2022年度シーズンが終わって3週間。カレッジフットボール界は早くも2023年度シーズンに向けて各チームが静かに始動。選手たちは厳しい冬のトレーニングに明け暮れています。
そんな中もっと早く投稿したかったのですが、記録も兼ねて昨年度の激闘のシーズンを振り返ってみたいと思います。
【目次】
-
- プレシーズン
- 前半戦
- 後半戦
- ポストシーズン
- 感想
プレシーズン
新ルール
NCAA(全米大学体育協会)がルールを改正するのは毎年のことですが、2022年度シーズン開始前にもそれに漏れずいくつかのルール改正が行われました。
- 相手選手の頭部に対するターゲッティングの反則において、その試合の後半かオーバータイムにこの反則が取られるとその選手は次の試合の前半に出場することができませんでした。しかし2022年度シーズンから試合後にNCAAに上訴してこの反則を最高するよう懇願することができるようになった。
- いわゆる「怪我したふり」をしてインジャリータイムアウトを獲得した場合、試合後にこれをNCAAに上訴しこの怪我が「フェイク」だったかどうかを見極めることができるようになった。
- 腰から下へのブロッキングができるのはタックルボックス内にいるラインマンかブロック要員のRBのみとなった。
- フェアキャッチをコールしたリターナーにコンタクトしてしまった際の反則が15ヤードから10ヤードの罰退になった。
- ディフェンシブホールディングがオートマティックファーストダウンになった(10ヤード罰退)。
- ボールキャリアがスライドしようとして相手ディフェンスを騙し打ちにしてそのまま走り続けることを禁止するため、スライドしたモーションを起こした地点でダウンの判定となった(ケニー・ピケットのプレーが影響)
サンベルトカンファレンスの拡張
カンファレンスUSAに所属していたマーシャル大、オールドドミニオン大、サザンミシシッピ大が2022年度シーズンからサンベルトカンファレンスに鞍替えすることに。
さらに2021年までFBS(フットボールボウルサブディビジョン)の下部ディビジョンであるFCS(フットボールチャンピオンシップサブディビジョン)に所属していたジェームスマディソン大もサンベルトカンファレンスに参戦することが決定。ただしジェームスマディソン大は2022年度シーズンは仮所属ということでどんな成績にかかわらずカンファレンス優勝決定戦に進出しないという決まりがありました。
地区制度を廃止したカンファレンスが登場
これまではカンファレンスに所属するチームを12チーム以上にすることで地区制度を導入しレギュラーシーズンの最後にカンファレンス優勝決定戦を行うことが通常となっていたものの、この年からPac-12カンファレンス、アメリカンアスレティックカンファレンス、カンファレンスUSAが地区制度を廃止。レギュラーシーズン終了時にトップ2チームが優勝決定戦に進むというシステムを新設。将来的にはこれに追随するカンファレンスが増えると予想されます。
スカラシップを一度にオファーできる数の制限が撤廃に
これまで新入生クラスに与えることができるスカラシップ(スポーツ奨学金)の数(人数)は25人という上限が設けられていました。しかし2022年度シーズンからこの制限が廃止に。チーム全体のスカラシップの数が85人を超えなければ、新入生に与えられるスカラシップの数は無制限になりました。
たとえばスカラシップを貰っていた4年生が卒業したり、下級生で早期NFLドラフト入りした選手が出てくると新入生を迎える際に25人以上のスカラシップの枠が空くことがこれまでは頻繁にありました。そういった際はスカラシップを貰っていないウォークオン選手に新たにスカラシップを授与するなどして数の調整をしていました。
しかし2022年度からは新入生を迎える際に25人分以上のスカラシップが残っている場合、それを全て新入生に授与することができるようになったわけです。これは5つ星リクルートを今までよりも多く獲得できるようになる一部の大学にのみ有利という声もありますが、中堅大学でもより5つ星は無理でもそれに準ずる有能な選手を獲得できる可能性が増えたとも言われています。
FCSチームとの試合での勝利の意味
FBSのチームは時としてFCSチームとの交流戦を組むことがありますが、この二つのサブディビジョンチームの力の差は顕著であり、FBSチームがFCSチームに勝利する価値に疑問を投げかける声も少なくありませんでした。
ゆえにあまりにも弱いFCSチームとの対戦で得た1勝がボウルゲーム出場の最低条件である6勝の中に含まれるべきかという論議が上がっていたのですが、2022年度から以下の条件を満たすFCSチームと対戦して勝利した場合はその1勝がボウルゲーム出場の条件である6勝のうちの1つに数えられるとしました。
- FCSチームがマックスで与えることができるスカラシップの数63人のうち、実際にスカラシップを授与した人数がこの63人の80%を満たしていた場合
