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2021年度NFLドラフトの見どころ

2021年度NFLドラフトの見どころ

いよいよ2021年のNFLドラフトまであと僅かとなりました。今サイトはカレッジフットボールを主に取り上げるサイトですが、やはりカレッジで成功した選手たちがどのプロチームに旅立っていくのか、そしてどれだけプロでやれるのか、というのは非常に興味をそそります。そこでここでは今年のドラフトをカレッジフットボールファンとしてどう楽しむかを書いてみたいと思います。

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ベースボール・マガジン社 (編集)

新型コロナパンデミックの影響

今年のNFLドラフトは昨年のフルバーチャル方式ではなく、条件付きとはいえ会場(オハイオ州クリーブランド市)でセットを設けて行われることになります。そういう意味ではパンデミックで通常のドラフトを開催することができなかった昨年と比べればかなり状況は上向きなのだと思わせてくれます。

しかし実際のドラフトのプロセスを見るとコロナ禍の影響をもろに受けたものになっていました。

まず外の人間とのコンタクトを極力抑えるためにスカウト陣が大学キャンパスに足を運ぶことができず、選手の目利きはフィルムのみとなってしまったこと。当然現場の働きが一番ですから、試合のフィルムを見てある程度の選手のポテンシャルは把握できますが、一方で実際に目で見てわかることもあるわけで、それができなかったことはスカウト陣を悩ませたようです。

またそのコロナ禍のために数々の逸材がシーズン参戦を回避する「オプトアウト」を選択したこともそれらの選手の真の力を見定める障壁となりました。今回で言えばオレゴン大のOLペネイ・セウェル(Penei Sewell)、ルイジアナ州立大のWRジャマー・チェイス(Ja’Marr Chase)、ペンシルバニア州立大のLBマイカ・パーソンズ(Micah Parsons)などがオプトアウトしましたが、たとえ彼らが2019年までに素晴らしい数字を残したとはいえ、2020年度の実戦経験が無かったことは素材の選定の上で多かれ少なかれ影響を与えたことでしょう。

さらに今年はドラフト候補生の見本市でもある「スカウティングコンバイン」が不開催に。ご存知かと思いますが、スカウティングコンバインはドラフト候補生の中でもよりすぐりの選手たちだけが招待される一大イベントであり、ここでメディカルチェック、基礎運動能力テスト、ポジション別ドリル、面接などが一挙に行われる大事な催しです。

しかしこれが開催されなかったことで各大学で行われる「プロデー(Pro Day)」がその役割を担いましたが、全国各地で行われたためそこに送り出すスカウトやらコーチらを各チームが揃えなければならなくなり、それは大変な負担になりました。ただ、コンバインと違い各選手らはホームとも言える母校でテストを受けたため移動や宿泊などの負担が軽減され、また知り尽くした自身の施設でのテストだったため、よりリラックスしてプロデーに臨めたという思わぬ利はあったようです。

これらのように今年のドラフト候補生たちの査定は通常よりもサンプルが少なめとなってしまい、スカウトやコーチ、GMらにとっては難しいものになったのでした。


参加する者、しない者

先程も紹介したとおり今年は限定的にバーチャルと対面方式のハイブリッドでドラフトが行われます。通常ならば会場には多くのファンが詰めかけ、また各チームの首脳陣がいわゆる「ワールーム(War Room)」に陣取ってドラフトの行方を見極めて指名選手を決定したり、そして指名された選手が舞台に登場して華やかにプロ入りを決めるものです。

今年は昨年と違いオールバーチャルではなく実際にクリーブランド市の会場に選手が招待されたり、ファンも限られた人数だけとはいえ会場入りすることができるようですが、一方で未だコロナウイルスの感染者数が1日あたり3万人以上を記録している米国において、人が集まる場所に赴くことが必ずしも良策ではないと感じている人もいます。

NFLドラフトに参加できるのは一生で一度きりですから、その晴れの舞台を生で味わうことは大きな意味を持っていると考える候補たちも居ます。一方でドラフトは一つの通過点でありそれ自体は大きな意味を持たないという選手がいるのも事実。特に現在のパンデミック下であえて危険を冒してクリーブランドまでいく必要もないと考えている選手もいます。

