カレッジフットボールプレーオフ(CFP)はアメリカのカレッジフットボールにおいてNCAA(全米大学体育協会)1部の中でも特に上位サブディビジョンと言われるフットボールボウルサブディビジョン(FBS)に現在所属する136チームの頂点に立つナショナルチャンピオンを決める現行のシステムです。
2024年から参加できるチームが4チームから12チームへと大幅に拡張し、より多くのチームに全米タイトルを獲得するチャンスが生まれました。その12チームを選出するために結成されたのがCFP選考委員会(CFP Selection Comittee)ですが、11月に入ってから毎週彼らによって全米25位のランキング「CFPランキング」が発表されてきました。そして12月7日に遂にファイナルCFPランキングが発表され、それを元にしてこのプレーオフに駒を進めることができた12チームが選出されたのです。
目次
選出方法
各チームがプレーオフに進むためには2つの道が用意されています。
- 自動出場枠(5席)
9つあるFBSのカンファレンスの優勝チーム9つのうち、CFPランキングで上から5つのチームには無条件でプレーオフ出場権が与えられます。 - アットラージ枠(7席)
ファイナルCFPランキングで上位から順々に残りの7席を埋めていきます。
参加が決まった12チーム
自動出場枠
- #1 インディアナ大(Big Tenカンファレンス優勝チーム)
- #3 ジョージア大(SEC優勝チーム)
- #4 テキサス工科大(Big 12カンファレンス優勝チーム)
- #20 トゥレーン大(AAC優勝チーム)
- #24 ジェームスマディソン大(サンベルトカンファレンス優勝チーム
アットラージ枠
- #2 オハイオ州立大(Big Ten所属)
- #5 オレゴン大(Big Ten所属)
- #6 ミシシッピ大(SEC所属)
- #7 テキサスA&M大(SEC所属)
- #8 オクラホマ大(SEC所属)
- #9 アラバマ大(SEC所属)
- #10 マイアミ大(ACC所属)
シード権
参加できる12チームが決まったところで今度はシード順を決めるわけですが、これは単純にCFPランキングの上位から順に与えられていきます。昨年と違うのは、ファーストラウンドを免除される(バイ)特権を与えられるトップ4シードがCFPランキングの上位4チームになったことです(昨年は順位に関わらずカンファレンス優勝チームのうち上位4つに与えられていた)。
第1シード:インディアナ大
第2シード:オハイオ州立大
第3シード:ジョージア大
第4シード:テキサス工科大
第5シード:オレゴン大
第6シード:ミシシッピ大
第7シード:テキサスA&M大
第8シード:オクラホマ大
第9シード:アラバマ大
第10シード:マイアミ大
第11シード:トゥレーン大
第12シード:ジェームスマディソン大
解説
第5回目のCFPランキングからファイナルランキングに至るまで起きた変化は大きく4つあります。
1: インディアナ大とオハイオ州立大が順位を入れ替える
今季開幕2戦目以来一貫して全米1位を死守してきたオハイオ州立大でしたが、Big Ten優勝決定戦で全米2位だったインディアナ大に惜敗。これにより遂に首位の座から陥落し2位に転落。そして彼らを倒したインディアナ大が全米1位に輝きました。これによりシード順も1位と2位が逆転。
どちらもファーストラウンド免除となりますが、インディアナ大が出場するローズボウルは元来Big Tenカンファレンス優勝チームとPac-12カンファレンス優勝チームが対戦してきた由緒正しきボウルゲーム。実質Pac-12カンファレンスが無くなったため(メンバーを大幅に変えて来年から新たな船出をしますが)、この伝統のマッチアップ縛りは無くなりましたが、その名残を受けてBig Ten優勝チームとしてインディアナ大がローズボウルに出場となったのは意味のあることだと思います。
ちなみにインディアナ大がローズボウルに出場するのは1968年以来の事となります。
2:アラバマ大が残留
SECタイトルゲームでジョージア大と対戦したアラバマ大は当時9位。勝てばSEC優勝チームとして自動出場枠を獲得となるところでしたが、蓋を開けてみればジョージア大に28対7と完敗。全くいいところがなく破れ去りました。
これを受けてファイナルランキングではアラバマ大のランクは下がると多くの人が思っていたに違いありません。あまりの不甲斐なさにアットラージ枠での出場のボーダーラインである10位以下に転落するとさえ囁かれていましたが、結果的にはランクは9位と変わらず。
これはカンファレンス優勝決定戦での結果はあくまで参考程度であり、選考の対象にはならないというメッセージが含まれていると言えそうです。
