2016年度のカレッジフットボールのレギュラーシーズンもいよいよ大詰めを迎え、それぞれのチームが所属するカンファレンスタイトル獲得へ向けてしのぎを削っています。来週のレギュラーシーズン最終戦を控え、全米各地で数少ないチャンスをものにしようとするチームや生き残りをかけ必死なチーム、もしくは弱小チーム相手に難なく勝利を収めたチーム(=SEC)などそれぞれでした。クライマックスに向けたファイナルストレッチ、第12週目の様子を振り返ってみましょう。
ヒューストン大がルイビル大のドリームシーズンを阻止
ヒューストン大 36、ルイビル大 10
CFPランキングで5位につけていたルイビル大が上位4位に入りプレーオフ進出を決めるには上位4チームのうちのいずれかが転がり落ちてくる必要がありました。特に直接対決で敗れている同じACC所属のクレムソン大には是非とも残り2試合のうちいずれかのゲームで黒星を喫してもらいたかったのですが、それ以前になんとルイビル大自身がヒューストン大に負けてしまい、自らプレーオフ進出の夢をオジャンにしてしまったのでした。
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忘れてはならないオクラホマ大の実力
オクラホマ大 56、ウエストバージニア大 28
開幕3試合で2敗を喫し数字の上では失速したかに見えたオクラホマ大ですが、それ以後7連勝を飾りこのウエストバージニア大戦を迎えました。雪が降っては止むのを繰り返される中、全米9位までランクを上げてきたオクラホマ大は14位のウエストバージニア大を彼らのホームで粉砕。プレーオフ進出が可能なトップ4にはまだ遠いものの、Big 12カンファレンス内で最強チームは俺たちだ!とアピールするような強さを見せてくれました。オフェンスは頼れるリーダーのQBベイカー・メイフィールド(Baker Mayfield)に加え、2人の全米トップレベルのRB、サマージャ・ペリン(Samaje Perine)とジョー・ミクソン(Joe Mixon)というワンツーパンチを擁し、決して弱くないウエストバージニア大の守備陣を切り崩しました。ハーフタイムの時点で34対7とすると後半にも攻撃の手を緩めずにさらに22点を加えることになりました。
これでBig 12カンファレンスの優勝の行方はオクラホマ大と、テキサスクリスチャン大に勝ってカンファレンスレコード1敗を守るオクラホマ州立大とのライバリーゲームに委ねられることになりました。シナリオは単純。勝った方がカンファレンスを制することになります。現在11位のオクラホマ州立大がプレーオフを目指すにはBig 12王者になったとしてもちょっと手が届かない感じがしますが、オクラホマ大なら上位チームの動向次第では少なくともプレーオフ進出の議論の場に挙げられることになるでしょう。
ちなみにウエストバージニア大は試合には敗れましたがRBジャスティン・クロウフォード(Justin Crawford)が足だけで331ヤードもオクラホマ大ディフェンスから奪いました。後半は降雪の寒さもありホームスタジアムはガラガラになってしまいましたが、それでもチームのために走り続けたクロウフォードには脱帽です。
オハイオ州立大、ミシガン州立大相手に冷や汗をかく
オハイオ州立大 17、ミシガン州立大 16
先週上位2位から4位の3チームがまさかの敗戦を味わう中、それに便乗して2位に順位を上げてきたオハイオ州立大。すでに全米の目は彼らの最終戦であるミシガン大との一騎打ちに注目が集まっていましたが、オハイオ州立大はミシガン州立大のホームで危うくカウンターパンチを喰らわされるところでした。
今年全部で3勝しかしていなミシガン州立大でしたが、オハイオ州立大の足下をあと少しのところですくい損ねました。
オハイオ州立大QBのJ.T.バレット(J.T. Barrett)はいつもらしくなくプレーにキレがなく、パスでは22投中成功させたのはたったの10回。TDは1つ奪ったものの稼いだパスヤードはたったの86ヤード。ただそれを挽回するべく足で105ヤード稼ぎ、RBマイク・ウェバー(Mike Weber)の111ランヤードと合わせた地上戦でなんとかミシガン州立大を引き離してギリギリ勝利を得たのでした。
ミシガン州立大は第4QにRBのL.J.スコット(L.J. Scott)のTDランで17対16とし、エクストラポイントでFGを選ばず2ポイントコンバージョンという賭けに出ます。おそらくヘッドコーチのマーク・ダントニオ(Mark Dantonio)監督は同点のままオーバータイムに突入しても勝つ見込みが無いと思ったのでしょうが、この2ポイントコンバージョンは残念ながら不成功。もしこれが決まっていたらオハイオ州立大は高い確率で敗れていたでしょう。それぐらい彼らのオフェンスにはパンチ力が見られなかったのです。
全体的に見てオハイオ州立大はミシガン州立大を甘く見ていたと言われても仕方ありません。しかし、それでも勝ちを拾った事には意義があります。これで彼らはようやく永遠のライバルであり、プレーオフ進出に向けて大きく立ちはだかる全米3位のミシガン大との一戦に備えることが出来ます。最終戦でのライバリーゲームが全米2位と3位(11月20日現在)という最高のお膳立てとなったこのマッチアップ。今から楽しみで仕方ありません。
J.J.ワッツの弟、T.J.ワッツが魅せた!
