第15週目は各カンファレンスの優勝決定戦が各地で行われます。これらの試合の結果を受けて12月8日日曜日にCFP(カレッジフットボールプレーオフ)ファイナルランキングが発表され、晴れてCFPに進出できる12チームが決定します。ですから、今週末の試合は各カンファレンスのチャンピオンを決めるだけでなく、全米王者を決めるプレーオフに駒を進めるチームが誰なのかを決めるうえで非常に重要なのです。
そんな中すでに12月6日金曜日から一部のカンファレンスですでに優勝決定戦が始まりその結果が出ております。今回の記事は土曜日の試合開催直前の投稿となってしまったので、それらの試合を超早足でご紹介します。
12月6日に行われた試合結果
【マウンテンウエストカンファレンス優勝決定戦】
#10 ボイジー州立大 21、#20 UNLV 7
【アメリカンアスレティックカンファレンス優勝決定戦】
#24 陸軍士官学校 35、トゥレーン大 14
【カンファレンスUSA優勝決定戦】
ジャクソンビル州立大 52、ウエスタンケンタッキー大 12
目次
#3 ペンシルバニア州立大 vs #1 オレゴン大
Big Ten優勝決定戦(🇺🇸東部時間12月7日午後8時🇯🇵12月8日午前10時)
ここまで無敗で全米1位のオレゴン大、彼らに挑戦状を叩きつけるのがここまで1敗のペンシルバニア州立大です。
ペンシルバニア州立大(ペンステート)はレギュラーシーズン中にオハイオ州立大との直接対決に敗れましたが、第14週目にオハイオ州立大がミシガン大にまさかの敗戦を喫したことで彼らが2敗となり、1敗で並んだインディアナ大とのタイブレーカーの結果、僅差でペンステートがこの大舞台に2016年以来となる進出を決めました。
オレゴン大は1位ですが、もしペンステートがこの試合に勝てばBig Ten覇者になりプレーオフ進出を確実にするだけでなく、ファーストラウンド免除のトップ4シード(第1シードか第2シード)を与えられます。ただペンステートとしてはこのオレゴン大は彼らの力が大いに試される試合となり、そう簡単にオレゴン大から白星を獲得することは出来ないと思われています。
ペンステートはここ最近では最も最高位となる3位につけていますが、ジェームス・フランクリン(James Franklin)監督は大舞台に弱い、というレッテルを貼られて続けており、それはここまでフランクリン監督体制のペンステートは上位10位チームとの対戦成績は4勝17敗、そしてランクチームとの対戦成績も13勝27敗という数字からもおわかりいただけると思います。だからこそそれを払拭するためにもオレゴン大にはぜひ勝ちたいところです。
そのペンステートが対峙するオレゴン大は前述の通り全米トップチームであり、未だ無傷の全勝チーム。ペンステートに勝ち完全無敗で今季から初参戦となるBig Tenのタイトルを獲得すれば、確実に今季優勝候補ナンバーワンの称号を堅守することになりますが、もし負けてしまえばたとえプレーオフに進出することになっても、彼らの行く末に幾ばくかの疑問符が降りかかることでしょう。
ペンステートの勝利の鍵は、オレゴン大の強力なパスラッシュをOL陣が制御できるかにかかっていると言えそうです。それは直接的に彼らのエースQBであるドリュー・アラー(Drew Allar)のパフォーマンスにもつながることでしょうから、スクリメージラインでの動向がペンステートの生命線となってきます。
ペンステートのOL陣は今季強力なパスラッシュを持つディフェンス相手に苦戦気味です。そこに来て今回対戦するオレゴン大のフロントセブンは全米でも屈指のユニット。このオレゴン大に負けじと劣らないとされていたのがオハイオ州立大のフロントセブンですが、実際ペンステートはこのオハイオ州立大に唯一の敗戦を喫してしまっています。
ただペンステートのオフェンスは前述のQBアラーの他にもRBニック・シングルトン(Nick Singleton)とケイトロン・アレン(Kaytron Allen)という屈指のRBコンビに加え、今季全米最高峰のTEと評価の高い、万能なタイラー・ワレン(Tyler Warren)が健在。レシーバー陣にもう1枚ほど武器が欲しいところではありますが、OL次第でペンステートにもスコアリングのチャンスは大いに生まれそうです。
