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カレッジフットボール界を揺るがすCFP拡大論争とSECの思惑(前編)

カレッジフットボール界を揺るがすCFP拡大論争とSECの思惑(前編)

カレッジフットボール界でもその突出した強さと影響力で群を抜いてるカンファレンスがSEC(サウスイースタンカンファレンス)ですが、今週毎年恒例のSECの春季総会が行われており、ここでカレッジフットボール界の未来を揺るがしかねない議論が交わされています。

現在、水面下で繰り広げられているのは「レギュラーシーズンスケジュールの再編成」と「CFP(カレッジフットボールプレーオフ)の拡大を巡るニ大カンファレンス(SEC vs Big Tenカンファレンス)の権力闘争」です。今後のカレッジフットボールのあり方を変えかねない、今まさに知っておくべき重要なトピックをまとめてみました。

(この記事は当サイトが運営しているポッドキャストのエピソード#282の内容が元になっています)

SECのカンファレンス戦が8試合から9試合へ

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昨年夏、SECが2026年度シーズンからカンファレンス戦をこれまでの8試合から9試合へ拡大することを正式決定。この変更は単純な1試合増加ではなく、CFPの参加枠拡大に向けたSECの戦略転換を象徴する大きな決断と言えました。

長年SECはカンファレンス戦において8試合制を維持してきましたが、そこには明確な理由がありました。というのは、Big Tenカンファレンスなどは9試合のカンファレンス戦スケジュールを組んできましたが、SECはこれを8試合にすることで非カンファレンス戦を1試合多く組めることになり、その結果SECの各校はボウルゲーム出場に必要な最低6勝のラインへ到達しやすくなるわけです。

特にSECでは、シーズン終盤に格下のグループオブ5勢チームや、FCS(フットボールチャンピオンシップサブディビジョン)校やとの試合を組み込む文化(カップケーキゲーム:後述)が長く続いており、他カンファレンスからは「SECはスケジュール面で有利だ」という批判も少なくなかったのです。

しかしテキサス大オクラホマ大の加入(2024年度)によってSECは16校体制へ移行するなど状況は大きく変化し、従来の8試合制ではリーグ内での対戦ローテーションに限界が生まれていたのも事実。同じカンファレンスに所属していながら、数年間対戦が行われないケースも発生し、ファンの間では不満が高まっていたのです。実際、テキサスA&M大は2011年のSEC加入後、長い期間ジョージア大とのホームゲームを実施できなかったことでも知られています。リーグの巨大化に伴い、「SEC所属でありながら互いにほとんど戦わない」という状況は、カンファレンスとしての一体感を損なう問題になっていたのも事実です。

そこで、今回導入される9試合制では各校が毎年固定対戦を維持しながら、残りの対戦相手をローテーションで回すことでより短い周期で全チームとホーム&アウェーを消化できるようになります。これにより、ファンはより多くのビッグマッチを定期的に楽しめることになるはずです。

しかし、この決断の最大の背景にあるのは、やはり12チーム制へ拡大したCFPの存在があります。2023年度までの4チーム制では、SEC王者や1敗の有力校は比較的安定してプレーオフ進出を狙うことができました。しかし現在は、単純な勝敗数だけでなく、「ストレングス・オブ・スケジュール」、つまりどれだけタフなスケジュールをくぐり抜けてきたのか、を示す評価基準の重要性が増しています。「弱いチームと戦って無敗を守る」よりも「どれだけ強い相手と戦ったか」がこれまで以上にCFP出場への選考へ影響する時代になったというわけです。

SECコミッショナーのグレッグ・サンキー(Greg Sankey)氏も以前から、「ストレングス・オブ・スケジュールが適切に評価されるのであれば、9試合制への移行は考慮しなければならない」と語っており、SEC側としても、最強カンファレンスを掲げながらライバルでもあるBig Tenカンファレンスより少ないカンファレンス戦数を維持し続けることへの批判は十分理解していたわけです。

物議を醸した「カップケーキウィークエンド」がついに廃止へ

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そして、今回のSECの春季総会において、所属する大学の体育局長(AD)たちの投票により、長年ファンやメディアから批判の的となっていた伝統(?)に終止符が打たれることになりました。

