恩師へのトリビュート
先週ヴァンダービルト大と対戦したケンタッキー大は彼らのファーストドライブのファーストプレーで11人ではなく故意に10人の布陣で迎えました。通常OLは計5人で形成されますが、このプレーにはOLが4人とLGが一人足りない状況だったのです。
これは先週木曜日にガンの闘病の末に亡くなったOLコーチ、ジョン・シュラーマン(John Schlarman)氏へのトリビュートでした。
シュラーマン氏は2013年からケンタッキー大でOLコーチを務めてきた人物で現監督のマーク・ストゥープス(Mark Stoops)監督体制初期からのベテランコーチ。しかし胆管癌という稀ながんに侵され45歳という若さで他界されたのです。
在りし日のシュラーマン氏
皆に愛されたシュラーマン氏に敬意を表する意味を込めてLGなしでフォーメーションを組んだケンタッキー大はそのままディレイ・オブ・ゲーム(プレークロックがゼロになる前までにスナップしなかった場合の反則)の反則を取られました。
This is powerful. @UKFootball left the LG position open on the first play of the game to honor late OL coach John Schlarman who died on Thursday. Vanderbilt declined the penalty. pic.twitter.com/hRA5bYTPaJ
— SEC Network (@SECNetwork) November 14, 2020
このことを既に知っていたヴァンダービルト大はこの反則をパスしてケンタッキー大の5ヤード減退を見逃すという粋なはからい。
この反則のあと先発LGランドン・ヤング(Landon Young)が定位置に付きましたが、彼はいつもの67番のジャージではなく65番のジャージを身につけていました。これはかつてケンタッキー大でOLとしてプレーしたOBでもあるシュラーマン氏が現役時代に着けていた背番号。この日はシュラーマン氏と共に戦うという強い気持ちが現れたシーンでした。
シュラーマン氏が最後にチームとともにサイドラインに立ったのは先月10月17日のこと。この時はテネシー大と対戦しケンタッキー大が見事勝利したのですが、ストゥープス監督はこの勝利ボールをシュラーマン氏に捧げました。
We played for something bigger than ourselves 🙏#22OatsStrong #SchlarmanStrong 💙🏈 pic.twitter.com/xmTB6CMj5P
— Kentucky Football (@UKFootball) October 17, 2020
2018年にガンが発見されて以来テキサス州ヒューストン市で治療を受けながらコーチングを続けてきました。そんな中でも選手育成への情熱が冷めることはなく、OL選手だけでなく全ての選手から愛されたコーチとして立てなくなるまでチームと共にありました。
試合の方はケンタッキー大がリードするも後半ヴァンダービルト大が追い上げ3点差までに迫りますが、RBクリス・ロドリゲス(Chris Rodriguez Jr.)の149ヤードに2TDという活躍もありケンタッキー大が逃げ切って勝利しシュラーマン氏へ捧げたのでした。
チームメイトのために
またこの試合ではそのロドリゲスがいつもの24番ではなく22番のジャージを身に纏いました。
この22番のジャージはもともとLBクリス・オーツ(Chris Oats)が使用してきたものですが、このオーツは春に大怪我を負って10月にようやくリハビリ施設へ移されたばかりでした。そのオーツをおもんぱかってロドリゲスはこの日オーツの番号を背負ったのです。
先にも書いたようにこの日のロドリゲスはチームのオフェンスを引っ張る大活躍。この勝利もまたチームメイトであるオーツに捧げられた勝利となったのです。
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勝利ばかりが取りだたされる昨今、カレッジフットボールがそれだけではなく人と人とを繋ぐ、勝ち負け以上にパワフルな存在であることを改めて教えてくれた心温まるエピソードでした。