カンザス大が新体育局長(AD)に元アーカンソー大のジェフ・ロング(Jeff Long)氏を起用したことは前の記事で紹介しました。低迷するカンザス大フットボール部を再建するにあたり、ロング氏の頭の中では現監督のデヴィッド・ベティ(David Beaty)監督が奇跡的にチームを生き返らせない限り、彼の後任コーチを誰にするかというのは常に考えていることでしょう。
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ロング氏とビルマ氏
そこで思いつく人物がブレット・ビルマ(Bret Bielema)氏です。ビルマ氏は昨シーズンまで5年間アーカンソー大の監督を務めていましたが、彼をアーカンソー大に呼び寄せたのは何を隠そうロング氏だったのです。前職のウィスコンシン大では3年連続チームをローズボウルに連れて行くなど確かな結果を残してきたビルマ氏にロング氏が白羽の矢を立てた訳ですが、残念ながらアーカンソー大では失速。そのせいでロング氏、ビルマ氏共々失脚してしまったのです。
アーカンソー大時代のビルマ氏。ウィスコンシン大の時と比べて大分体つきもデカくなりました(笑)
ロング氏が解雇されたのは、苦戦続きのビルマ氏をロング氏が庇い続けていたからです。ビルマ氏に出て行って欲しかった連中が彼を解雇できないならばロング氏を解雇して、新しいADにビルマ氏を解雇させようという魂胆だった訳です。ビルマ氏とロング氏は一蓮托生とでも言えそうです。
そんな訳で、カンザス大体育局の長となったロング氏がベティ監督の後釜候補として寵愛してきたビルマ氏を指名することは大いに考えられそうです。
問題はビルマ氏にその気があるかどうかですが・・・。
現場復帰の意思は?
ビルマ氏はアーカンソー大から首を切られた後、アラバマ大で行われた、NFLドラフト候補生達の見本市でもある「プロデー」でその姿を見せました。その時はそこに来ていたニューイングランドペイトリオッツのビル・ベリチック(Bill Belichick )監督と談笑する姿が見受けれられましたが、それ以外ではオフシーズンにどのチームからも声がかからず仕舞いで、2018年度シーズンは現場復帰はなさそうです。
そもそもビルマ氏が現場復帰したいのかどうかもわかりません。彼は契約途中で解雇されたため、アーカンソー大はこれから2020年の終わりまで月々32万ドル(1ドル100円計算で3200万円)を違約金としてビルマ氏に払い続けなければなりません。この支払いはビルマ氏が別の仕事をゲットすると終わるのですが、何もしないでこんな大金が向こう2年弱懐に入ってくるというのはなかなか美味しい話ですよね。
ビルマ氏は1994年から本格的にコーチングの道を歩み始め2017年まで約25年現場で突っ走って来ました。その間先にも述べたようにウィスコンシン大でBig Tenカンファレンスタイトル3連覇を成し遂げています。ナショナルタイトルは手に入れていませんが、コーチング界隈で言えばいい思いをして来たうちに入るのではないでしょうか。
そんな彼が再びカレッジフットボールに帰ってくるか・・・。しかも総額1100万ドル(11億円)が自動的に手に入るような状況で。それをするにはそれなりのモチベーションがいるのかもしれません。またこれまで費やせなかった家族との時間を今楽しんでいるかもしれません。その彼を動かすのがロング氏のいるカンザス大なのか・・・それはちょっとわかりません。
ビルマ氏の今
そんな中ビルマ氏自身は先に挙げたベリチック監督のいるペイトリオッツで現在仕事をしている模様。なんの役割を与えられているのかは今のところ分かっていませんが、どうやら彼自身は今の状況に満足しているようです。
「NFLでコーチをするというのはこれまで(カレッジ)のものとは全く違うものです。かつて『プロに行ったコーチ達はプロから出たがらない』という言葉を聞きましたが、それが今ならよく理解できます。」と話すようにプロの世界に感嘆している様です。
「NFLのフットボールで気に入っていることは、朝早くから夜遅くまで長時間施設に詰めていたとしても、その全てがフットボールに関する仕事であるということです。」とも述べていますが、これはカレッジでは選手が学生であるために、監督としての仕事がフットボールだけに限らないことからそう感じているのでしょうね。プロならリクルーティングをしなくていいでしょうし、選手が授業でちゃんと成績を残しているかなどを心配する必要もないでしょうし。
現在48歳のビルマ氏はコーチ界ではまだまだバリバリ働ける年齢です。果たして彼がカレッジフットボール界に戻ってくる日はやって来るのでしょうか?