アトランティックコーストカンファレンス(ACC)は主にアメリカ東海岸に位置する巨大カンファレンスで北はマサチューセッツ州のボストンカレッジから南はフロリダ州のマイアミ大まで南北に主戦場を構えます。かねてからACCは男子バスケットボール部のカンファレンスとして知られていましたが、クレムソン大、フロリダ州立大、マイアミ大といった大御所も所属する「パワー5」カンファレンス群の一員です。
展望
ノートルダムの参戦
「パワー5」カンファレンスの一員であるBig TenカンファレンスとPac-12カンファレンスが今季参戦しないことを表明しましたが、それによって大きなダメージを食らったのが名門ノートルダム大でした。なぜなら彼らは今季ウィスコンシン大、サザンカリフォルニア大、スタンフォード大との対戦が組み込まれており、これらのチームとの対戦がなくなってしまったことでどのカンファレンスにも属さないノートルダム大は代わりとなる対戦相手をスクランブルで探さなくてはならなくなりました。
そこで手を差し伸べたのがACC。元々フットボール部以外のノートルダム大スポーツ部はACCに所属しており縁はあったのですが、ノートルダム大フットボール部が創部以来一貫して無所属を貫いてきたため、彼らがどこかのカンファレンスに所属すること自体が歴史的出来事だったのです。
来年には再び無所属に戻る予定ですが、ACCがここのところクレムソン大の一辺倒だったことを考えるとノートルダム大のACCへの参戦は大いなる起爆剤となりそうです。
コロナウイルスの影響
ACCに限ったことではありませんが、今季は常にコロナウイルスの脅威と戦いながらのシーズンとなるでしょう。
既にノースカロライナ大とノースカロライナ州立大のキャンパスではコロナのクラスター感染が発生しており、特にノースカロライナ州立大は開幕戦となるはずだったバージニア工科大との試合を9月12日から9月26日にずらし、ウェイクフォレスト大との9月19日の試合が新たな開幕戦となっています。
またこのコロナの影響を受けて今季参戦しない(オプトアウト)選手も出ています。ACCの主なオプトアウト選手は以下の通り。
ジェイレン・トワイマン(Jaylen Twyman、ピッツバーグ大DL)
ケイレブ・ファーレイ(Caleb Farley、バージニア工科大CB)
ゼビアー・トーマス(Xavier Thomas、クレムソン大DL)
D.J. フォード(D.J. Ford、ノースカロライナ大S)
変則チャンピオンシップゲーム
ACCは今季カンファレンス戦10試合と1試合のノンカンファレンス戦(交流戦)からなる11試合で予定されています。
また普段ならばコースタル地区とアトランティック地区の二地区制度を敷き、それぞれの地区を勝ち上がったチームが優勝決定戦に出場するフォーマットを採用していますが、今季に限ってこの二地区制度を廃止し、カンファレンス戦の勝率で上位2チームがタイトルゲームに出場する形式を取ることになっています。二地区制度が導入されたのが2005年度ですから、一地区制度となるのは15年ぶりのこととなります。
注目のチーム
クレムソン大
APプレシーズンランキングで全米1位を獲得したクレムソン大が今年もACCの再注目チームです。昨年までリーグタイトル5連覇、またカレッジフットボールプレーオフ(CFP)に5年連続出場し2016年度と2018年度にはナショナルチャンピオンにも輝いています。ダボ・スウィニー(Dabo Swinney)監督が就任して12年目を迎えますが、うだつの上がらなかったチームを常勝チームにまで昇華させた彼の敏腕ぶりは際立っています。
昨年はCFP決勝戦に進出するもルイジアナ州立大の前に惜しくも破れましたが、今年はQBトレヴァー・ローレンス(Trevor Lawrence)やRBトラヴィス・エティエン(Travis Etienne)といったオフェンスの主力が健在。ノートルダム大が参戦してくるとは言え今季もACCタイトルレースの最有力候補となりそうです。
ノートルダム大
既述の通り今季限定でACCに参戦することになったノートルダム大。2016年度に4勝8敗まで落ち込みブライアン・ケリー(Brian Kelly)監督の監督の座は一時危ぶまれましたが、以降3年連続二桁勝利シーズンを達成し2018年度にはCFP進出も果たしました。
プレシーズンでは10位にランクインされ期待度は十分。オフェンス・ディフェンス双方から何人かの主力選手が抜けはしましたが全米屈指のオフェンシブラインとスターQBイアン・ブック(Ian Book)の存在だけでもクレムソン大に立ちはだかることは出来るでしょう。
ノースカロライナ大