しかし、もしCFPランキングがその時の最強チームをランクづけするのであれば、現在のアラバマ大のチーム力を考えるとお世辞にも全米9位といは言えないというのが率直な感想。その彼らのランクをただの1つも落とさなかったことには違和感を感じずにはいられません。
ちなみに3敗でプレーオフに進出するのはこのアラバマ大が史上初めてのことになります。
3:ブリガムヤング大がランクを下げる
11位だったブリガムヤング大はBig 12カンファレンス優勝決定戦で4位のテキサス工科大と対戦。ここで彼らはアラバマ大と同様完膚なきまでにテキサス工科大に34対7で敗北してしまいます。
ただ、もし前述したアラバマ大のケースに当て嵌めるのであれば、カンファレンス優勝決定戦の結果はファイナルランキングの順位変動に影響しないということでブリガムヤング大も11位のままの筈。しかし結果的に彼らは12位にランクを一つ落としてしまいました。
アラバマ大とブリガムヤング大のケースで唯一異なる点がるとすれば、アラバマ大はレギュラーシーズン中にジョージア大に一度勝っていますが、ブリガムヤング大はレギュラーシーズン中の大戦に続きこれでテキサス工科大に2連敗。そのことがカンファレンス優勝決定戦での敗戦にも関わらず、彼らのランクダウンにつながった・・・と言えるのかもしれません。
しかし。
4:ノートルダム大が出場を逃す
ファイナルランキングでブリガムヤングが11位から落ちたことで代わりにランクを上げてきたのが12位だったマイアミ大です。彼らは先週末試合が無かったのにも関わらず、ブリガムヤング大がテキサス工科大に敗れたためにランク上昇の絶好のチャンスを得たわけです。
ここで問題となったのが先週10位だったノートルダム大です。前述の通りアットラージ枠の境界線が10位であり、先週のままだと10位のノートルダム大はプレーオフ進出となるはずでした。しかしここでCFP選考委員会はこのノートルダム大とマイアミ大のどちらを10番目の椅子に座らせるか比較することになります。
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| 10勝2敗 | 勝敗 | 10勝2敗 |
| 42位 | SOS | 44位 |
| 12位 | SOR | 13位 |
| 2勝 | 対CFPランクチーム | 3勝 |
| #17 USC | 主な勝利試合 | #9 ノートルダム |
| #7 テキサスA&M #10 マイアミ | 敗戦チーム | SMU ルイビル |
| ❌ | 直接対決 | ⭕️ |
レジメ(プロファイル)だけを見るとノートルダム大の方が少し上回っているように思えますが、最大の注目点は今季2戦目で両校は直接対決しており、この時はマイアミ大が勝っている点です。
選考委員会の選考基準の中にも「直接対決(Head-to-Head)の結果」が明確に記されています。もし比べる2つのチームが拮抗している場合で直接対決があったとしたら当然その結果は考慮されるべきです。
ただ第10週目にマイアミ大が2敗目を喫してランクを下げて以来、ノートルダム大は直接対決で負けているにも関わらずランキングでマイアミ大をずっと上回ってきました。当然直接対決に重きを置くのであれば、マイアミ大はノートルダム大よりも下回ることはないはずなのですが、そうはならなかったのは直接対決よりもストレングス・オブ・スケジュール(SOS)とか、アイテスト(Eye Test、主観的な印象)がより重要視されていると考えら得るからです。
しかし、先週末はノートルダム大もマイアミ大も試合が無かったため、両チームの評価に変化が起きることはあり得ないはずなのですが、ブリガムヤング大が負けて選考委員会が彼らのランキングを下げたことでノートルダム大とマイアミ大が順位的に隣り合わせになり、ここにきて直接対決の結果に注目が集まったというわけです。
結果的にマイアミ大がノートルダム大を追い抜いて10位に滑り込んだわけですが、やはり最後の最後で順位が入れ替わったのは不自然とも言えます。これには何かの「圧力」がかかったのではないか、という疑念すら浮かび上がっています。
もしマイアミ大がプレーオフに進出していなかったら、ACC所属チームは1つもプレーオフに進出することができませんでした。それを嫌った「大人たち」によって土壇場でマイアミ大がノートルダム大を追い越して行った、というのが囁かれているコンスピラシーセオリーです。