ウィスコンシン大 49、パデュー大 20
Big Ten西地区レースはウィスコンシン大とネブラスカ大の一騎打ちとなっていますが、その結末は最終戦までもつれ込む激しいレースとなっています。どちらも負けられない中、ウィスコンシン大はパデュー大と対決。結果を言えば49対20となんの問題もなく勝ち星を拾いましたが、元ウィスコンシン大DLでヒューストンテキサンズのスターディフェンダー、J.J.ワット(J.J. Watt)の弟であるT.J.ワット(T.J. Watt)が兄貴ばりの派手なインターセプションを見せTDを奪いました。
この後もウィスコンシン大はパデュー大に負けるそぶりを全く見せずパデュー大を一蹴。5連勝目を飾りました。自力優勝の可能性を残すウィスコンシン大が西地区代表に選ばれる為には次のミネソタ大に勝ちさえすればよくなりました。
ネブラスカ大、メリーランド大に勝ち西地区レースで生き残る
ネブラスカ大 28、メリーランド大 7
先発QBトミー・アームストロング・Jr(Tommy Armstrong Jr.)を怪我で欠き、バックアップQBライカー・ファイフ(Ryker Fyfe)を起用せざるを得なかったネブラスカ大でしたが、ファイフが1TDを含む220ヤードのパスを決め無難にメリーランド大を倒し、Big Tenカンファレンス西地区優勝レースで生き残ることが出来ました。2012年にウォークオンとして入部してきたファイフは今年で4年生。最後の最後でホームスタジアムであるメモリアルスタジアムで先発出場すると言う機会を与えられ感無量だった事でしょう。彼にとってはこれが2度目の先発出場となりましたが、初出場となった昨年のパデュー大戦では5つのターンオーバーを犯し45対55で敗戦を味わうと言う苦い思い出となりました。しかし今回はシニアデーとなったこの日、多くの観衆の見守る中でチームの勝利に貢献。一生忘れられない経験となった事でしょう。
ネブラスカ大が西地区レースでウィスコンシン大に競り勝つには最低でも彼らが来週の最終戦でアイオワ大に勝ち、さらにウィスコンシン大がミネソタ大に負けなければなりません(ネブラスカ大がウィスコンシン大との直接対決に敗れた為)。その為にも来週までにアームストロングの復帰が強く望まれます。
ペンシルバニア州立大、ラトガース大を一蹴
ペンシルバニア州立大 39、ラトガース大 0
全米8位のペンシルバニア州立大は今季未だBig Tenカンファレンスで勝ち星の無いラトガース大と対決。試合開始時のキックオフリターン時にボールをファンブルし相手に奪われると言う嫌な立ち上がりを見せ、点こそ奪われずに済みましたが前半は4度もTDのチャンスがあったところ結局奪えたのは3つのFGのみと言う8位のチームらしからぬ展開を見せてしまいました。しかし後半に入るとようやくチームが目覚め、ラトガース大のパントをブロックしてそのままTDを奪うとそこから怒濤の30連続得点。終わってみればラトガース大から完封勝利を奪い格の違いを見せました。ペンシルバニア州立大の今季最後の対戦相手は大苦戦中のミシガン州立大。これに勝ち、さらにミシガン大がオハイオ州立大に敗れれば彼らの東地区優勝が決まります。
ミシガン大、インディアナ大に競り勝つ
ミシガン大 20、インディアナ大 10
ライバルであるオハイオ州立大がミシガン州立大に手こずったように、ミシガン大もインディアナ大に思わぬ追撃をくらい、一時はリードされる展開に陥りましたが、後半盛り返し大勝とはならなかったものの無事に白星を飾り最終戦のオハイオ州立大とのライバリーゲームに駒を進める事となりました。
