2019年度のNFLシーズンは先週のスーパーボウルでカンザスシティチーフスがサンフランシスコ49ersを逆転で倒して50年ぶりの優勝を飾り幕を閉じました。カレッジフットボールは1ヶ月前に終わり、NFLも終わってしまったことでアメリカでは「アメフトロス」感が漂っています。
といってもNFLの世界ではこれから4月に行われるNFLドラフトに向けてコンテンツが配信されていくことでしょうから、ファンたちにとってフットボールの情報がなくなってしまうということはほぼ無いです。
にしても試合を見れないというのはやはりファンたちにとって欲求不満となることは目に見えています。この何もない時間があるからこそシーズンが始まる8月から9月に向けて興奮度が高まっていくという点もあるとは思いますが、やっぱりライブアクションがあったほうが盛り上がるに決まっています。
そんな中2020年からはNFLとは別のプロフットボールリーグ「XFL(エックスエフエル)」が始まります。開幕時は・・・何を隠そう今日(12月8日)です。そこで今回はこの「XFL」に関する情報をカレッジフットボールに絡めて簡単にご紹介したいと思います。
XFLとは何ぞや?
XFLと聞いて「あれ、なんか昔聞いたことがあるな?」と思った方。それは幻想ではありません(笑)。XFLはかつて約20年前の2001年に一度発足したプロリーグでその時はたったの1年で頓挫。今回のXFLは約20年を経てその失敗作(苦笑)をもう一度復活させようと立ち上げられたリーグなのです。
元々XFLはアメリカのプロレスリーグWWFのプロモーターであったヴィンス・マクマホン(Vince McMahon)氏と米王手TV局であるNBCがタックを組んでNFLのオフシーズンに開催を目論んだ商業企画。WWFで培った派手な演出をフットボールに導入することでよりエンターテイメント性を高めて集客を試みたわけです。
プロレス団体がプロモートしただけあって激しいコンタクトやセクシーなラウンドガールのようなチアリーダーたちがフィールドだけでなくスタジアム席にまで紛れ込んで会場を盛り上げるなどNFLとは一線を画す戦略を打ち出していました。筆者もよく当時のことは覚えています。試合会場にファイアーが立ち上ったり、振り子の鉄球がぶつかり合うイントロダクションがあったり・・・。
しかし開幕戦こそ注目を浴びたものの観衆の興味はシーズンを経るごとにどんどん低下。8チームあったうちバーミンガムサンダーボルトの平均観客動員数が20%しかないなど各チームのチケット売上は軒並み苦戦。視聴率も落ち込み結局この2001年シーズン後にたったの1年でリーグは終焉を迎えたのです。
ユナイテッドフットボールリーグ
失敗に終わったXFLから8年、今度はまた別のプロリーグが発足しました。それがユナイテッドフットボールリーグ(UFL)です。XFLと違ってUFLはNFLと同じ秋にシーズンが行われ、参加チームは4チーム(2010年だけ5チーム)と少数。フランチャイズはNFLと被らないような場所を選び、地元のファン獲得を目指しました。
2011年度シーズンにNFLとNFL選手会との団体交渉協定(Collective Bargaining Agreement)がこじれこのシーズンがキャンセルになるかもしれないという自体に陥ったことがありましたが、もしそうなっていたとするとUFLが唯一の秋のプロリーグとなりUFLとしてはビッグチャンスでした。しかし結局NFLシーズンは開催されUFLは再びNFLの下部組織のような扱い(実際はそうではない)をされ続けました。
結局大したメディアやファンからの評価を得られることはなくUFLは2012年度シーズンを最後に解散。ただ4年も続いたのはXFLと大きく違うところでしょう。
アライアンス・オブ・アメリカンフットボール
このようにしてNFLという大御所に対抗した新興プロリーグはことごとく散っていったわけですが、2018年に懲りずに(笑)また別の団体がプロリーグを立ち上げることを宣言します。それがアライアンス・オブ・アメリカンフットボール(AAF)です。
実はAAFの発足が発表される数ヶ月前に前述のマクマホン氏がXFLの復活を宣言。2020年度の開催を目指して動き出していることが判明しました。そこでマクマホン氏と共同で最初のXFLを立ち上げたNBCの重鎮ディック・エバーソル(Dick Ebersol)氏の息子であるチャーリー・エバーソル(Charlie Ebersol)氏が新XFLに対抗するAAFの立ち上げを決めたのです。
団体の発足時はほぼ同時期でしたが、XFLに先を越されまいとAAFはXFLよりも1年早い2019年度にシーズンを開幕させました。
XFLやUFLが失敗したことを教訓にエバーソル氏は専門家や有識者、さらには過去のトッププレーヤーなどを招聘して団体を組織。またフットボールの質を維持するために経験のある有名指導者をそれぞれのチーム(8チーム)に添える努力などをし、元フロリダ大やサウスカロライナ大、プロではワシントンレッドスキンズで監督を務めたことのあるスティーヴ・スパリアー(Steve Spurrier)氏を抱き込むことに成功もしました。
そうして始まったAAF初年度となった2019年。全10週で予定され、開幕後2週ほどはメディアで試合の結果などが報道されましたが、週を追うごとにメディアでの露出度が激減。試合のスコアを探すのにも一苦労するというほどの状態が続き、なんと開催から2ヶ月後にはシーズン途中なのに経営破綻に追い込まれてしまいました。
これはXFLよりも先に開幕しようとことを急ぎすぎたために準備不足(特に資金面において)が災いした結果です。昔と違いオンラインメディアが全盛期であるなかリーグの存在感を打ち立てることができなかったことは偏に経営陣の甘さだと言わざるを得ません。
約束されたサラリーも支払われず、リーグの破綻もインターネットで知らされた選手たちは滞在していたホテルから強制的に追い出されるという劣悪な対処をされ、やはりNFLのようなプロリーグを成功させるのは無理なのではないかという空気さえ流れたのです。AAFが立ち上がった時の公約が「選手たちにキャリアとしてプロ選手で有り続ける場所を提供する」というものでしたが、真逆の結果になってしまいました。