昨年マック・ブラウン(Mack Brown)監督の初年度となったノースカロナイ大は7勝6敗と予想外の勝ち越しシーズンを収めましたが、今年はプレシーズンランキングで18位と驚きの評価を得ています。それもこれもリクルーティング(選手の勧誘活動)での成功が功を奏しており、今年だけのリクルーティングランキングで見れば全米で5つの指に入るほどの結果を残しています。
だからといって即それが結果に結びつくとは言えませんが、ブラウン監督2年目の今年に彼らがどれだけ羽ばたくか見ものです。
フロリダ州立大
昨年フロリダ州立大は2年目となるウィリー・タガート(Willie Taggart)監督に指揮されていましたが9試合を終えて4勝5敗となったところでシーズン途中にも関わらず大学がタガート監督を解雇。その後釜として今年からは元メンフィス大のマイク・ノーヴェル(Mike Norvell)氏が指揮を執ります。まだ38歳と若手のノーヴェル監督の腕前拝見というところです。
マイアミ大
名門マイアミ大の昨年の戦績は6勝7敗と負け越しとなりマニー・ディアス(Manny Diaz)監督のデビューに華を添えることは出来ませんでした。かつて名を馳せたマイアミ大がなかなか上に上がってこれないことにフラストレーションを感じるファンは多いでしょう。
今年はヒューストン大からQBデリック・キング(D’Eriq King)を転校生として迎え入れることに成功。キングは2018年にヒューストン大で50TDを獲得したほどの逸材。新オフェンシブコーディネーターには昨年ブレークしたサザンメソディスト大でOCを務めたレット・ラシュリー(Rhett Lashlee)氏が就任。果たしてラシュリー氏がキングのポテンシャルを活かすオフェンスを編みだすことが出来るでしょうか?
注目の選手
トレヴァー・ローレンス(Trevor Larence)
クレムソン大QB
言わずとしれた全米ナンバーワンQBでありハイズマントロフィー候補最有力選手にして来年のNFLドラフト総合ドライチの呼び声高い超逸材。1年生時からスターターを任されたローレンスはこれまで2年間で約7000ヤードに66TDを稼いできました。
またまだ3年生ながら彼のリーダー力には目を見張るものがあり、Black Lives Matter(BLM)運動時には先頭に立ち、開幕が危ぶまれた際には「#WeWantToPlay」を合言葉に声を上げ、多くの選手がオプトアウトする中参戦を表明するなど人望熱き選手。今年のハイズマンレースはローレンスvs残りの選手という構図が既に出来上がっています。
トラヴィス・エティエン(Travis Etienne)
クレムソン大RB
2018年度には1659ヤード、2019年度には1614ヤードと2年連続で1600ヤード以上を叩き出したエティエンですが、今年のNFLドラフトに早期エントリーしなかったことは周囲を驚かせました。オクラホマ州立大のチュバ・ハバード(Chuba Hubbard)と並び今季トップクラスのRBです。
イアン・ブック(Ian Book)
ノートルダム大QB
2018年度に先発の座を掴んで以来彼のノートルダム大での戦績は19勝3敗。2018年度のCFP進出は彼の手腕によるところが大きかったですが、ノートルダム大が再びCFPの舞台に返り咲くためには2018年度のようなブックのマジカルシーズンが必須となります。
サム・ハウエル(Sam Howell)
ノースカロライナ大QB
昨年ACCの最優秀新人賞を獲得したのがこのサム・ハウエル。昨年のノースカロライナ大は7勝6敗でしたが負けた試合でも点差が7点以上広がることは無かったことを考えると彼らの実力は戦績以上のものであると考えられます。今年それを活かすも殺すも若いハウエルの腕にかかっています。
注目の試合
フロリダ州立大@マイアミ大(9月26日)
これまで数々の名勝負を繰り広げてきたこのフロリダ州内のライバリーゲーム。フロリダ州立大は今季から元メンフィス大のマイク・ノーヴェル(Mike Norvell)氏が指揮を執りますが、彼がどのようなチームを育成してきたのかこの試合で明らかになるでしょう。
マイアミ大@クレムソン大(10月10日)
ACCタイトルレースにおいて最初に注目されるのがこの試合となるでしょう。最有力候補のクレムソン大にマイアミ大が挑戦状を叩きつける格好になりますが、マイアミ大が王者にどう立ち向かうか見ものです。
クレムソン大@ノートルダム大(11月7日)
現状だけを見れば1位のクレムソン大と10位のノートルダム大のマッチアップはACCタイトル争いで大目玉となりそうです。コロナ禍の影響を受ける前からこの試合は組み込まれていましたが、ACCが参戦することとなりこの試合はACCタイトルレースでも大きな意味を持つ試合になったのです。
AGS予想
本命:クレムソン大
対抗:ノートルダム大
単穴:ノースカロライナ大
連下:フロリダ州立大
大穴:バージニア工科大