カレッジフットボーラーの最大の夢であるNFLという舞台に立つために避けては通れない登竜門、NFLドラフト。そしてプロチームとしてもチームの補強のために欠かせない重要なイベントなわけですが、現地時間4月24日夜にその初日となる第1巡目のピックが盛大に行われました。
ドラフトが終わってかなり時間が経ってしまっていますが(苦笑)、今回は第7巡目までのすべてのピックを終えた時点での総括記事をお送りしたいと思います。
(今回の記事は当ポッドキャスト#277の内容が元になっております)
目次
全行程終えて・・・
出身大学別ドラフト選手数
今ドラフトでは3日間で257人もの選手が夢への切符を手に入れたわけですが、まずは出身大学ごとの指名選手数をちょっと見てみましょう。
1. オハイオ州立大:11人
T2. アラバマ大:10人
T2. テキサスA&M大:10人
T4. クレムソン大:9人
T4. マイアミ大:9人
T4. テキサス工科大:9人
T7. ジョージア大:8人
T7. インディアナ大:8人
T7. ペンシルバニア州立大:8人
T10. ルイジアナ州立大、フロリダ大、テキサス大、オレゴン大、ワシントン大、アイオワ大:7人
トップを飾ったのはオハイオ州立大で11人でした。さらに上記のチームの中でプレーオフに進出したチームは全12チーム中9チームで、その総数は79人。プレーオフに進むチームにはそれだけ上のレベルでも通用すると言われる人材が揃っているということが言えるかと思います。
このように優勝を狙えるチームであるためには、選手層の厚さを絶やさないために弛まぬリクルーティングの努力が必要不可欠となってくるわけです。カレッジフットボール界でダイナスティ(王朝)を築くためにはNFLに選手が巣立っていったとしても次に控える選手の層が厚いことが求められます。そうなればどんなに多くの選手がドラフトで抜けたとしても次期シーズンにゼロからチームを作り直す必要がなくなるわけです。
オハイオ州立大は2021年にジョージア大が樹立した最多指名選手数15人を更新することはできませんでしたが、上記の通りファーストラウンドだけでも最多の4人の選手をNFLに送り出したことを考えれば、現在の全米のロースター力においてオハイオ州立大が王者であることは言えるかと思います。
一方で、昨年優勝したインディアナ大は今回8人と大躍進。同じドラフトで8人もインディアナ大から指名を受けたのというのはスクールレコードとなります。
A program-record eight #NFLDraft picks. pic.twitter.com/qqkbyAQBgN
— Indiana Football (@IndianaFootball) April 25, 2026
インディアナ大はこれまで弱小と言われてきたチームであり、そのチームが昨年全米優勝したことがまだ夢心地ですが、そのチームからハイズマントロフィー受賞者(フェルナンド・メンドーサ)および総合ドライチ選手を輩出したこともそうですし、合計8人ものドラフト選手を抱えていたことを考えれば、彼らが全米優勝したことが奇跡でありながらもしっかりと裏打ちされたロースターを擁していたことがわかりますね。
また同じく大躍進したのがテキサス工科大です。彼らは昨年までのNFLドラフトで最も多くの選手が指名されたのは2009年の4人でした。過去10年間で見ても1人か2人しかドラフトされてきませんでしたが、今年はなんと9人もの選手がドラフトされたのです。
A historic year continues 📈
— Texas Tech Football (@TexasTechFB) April 25, 2026
– Program-record 9 selections
– T-4th most nationally
– 5 more than any other Big 12 school#WreckEm x #NFLDraft pic.twitter.com/LMAV2dlr7c
所属するBig 12カンファレンス界隈でもダントツ(時点がアリゾナ州立大で4人)であることからも、彼らの大躍進が見て取れます。昨年はリクルーティングランキングでも上位を連ね、カンファレンスタイトルを獲得してプレーオフにも進出しました。その原動力となったのが大富豪であるコディ・キャンベル(Cody Campbell)氏らによる大量のNIL(Name/Image/Likeness、自身の肖像権などを元手にお金稼ぎができるようになったシステム)ディールを使った有能タレント漁りです。その結果がこのNFLドラフトでの9人指名という数字にも表れているわけですね。
カンファレンス別ドラフト選手数
続いてはドラフトされた選手数を出身校が所属するカンファレンス別に見てみます。
1. サウスイースタンカンファレンス(SEC):87人
2. Big Tenカンファレンス:68人
T3. アトランティックコーストカンファレンス(ACC):38人
T3. Big 12カンファレンス:38人
5. 独立校(ノートルダム大&コネチカット大):7人
T6. アメリカンアスレティックカンファレンス:4人
T6. ミッドアメリカンカンファレンス(MAC):4人
8. マウンテンウエストカンファレンス:3人
9. サンベルトカンファレンス:2人
T10. ミズーリバレーカンファレンス(FCS):2人
T10. サウスランドカンファレンス(FCS):2人
12. カンファレンスUSA:1人
前回の記事で、ファーストラウンドだけで見た場合にBig TenカンファレンスがSECを抜いたため、Big Tenの時代がやってきた!なんてことを言いましたが、全体で見ると今年もSECが最も多くのドラフト選手を生み出したことになります。彼らがドラフトで最多選手数を輩出するのはこれで20年連続です。そして同一カンファレンスからのドラフト選手数としては、SECの87人というのは史上最多。Big Tenカンファレンスの勢いがましているとはいえ、まだまだSECの強さが光ります。