そのペンステートに襲いかかるオレゴン大ディフェンスの中で最も注目したいのはLBマテイヨ・ウイアンガラレイ(Matayo Uiagalelei)です。すでにオールBig Tenの1軍チームにも選出されているウイアンガラレイは若干2年生ながらオレゴン大ディフェンスで頭角を現し、シーズンを通して彼の名前が連呼されるシーンが増えてきました。Big Tenのサックリーダー(10.5)でもある彼率いるオレゴン大ディフェンスのプレッシャーとペンステートOL陣との対決は見ものです。
オレゴン大のオフェンスはハイズマントロフィー候補にも名前が挙げられてきたQBディロン・ガブリエル(Dillon Gabriel)が中心人物。かつてセントラルフロリダ大、オクラホマ大を渡り歩いてきたベテランQBは、このペンステート戦で出場試合数が62試合となりますが、これはFBSで最多出場試合数となります。現在デンバーブロンコスで活躍するボ・ニックス(Bo Nix)の後釜としては予想以上のパフォーマンスを見せており、チーム内の信頼度は抜群です。
そのガブリエルを活かすも殺すも、オレゴン大OLがペンステートのディフェンスを如何に抑え込むかが鍵。特にペンステートの超カレッジ級DEアブドゥル・カーター(Abdul Carter)をガブリエルに触れさせないことがオレゴン大OL陣の大きなタスクとなります。今季すでにBig Tenの最優秀守備選手賞を受賞しているカーターは10つのQBサックに19.5つのTFL(タックル・フォー・ロス)を記録済み。すでに次期NFLドラフトでも注目株の選手であり、また彼とバディを組むダニ・デニス・サットン(Dani Dennis-Sutton)を含めペンステートのトータルディフェンスは全米4位(1試合平均266.8ヤード)。オレゴン大にしても大きなチャレンジであることは間違いありません。
とどのつまり、どちらのチームにしてもOL陣の働きが重要になってくるわけですが(どの試合でもそうなんですけども💦)、それありきとすればペンステートはとにかくオレゴン大からスコアリング出来るかどうかが勝負。先のオハイオ州立大戦ではオフェンスが不発でトップレベルのディフェンスを攻略できないという脆さが出てしまいました。アラー、シングルトン、アレン、ワレンという前述の選手たち以外に誰かがステップアップする必要がありそうです。
オレゴン大は攻守ともにバランスの取れたチーム。ただ確かにオハイオ州立大に勝ってはいますが、それもシーズン序盤の出来事。実はそれ以降はそれほど強敵と戦ってきていないという事実もあります。彼らが無敗を守りCFPでのトップシード権を獲得するにはペンステートDEカーターを以下に抑え込むかにかかっています。両タックルのアジャニ・コーネリアス(Ajani Cornelius)とジョシュ・コネリー(Josh Conerly)の奮闘に期待したいです。
#5 ジョージア大 vs #2 テキサス大
SEC優勝決定戦(🇺🇸東部時間12月7日午後4時🇯🇵12月8日午前6時)
この両チームはすでに10月に一度対戦済みで、その時は1位だったテキサス大を5位だったジョージア大が30対15で破るという結果に終わっています。そのリマッチがこのSEC優勝決定戦で現実のものとなるのです。
ジョージア大のカービー・スマート(Kirby Smart)監督にとってはこれで4年連続7度目のSEC優勝決定戦進出。過去6度のタイトルゲームでは2勝4敗と負け越していますが、それの多くはアラバマ大にやられたもの。アラバマ大以外には滅多なことでは負けないジョージア大(今季ミシシッピ大に敗れたのは記憶に新しいですが)がこの大舞台でテキサス大に再び勝利できるかが見ものです。
一方のテキサス大は昨年CFPに初出場を果たし、今年4年目のスティーヴ・サーキジアン(Steve Sarkisian)監督指揮下で名門復活を果たしています。今季はここまで1敗を守っていますが、この1敗が前述の通り今回対戦するジョージア大に付けられたもの。是が非でも雪辱を晴らしたいところです。
ジョージア大の主軸はその強力なディフェンスにありますが、今季に限って言えばディフェンス力はテキサス大の方がスタッツ的には上回っています。特にテキサス大のパスディフェンスは全米1位。ここまで全対戦相手に奪われたパスTDはたったの4つに対し、奪ったパスINTは18つということでこれをどうジョージア大が攻略するかにも注目が集まりそうです。
