各地でディフェンスの衰退を見る原因となっていると考えられます。

またテクニック的なことを言えばタックルの甘い選手があとを絶ちません。これも実戦形式の練習が思うように行うことが出来なかったことに起因していると思います。やはり春季トレーニング並びにスプリングゲーム(紅白戦)を行うことが出来なかったことが大なり小なり響いているのです。

あと考えられるのは選手たちの精神状態です。

パンデミックは長い間選手から通常の生活を奪いました。自宅待機を余儀なくされれば気も滅入ります。また6月から各地でキャンパスでの自主練が解禁となりましたが、コロナの予防策として様々な規制がかけられ選手たちは多いところで毎日コロナのPCR検査を受けさせられるような生活を強いられます。常に未知なるコロナウイルスと背中合わせの生活をしており、かかってしまった場合の長期的影響も分からない状況の中数ヶ月トレーニグを積んできたのです。

そんな中で精神を病んでバーンアウト、いわゆる燃え尽き症候群にかかってしまった選手がいたとしても不思議ではありません。「心・技・体」と昔の人はうまいこと言いましたが、そのどれかを欠いても物事はうまくいかないのです。特にこのパンデミック下で人々の精神状態についてはあまり語られてきていないように感じます。19、20歳そこらの若者が現在の様々なプレッシャー下で暮らさなければならないのは大変な重みであることでしょう。

そうなれば持てる力を100%発揮できなかったとしても分かる話です。

先にも述べたようにあのアラバマ大ディフェンスですらミシシッピ大戦ではクルーレス(無策)に見えましたが、もう既にご存じの方も多いかと思いますがニック・セイバン(Nick Saban)監督もコロナ検査で陽性反応を示したことからも分かるように、カレッジフットボール界でトップレベルのチームであるアラバマ大でもどんなに警戒を怠らなかったとしてもこのようにコロナウイルスの脅威からは逃れられないのです。

それを考えるとより際立つのがクレムソン大の凄さです。彼らは攻守ともに高レベルを保っており、今季のカレッジフットボール界で唯一無二の存在となっています。コロナ感染の報告は今のところなくそれもこれもダボ・スウィニー(Dabo Swinney)監督のチームの管理能力の高さを如実に表していると思います。

もちろん彼らにはQBトレヴァー・ローレンス(Trevor Lawrence)やRBトラヴィス・エティエン(Travis Etienne)に代表するように高いレベルの高い選手たちがごまんといますが、このパンデミックという未知なる世界を生きる上で選手たちがブレずに一つの目標に向かって「心・技・体」を極めることが出来ているはひとえにスウィニー監督の為せる技なのでしょう。

後発組への危惧

こんな状況の中来週にはいよいよBig Tenカンファレンスマウンテンウエストカンファレンスが遅ればせながら開幕を迎え、それから更に2週間遅れてPac-12カンファレンスミッドアメリカンカンファレンスが開幕します。特にBig TenカンファレンスとPac-12カンファレンスにはまだ開幕していないにも関わらず数校がAPランキングトップ25位以内に食い込んでいます。

しかしこの状況下で実戦経験も無いまま開幕を迎えたところで一体彼らの力がどれほどなのかはわかりません。どのカンファレンスもリーグ戦のみのスケジュールのため、所属チーム同士の条件は同じなのですが、例えばBig Tenカンファレンスのオハイオ州立大は現在全米6位ですが、その前後にはすでに4〜5試合をこなしているチームが存在するわけで、その彼らと比べてオハイオ州立大やペンシルバニア州立大、オレゴン大などが各々の順位に見合ったレベルのフットボールを見せてくれるのかは正直疑問です。

遅れて参戦してくる4つのカンファレンスは他のカンファレンスたちが開幕を迎えていた時点で今季参戦できるかどうかは全く分かっていませんでした。その精神状態から5週間も試合がないまま準備をしていく上でモチベーションを保つのも簡単なことではないはずです。

それもこれも来週になればどうなっているのか分かることですが、SECで今週開催が予定されていたヴァンダービルト大vsミズーリ大、及びフロリダ大vsルイジアナ州立大の試合がコロナのせいで延期になったことを見ると、Big Tenら後発のチームたちが無事に全行程をこなすことが出来る保証などないのです。

本当に嫌な世の中になってしまいましたが、今後もオフェンス力がある方が試合を制するようなノーガードの打ち合いばかりが続いていくのか・・・。残りのシーズン半分を乗り切るには「心・技・体」を限りなく極めることが出来たチームが生き残ることになるでしょうね。

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