以下に紹介する選手は、ドラフトで第1巡目で指名されると言われていながら今回のドラフト会場に足を運ばないと明言している主な人物です。

トレヴァー・ローレンス(クレムソン大QB)
ジャスティン・フィールズ(オハイオ州立大QB)
ペネイ・セウェル(オレゴン大OL)
トラヴィス・エティエン(クレムソン大RB)
ナジー・ハリス(アラバマ大RB)
ジェイシー・ホーン(サウスカロライナ大CB)
クリスチャン・ダリソー(バージニア工科大OL)
クウィティ・ペイ(ミシガン大DL)

また以下の選手たちはNFLからの招待を受け正式に参加の意向を伝えたトップ候補たちです。

ザック・ウィルソン(ブリガムヤング大QB)
マック・ジョーンズ(アラバマ大QB)
トレイ・ランス(ノースダコタ州立大QB)
ジャマー・チェイス(ルイジアナ州立大WR)
ジェイレン・ワドル(アラバマ大WR)
デヴォンテ・スミス(アラバマ大WR)
カイル・ピッツ(フロリダ大TE)
ラショーン・スレイター(ノースウエスタン大OL)
クリスチャン・バーモア(アラバマ大DL)
グレゴリー・ラッソー(マイアミ大DL)
マイカ・パーソンズ(ペンステートDL)
パトリック・サーテイン・II(アラバマ大CB)

 

*ケイレブ・ファーレイ(バージニア工科大CB)は参加予定でしたが直前で新型コロナに感染してしまい不参加に。

総合ドライチ選手輩出は監督の誇り?

ドラフト総合順位1位(ドライチ)の選手が必ずしもその年のベストプレーヤーということにはなりません。それはドライチを引き抜く権利を持っているチームのニーズに左右されるからです。とはいえやはり一番最初に選ばれるというのは栄誉なことですし、今後一生歴史にその名が刻まれることを考えればそれが誰であろうと注目されるのは当然のこと。

参考記事歴代ドラフト総合1位リスト (1990年-)

そしてもっといえばそんなドライチ選手を世に送り出すことのできるカレッジチームの監督にとってもそれは大いに胸を張れる勲章なのではないでしょうか。

現在FBS(フットボールボウルサブディビジョン)に所属する現役監督でこれまで総合ドライチ選手を輩出したコーチは全部で6人います。

監督ドライチ選手
エド・オルジェロン
(現ルイジアナ州立大)
ジョー・バロウ
(ルイジアナ州立大)
2020
リンカーン・ライリー
(現オクラホマ大)
カイラー・マレー
(オクラホマ大)
2019
ベーカー・メイフィールド
(オクラホマ大)
2018
ソニー・ダイクス
(現SMU)
ジャレッド・ゴフ
(カリフォルニア大)
2016
ジンボ・フィッシャー
(現テキサスA&M大)
ジェーミス・ウィンストン
(フロリダ州立大)
2015
デヴィッド・ショウ
(現スタンフォード大)
アンドリュー・ラック
(スタンフォード大)
2012
デヴィッド・カットクリフ
(現デューク大)
イーライ・マニング
(ミシシッピ大)
2004

*2021年4月現在

気付かされるのは皆QBであるということです。イーライ・マニングはとうとう2シーズン前に引退しましたが、16年間も現役でプレー出来たのはひとえにQBというポジションのお陰なのでしょう。

そしてこのリストに新たに名前を刻む監督が今年は誰になるかが気になるところですが、今のところその可能性があるのがQBトレヴァー・ローレンスを指導したクレムソン大ダボ・スウィニー(Dabo Swinney)監督。そしてお気づきだと思いますが、このローレンスのポジションもやはりQB。総合ドライチ選手を指名するチームがどの選手をドラフトするかはそのチームの台所事情に左右されますが、チーム再建においてQBというポジションが重要な側面を担っていることを示しているいい例だと思います。

ちなみに上に紹介した名前を見て気づかれた方もいるかもしれませんが、現役最強コーチと謳われるアラバマ大ニック・セイバン(Nick Saban)監督の名前がありませんよね。彼はこれまで7度のナショナルタイトル獲得に成功していますが、いまだにドライチ選手をプロの世界へ送り出していないわけです。

セイバン監督の息のかかった選手で最もそれに近づいたのは2012年のRBトレント・リチャードソン(Trent Richardson)の総合3位でした。しかもそのリチャードソンは今では「ドラフトバスト(後述)」として知られるようになってしまい、セイバン監督にとっては決して胸を晴れるようなことではありません(もっとも本人はそんなことは気にも留めないのでしょうが)。

ただ、セイバン監督がアラバマ大に就任した2007年以来、彼は実に33人もの愛弟子たちを第1巡目選手としてプロに送り出しています。昨年は合計4人でしたが、今年は果たして何人の選手が初日に名前を呼ばれるでしょうか?

