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諸行無常【2020年度第11週目レビュー】

諸行無常【2020年度第11週目レビュー】

新型コロナウイルスの影響で実に15試合が開催不可能となってしまった第11週目のカレッジフットボール。その中にはアラバマ大、オハイオ州立大、テキサスA&M大といったトップランカーたちが含まれており、さらにはクレムソン大、ブリガムヤング大らも試合のないバイウィークだったため、この週末は比較的静かだったような気がします。

だからといって何もドラマが起きなかったわけではなく、各地でコロナウイルスをかわしながら熱戦が繰り広げらました。その中から筆者の気になった試合を選んで振り返ってみたいと思います。

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ベースボール・マガジン社 (編集)

The Game of the Week

ウィスコンシン大49、ミシガン大11

全米13位のウィスコンシン大とミシガン大の試合ではミシガン大に新記録が生まれました。・・・もっとも彼らにとっては決して誇れる記録ではありませんでしたが。

コロナウイルスの部内感染で最近2試合を棒に振ってしまったウィスコンシン大でしたが、この試合では開始当初から試合の主導権を握り前半を終えた時点でホームのミシガン大に対して28対0という驚きのスコア。ただ驚きと言っても試合の内容を見れば当然ともいえる数字でもありました。

ハーフタイム時の28点差というのはミシガン大のホームスタジアムであるミシガンスタジアムが設立された1927年以来史上最大の点差という新記録がついてしまいました。ここまでたったの1勝でまったくいいところがないチーム状況、そしてそれを率いるジム・ハーボー(Jim Harbaugh)監督にしてみればまさに地に落ちたという表現しか浮かび上がりません。

最終スコアを見ていただければ分かる通りミシガン大は相手に圧倒されなすすべもなく敗れ去りました。しかも相手は前述の通りコロナの影響で実戦から約3週間も離れていたチーム。そのチームに対して攻撃陣は何も出来ず、ディフェンス陣はやられっぱなしとあればファンに同情すらしてしまいます。

このミシガン大のスランプはこの日の前半だけを見ていれば十分に見て取れるもので、試合開始以降最初の4つのドライブで獲得できたヤードはたったの1ヤード、そしてその後はQBジョー・ミルトン(Joe Milton)が2つのパスINTを犯して自滅。一方のディフェンスも相手に4連続TDを奪われこの時点で勝負は付いていました。

確かにミシガン大からは5人の主要先発メンバーがオプトアウトしたり怪我したりでチームを離れており人手不足は否めません。しかも全体的に経験不足の若いチームですからこのチームがナショナルタイトルを狙えるチームかといったら答えは明白です。

しかし何が驚きかと言えば名門であるミシガン大フットボール部に全く覇気がないということ。ブロッキングにしてもタックルにしてもエナジーを感じることが出来ないのです。すでに今シーズンを諦めてしまったのか、もしくはチーム内で不協和音でも流れているのか、原因は定かではありませんが、何処をどうひっくり返してもカレッジフットボール界を代表するチームの面影は皆無。

それもこれも極論から言えば長であるハーボー監督の責任となるわけです。効果的なゲームプラン、選手にモチベーションを上げさせる技、そしてゲーム中の作戦のアジャストメントなどその良し悪しは監督であるハーボー氏に究極一任されるわけでここまでの1勝3敗という体たらくな戦績の責任は最終的にはハーボー監督にあるわけです。

オフェンス畑を歩いてきたハーボー監督はかつてNFLサンフランシスコ49ersを3度もプレーオフに導いたこともある腕の立つコーチ。その彼がミシガン大で他チームを圧倒できるオフェンスを構築できないことには首をひねるばかりです。この日もミルトンのパスがいきなりディフェンスに掠め取られると、次のドライブでは43ヤードのキックオフリターンで好位置から攻撃を開始するも、フォルススタートのペナルティーで減退させられると、マイナス3ヤードのラン、2ヤードゲインのラン、そしてその後にミルトンが再び相手にボールを献上。

