先週末に今季のレギュラーシーズンが終了し各カンファレンスの優勝校が決定。そして日曜日にはCFP(カレッジフットボールプレーオフ)の最終ランキングがリリースされ、上位4チームであるアラバマ大、クレムソン大、オハイオ州立大、ノートルダム大がプレーオフ進出を決めました。
通常ならばこの一連のプロセスは12月の第1週目に行われるのですが、今年は御存知の通り新型コロナウイルスのパンデミックの影響でスケジュールが押してしまいこの時期にすべてがずれ込んでしまいました。ハイズマントロフィーの授賞式も普通なら終わっているはずですが、今年は今日(12月21日)投票が締め切られ、ファイナリストが24日に発表され、授賞式はリモート形式で1月5日に行われる予定となっています。
そんな感じでいつもならCFPファイナルランキング発表とハイズマントロフィー授賞式が終わってからボウルゲームが始まるまで少し間があるのですが、今年はスケジュールがキツイだけありすでに今日から今年のボウルシーズンが開幕しています。今年のボウルシーズンの口火を切ったのはメイトルビーチボウル。サンベルトカンファレンスのアパラチアン州立大とカンファレンスUSAのノーステキサス大が対戦しアパラチアン州立大が52対28で勝利。この試合ではRBキャメラン・ピープルズ(Camerun Peoples)がNCAAボウル新記録となる317ヤードを足で稼ぐ大暴れを見せました。
【メイトルビーチボウル】
— Any Given Saturday (@ags_football1) December 22, 2020
アパラチアン州立大56、ノーステキサス大28
レギュラーシーズン終了も束の間、今年のボウルシーズンが開幕!その開幕戦となったメイトルビーチボウルではアパラチアン州立大のRBピープルズが317ヤードを走りNCAAボウルゲーム新記録樹立。 https://t.co/kj7t1c48SB
注目したいボウルゲーム
そんな感じで今年もここから年末年始に向けてボウルゲームが行われていくわけですが、その中でも面白そうなボウルゲームをピックアップしたいと思います。
ボカレートンボウル(12月22日)
セントラルフロリダ大 v sブリガムヤング大
どちらも全米随一のオフェンスパワーを持つチーム。セントラルフロリダ大QBディロン・ガブリエル(Dillon Gabriel)と来年のNFLドラフトでも注目を浴びるブリガムヤング大QBザック・ウィルソン(Zach Wilson)の投げ合いに期待大。
キュアボウル(12月26日)
リバティー大 vs コースタルカロライナ大(12位)
リバティー大は9勝1敗、コースタルカロライナ大は11勝0敗と今年の中堅チーム界隈を騒がした秀逸チーム同士の対決。へたな「パワー5」チーム同士の対戦より何十倍も面白そうなマッチアップです。
チーズイットボウル(12月29日)
オクラホマ州立大(21位)vs マイアミ大(18位)
シーズン前半には共にトップ10入を果たしたチーム同士の対決。後半つまずいてランクを落としましたがビッグクラブ同士の戦いに変わりはありません。
アラモボウル(12月29日)
テキサス大(20位)vs コロラド大
過去4年間テキサス大を背負って立ってきたQBサム・エリンガー(Sam Ehlinger)の最後の試合。この試合に勝って花道を飾りたいところ。一方のコロラド大はカール・ドレル(Karl Dorrell)新監督のもと予想外の活躍。テキサス大に勝てれば来年へさらなるはずみをつけることができます。
コットンボウル(12月30日)
フロリダ大(7位)vs オクラホマ大(6位)
数あるボウルゲームの中でもさらに上位種とされる「ニューイヤーズ6」ボウルの一つ。どちらもCFP出場を逃したチームですが、互いにオフェンス力には定評がありモチベーションさえ保てればいい試合になりそう。フロリダ大のスーパーTEカイル・ピッツ(Kyle Pitts)がオプトアウトしたのは残念ですが。
アリゾナボウル(12月31日)
ボール州立大 vs サンノゼ州立大(22位)
ミッドアメリカンカンファレンスの覇者・ボール州立大(6勝1敗)とマウンテンウエストカンファレンスの覇者・サンノゼ州立大の激突。サンノゼ州立大が勝てば1939年以来の全勝シーズンを達成します。
リバティーボウル(12月31日)
ウエストバージニア大 vs 陸軍士官学校
もともとテネシー大が出場予定だったところ彼らに新型コロナ感染者が出たことで出場を辞退。そこで対戦相手を探していた陸軍士官学校が代役として抜擢されました。今季9勝2敗と好成績を残したトリプルオプション使いの陸軍士官学校がウエストバージニア大相手にどこまで戦えるか。
ピーチボウル(1月1日)
ジョージア大(9位)vs シンシナティ大(8位)