ただそのジョージア大のオフェンスは今季苦戦を強いられており、特にランオフェンスは1試合平均128.3ヤードでなんと全米101位。対するテキサス大のランオフェンスも実はそこまで破壊力があるわけではありませんが、先週のテキサスA&M大戦にてRBクイントレヴィオン・ワイズナー(Quintrevion Wisner)が186ヤードを足で叩き出したのは朗報。また割と機動力があるQBアーチ・マニング(Arch Manning)も要所で起用されることも予想されており、信頼度はテキサス大が少々上回るかも。
ジョージア大は開幕時のハイズマントロフィー最有力候補QBカーソン・ベック(Carson Beck)が波のあるパフォーマンスを見せ続けていることも見逃せません。特に立ち上がりの前半にてパスミスが顕著でシーズン後半戦には毎試合最低1つはパスINTを犯すという、らしくないクォーターバッキングが続いていました。
ただジョージア大の凄いところはハーフタイムでの調整力。如何に前半リードを奪われていても後半ギアを上げて追い上げ追い越すという展開を見るのも珍しくありませんでした。特にレギュラーシーズン最終戦では、ライバル・ジョージア工科大に前半大きくリードされるも後半追い上げてオーバータイムに持ち込み、8つのOTの後に勝利を収めるという試合もこなせてみせました。
オッズ的にはテキサス大が少々ジョージア大を上回っている模様。同じシーズンに同じチームを二度倒すのは並大抵のことではありませんから、ジョージア大にとっては一度勝っているとはいえ当然なめてかかれる相手でないことは承知済みでしょう。現在2敗のジョージア大は勝てばプレーオフ進出を確実にしてファーストラウンド免除の上位シード権を獲得できます。負けてもいい試合をすれば最終ランキングで上位11位以内に残れると思われますので、プレーオフ進出はあると思いますが、仮にテキサス大にボロクソにやられてしまったとしたら、3敗目を喫したチームとしてプレーオフに進出するに値するチームかどうか・・・という議論も湧くかもしれません。
テキサス大のQBクウィン・ユワーズ(Quinn Ewers)、ジョージア大のQBカーソン・ベック、どちらがクリティカルな場面でクラッチプレーを見せられるか。そこも運命の分かれ道かもしれませんね。
#17 クレムソン大 vs #8 サザンメソディスト大
ACC優勝決定戦(🇺🇸東部時間12月7日午後8時🇯🇵12月8日午前10時)
前述のオレゴン大とテキサス大は今季からカンファレンスを鞍替えしていきなりカンファレンスタイトルゲームに進出してきたチームですが、ACC(アトランティックコーストカンファレンス)のサザンメソディスト大(SMU)も今季から新加入のチーム(昨年まではアメリカンアスレティックカンファレンス所属)。ACC戦績では未だ無敗の8勝0敗と絶好調でこのタイトルゲームでは大御所クレムソン大と対戦します。
クレムソン大は過去9年間で7回ACCチャンピオンになっているという、ACCを席巻してきた名門ですが、ここ数年は少々戦力が低下気味というチーム。それはダボ・スウィニー(Dabo Swinney)監督が転校生に頼らず生え抜きの選手たちだけでのチーム育成にこだわったからとも言われています。とはいえタレント的には全米トップクラスであることは変わりません。アラバマ大と全米タイトルを争いあった頃のコーディネーターが皆他チームで監督になるためにクレムソン大を去っていってしまったことも戦力降下の一因を担っていると言えそうです。
そのクレムソン大はここまですでに3敗(ACC戦では1敗)してしまっていますが、マイアミ大が最後の最後でコケた(シラキュース大に敗戦)したことでACCタイトルゲーム進出を決めました。CFPランキングでは17位なため、彼らがプレーオフに進出するにはこのACC優勝決定戦で勝ってACCチャンプとして自動出場枠を手に入れるしか方法が残されていません。
SMUはここまで11勝1敗で8位まで上昇。1980年代までは全米でも有数の強豪校として知られていましたが、リクルーティング違反がバレて1987年に1年間の対外試合禁止という、NCAA史上最大のペナルティーを食らったことでチーム力が大幅にダウン。以来約30年以上その「デスペナルティー」から立ち直ることが出来ませんでした。
