先週末、今季のレギュラーシーズンを締めくくる唯一の試合であり全米を代表するライバリーゲームでもある、陸軍士官学校対海軍士官学校の試合、いわゆる「アーミー・ネイビー(Army-Navy)」が行われました。第126回目となるこの試合は、予想通り今季のレギュラーシーズンを締めくくる見応え十分な大接戦となりましたが、結果的に海軍士官学校が17対16という劇的な逆転勝利を収めました。
試合の流れと重要な局面
試合は伝統的なサービスアカデミー(士官学校)のスタイルである、グラウンドゲームを中心としたゴリゴリのドライブで幕を開けました。海軍士官学校が最初のポゼッションで13プレー、75ヤード、7分以上の時間をかけたドライブを展開。最後はQBブレイク・ホーヴァス(Blake Horvath)の5ヤードランで先制点を挙げました。しかし、陸軍士官学校もQBケール・ヘルムス(Cale Hellums)の指揮のもと、同じく13プレー、75ヤードのロングドライブで即座に同点に追いつきます。
第2Qに入ると陸軍士官学校のディフェンスがホーヴァスのファンブルを奪うなど、ターンオーバーからのチャンスを活かし、Kドーソン・ジョーンズ(Dawson Jones)の2本のFGをお膳立て。陸軍士官学校が13対7とリードして前半を終えました。
第3Qに入っても陸軍士官学校のディフェンス力が光り、ホーヴァスのパスをジャスティン・ウィーバー(Justin Weaver)がインターセプト。そしてそれを起点にジョーンズがキャリア最長となる48ヤードFGを決め、スコアを16対7とリードを広げました。
そして陸軍士官学校が16対10とリードして迎えた第4Q、流れは劇的に海軍に傾きます。まず、ヘルムスのアンダースロー気味のパスを海軍士官学校のフィリップ・ハミルトン(Phillip Hamilton)がインターセプト。このチャンスに海軍士官学校は敵陣深くまで攻め込みます。ただ、ゴール前1ヤードでホーヴァスがファンブルする危機に陥りますが、WRイーライ・ハイデンリヒ(Eli Heidenreich)が8ヤードラインでボールを奇跡的にリカバーし、ドライブを継続させました。
そして続く4th & ゴール @ 8ヤードという土壇場のシチュエーションで、ホーヴァスはハイデンリヒへのタッチダウンパスを成功させ、遂に海軍士官学校が17対16と逆転に成功します,。
What an unbelieveable sequence of plays leading to a Navy touchdown. pic.twitter.com/Qn3Ii2lpII
— CBS Sports College Football 🏈 (@CBSSportsCFB) December 13, 2025
終盤、海軍士官学校の最終ドライブでホーヴァスが再びファンブルするも、レビューの結果ファンブル前にダウンしていたと判定されポゼッションを維持。その後、アレックス・テッツァ(Alex Tecza)が4th & 1ヤードからの4thダウンコンバージョンを成功させ、そのままクロックを使い切って勝利を手中に納めたのでした。
勝敗の要因
陸軍士官学校は前半にすべてのドライブで得点し、ターンオーバーでも優位に立ちましたが、後半の30分間でわずか27ヤードしか獲得できず、オフェンスが完全に沈黙。TDが必要な場面でFGに甘んじたことが、結果的に僅差での敗北につながりました,。
一方、序盤に陸軍士官学校のラン攻撃に苦しんだ海軍ディフェンスは上記の通り後半に見事にアジャストし、陸軍士官学校のオフェンスをほぼ完璧に封じ込め味方の援護を待ちました。特に第4Qのヘルムスが奪ったインターセプトは、逆転への狼煙をあげる最大のきっかけとなりました,。
そしてホーヴァスとハイデンリヒの勝負強さも特筆すべきです。 この日ホーヴァスは試合中2つのターンオーバーを喫し、他にもファンブルを繰り返すなどボールセキュリティに問題を抱えましたが、試合終盤の最も重要な局面である4thダウンのシチュエーションからで決勝TDパスを成功させコーチ陣からの信頼に応えました。また、ハイデンリヒは試合終盤のファンブルをリカバリーし、それがこの決勝TDに繋がったことからも、彼がまさに海軍士官学校にとってキーパーソンとなったのでした。
この勝利により海軍士官学校はライバル・陸軍士官学校に対する連勝記録を「2」に伸ばし、2年連続でCommander-in-Chief’s Trophy(総司令官杯)を獲得するという快挙を達成。また彼らにとってプログラム史上初となる2年連続10勝シーズンも樹立。
士官学校はランヘビーなオフェンスで押してくることでよく知られており、この日も両校合わせて88回のキャリーを記録(パスは両校合わせて24回。これでも多い方です)。その割にランヤードはトータルで310ヤードと思ったほど数字は出ませんでしたが、それは両校のディフェンスが拮抗していたからと言えるでしょう。
今ではなかなか見ることができないスタイルのカレッジフットボールを観れることもこの「Army-Navy」の醍醐味。ひょっとしたら日本の大学フットボールに似ているのかもしれませんが、ナショナルタイトルゲームとかプレーオフとかとは遠く離れたところにある存在ながら、カレッジフットボール界ではなくてはならない伝統の一戦。大いに楽しませてくれました。
まだ観ていらっしゃらない方は下にあるハイライト動画を是非ご覧ください!
ちなみにこの試合は長年CBSが中継しているのですが、このこの試合の解説を務めたゲリー・ダニエルソン(Gary Danielson)氏は今季で引退することが決まっており、彼にとってこれが最後の「Army-Navy」ゲームに。かつてCBSがSEC(サウスイースタンカンファレンス)のメインイベントを中継していた頃は彼の声が土曜日3時半にTVから流れるのが恒例でした。そのダニエルソン氏の解説が聴けなくなるのは寂しい限りです。
After calling his 17th and final installment of the Army-Navy Game, Gary Danielson was emotional as he reflected on what being able to call this rivalry has meant to him.
— CBS Sports College Football 🏈 (@CBSSportsCFB) December 14, 2025
He'll call his final game for CBS on New Year's Eve at the Tony the Tiger Sun Bowl. pic.twitter.com/QCR7hCRrOr