「ニューイヤーズ6」ボウルの1つ。無敗ながらCFP出場から漏れたシンシナティ大。彼らに決定的に足りなかったのは「パワー5」勢でないという地位とストレングス・オブ・スケジュールが低かったということ。しかし彼らにしてみれば自分たちの強さを証明できるチャンスを手に入れたかったに違いなく、それがCFPでなかったのは残念ですが、このピーチボウルでSECの雄・ジョージア大を倒せればCFP選考委員会に一泡吹かせることもできるでしょう。
シトラスボウル(1月1日)
アーバン大 vs ノースウエスタン大(14位)
Big Tenカンファレンス優勝決定戦ではオハイオ州立大に敗れタイトル獲得を逃したノースウエスタン大。しかしそれでも彼らの今季の功績は評価されるべきですが、シトラスボウルでSECのアーバン大を倒せれば今季の彼らの戦績にさらなる箔をつけられるはずです。
ローズボウル(1月1日)
ノートルダム大(4位)vs アラバマ大(1位)
CFP準決勝第1試合目。元来の開催地であるカリフォルニア州パサデナ市では無観客試合が義務付けられているため舞台をテキサス州アーリントン市(AT&Tスタジアム)に移して行われます。彼らは2012年度のBCS(ボウルチャンピオンシップシリーズ)タイトルゲームでも対戦しており、この時はアラバマ大が42対14で大勝。ノートルダム大はそのリベンジを狙いますが・・・。
シュガーボウル(1月1日)
オハイオ州立大(3位) vs クレムソン大(2位)
CFP準決勝第2試合目。昨年の準決勝戦であるフィエスタボウルでも対戦した同一カード。この時はクレムソン大が勝って決勝へ駒を進めました。そのクレムソン大のダボ・スウィニー(Dabo Swinney)監督はすでにオハイオ州立大への「口撃」を始めており(6試合しかこなしていないオハイオ州立大はCFP進出する資格はないとか、コーチランキングでオハイオ州立大を11位に投票したとか)、すでに戦いは始まっているようです。
アウトバックボウル(1月2日)
ミシシッピ大 vs インディアナ大(11位)
今年驚きの快進撃を見せたインディアナ大はオハイオ州立大戦で彼らを追い詰める健闘を見せました。その強さは本物ですが、レーン・キフィン(Lane Kiffin)監督の操るハイスコアオフェンスに果たしてついていくことができるでしょうか。
フィエスタボウル(1月2日)
オレゴン大(25位)vs アイオワ州立大(10位)
「ニューイヤーズ6」ボウルの1つ。棚ぼた形式でPac-12カンファレンス優勝決定戦に出場しそのチャンスをものにしてリーグ優勝を果たしたオレゴン大とBig 12カンファレンスタイトルを後少しというところで逃したアイオワ州立大の対決。最後の最後まで真の力に疑問符がついた両チームとしてはこの試合に勝ってその疑惑を払拭したいところ。
オレンジボウル(1月2日)
テキサスA&M大(5位)vs ノースカロライナ大(13位)
「ニューイヤーズ6」ボウルの1つ。CFP出場をもう一歩というところで逃したテキサスA&M大。自分たちは4強に値するはずだと怒りに震えたこととでしょうが、その怒りを是非ともこのオレンジボウルにぶつけて欲しいところ。しかしノースカロライナ大は全米随一のランオフェンスを誇っており、油断するとテキサスA&M大は返り討ちにされてしまいます。CFP選考委員会に「やっぱり俺たちの判断は間違っていなかった」などと思われないようにテキサスA&M大はこの試合にしっかり勝っておきたいところ。
CFPナショナルチャンピオンシップ(1月11日)
ローズボウル勝者 vs シュガーボウル勝者
2020年度の最強チームを決める一戦。
新型コロナの影響を受ける今季のボウルシーズン
試合数の減少
さて、今年のボウルゲームのラインアップはいつもと少し異なっています。それは言わずもがな新型コロナの影響を受けてのものですが、その1つに挙げられるのが開催されるボウルゲームの数の減少です。
元来ボウルゲームは40試合以上あるのですが、今年はコロナの影響で開催を断念する興行が続出。以下がそのリスト。
インディペンデンスボウル
ギャランティーレートボウル
ピンストライプボウル
LAボウル
サンボウル
バーミンガムボウル
ミリタリーボウル
レッドボックスボウル
ハワイボウル
バハマボウル
ホリデーボウル
クイックレーンボウル
ラスベガスボウル
実に14試合が開催を断念。つまり28チームが出場機会を逃す計算になったのです。
ボウルゲーム出場辞退チームが続出
しかし6月からパンデミックの恐怖と背中合わせに戦ってきた選手たちにとって今シーズン彼らが背負ってきた肉体的・精神的負担は並々ならぬものでした。自由に外出できず、毎日ウイルス検査を課せられ、家族にも会えずといった厳しい環境の中でシーズンを送った選手たちにとってはレギュラーシーズンをこなすだけでも大変な労力だったわけです。
そんな選手らを慮ってポストシーズンのボウルゲーム出場を辞退するチームが続出。以下にその決断を下したチームをご紹介します。
ボイジー州立大
ボストンカレッジ
フロリダ州立大
ジョージア工科大
カンザス州立大
ルイビル大
ミシガン州立大
ミシガン大
ミネソタ大
ネブラスカ大
ペンシルバニア州立大