5度目のドライブでようやく相手陣内へ踏み込むことに成功しましたが、相手陣内1ヤードラインまで攻め込みながら4thダウンコンバージョンを失敗して無得点。

ミシガン大のオフェンスには全くと言っていいほど安定感がなくプレーコーリングにも創造性が感じられません。ミルトンのパスヤードは98ヤードと惨敗でチームのランアタックは合計でたったの47ヤード。3rdダウンコンバージョン率も27%と散々とどの面を取ってみてもいいところは全くありませんでした。ミルトンは途中でベンチに下げられ、代わりに出たケイド・マクナマラ(Cade McNamara)は74ヤードを投げてこの日ミシガン大にとって唯一のTDを獲得しましたが、マクナマラが全てを解決してくれる鍵であるとは到底考えられません。

これで1勝3敗となったミシガン大は残り4試合で最低でも3勝を上げなければハーボー監督体制で初となる負け越しを味わうことになります。しかしオフェンスファーストのチーム作りが終了となる昨今、ミシガン大の攻撃陣には得点力が全く無いためリードを奪われてから追いつくような試合展開では到底白星を上げることは出来ません。大学側は高給取りのハーボー監督をシーズン途中で解雇するようなガッツを持ち合わせていないでしょうから、今後チームがどのようにモチベーションを維持してシーズンを乗り切るのかが注目です。

負けたチームのことばかり書きましたが、勝利したウィスコンシン大はコロナの影響で実戦からしばらく離れていたというのに絶不調とはいえミシガン大から大量得点。コロナに直接感染してしまったグラハム・マーツ(Graham Mertz)は21日間活動禁止を余儀なくされましたが、何とか無事に先発。出だしこそ少し錆びついていたようにも見めましたが、後半に徐々に調子を取り戻して2TD127ヤードという数字を残しました。

マーツのデビュー戦となったイリノイ大戦では21投中20投を成功させる鮮烈デビューを果たし、ウィスコンシン大のトラディションにいい意味で外れるパサーであることを証明しました。しかしこのミシガン大戦ではウィスコンシン大の十八番とも言える地上アタックでミシガン大を撃破。チーム合計で341ヤードを足で稼ぐ大暴れ振りを見せました。

既に2試合がキャンセルになってしまったため、ウィスコンシン大としてはもう2度とウイルスのせいで試合開催不可能となるような事態は避けなければなりません。もしそういったイレギュラーな事態が起きなかったとすれば西地区で大きな壁となって立ちはだかる存在となるでしょう。


トップ25

ノートルダム大45、ボストンカレッジ31

前試合でクレムソン大を激戦の末に倒したノートルダム大。その大一番に全てを注ぎ込んだバイプロダクト(副産物)としてこのボストンカレッジ戦でコケてしまうのでないかという危惧も語られましたが、ご覧の通り45対31で勝利を収め8勝目を挙げました。

ディフェンス陣があまりピリッとしない中、第2Qまでボストンカレッジにリードされる場面もあり、「もしかして・・・」と思わせる時間もありましたが、第2Qだけで21点を奪うとあとは振り返ることなく最後まで突っ走り最終的には2TD差をつけて相手を退けました。

ペナルティーが8つ(69ヤード減退)に3つのファンブルを犯すなど先週のクレムソン大での鬼神のごとし強さは見られませんでしたが、そんな試合を毎週末繰り返すことは現実的ではありませんし、白星は白星ですので全米2位チームとしての威厳は保たれたと思います。クレムソン大で冴えに冴えまくったQBイアン・ブック(Ian Book)は27投中20投のパスを成功させ3つのTDパスにINTパスはゼロ(ランでも1TD)と活躍。7人のレシーバーにパスを振り分けるという器用さも見せてました。

またWRベン・スコロネック(Ben Skowronek)がこの日はブックからのTDパス3つを全て捕球するなど大健闘。2010年から2013年まで先発QBを務めた母校のOBで現オフェンシブコーディネーターのトミー・リース(Tommy Rees)氏のプレーコーリングも光りました。

フロリダ大63、アーカンソー大35

昨年までフロリダ大で先発QBを務めたフェリペ・フランクス(Feleipe Franks)が率いるアーカンソー大をホームに迎えたゲーターズは、フランクスが抱くリベンジの画策に惑わされることなく63対35でアーカンソー大を撃破。