つまり対戦するFCSチームが51人以上のスカラシップ選手を抱えていれば、それはそれなりの力を持っているチームと判断されて、このチームに対する勝利の価値がある程度認められるということになったわけです。
これはFCSと対戦カードを組む際、あまりにも戦力が満たされていないチームと対戦することを避けるFBSが出てきて、やっても意味がない試合や出来レースすぎる試合の開催を防ぐというNCAAの目論見でもあります。
トランスファールールの改正
現役選手が転校つまりトランスファーする場合にはその旨をトランスファーポータルに登録することで意思表示することができます。ポータル入りすることで他大学のコーチが選手にコンタクトを取ることが許され、需要があれば選手たちは新天地に移っていくわけですが、近年このポータルを利用してチームを鞍替えする選手の数は増えるばかりです。
そんな中、NCAAは選手がポータル入りできる期間を限定するルールを定めました。これまではいつでも登録することができたのですが、今回の改正で登録できる期間が2つに限定されました。
- CFPに出場するチームが出揃ってから45日間
- 5月1日から5月15日まで
2022年度にトランスファーポータルに登録した選手は実に2000人にものぼると言われています。こうなるとチームのロースター構成において転校生を当てにするチームも増えていくわけですが、そのことがドミノ式にこれから入ってくる新入生にも影響してきます。例えば鳴物入りで入部してくるルーキーQBが1年生時から先発出場できると思っていたのに、後で他の大学のベテランQBが転校してくることがわかり、1年生の目論見が台無しになってしまうとか。
ポータル入りできる時期を決めてしまうことでリクルートするコーチにしてもこれから入ってくる新入生にしてもある程度のロースターの様子を前もって把握することができるというのが利点のようです。
また、自分をリクルートしてくれたコーチや監督の下でプレーしたいということで入部を決めたにも関わらず、その監督・コーチがチームを出ていってしまった場合にその選手が転校したいのであれば上に挙げた2つの期間以外でも転校することできることになりました。
これは監督らが鞍替えする頻度が増えていくという現代の流れに合わせるためで、選手たちにアンフェアな状況を強いることのないように定められた新ルールです。
USCとUCLAのBig Ten入り(2024年)
プレシーズンに最も世間を驚かせたのは、Pac-12カンファレンスの老舗でもあるサザンカリフォルニア大(USC)とそのライバルでもあるUCLAがBig Tenカンファレンスに移籍するというビッグニュースでした。
パシフィックコーストカンファレンス時代からこのリーグに所属してきた2チームが鞍替えをするというのは寝耳に水でまさか・・・と思いましたが、あれよあれよという間にこれが現実のこととなり、Big Tenカンファレンスにとっては強力な加入、そしてPac-12カンファレンスとしては死活問題とも言える大損失となりそうです。
加入時期は2024年から。彼らがPac-12カンファレンス所属チームとして戦うのは2022年と2023年の2シーズンのみとなったのでした。
主な新監督人事
2022年度から新たにチームを率いることになった主な監督たち。
- サザンカリフォルニア大:リンカーン・ライリー(Lincoln Riley、前オクラホマ大HC)
- オクラホマ大:ブレント・ヴェナブルズ(Brent Venables、前クレムソン大DC)
- ルイジアナ州立大:ブライアン・ケリー(Brian Kelly、前ノートルダム大HC)
- ノートルダム大:マーカス・フリーマン(Marcus Freeman、前ノートルダム大DC)
- マイアミ大:マリオ・クリストバル(Mario Christobal、前オレゴン大)
- オレゴン大:ダン・レニング(Dan Lenning、前ジョージア大DC)
- テキサスクリスチャン大:ソニー・ダイクス(Sonny Dykes、前SMU HC)
- デューク大:マイク・エルコ(Mike Elko、前テキサスA&M大DC)
- バージニア大:トニー・エリオット(Tony Elliott、前クレムソン大OC)
- コネチカット大:ジム・モーラ(Jim Mora、元UCLA HC)
- ワシントン大:ケイレン・デボアー(Kalen DeBoer、前フレズノ州立大OC)
- フロリダ大:ビリー・ネイピアー(Billy Napier、前ルイジアナ大HC)
プレシーズンランキング
-
- アラバマ大
- オハイオ州立大
- ジョージア大
- クレムソン大
- ノートルダム大
- テキサスA&M大
- ユタ大
- ミシガン大
- オクラホマ大
- ベイラー大
- オレゴン大
- オクラホマ州立大
- ノースカロライナ州立大
- サザンカリフォルニア大
- ミシガン州立大
- マイアミ大
- ピッツバーグ大
- ウィスコンシン大
- アーカンソー大
- ケンタッキー大
- ミシシッピ大
- ウェイクフォレスト大
- シンシナティ大
- ヒューストン大
- ブリガムヤング大
目次