今オフシーズンの流行語大賞に選ばれても過言ではない「サテライトキャンプ」。ジム・ハーボー(Jim Harbaugh)監督率いるミシガン大のフロリダ州遠征キャンプから始まり、NCAAがサテライトキャンプ開催の是非を二転三転させ、またコーチ同士が賛成と反対に分かれて意見を言いあったり・・・。キャンプシーズンはまだまだ続きますが、このサテライトキャンプの論争はまだ終わりを見せる気配がありません。
先日NCAAの監視委員会(Oversight Committee)はカレッジフットボール界の様々な問題を話し合いましたが、その中で当然このサテライトキャンプに関しても意見が交わされたそうですが、その委員会の一人でBig 12カンファレンスのコミッショナーでもあるボブ・ボウルスビー氏はサテライトキャンプの現状を「ごみの山(Mess)のようだ」と表現しました。
サテライトキャンプに関しては問題が山積みなのは現場のコーチたちの声からも明らかなようですが、いまのところNCAAはサテライトキャンプを厳しく管理するようなルールを新たに制定する予定は今のところないとも言っています。
「現在のサテライトキャンプはもうすでにフットボールの技術を提供したり技を磨くという機会ではなくなっていると言わざるを得ません。これは選手、選手の家族、そして彼らを大学チームに引き合わせようとする仲介人の為の場所に他ならない。つまりリクルーティングの一部になってしまったのです。ですからわれわれはこれらの事実を前提として今後どうするかを見定めなければなりません。」とはボウルスビー氏。
前述の通り、今年4月にNCAAはサテライトキャンプ開催を禁止するお達しがありましたが、数週間後にはこれが撤回されると言うドタバタ劇がありました。またハーボー監督が各地でサテライトキャンプをアグレッシブに行い、それを嫌うSECとの対決の構図が出来上がったり・・・。ハーボー監督が火をつけたこのサテライトキャンプの現状はまさに無法地帯なのです。
そんな現状を見て、来年のキャンプシーズンに向け何らかのルールを制定しても構わないというコーチ達も出始めてきました。というのもこれまでNCAAにはサテライトキャンプを規制するようなルールは存在しなかったからです。
そもそも元来サテライトキャンプは、夏休み中の高校生達がその間やる事がないため参加するようなイベントでした。また高校生の親にとってみれば学校が休みで家にいられるよりはキャンプに参加する事で子供達が家から出て行く方が都合がいいと言う事でキャンプに送り出すという形もよくあります。
さらにホストする側からしてみれば、普段給料が少ないアシスタントコーチ達が副収入源として使っていたイベントでもあります。有名チームがホストするフットボールキャンプには相当数の高校生が参加するので、言ってみればいいビジネスになるのです。
しかしNCAAにこれらのキャンプを規制するルールがない事に目をつけたハーボー監督が超アグレッシブにサテライトキャンプを行い出した事で「サテライトキャンプ=リクルーティングの道具」という図式が明るみに出てしまったのです。
ということで誰しもがこのサテライトキャンプに関しては何らかのルールを設けなければならないと考えているようですが、そのルールを制定するのはそう簡単にはいかないと言う事です。少なくとも2017年までは現状維持のままでいくそうです。
ちなみにこの監視委員会の会議ではサテライトキャンプの他にも選手の安全性の問題、リクルーティング時期の問題、サイドラインで使われるテクノロジーの問題(ヘルメットにトランシーバーを付けるか否かとか)、そして一番の議論が行われたのは過度のトレーニングから選手をどうやって守るかと言う問題も話し合われたそうです。勝利主義が先走りトレーニングを詰め込もうとするあまり、学生の本分である学業の方がおろそかになると言う状況をどう回避するか、ということです。いかに全米で注目を集め次期プロ候補だとしても学生アスリートである事には変わりないわけですから。