ストーリーライン

2020年度のカレッジフットボールシーズンが終わって約4ヶ月。通常シーズンが終わるとドラフトのためのオールスターゲームが数試合開催予定されますが、今年はコロナ禍の影響で老舗の「シニアボウル」しか行われませんでした。そして前述の通りコンバインは中止。その代わりに各地の大学キャンパスでプロデーが継続的に行われてきました。

そのようにして選手たちはやれることをこなしてこのドラフトという大舞台に備えてきたわけですが、そこに至るまでに起こった出来事をかいつまんで紹介したいと思います。

誰が総合ドライチに?

今年の総合ドラフト1位指名権を保持しているのは昨年1勝15敗と撃沈したジャクソンビルジャガーズ。ジャガーズはこれまでフランチャイズQBと言える選手が1990年代のマーク・ブルネル(元ワシントン大)氏まで遡らないと見つからないという状況。2017年度にはAFCチャンピオンシップにまで進みましたが、これはディフェンス陣の力があったこそという側面があり、特にオフェンスイケイケな風潮に乗るためには絶対的なQBの存在が必須となったわけです。

そうなれば今ドラフトで「世紀の大器」とも言われるクレムソン大のトレヴァー・ローレンスを選択することはほぼ既定路線であることはドライチ指名権を獲得した昨シーズン終盤の時点で明らかでした。ジャガーズは今季からカレッジフットボール界で3度のナショナルタイトルを獲得したアーバン・マイヤー(Urban Meyer)監督が指揮を執る事になります。プロ初参戦のマイヤー監督がローレンスを中心にどのようなチームを組織していくのか気になるところです。

ジェッツがダーノルドをトレード

昨年開幕から全敗街道まっしぐらだったニューヨークジェッツはその屈辱的な戦績を背負いながらシーズンを送るも、中盤から後半にかけての焦点はこのまま負け続けて2021年ドラフトで総合ドライチ指名権を確保することでした。

が、0勝13敗で迎えた12月20日の対ロサンゼルスラムズ戦で何を思ったのか(笑)この試合に勝利。そして翌週のクリーブランドブラウンズとの試合にも勝って2勝目を飾り見事(?)総合ドライチ指名権をジャガーズに譲ったのでした。

そうして彼らには総合2番目の指名権が与えられたわけですが、4月5日に彼らは2018年のドラフトで総合3番目に指名した先発QBサム・ダーノルド(Sam Darnold、元サザンカリフォルニア大)をカロライナパンサーズにトレード。これで完全に彼らのドラフトでの1巡目のターゲットがQBとなったわけです。

そして彼らが選択するであろうQB候補として上げられているのがブリガムヤング大ザック・ウィルソン。多くのアナリストたちがウィルソンをカンザスシティチーフスのパトリック・マホームズ(Patrick Mahomes、元テキサス工科大)と同系列のQBと評価しており、ジェッツはウィルソンに将来を賭ける準備ができているようです。

49ersがトレードを経て総合3番目の指名権を確保

今ドラフトで第1巡目12番目の指名権を持っていたサンフランシスコ49ers。彼らは3月26日に電光石火のトレードをやってのけます。

彼らはこの1巡目の指名権に加え2022年の第3巡目の指名権、そして2022年と2023年の第1巡目の指名権をマイアミドルフィンズに提供する代わりに彼らの持っていた今年の第1巡目総合3番目の指名権を確保するトレードを敢行したのです。

これはタイミング的に見て彼らがアラバマ大のQBマック・ジョーンズ(Mac Jones)を指名するためのトレードであったと考えられます。というのもこの前日にジョーンズはアラバマ大でプロデーを行っており、その現場には49ersの監督であるカイル・シャナハン(Kyle Shanahan)監督も視察に訪れていました。プロデーでのジョーンズを見定めてこの大トレードを行ったと考えるのが妥当です。

49ersには現在ジミー・ガロポロ(Jimmy Garoppolo、元イースタンイリノイ大)が先発QBとして在籍していますが、このトレードを見れば49ersは近い将来ジョーンズをフランチャイズQBに育て上げたいと考えていることは明らかですし、彼らはそれを可能にできるポテンシャルをジョーンズに見たという風にできると思います。

ジョーンズは3つ星リクルートとして昨年度まで先発QBを任されなかった選手。その彼が総合3番目でプロ入りするかもしれないというのはある意味すごい話だと思います。

総合1番目から3番目までがすべてQB?