そのフランクスは古巣相手にINT無しの250ヤードに2TDとまずまずの数字を残しましたが、ダン・マレン(Dan Mullen)、QBカイル・トラスク(Kyle Trask)の織りなすフロリダ大のハイパワーオフェンスと点を取り合うには力不足でした。

そのトラスクはこの試合で6つのTDを奪う大活躍。これで今シーズンここまでトータル28TDにINT数がたったの3つとハイズマン級のパフォーマンス。確実にトロフィーレースの仲間入りを果たしたと言えます。フロリダ大出身QBとしてはダニー・ワーフェル(Danny Wuerffel)氏、ティム・ティーボ(Tim Tebow)氏に続き3人目となる、複数シーズンで25TD以上を獲得したQBとなりました。ワーフェル氏もティーボ氏もハイズマントロフィーを獲得していますから、その先人たちの仲間入りをしたトラスクとしては悪い気はしないでしょうね。

またSEC記録としても開幕後6試合で28TDというのは新記録。しかも今季SECはカンファレンス戦のみのスケジュールなためリーグ戦のみでのこの記録には特別な意味があります。ちなみにこの前記録保持者は元アラバマ大で現マイアミドルフィンズトゥア・タガヴァイロア(Tua Tagovailoa)でした。

ディフェンス陣が35点も取られたのは気にはなりますが、この調子だとカンファレンス優勝決定戦でのアラバマ大との決戦が現実を帯びてきました。

シンシナティ大55、イーストカロライナ大17

全米7位のシンシナティ大はQBデスモンド・リダー(Desmond Ridder)の3TDを含む327パスヤードに加えて75ランヤード(1TD)とトータルオフェンスで400ヤードに絡む活躍によりイーストカロライナ大を撃破。7勝0敗と無敗を守りました。

リダーのオフェンスに加えシンシナティ大はディフェンスでも光るところを見せ、特にパスディフェンスは相手に与えたヤードがたったの87ヤードで、3rdダウンコンバージョンも12回中成功されたのがたったの3回。208ヤード走られたのを除けばほぼ完璧の出来。

これで昨シーズンから続く連勝記録が19に伸び、大外からとは言えCFP(カレッジフットボールプレーオフ)への夢を繋ぎました。

マイアミ大25、バージニア工科大24

新型コロナの影響で3人の先発選手を含む13人が出場不可となったマイアミ大は手強いバージニア工科大と対戦。ランキングされているのはマイアミ大なのにラスベガスのオッズは圧倒的にバージニア工科大を推すという奇妙なマッチアップでしたが、そのオッズメーカーの予想通り試合はバージニア工科大ペースで進みます。

24対13とリードされて迎えた第3Q後半、RBキャムロン・ハリス(Cam’Ron Harris)のTDランで5点差と迫ると第4QにQBデリック・キング(D’Eriq King)からマーク・ポープ(Mark Pope)への36ヤードパスTDが決まって遂に逆転(2ptコンバージョンは失敗)。最後は追いすがるバージニア工科大の攻撃をしのぎ、決して万全では形ではありませんでしたが貴重な白星を挙げました。

マイアミ大としてはACCタイトルゲームへ出場するためにももうこれ以上負けることは許されませんから、内容どうこうよりも勝利をもぎ取れたことだけでも儲けものというものです。

インディアナ大24、ミシガン州立大0

全米10位のインディアナ大はQBマイケル・ペニックス(Michael Penix Jr.)の320ヤードに2TDというパフォーマンスと強力なディフェンス陣の活躍によりミシガン州立大に完封勝利。これで彼らは開幕後4戦4勝と快進撃。これは1987年に彼らが開幕4連勝した以来の偉業であり、チームがいかに今季絶好調かを物語っています。

試合は前半両チーム合わせて5つのターンオーバーが飛び交う荒れた立ち上がりとなりましたが、そのターンオーバーを得点に結びつけることが出来たのはインディアナ大でした。ミシガン州立大は2戦目にミシガン大に勝つ快挙をみせましたが、現在のミシガン大の様子を見るとこの勝利もあまり価値があったものかどうかは定かではありません。