これまでは、レギュラーシーズン最終節に行われるライバリーウィークエンドやポストシーズンを控えたシーズン終盤(レギュラーシーズンの最終週の1つ前の週)に、格下のFCS(フットボールチャンピオンシップサブディビジョン)所属のチームと対戦して「息抜き」をする、いわゆる「カップケーキゲーム」が横行していました。

小さなカップケーキを一口でパクッと食べてしまうかのように、弱小相手と対戦して楽に白星を稼ぐことから、このような試合は「カップケーキゲーム」と呼ばれてきました。しかし、数あるFBS(フットボールボウルサブディビジョン)で、緊迫したシーズン終盤にカップケーキゲームを予定に組み込んでいるのはSECだけなのです。

シーズン終盤といえばプレーオフ進出に向けて1敗も出来ないチームが数多くいると思いますが、そんな中で「王者」と目されるSECがいわば「出来レース」とも言える楽な試合をこの時期に組んできたことには多くの批判が起こっていました。そこで2027年シーズンより、SECの全チームはレギュラーシーズン最終週の1週前、必ずカンファレンス戦を戦うことが義務付けることがADの投票によって決まったわけです。

つまり、カンファレンス戦を9試合制にして1試合分増やす代わりにこれまで行われてきたカップケーキゲームを取りやめることにしたというわけです。

これによってシーズン終盤には、ランキング上位校同士による直接対決がこれまで以上に増加する可能性が増えることになり、SEC戦のテレビ放映権を持つESPNにとっても極めて大きな意味を持つことになります。視聴率の低い一方的なカップケーキゲームより、プレーオフ争いに直結するSEC強豪同士の対戦の方が圧倒的に視聴率が上がるからです。SECの9試合制導入は、競技面だけでなく、テレビビジネスやカレッジスポーツ市場全体の拡大とも密接に結びついているわけです。

一方で、この変更がすべてのチームにとってプラスになるわけではありません。特にSEC内でも中位から下位レベルの大学にとっては、ボウルゲーム出場難易度が確実に上昇することになります。従来なら非カンファレンス戦で勝利数を積み上げてトータルで6勝を挙げてボウルゲーム出場を狙っていたチームも、追加される1試合がジョージア大やテキサス大、アラバマ大といった強豪校になる可能性が出てくるからです。SEC内部では以前から、「9試合制によってリーグ全体の敗戦数が増え、結果的にCFP出場校数が減るのではないか」という懸念も実は存在していたのです。

ただ、それでもSECが9試合制へ踏み切り、白星確実なカップケーキゲームを廃したのは、CFP時代において「強い相手から逃げないリーグ」としての価値を高める必要があったからだと思われます。今後、プレーオフ選考で「10勝でも弱いスケジュール」のチームより、「9勝でも全米屈指のストレングス・オブ・スケジュール」を戦い抜いたチームが高く評価される流れが強まれば、SECの今回の決断は他カンファレンスにも大きな影響を与えることになりそうです。

そしてさらに言えば、FCS校や下位FBS校にとって、カップケーキゲームと呼ばれるSECとのアウェー戦は、単なる試合ではなく極めて重要な資金源であり、こうした試合ではホスト側のSEC校が数十万ドルから場合によっては100万ドル近い保証金を支払うケースも珍しくありません。ゲストチームが手にいれるこの収入は、単にフットボール部だけでなく、そのチームの大学スポーツ全体に還元される役割を果たしており、特に規模の小さい大学ではこの保証金で他スポーツの赤字を補填していることも多く、カップケーキゲームがなくなることは、奨学金、施設維持、遠征費などにも直接響いてくるという連鎖反応も起きます。

また、FCS側にとっては露出面の損失も無視できません。SECとの試合は、たとえ大敗してもESPNなどで全国中継されたり、10万人規模のスタジアムでプレーできる特別な機会でしたが、これはリクルート活動や学校ブランドの認知度拡大、そして卒業生からの寄付にも少なからず影響していると思われます。特に小規模大学にとって、「アラバマ大と試合をした」「ジョージア大相手に戦った」という事実自体が大学PRの一部になっていた面は大きいと言えます。

(続く)

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