ピッツバーグ大
ラトガース大
サンディエゴ州立大
スタンフォード大
テキサス工科大
UCLA
サザンカリフォルニア大
バージニア大
バージニア工科大
ワシントン大
この他にもルイジアナ州立大はNCAAルールの違反による自主規制でボウルゲーム出場を見合わせています。
現在進行形の記録としては最長の連続記録となる27年連続ボウルゲーム出場を果たしてきたバージニア工科大もオプトアウトすることを決定し、この連続記録も27でストップしてしまいました。
ボウルゲーム出場資格の撤廃
ボウルゲームの総数が減っただけでなく出場するチーム数も減ってしまったわけですが、こんな状況を見こしてかNCAAは先にボウルゲームに出場するための勝率5割以上という最低条件を撤廃しました。
通常は負け越したチームはボウルゲームに出場する資格は与えられません。それはもともとボウルゲームとはレギュラーシーズン中にいい成績を残せたチームにのみ与えられたご褒美だったからです。しかし年を追うごとにボウルゲームの試合数が増え、それに伴い出場チームを確保するために出場資格がどんどんゆるくなっていきました(私がカレッジフットボールにハマりだした20年以上前にはその最低条件は7勝でした)。
その結果ボウルゲームの数だけ増えて試合の質が下がるという減少が起きたのですが、それもこれもその大多数の試合の放映権を持つ米王手スポーツ専門局ESPN、さらにはその親会社のディズニーの策略なのですが、それはまた別の機会で。
話をもとに戻すと今年はその勝率5割以上という出場資格を撤廃したため、負け越してもボウルゲームに出場できるようになりました。たとえば5勝6敗のウエスタンケンタッキー大(レンディングツリーボウル)、3勝7敗のミシシッピ州立大(アームドフォースボウル)、3勝7敗のアーカンソー大(テキサスボウル)、4勝6敗のケンタッキー大(ゲーターボウル)、4勝5敗のミシシッピ大(アウトバックボウル)らは負け越しレコードにも関わらずご褒美のボウルゲームに出場が可能となりました。サウスカロライナ大に至っては2勝8敗なのにボウルゲーム(ガスパリラボウル)に出場できるのですから、まさになんでもありの状況です。
そもそも出場の価値はあるのか?
そんな感じでいつもとは違うボウルシーズンを迎えるわけですが、新型コロナウイルスの脅威は収まってはおらず、レギュラーシーズンでも起きたように試合までの準備期間に部内でクラスター感染が起きる可能性は十分あります。現にすでに紹介したようにテネシー大はリバティーボウル出場が決まっていたのにも関わらず新型コロナのせいで出場を辞退しましたし、アイオワ大でも現在クラスター感染が発生し部活動が一時休止となっています。
この様な事態が他のチームでも起きたとしても決しで不思議ではなく、今後も参加予定のチームが出場できなくなって試合がキャンセルになることも起きてくるかもしれません。
先にも述べたとおりボウルゲームというのはレギュラーシーズン後のお楽しみであり、その一番の理由はシーズン中の労をねぎらいチームが観光地に招待されてイベントを楽しんだその締めくくりとして試合が行われるというのが本質でした。当然「ニューイヤーズ6」ボウルやCFPゲームはそれ以上のシリアスさが求められますが、一方でCFPが導入されてから他のボウルゲームに出場する価値はがっくりと下がり、その結果NFLドラフトに向けて怪我をしないようにボウルゲームを回避する選手たちがあとを絶たなくなりました。
そんな状況がある上に新型コロナの影響でボウルゲーム開催地でも自由がきかず、チーム全体でのイベントも開催されず、練習以外は宿泊先のホテルに軟禁状態にされ、挙句の果てには試合会場に家族も呼べないとなれば、一体何のためにボウルゲームに出場するのかという疑問が湧いてきます。
もともとローアーティアのボウルゲームは言葉は悪いかもしれませんが視聴者の関心はかなり薄く、出場チームのファン以外はTVのチャンネルを合わせることはまず無いでしょう。それなのにも関わらずボウルゲームが行われる理由は明白。それはテレビの放映権並びに広告料であり、それを牛耳っているESPNのビジネスモデルのためであります。
新型コロナウイルスのパンデミックは今回春先から夏、そして現在まで様々なカレッジフットボール界の闇をあぶり出してきましたが、ここにもその片鱗が見え隠れします。CFPに出場するチームらには全米制覇というゴールがまだ生きています。彼らがこの状況下でウイルスの脅威をかわしながら試合の準備をするのは分かりますが、それ以外のボウルゲームはぶっちゃけ大人たちの金儲けのために行われるわけで、学生アスリートたちはそのダシに使われているのです。新型コロナの感染という恐怖と戦いながら。
とはいえ、カレッジフットボールファンでもある筆者もそのコンテンツを享受する側として無関係ではいられないのかもしれませんが・・・。ボウルゲームに参加する選手たちにはくれぐれも健康に留意してボウルシーズンを乗り切ってもらいたいものです。