しかし2022年にレット・ラシュリー(Rhett Lashlee)監督が就任してからチームは激変。ガス・マルザーン(Gus Malzahn、前セントラルフロリダ大HC、次期フロリダ州立大OC)監督のフィロソフィーであるノーハドルの超高速オフェンスが身上で勝ち星を増やしてきました。そのことからもわかるように彼らの主軸はそのオフェンス力。これがクレムソン大に通用するのかが見ものです。
ただ11勝1敗とはいえ、SMUが倒した11チームは現在ランキングに誰一人として顔を連ねておらず、唯一ランクされている対戦校であるブリガムヤング大(現在18位)には敗戦を喫しています。そういった意味ではSMUの本当の力というのは未知であるというみかたも出来るわけです。
そしてさらにこの試合の結果に注目が集まる理由に、もしクレムソン大が勝ってSMUが負けた場合、SMUが最終CFPランキングでどの程度ランクを落とすかという点が挙げられます。事実上このファイナルランキングで11位以内に入らないとプレーオフには出場できません。現在11位はアラバマ大ですが、もしクレムソン大がACCチャンプになると彼らに自動出場枠が与えられるため、現在17位の彼らはたとえ上位12位以内に入らなくてもプレーオフ出場が決定します。
そうなると出場チームに与えられる椅子が更に1つ減ることになります。その時SMUが11位以内に残れればたとえクレムソン大に負けてもプレーオフ進出の夢が叶いますが、アラバマ大よりも下にランクされてしまうとすでに3敗しているアラバマ大に椅子を奪われてしまうことになります。
アラバマ大にしてみれば何としてもSMUにクレムソン大を倒してほしいと願っているはず。そうなれば波乱は起きずに現在11位のアラバマ大はプレーオフ進出を決めることになるからです。そういった意味では今週末に行われる試合の中では最も影響力の高いマッチアップと言えるわけです。
#16位 アイオワ州立大 vs #15 アリゾナ州立大
Big 12優勝決定戦(🇺🇸東部時間12月7日午後12時🇯🇵12月8日午前2時)
今季からの新参チームのカンファレンスタイトルゲーム進出という意味では今回Big 12カンファレンスの優勝決定戦に進出するアリゾナ州立大もそれに当てはまるチーム。彼らは今季Pac-12カンファレンスからBig 12カンファレンスに合流したチームですが、その1年目からタイトルゲームに駒を進めるという偉業を成し遂げました。
特にアリゾナ州立大はプレシーズンの順位予想で最下位に投票されたチーム。そんなチームがこの大舞台にまで進出してきたというのはひとえに彼らの若きリーダー、ケニー・ディリンガム(Kenny Dillingham)監督の手腕が大きいと言えます。
2年前までオレゴン大のOCを務めていたディリンガム監督でしたが、昨年のデビュー戦は3勝9敗と惨敗。しかし今季は打って変わって大躍進。勝ちさえすればプレーオフに進出できるというところまで這い上がってきました。
一方のアイオワ州立大はここまで10勝を挙げていますが、彼らが10勝シーズンを記録したのはチーム史上初の偉業。今季9年目となるマット・キャンベル(Matt Campbell)監督にとってようやく訪れたビッグチャンス。これをものにできるか見ものです。
アリゾナ州立大の注目選手はRBキャム・スカテブ(Cam Skattebo)。今どき珍しい白人のRBですが、彼はここまで1866ヤードのオールパーパスヤードを記録。TDも19個量産し、そのプレースタイルからも今季のアリゾナ州立大の「SWAG」を体現しているような選手です。
アイオワ州立大はディフェンス力での評価が高く、特にパスディフェンスではテキサス大、オハイオ州立大に次ぎ全米3位の実力の持ち主。特にCBダリエン・ポーター(Darien Porter)はシャットダウンCBとして名を挙げており、彼のカバー成功率は68.3%と相手QBならびにWR泣かせな選手。
実はこの2チーム、史上初の顔合わせとなります。この記事を執筆している現在、すでに試合は始まっており、今のところハーフタイムを前にしてアリゾナ州立大が17対10でリード。果たして勝ってプレーオフ進出を決めるのはどちらのチームか。
その他のカンファレンス優勝決定戦
オハイオ大 vs マイアミ大(OH) – ミッドアメリカンカンファレンス優勝決定戦
マーシャル大 vs ルイジアナ大 – サンベルトカンファレンス優勝決定戦