昨年度のナショナルチャンピオンシップゲームではアラバマ大に惜しくも破れたクレムソン大。しかしそのクレムソン大を率いたQBデショーン・ワトソン(Deshaun Watson)はそのことに関しては「たられば」などいった話で振り返るつもりは毛頭ないようです。
マニングアワードを受賞
シーズン中から素晴らしいパフォーマンスでチームを牽引し、昨年度を代表する選手にまで成長したワトソン。ハイズマントロフィーでも、アラバマ大RBデリック・ヘンリー(Derrick Henry)に僅差で破れましたが、彼が受賞していても全くおかしくはありませんでした。
2015年度のハイズマントロフィーファイナリストに選ばれたワトソン
シュガーボウルの主催者が贈呈する、ベストQBに送られる「マニングアワード」の受賞式に出席するため、先日ワトソンはルイジアナ州にあるスーパードームにやってきました。そこでの会見で彼はオフシーズン中に昨年度の試合を見直したと話しました。その試合にはもちろんあのナショナルタイトルゲームも含まれています。そしてそれを自分なりに分析して来季に備えているというのです。
「来季に向けて自分が見直さなければならないことはそんなに大きなことではなく、小さな、細かなことです。例えば視線や足を正しい方向に向けるとか、ボールに添える手や投げる時の手の位置など・・・。そのような点を修正して来季に臨むよう日々過ごしています。」とワトソンは話しました。
「いつどんな時でもしっかりと準備し、素晴らしい結果が残せるように努力するよう常に心がけています。まだそういった素晴らしい結果は出せてはいませんが、それはこれからフットボールの基礎であるメカニクスやテクニックをもっと磨いて、そしていつか高みに登れるよう精進していくつもりです。」
飛躍の2015年度シーズン
昨年度のパフォーマンスを見ていれば、彼の話す「高み」はもうすぐ手がとどくところにあるように思えます。少なくともカレッジフットボール界では現時点で彼がおそらくベストプレーヤーといっても過言ではないでしょう。実際プレシーズンでも来季のハイズマントロフィーに最も近い男と評されるくらいですから。
昨年ワトソンは35TDを含む4104パスヤードを投げ、また足でも12TDを含む1105ランヤードを記録。QBとして4000ヤードを投げ、1000ヤード以上走ったという選手は長いNCAAの歴史の中でもワトソン以外おらず、投げても走っても活躍できるデュアルQBの最高峰といった感じです。敗れはしたものの、ナショナルタイトルゲームのアラバマ大戦ではたった一人で478オフェンスヤードに4TDに絡む活躍を見せました。
敗れたもののアラバマ大を大いに手こずらせたワトソン
彼が受賞した「マニングアワード」は名前が示す通り、偉大なるQB一家のマニング親子(アーチー・マニング、ペイトン・マニング、イライ・マニング)の功績を記念して創設された賞です。父親であるアーチー・マニングはワトソンの受賞の際、彼のことをこんな風に評価していました。
「彼(ワトソン)のフィールド上での運動能力や指揮官としての落ち着きは非常に優れているのは試合を見ていてすぐにわかったが、彼と実際話してみてさらに彼の素晴らしい人間性に驚かされました。常に上を目指してなんでも吸収したいという性格はまるで水をたくさん吸い取るスポンジのようだ。それは口では簡単に言えてもそう容易く実行できることではありません。自分の秀でたところだけでなく、足りないところもしっかりと熟知しそれを修正するために努力する。そういったところですでに偉大なる選手となる素質を兼ね備えていると言えます。そしてきっと彼もそのような選手に少しでも近づけるよう考えているはずです。」
カレッジ、さらにその上の高みを目指す
来季で3年生になるワトソンは2017年度のNFLドラフトにアーリーエントリーすると噂されています。そんな彼は授業を受けられるだけスケジュールに組み込み、ただ大学をNFL入りするためだけに去るのではなくしっかりと学位を取得して去りたいと考えているようです。それはトップ選手であればなおさら難しいことですが、そんなに頑張りすぎてバテないのかと質問されました。
「私にとって成功を収めるにはいつ何時でも何かをしていないと気が済まないのです。ただじっとして何もしていないなんてできません。それは自分自身をいとも簡単に怠け者にしてしまうと知っているからです。」となんとも出来た答えを返していました。
またこの夏ワトソンはマニング一家が開催する「マニングパッシングアカデミー」にゲストインストラクターとして参加する予定ですが、彼としては教えるだけでなくマニング一家から少しでもQBとしての技術を学ぼうと企んでいます。
NFLではデュアルQBは長続きしないと言われいますが、ワトソンはそれを見据えて少しでもパスの精度を磨こうとしているかにも見えますが、実際のところはそういう訳ではないようです。
「4000ヤード投げ、1000ヤード走った昨年の記録は私やコーチ陣にしてみれば大して驚く数字ではありませんでした。彼らは私がこれくらいのことはやってのけると信じていました。自分で言うのもなんですが、どっちも得意なんです。」とワトソンは笑います。
ワトソンの最大の目標は再びクレムソン大をナショナルチャンピオンシップに出場させ、そしてそれに勝利することです。しかしそれだけでなく昨年獲り損ねたハイズマントロフィーへの欲も見せています。
「もちろんカレッジフットボール選手としてハイズマントロフィーは手にしてみたい特別なものです。それはいつでも私にとっては夢でありゴールでもありました。ただ、最大の目標はチームが良い成績を残すことであり、それを成すことができれば自ずと他のことも結果はついてくると信じています。」と締めくくっていました。
ワトソンは昨シーズンを通してアンストッパブルでした。あのアラバマ大ですら試合に勝ったとはいえ彼を攻略することはできませんでした。もちろんチームの行く末はたった一人のQBの出来で決まるわけではありませんが、ワトソンのポテンシャルを持ってすれば彼のパフォーマンスいかんでクレムソン大の来季の命運は決まってくると言っても過言ではありません。実質最終年となる2016年シーズン。再びワトソンの大活躍を見ることができるでしょうか。