ここまでご紹介したように今ドラフトの総合1番目から3番目までQBが選択されることになるのが濃厚です。

これまでのNFLドラフトでそんなことが起きたことがあるのか?調べてみたら最後にこの状況が起きたのが1999年ドラフト。第1番目がティム・カウチ(Tim Couch、ケンタッキー大→クリーブランドブランズ)氏、第2番目がドノヴァン・マクナブ(Donovan McNabb、シラキュース大→フィラデルフィアイーグルス)氏、そして第3番目がアキリー・スミス(Akili Smith、オレゴン大→シンシナティベンガルズ)氏でした。

そしてこの3人のうちカウチ氏とスミス氏は残念ながら期待に応えられなかった「バスト」として知られるようになってしまいました。今年の3QBの行方はいかに・・・。

どうする、ファルコンズ?

今年総合第4番目の指名権を持っているのがアトランタファルコンズです。彼らが誰を選択するかにも注目が集まっています。先発QBマット・ライアン(Matt Ryan、元ボストンカレッジ)の処遇についてです。

2008年のドラフトで総合3番目にファルコンズ入りしたライアンは今年で35歳。2016年度シーズンにスーパーボウルに出場し優勝目前にして世紀の大逆転をニューイングランドペイトリオッツに許しましたが、それ以来徐々に戦績は下降。昨年度は4勝12敗と撃沈してしまいました。

もしファルコンズがライアンを中心に今一度復活劇を期待するのであれば、彼のサポート役として絶大な戦力となると言われるフロリダ大のTEカイル・ピッツ(Kyle Pitts)を指名することが予想されますが、もしライアンの後継者を欲するのであれば例えばオハイオ州立大のジャスティン・フィールズ(Justin Fields)やノースダコタ州立大トレイ・ランス(Trey Lance)を指名することもあるかもしれません。

今年の指名いかんでは13年に及ぶライアン体制に変化が訪れる・・・かも。

デショーン・ワトソン

ヒューストンテキサンズは2年前に2020年と2021年の第1巡目指名権、2021年の第2巡目指名権などをマイアミドルフィンズに譲渡する代わりにOLラレミー・タンシル(Laremy Tunsil、元ミシシッピ大)やWRケニー・スティルス(Kenny Stills、元オクラホマ大)などを受け取るトレードを行いました。

この事によりテキサンズは今年のドラフトで第3巡目まで指名権が巡ってこないという自体に陥ってしまいました。その前の年のWRデアンドレ・ホプキンス(DeAndre Hopkins、現アリゾナカーディナルス、元クレムソン大)をめぐるトレード共に当時の監督兼GMだったビル・オブライエン(Bill O’Brien、現アラバマ大オフェンシブコーディネーター)の汚点とも言えるかもしれません。

それはさておき、今回第1巡目、2巡目の指名権を持たないテキサンズですが、彼らを騒がせているのは言わずとしれたQBデショーン・ワトソン(Deshaun Watson、元クレムソン大)のスキャンダルです。

もうご存知かとは思いますが、ワトソンはかねてから自分をトレードに出すよう要求していましたがその折り合いがつかないままだった先月、彼が利用してきた複数のマッサージセラピストがワトソンに性的行為を強要されたと訴えられたのです。このままだとワトソンが来るシーズンにテキサンズどころかどのチームでもプレーすることなど無理なのではないかと思わせるぐらいの騒動に発展しています。

となればテキサンズのQB事情は怪しくなってきます。現在ワトソン以外にロースター入りしているのは11年のベテラン戦士、タイロッド・テイラー(Tyrod Taylor、元バージニア工科大)とプロ歴3年のライアン・フィンリー(Ryan Finley、元ノースカロライナ州立大)の2名。ワトソンが出場できないとなると先発の座をこの二人のうちの一人にするのか、もしくはFAで別の選手を獲得するのか・・・。

もしかしたら今ドラフトでQBを指名するということもあるかもしれませんが、テキサンズはお伝えしたとおり第3巡目まで指名権が回ってこないため、評価の高いQB候補がテキサンズの指名の番まで残っている可能性は少なそうです。

