今季第6週目は予想を大幅に超す数多くの番狂わせ、すなわちアップセットが各地で起きました。それらを含めて簡単に第6週目を振り返ります。
目次
ヴァンダービルト大 40、#1 アラバマ大 35
第5週目にジョージア大との死闘を制し、2022年度以来の全米1位の座を獲得したアラバマ大でしたが、その翌週となる第6週目の対戦相手、「弱小」と呼ばれ続けてきたヴァンダービルト大にまさかの敗戦。1位になった翌週にランク外のチームに敗れ去るのは1960年のミネソタ大以来という汚点を残してしまいました。
試合は終始ヴァンダービルト大のペースで進み、特にアラバマ大のディフェンスがヴァンダービルト大のオフェンスに手こずりまくり、トレンチでの力勝負でかわされ続ける意外な姿を見せ続けました。ランゲームではヴァンダービルト大が54キャリーで166ヤードを稼いだところ、アラバマ大は21キャリーで84ヤードと撃沈。とにかくいいところは何もありませんでした。
ヴァンダービルト大はニューメキシコ州立大からの転校生QBディエゴ・パヴィア(Diego Pavia)の神がかっていたプレー、特にクリティカルな場面での4thダウンコンバージョンは圧巻。チームとしてもトータルヤードでアラバマ大を上回り、3rdダウンコンバージョンを見るとヴァンダービルト大は脅威の18回中12回成功。そしてボール所有時間はアラバマ大約18分、ヴァンダービルト大42分と圧倒的な差をつけました。
ヴァンダービルト大はこの試合までAPランキングトップ5チームとの対戦成績は驚きの0勝60敗。強豪校にめっぽう弱いチームだったわけですが、ここに来てトップ5チーム、もっと言えば全米1位のチームに勝ったのですから、世紀の番狂わせと言っても過言ではありません。
試合後はファンがフィールドになだれ込み、ゴールポストをなぎ倒すと、そのゴールポストを歩いて1時間ほどかかったところにあるカンバーランド側に投棄。選手やファンにとっては忘れられない一夜となったことでしょう。そのせいで大学は罰金10万ドル(1ドル100円計算で1000万円)を支払わなければなりませんが、こんなことは1年に一回くらいでしょうから大学側も喜んで支払った・・・とか喜んでないとか笑。
それにしてもあのアラバマ大がヴァンダービルト大に負ける日が来るとは・・・前任のニック・セイバン(Nick Saban)監督はどう思っているでしょうか・・・。
アーカンソー大 19、#4 テネシー大 14
1位のアラバマ大が敗れたのに続き、全米4位のテネシー大もアーカンソー大にまさかの敗戦を喫するという番狂せが起きました。
ここまでスコアリングオフェンスでは全米1位となるハイスコアリングオフェンスを持つテネシー大でしたが、この日は前半から苦戦。3対0とアーカンソー大リードとスコアレスで後半に突入。第3Qにディラン・シンプソン(Dylan Simpson)の3つのTDランでようやくリードを奪いますが、アーカンソー大もTDとFGで10点を追加して14対13とテネシー大1点差のまま試合終盤を迎えます。
この日アーカンソー大の先発QBタイレン・グリーン(Tylen Green)が怪我で途中退場してしまいましたが、彼の代役として出場したマラカイ・シングルトン(Malachi Singleton)が奮闘。試合残り時間1分17秒でシングルトンのTDランが決まり、土壇場でアーカンソー大が逆転。ホームは大歓声に包まれます。
後のないテネシー大はエースQBニコ・イアマレイヴァ(Nico Iamaleava)に全てを託しますが、最後のチャンスとなったプレーでは判断を誤りパスを投げることなくフィールド外に押し出される形で試合終了。見事にアーカンソー大が4位のテネシー大を破ったのでした。
アラバマ大に続きトップ5以内のチームであるテネシー大も同日に敗れたことになりますが、同じカンファレンスのチームの上位5位内の2チームが同じ日に黒星を喫したのは、2012年以来(この時は4位のルイジアナ州立大と5位のジョージア大が敗戦)。また、同じ日にトップ5以内の2チームがランク外のチームに敗れたのというのは2004年以来(4位だったマイアミ大と5位だったフロリダ州立大)以来の出来事になってしまいました。
#25 テキサスA&M大 41、#9 ミズーリ大 10
第6週目トップ10チームで3つ目の餌食となってしまったのは9位のミズーリ大。この日彼らは全米25位のテキサスA&M大に乗り込みましたが、31点差を付けられて完敗。残念ながら彼らの過大評価ぶりが暴露されてしまいました。
A&M第RBレヴェオン・モス(Le’Veon Moss)はこの日自身キャリアハイとなる138ヤードに3TDを足で量産。テキサスA&M大は開幕戦でノートルダム大に敗れはしましたが、それ以降はここまで破竹の5連勝中。試合をこなして行く中でチーム力がどんどん上がっている侮れないチームです。