先発QBウィルトン・スピート(Wilton Speight)が鎖骨骨折のため戦線離脱する中、ミシガン大オフェンスはRBデヴィアン・スミス(De’Veon Smith)の足に頼らざるを得なくなりましたが、スミスがその期待に応え22回のキャリーで160ヤードを稼ぎ、虎の子の2TDを生み出してインディアナ大を退けました。元ヒューストン大QBでスピートの代役として出場したジョン・オコーン(John O’Korn)は全く冴えず、16回のパスのうち成功させたパスはたったの7つ。パスヤードもトータル59ヤードとパスアタックは使い物になりませんでした。もっとも強風に加え試合後半には雪も降り出したと言う悪天候も影響はしていましたが、スピートがオハイオ州立大戦も出場不可能な公算が高く、絶対に負けられないこの試合でオコーンを起用せざるを得ないのは大きな不安要素となりそうです。ただ強力なディフェンスとスペシャルチームは健在でインディアナ大のランオフェンスを80ヤード、パスオフェンスを180ヤードに抑え、手こずるオフェンス陣の後押しをしてくれました。
これでミシガン大は10勝目を挙げ、昨年に続き二桁勝利シーズンを確実なものにしました。2年連続二桁勝利を挙げたのは2003年と2004年シーズン以来の事となります。またこの勝利で現時点でBig Tenカンファレンス東地区での自力優勝の可能性を唯一残したチームとなりました。最終戦のオハイオ州立大戦に勝てば彼らのカンファレンス優勝決定戦進出が決定します。
テキサス大の歴史的な敗退
カンザス大 24、テキサス大 21(オーバータイム)
テキサス大が弱小カンザス大に敗れると言う大波乱が起きました。カンザス大がテキサス大を破ったのは1938年以来ということですから、いかにこれがカンザス大にとって大偉業であるかがお分かりになると思います。そして逆にいえばテキサス大にとってはこの敗戦が大恥の何物でもないということが言えるのです。今季3シーズン目のチャーリー・ストロング(Charlie Strong)監督はテキサス大サポーターからの厳しい批判を浴びつつも大学側のサポートを取り付けなんとかこの沈みかけた船を立ち直そうとシーズンを送ってきましたが、このカンザス大戦での敗戦のせいでおそらくストロング監督に来季のテキサス大の監督の椅子は用意されていないことでしょう。腕のあるコーチである事はこれまでの経歴を見れば一目瞭然ですが、どう考えてもこの状況を解雇されずに生き残れるとは到底思えません。残念であるとしか言いようが無いです。
ノートルダム大、9年振りの負け越しが(ほぼ)決定
バージニア工科大 34、ノートルダム大 31
開幕時には全米10位にランクされたものの、負けが続いてあっという間にランク外に転げ落ち、その後もさらに黒星を重ねていった名門ノートルダム大。1敗でもすれば負け越し決定という状況の中迎えたバージニア工科大戦では終盤までリードするもバージニア工科大に逆転負けを喫し今季7敗目となりました。次戦のサザンカリフォルニア大に勝ったとしても5勝7敗となり、ボウルゲーム出場はミラクルでも起きない限り(昨年のように6勝以上のチームの頭数がボウルゲームの数に足りなくなり5勝チームが3チーム選ばれたという現象)出場権は生まれず、結果的に負け越しでシーズン終了が濃厚となりました。ノートルダム大が最後に負け越したのは2007年以来のことですから実に9年振りの失態となります。