現マイアミ大ヘッドコーチのマーク・リクト(Mark Richt)監督は2015年までジョージア大のヘッドコーチを務めていました。ジョージア大ではその紳士な振る舞いから多くのファンを作り彼がジョージア大を去らなければならなくなった後も彼のことを悪く言う声はあまり聞こえてこないように思えます。
ジョージア大での粋な計らい
ジョージア大を15年間に渡り指揮し、念願のナショナルタイトルを獲得することすらなかったものの、SECタイトルを2度獲得し9度の二桁勝利シーズンを挙げるなどフィールド上で数々の成功を収めたリクト監督ですが、それとは別に強豪チームの監督としては非常に珍しいポリシーを持っていたことも知られています。それは所属するチームの選手が何らかの理由でジョージア大から転校すると決めた場合、その行き先に制限を設けないというものでした。
多くのチームではそういった場合同じカンファレンスに所属するチームには転校させないとか、次季シーズンの対戦相手チームには転校させないなど転校先に条件をつけることがよく見られます。敵に塩を送るようなことは避けたいでしょうし、何よりも自分たちのチームの情報を流失させたくはないはずだからです。
そんな世界でもリクト監督は転校していく選手たちに自由にその行き先を決めさせていました。そんなリクト監督の粋な計らいには称賛の声が多く集まっていたのです。
しかし昨季からマイアミ大を率いているリクト監督はこの素晴らしいポリシーをジョージア大に置き去りにしてきたようです。
マイアミ大では方向転換
マイアミ大のガス・エドワーズ(Gus Edwards)はマイアミから遠く離れたニューヨーク州のスタテン島出身なのですが、先月子供が生まれてパパになりました。この人生における大きな変化に対応すべくエドワーズはマイアミ大を離れ実家に近い大学へ転校することを決意しました。そしてその転校先として米北東部に位置するボストンカレッジ、コネチカット大、ラトガース大、テンプル大、ピッツバーグ大、シラキュース大らが候補に挙げられたということですが、この内ピッツバーグ大とシラキュース大への転校は不可能となることが明らかになりました。
何故ならもうおわかりになるかと思いますがピッツバーグ大とシラキュース大は来季のマイアミ大の対戦相手であり、それが理由でリクト監督がエドワーズをそのどちらのチームにも転校させないとしていると情報筋は話しています。
もちろんこれはリクト監督のジョージア大時代のポリシーとは正反対のことですが、それと同時に彼がマイアミ大の監督に就任した後に発した言葉を裏切るものでもあります。
5ヶ月前、リクト監督ははっきりと「私はこれまで転校したい選手たちには好きなところへ送り出してきました。なぜなら人生とはとても短いものだからです。かつてジョージア大から(同じサウスイースタンカンファレンス所属の)アラバマ大やアーバン大へ選手が転校したこともあります。私は(転校に関して制限を設けることはしないのです。」と答え、マイアミ大でもその魂を継承することを示唆していました。
勝利至上主義がはびこる現在のカレッジフットボール界においてリクト監督がジョージア大でしてきたことは大変な希少価値があり、それだけに今回の決定は大変残念である上にリクト監督の株を下げたと言っても過言ではありません。
苦渋の決断か
ただこの方向転換が彼の真意ではなくやむを得なかった決断だった可能性もあります。
リクト監督の上司であるマイアミ大体育局長のブレイク・ジェームス(Blake James)氏はこの事に関して「マイアミ大の選手が対戦相手チームに転校することを許可しないのはマイアミ大のポリシーである」と話しているからです。
エドワーズはまだ正式に転校の手続きを始めてはいないということですが、今後の動向がきになるところです。
ちなみにリクト監督の「古巣」であるジョージア大では昨年リクト監督を追ってマイアミ大へ転校したいとするA.J. ターマン(A.J. Turman)が新監督であるカービー・スマート(Kirby Smart)監督によってそのリクエストを拒否されたり、またスマート監督の古巣であるアラバマ大からジョージア大へ転校を希望していたマウリス・スミス(Maurice Smith)がそのトランスファー(転校)をアラバマ大側から拒否されると彼の母親がメディアに登場するなどして一騒動になったことがありました。結果的にターマンはフロリダアトランティック大へ、そしてスミスは希望通りにジョージア大へ転校を許されたという過去もありました。
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カレッジフットボールでのトランスファールールはちょっと複雑だったりするので、そのうちそのことにも触れてみたいと思います。