そして当然納得できないのはノートルダム大です。彼らは確かに開幕2連敗でシーズンをスタートさせました。そのうちの一つがマイアミ大であり、あともう一つは現在7位のテキサスA&M大。しかし彼らはその後は破竹の10連勝でシーズンを終えています。ただ、第5回目のCFPランキングでは9位だったのにも関わらずアラバマ大に抜かれて10位に落とされてしまいましたが、その際にはマーカス・フリーマン(Marcus Freeman)監督は公然とこのことに関して不満をぶちまけていました。
また優勝決定戦が行われる第15週目にノートルダム大が不可解にランクを10位に落とされたのは、なんとしてもACC所属チームを参加させたいと画策していた「大人たち」が、選考の過程でマイアミ大とノートルダム大のどちらかを選ばなければならないというシナリオを生み出すために行われた陰謀だ、という声さえ聞かれます。
つまりACC出身チーム(マイアミ大)をプレーオフに参加させるためにノートルダム大は選考から落とされたと考えられており、ノートルダム大はこれに対してめちゃくちゃ怒っているわけです。
その抗議の意味を込めてノートルダム大はポストシーズンのボウルゲーム(ポップターツボウルに招待される予定だった)への不参加を表明。このことでボウルゲーム並びにCFPの放送権をほぼ牛耳っているESPNは5000万ドルもの損失を被るとも言われています。ESPN並びにその親会社であるディズニーがカレッジフットボールというスポーツをビジネスとして食い物にしていることが指摘されている中、ノートルダム大は自分たちに泥を塗られた仕返しに「裏ボス」であるESPN/ディズニーの顔に泥を塗った形になったのです。
またノートルダム大の体育局長(AD)であるピート・べヴァクア(Pete Bevacqua)氏は、ACCの策略によってノートルダム大がCFPに参加できなくなったと公言。独立校でありながらACCとは毎年スケジュールを組む関係性にありましたが、その関係性に回復できないほどのダメージが与えられたとし、ACCとの蜜月関係を終わらせることも匂わせています。
この一連のノートルダム大のリアクションには「大人気ない」という批判の声が多く上がっていますが、一方でそのように感じる彼らの気持ちも分からなくもないというのが実際のところ。究極「直接対決の結果」が順位の選考に影響するのであれば、マイアミ大は最初からノートルダム大よりもランクで下回るべきでは無かった、と考えるのも自然なことです。
ただこのことでノートルダム大が独立校でいることの意義が再び疑問視される要因になったことだけではなく、ノンカンファレンス戦で強豪校と戦うことのリスク、そしてそもそもカンファレンス優勝決定戦の必要有無まで議論されるキッカケとなったのでした。
組み合わせ
上記のシーディングによって決まった組み合わせがこちら。上記の通り第1シードから第4シードは準々決勝からの登場。ファーストラウンドはキャンパス開催となりますが、第5シードから第8シードチームが試合をキャンパスで開催できる権利を与えられます。負ければそれまでというトーナメントにおいて、試合をホームで開催できる意味は大きいです。
ファーストラウンド
#12 ジェームスマディソン大 @ #5 オレゴン大
(🇺🇸12月20日7:30PM ET | 🇯🇵12月21日9:30AM)
#11 トゥレーン大 @ #6 ミシシッピ大
(🇺🇸12月20日3:30PM ET | 🇯🇵12月21日5:30AM)
#10 マイアミ大 @ #7 テキサスA&M大
(🇺🇸12月20日12:00PM ET | 🇯🇵12月21日2:00AM)
#9 アラバマ大 @ #8 オクラホマ大
(🇺🇸12月19日8:00PM ET | 🇯🇵12月20日10:00AM)
準々決勝戦
ローズボウル:#9 アラバマ大/#8 オクラホマ大 🆚 #1 インディアナ大
(🇺🇸1月1日4:00PM ET | 🇯🇵1月2日6:00AM)
コットンボウル:#10 マイアミ大/#7 テキサスA&M大 🆚 #2 オハイオ州立大
(🇺🇸12月31日7:30PM ET | 🇯🇵1月1日9:30AM)
シュガーボウル:#11 トゥレーン大/#6 ミシシッピ大 🆚 #3 ジョージア大
(🇺🇸1月1日8:00PM ET | 🇯🇵1月2日10:00AM)
オレンジボウル:#12 ジェームスマディソン大/#5 オレゴン大 🆚 #4 テキサス工科大
(🇺🇸1月1日12:00PM ET | 🇯🇵1月2日2:00AM)
準決勝戦
フィエスタボウル:シュガーボウル勝者 🆚 コットンボウル勝者
(🇺🇸1月8日7:30PM ET | 🇯🇵1月9日9:30AM)
ピーチボウル:ローズボウル勝者 🆚 オレンジボウル勝者
(🇺🇸1月9日7:30PM ET | 🇯🇵1月10日9:30AM)
CFP全米王座決定戦
フィエスタボウル勝者 🆚 ピーチボウル勝者
(🇺🇸1月19日7:30PM ET | 🇯🇵1月20日9:30AM)