ワトソンの動向とともにテキサンズのドラフト指名がどうなるのかも大変気になるところです。

カレッジフットボールファンが見るドラフト

当サイトはカレッジフットボールファンサイトですので、NFLドラフトに関してはNFLファンの視点としてよりもカレッジフットボールファンとしての視点として情報をお伝えしているつもりです。筆者はNFLのディープな話をできるほど詳しい知識を持ち得ていませんので、そういった方にとっては非常に物足りない情報ばかりかもしれませんが・・・。

それはさておき、NFLドラフトをカレッジフットボールファンが捉えるとき、まずはカレッジ界で名を馳せた名選手たちがどのチームに選ばれるのか、そしてどこまでプロの世界でやれるのか、といった点が気になるところだと思います。

そしてもう一つは自分の贔屓のチームから何人の選手がドラフトされていったのか、というのも興味津々な点です。それはそのチームのファンの自己満足であるという側面は否定できませんが、一方でその数が多ければ多いほどそのチームは翌シーズンにて戦力ダウンは間逃れないという見方もできるはずです。

もっともドラフトで何人の選手が選ばれていったかを知らなくても、シーズン終了時にどれだけの選手が卒業ないし早期ドラフト入り宣言をしてチームを去っていくかは既に分かっていますから、ドラフト前からどれだけ戦力が落ちるかはある程度把握できます。しかしそれでもやはりドラフトで同じチームから二桁数の選手が一度にプロへ流出したとしたら、ファンへのインパクトは超弩級です。

例えば2017年のドラフトではミシガン大が11人もの選手をプロ入りで失いました。そしてそれが直接の原因かどうかはわかりませんが、2018年度のミシガン大は調子を大きく落として8勝5敗と残念なシーズンを送る羽目になってしまいました。

また昨年(2020年)のドラフトでは2019年度の全米覇者であるルイジアナ州立大から最多タイとなる14人がドラフトされていきました。しかしその一方で多くの戦力が抜けてしまった彼らは昨年5勝5敗と撃沈。戦力の乏しさは明らかでした。

一方で2018年ドラフトで12人をプロ入りで失ったアラバマ大は選手の補填に成功して昨年CFPナショナルチャンピオンシップゲームに進出。クレムソン大に惜しくも二連覇を阻まれましたが、4年連続でタイトルゲームに駒を進めることが出来たのはニック・セイバン監督以下コーチ陣のリクルート力と指導力が実を結んだ証拠ともいえます。

またオハイオ州立大は昨年のドラフトでルイジアナ州立大に次ぐ10人の選手をプロへ送り出しましたが、彼らは見事に昨年度タイトルゲームに出場。惜しくもアラバマ大に敗れましたが、ごっそり抜けた主戦力の穴を見事に次世代の選手たちが埋めたのです。

強いチームは選手が抜けても次世代の選手たちがしっかりと育っているもの。それをドラフトの結果で確認できるというわけです。

参考記事2020年NFLドラフト終わって・・・
参考記事2019年NFLドラフト終わって・・・
参考記事2018年NFLドラフト終わって・・・

今年で言えば昨年の全米覇者であるアラバマ大は今ドラフトに多くの人材を送り込もうとしています。モックドラフトなどを見てみると各ポジションの上位には必ずと行っていいほど同校出身選手の名を見つけることが出来ます。

その最たる人物がQBマック・ジョーンズしかり、WRデヴォンテ・スミスしかり、RBナジー・ハリスしかりなのですが、それ以外にも多数のアラバマ出身選手がドラフトのトップ50候補に名を連ねています。果たしてドラフト終了後に何人のアラバマ大出身選手がプロ入りのチケットを手にしているか・・・。一つの大学チームに未来のNFL選手が多数いることがそのチームの強さの測りとなるのであれば、2019年度のルイジアナ州立大が史上最強と謳われたものですが昨年度のアラバマ大もまたそれに肉薄するほどの人材をNFLに送り込むことになる・・・かもしれません。

ちなみにですが過去にさかのぼった時、将来的にNFLでプレーすることになる選手を最大数擁していたチームはおそらく2001年のマイアミ大です。この年のマイアミ大にはなんと17人もの未来の第1巡選手(2002年ドラフト:5人、2003年ドラフト4人、2004年ドラフト6人、2005年ドラフト:2人)が所属していたのです。