ミズーリ大は今季最高で6位まで上昇しましたが、ボストンカレッジ戦、ヴァンダービルト大戦は僅差での勝利で一抹の不安を醸し出していましたが、その不安がここに来て的中。次期NFLドラフトで注目のWRルーサー・バーデン・III(Luther Burden III)を今一つ使いこなせていないこともありますが、昨年調子がよかったディフェンス陣が不調なのが大きく、これは昨年までディフェンシブコーディネーターを務めていたブレイク・ベイカー(Blake Baker)氏がルイジアナ州立大へ引き抜かれたことも影響しているのかもしれません。
ワシントン大 27、#10 ミシガン大 17
第6週目4チーム目の被害者は10位のミシガン大。アウェー戦となったワシントン大との一戦では終始劣勢に立たされ、結局27対14で今季早くも2敗目を喫してしまいました。
この日はQBアレックス・オルジ(Alex Orji)が絶不調。元々パスをほぼ捨ててランで攻めていく方針に方向展開したミシガン大ではありましたが、オルジでは全く攻撃を継続出来ず、遂に第3のQBであるジャック・タトル(Jack Tuttle)を投入。第3Qにタトルからのパスで1つTDを奪いはしましたが、つけ刃感は否めず、ディフェンス陣が踏ん張るも奪われたリードを取り返すことはできませんでした。
この試合は昨年度のCFP(カレッジフットボールプレーオフ)全米王座決定戦と同一カード。当時はミシガン大がワシントン大を下して全米王者になりましたが、今回はワシントン大がリベンジを果たし、ファンがフィールド内に傾れ込んで勝利の美酒を味わっていました。
ミネソタ大 24、#11 サザンカリフォルニア大 17
全米11位のサザンカリフォルニア大(USC)もアンランクのミネソタ大に返り討ちにあいまさかの黒星。ミネソタ大のホームファンの歓喜のストームを許してしまいました。
キーポイントは第4Q残り時間6分からのミネソタ大の攻撃。スコアは17対17のタイゲーム。ミネソタ大オフェンスはジリジリとボールを相手陣内へ運んでいき、残り3分でUSCのレッドゾーンへ侵入。さらに2分を切ったところでUSCの1ヤードラインまで詰め寄ります。しかしここからの1ヤードが遠い・・・。
そして迎えた4th &ゴール。残り時間は1分を切り、ミネソタ大のP.J.フレック(P.J. Fleck)監督は迷わず4thダウントライ。QBマックス・ブロズマー(Max Brosmer)のスニークがなんとかエンドゾーンを破り、土壇場でミネソタ大がリードを奪います。
後のないUSCもQBミラー・モス(Miller Moss)のパスプレーとミネソタ大のアンスポーツマンライクの反則で相手陣内20ヤード地点まで迫りますが、最後はモスからエンドゾーンへ放たれたパスをDBコイ・ペリチ(Koi Perich)にインターセプトされ万事休す。この試合までですでに3敗を喫して振るわないミネソタ大に番狂せを喰らってしまいました。
フレック監督はミネソタ大で今季8シーズン目ですが、中々結果が出ず最近は監督交代論が囁かれていましたが、このUSC戦での金星が彼の監督の座を救うことになるかもしれません。
その他の試合
#3 オハイオ州立大 35、アイオワ大 7
オハイオ州立大はベテランWRエメカ・イブカ(Emeka Egbuka)の3TDキャッチとスーパールーキーWRジェレマイア・スミス(Jeremiah Smith)の相変わらずのアクロバティックなプレーでアイオワ大に快勝。これで無傷の5連勝です。
#5 ジョージア大 31、アーバン大 13
「深南部最古のライバリー」の軍配はジョージア大に。先週約4年ぶりにレギュラーシーズンゲームで敗戦(対アラバマ大)してしまいましたが、その鬱憤を吹き飛ばす白星をあげました。
#8 マイアミ大 39、カリフォルニア大 38
終始リードを奪われる展開となったマイアミ大は後半にオフェンスが息を吹き返し、残り時間26秒で逆転のTDを決めて辛くもアップセットを逃れました。ハイズマントロフィー候補QBキャム・ワード(Cam Ward)は437ヤードに2TD(1INT)と後半の逆転を見事にお膳立て。
#15 クレムソン大 29、フロリダ州立大 13
試合開始から立て続けに点を獲り続けたクレムソン大がリードを奪われることなくフロリダ州立だいに快勝。これでクレムソン大のダボ・スウィニー(Dabo Swinney)監督はクレムソン大で174勝目となり、所属するACC(アトランティックコーストカンファレンス)の監督としてはフロリダ州立大のレジェンド、ボビー・バウデン(Bobby Bowden)監督を抜いて最多勝利監督に躍り出ました。
フロリダ州立大はQBのD.J.ウイアンガラレイ(D.J. Uiagalelei)が右手の手術を受けて戦線を離脱。元々彼では試合に勝てなかったため、代わりのブロック・グレン(Brock Glenn)が火付け役になってくれるかと思われましたが・・・。これで彼らは1勝5敗。昨年とは天と地の様相を醸し出しています。