先週そのミシガン大に勝ち10位にまでランクを上昇させたインディアナ大はその余韻を引きずることなくミシガン州立大でもしっかりと仕事をして無敗をまもり、いよいよ来週末のオハイオ州立大との決戦に備えることになります。開幕前にオハイオ州立大とインディアナ大の試合がここまで意味のあるマッチアップになると誰が想像できたでしょうか。

オレゴン大43、ワシントン州立大29

全米11位のオレゴン大は前半3つのターンオーバーを犯すなど立ち上がりかららしくないプレーの連続でワシントン州立大にリードを許しましたが、第4Qに22得点を叩き出して一気に相手を抜き去って終わってみれば2TD差で今季2勝目を挙げました。

今季からオレゴン大のOCを務めるのはミシシッピ州立大前監督でかつてペンシルバニア州立大でもOCを務めたことのあるジョー・モアヘッド(Joe Moorhead)氏。複数の選手をモーション下に置きディフェンスを撹乱させてミスマッチを生む手腕はこの試合でも顕著であり特にQBタイラー・シャック(Tyler Shough)からトラヴィス・ダイ(Travis Dye)へのシームルートは鮮やか。

ターンオーバーならびにタックルの脆さが目立ったディフェンス陣に多少の不安を残しましたが、オフェンス力は今季まだ2試合しか消化していないチームということを加味してもトップレベルにあると思います。残り試合あと4ゲームでディフェンスが急成長すればトップ10に食い込むことも可能となるでしょう。

サザンカリフォルニア大34、アリゾナ大30

先週のアリゾナ州立大戦では終始リードされながらも最後の最後で奇跡のパスTD、そしてオンサイドキックによって辛くも勝利を得たサザンカリフォルニア大。そして今回のアリゾナ大戦でもあわよくば敗戦というギリギリのところで奇跡のプレーに救われて逆転勝利。苦しみながらも開幕2連勝を決めました。

第4Q残り時間3分30秒でQBキードン・スロヴィス(Kedon Slovis)のパスTDが決まって27対23とサザンカリフォルニア大が逆転して勝機を手繰り寄せたかと思うと、今度はアリゾナ大QBスタンリー・ベリーヒル(Stanley Berryhill)のパスTDで彼らが再び逆転。残された時間は1分35秒とサザンカリフォルニア大にとっては絶体絶命となりますが、ここから彼らの決死のドライブが始まります。

敵陣32ヤードラインにてスロヴィスから放たれたパスはディフェンダーの手に弾かれながらもWRアモン・ラ・セント・ブラウン(Amon-Ra St. Brown)の手に吸い込まれて敵陣8ヤードラインまで進撃するとRBヴァヴァエ・マレペアイ(Vavae Malepeai)の際どいTDランが決まって残り時間25秒でギリギリ逆転。苦しみながらも何とか勝利をもぎ取りました。

綱渡りのような試合展開で今後どこまで勝ち進めるのかは分かりませんが、南地区の勢力図を考えるとサザンカリフォルニア大は地区優勝のポールポジションに座していると言えそうです。

ノースウエスタン大27、パデュー大20

今季快調のインディアナ大の昨年までの先発QBで今季から転校してノースウエスタン大でプレーするペイトン・ラムジー(Payton Ramsey)が3つのTDを含む212パスヤードを記録して迫りくるパデュー大を振り切って勝利。これで開幕4連勝となりましたが、これはチームとしては1996年以来の快挙。ちなみにこの時のチームのキャプテンは現在の監督であるパット・フィッツジェラルド(Pat Fitzgerald)監督でした。

ノースウエスタン大のディフェンスも「Bent but not broken(窮地に立たされても決して負けない)」精神で追いすがるパデュー大にリードを一度も奪われることなく白星をゲット。この厳しい試合の流れでも勝ち星を引き寄せることが出来たのは今後の彼らのシーズンにプラスに働くことでしょう。

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