2019年度のルイジアナ州立大が2001年度のマイアミ大と比較できるようになるまではあと数年かかりますが、たとえ彼らがマイアミ大の数字に追いつけなかったとしても、彼らが2019年度に成したことを考えれば後世に2019年度のルイジアナ州立大が過去最強のチームの1つと数えられてもおかしくはありません。

過大評価/過小評価される選手たち

ドラフトの過程でさもNFLでの未来のスターを保証されるような取り上げられ方をされる選手はたくさんいますが、その過程で過大評価され実際にプロの世界で活躍できず期待を裏切る選手、いわゆる「ドラフトバスト(Draft Bust)」はどんなドラフトでも存在します。これまでも散々持ち上げられながら結果を出せなかった選手はたくさんおり、貧乏くじを引かされたチームも数多存在します。

当然ドラフト前から誰がプロで失敗するかなどわかるはずもありません。カレッジで成功したとしてもプロでは個人のレベルが桁外れですから、大学での活躍がそのままプロで再現できる保証もないのです。ですからプロチームはスカウティングに膨大な時間を割き、なるべくはずれくじに当たらないように心がけるわけです。

参考記事NFLで期待を大きく裏切った「ドラフトバスト」たち①
参考記事NFLで期待を大きく裏切った「ドラフトバスト」たち②
参考記事NFLで期待を大きく裏切った「ドラフトバスト」たち③

その一方で評価されなかったにも関わらず、プロの世界で開花し思わぬ活躍をするような「お買い得」な選手もいたりします。その数は多くはありませんが、例えば2000年ドラフトで第6巡目にニューイングランドペイトリオッツに指名されたトム・ブレディ(Tom Brady、ミシガン大出身)はそのいい例だと思います。

参考記事NFLで「お買い得」となったカレッジフットボーラーたち

過大評価された選手が落ちぶれていくのを見るのはカレッジ時代からその選手を見てきた者としては大変つらいことですが、無名選手がNFLで大成するのを見るのは非常に痛快です。4巡目から7巡目にドラフトされた選手が将来的に名を馳せるようなスター選手になるのか、大いに気になります。

出身大学・出身カンファレンス

どの大学がどれだけ多くの選手をプロに送り出したのかを見るのもまた一興です。先にも述べたように今年はアラバマ大から何人の選手が指名されるかに注目が集まりますが、前述のように多くの選手をプロに送り出すということはそれだけ戦力ダウンにつながることになります。来る時期シーズンに際してどれだけの人材を補填しなければならないかをこのドラフトの結果で知ることも出来るでしょう。

またドラフトされた選手の数は大学の威厳を示すにはもってこいの数字ですし、将来プロでプレーしたい高校生たちをリクルートする際、「うちの大学からはこんなに多くのプロ選手が生まれているんだよ。もしプロでやりたいならウチの大学に来るべきだよ」などという甘い言葉をかけることもできるわけです。

また出身大学別にドラフトされた選手の総数を見るのも面白いかもしれません。それが直接チームの強さを示すものではありませんが、カレッジフットボール界の勢力図を測る上では参考になるでしょう。 

最後に・・・

NFLドラフトは各チームが戦力を補強するために無くてはならないシステムです。その歴史は古く、かつてはオーナーだけが集まってあれこれ言いながら選手を指名していったわけですが、時を経て全米で生中継されるほどに商業化しました。派手になればなるほどそれを見る若い選手たちはそこを目指したくなるわけです。

参考記事NFLドラフトの歴史

ただ覚えておかなければならないのは、いくらドラフトでもてはやされたとしても上位巡でドラフトされた選手以外はプレシーズンキャンプまでにその多くがチームからリリースされてしまうという厳しい現実が待っていることです。ドラフトされたからと言って即プロ選手として大成できるわけではなく、それはまた新たな挑戦の始まりというわけです。

とはいえその舞台に立つことができる選手はカレッジフットボール界からほんの一握りの選手だけ。そういった意味では1順目だろうが7巡目だろうがプロチームから目をかけてもらった選手は大喜びしてもいいのかもしれません。

フットボーラーにとって最高の舞台であるNFL。その世界の登竜門とも言えるNFLドラフトにて新たなドラマが生まれるのか・・・。夢見る若きフットボーラーたちの命運をかけた日まであと少しです。

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