毎年必ず1人は・・・
NFLとAFLが合併してドラフトを合同で開催しようとなったのが1967年。この年以降現在までのドラフトの仕組みを「Common Draft Era」と呼びますが、この「Common Draft Era」の間に1度も漏れずにドラフトに選手を送り続けてきたチームが3つあります。それが・・・
- ミシガン大(Big Tenカンファレンス)
- サザンカリフォルニア大(Big Tenカンファレンス)
- フロリダ大(サウスイースタンカンファレンス)
つまりこれまで59年間最低1人はドラフトにかかった選手を送り出したということになります。ここに現在常勝チームとされるアラバマ大、ジョージア大、オハイオ州立大などが名前を連ねていないことが驚きですね。それは彼らでもこの50年以上の間に浮き沈みがあったということを表していますが、だからこそこの3校の偉業さが浮き彫りとなりますよね。
トランスファー選手の数
2018年に学生アスリートが転校しやすいように設けられたデータベースを「トランスファーポータル」と言いますが、これが設立されたこと、そして転校してもすぐさま試合に出場できるようにルールが改正されたことで選手たちがより気軽に転校(トランスファー)できるようになりました。
以来トランスファーして新天地でプレー機会を模索しようとする選手や、より良いディールのNILを手に入れるためにトランスファーする選手が後を絶ちません。
そしてその影響はドラフト選手の内訳にも影響を与え始めています。以下が2016年以降のトランスファー選手がドラフト選手内に占める数字です。
- 2016年:15/253 (5%)
- 2017年:15/253 (5%)
- 2018年:13/254 (5%)
- 2019年:18/254 (7%)
- 2020年:24/255 (9%)
- 2021年:24/259 (9%)
- 2022年:36/262 (13%)
- 2023年:48/259 (18%)
- 2024年:78/257 (30%)
- 2025年:95/257 (37%)
- 2026年:123/257(48%)
ご覧の通り年々その数は増えており、今年はとうとう三桁に突入し、割合で見たらほぼ半分の使命選手が過去に一度はトランスファーしていることになります。ドラフトされるということはそれだけの能力を持ったチームの主力選手であるということが言えると思いますが、 今ドラフトだけで見ると、半分近くが元々は外部の選手だったというのは、トランスファーが栄華を誇る現在のカレッジフットボールの現状を大いに物語っていますし、また選手をオリジナルのチームにとどめておく事の難しさを痛感させてくれます。
今後もこのトレンドは増加していくことが予想されますから、チームづくりにおいて転校生の発掘が重要な鍵となりますね。
1人もドラフトされなかったチーム
ここまではドラフトされたことに関する数字を並べてきましたが、一方でFBS(フットボールボウルサブディビジョン)内でも上位カンファレンス群とされる、「パワー4」に属しているチームの中でも1人もドラフトに選手を送り込めなかったチームも残念ながらあります。
- ノースカロライナ大(ACC)
- シラキュース大(ACC)
- バージニア大(ACC)
- バージニア工科大(ACC)
- パデュー大(Big Ten)
- ウィスコンシン大(Big Ten)
- UCLA(Big Ten)
- コロラド大(Big 12)
- オクラホマ州立大(Big 12)
- ウエストバージニア大(Big 12)
これらの顔ぶれを見るとどれも昨年苦戦したチームばかりなので(バージニア大を除く)、「やっぱりな・・・」という印象が強いです。
しかしこの中でも特に残念だったのはウィスコンシン大です。彼らは今回誰一人としてNFLドラフトで指名選手を送り出せなかったことで、48年間続いていた「毎年少なくとも1名は指名される」という記録がついに途絶えてしまいました。名門失墜の影響がここにも表れています。
またコロラド大は、ディオン・サンダース(Deion Sanders)監督の注目度は高かったものの、2025年シーズンを3勝9敗で終えた影響もあり、彼の就任以来2度目の指名ゼロとなりました。さらに、コロラド州全体で見ると、コロラド大、コロラド州立大学、空軍士官学校を含め、コロラド州内の大学出身者は、今回のドラフトで一人も選ばれ無いという残念な結果に。
今年の「Mr. Irrelevant」
今年の総合ドライチ選手は前述の通りインディアナ大のフェルナンド・メンドーサでした。そこから順番に各チームが7巡かけて選手を指名していったわけですが、始まりがあれば終あり・・・。今年も最後の最後でギリギリ「拾われた」 選手もいたわけです。
NFLドラフトではその年の最後に指名を受けた選手を「Mr. Irrelevant」と名付けています。「最も注目の薄い選手」とか「最も影響力のない選手」とでも和訳できるでしょうか。
ドラフトされたのにもかかわらずこんな言われようになるのもまた一興ですが、今年の「Mr. Irrelevant」はバッファロー出身のLBレッド・マードック(Red Murdock)で選択したのはデンバーブロンコスした。
Mr. Irrelevant 👏
— FOX Sports: NFL (@NFLonFOX) April 25, 2026
With the FINAL PICK of the 2026 NFL Draft, the @Broncos select Buffalo LB Red Murdock! pic.twitter.com/iVgx65ToJC
1巡目から指名される順番が下がるたびに一般的な評価は落ちていくわけで、極稀に7巡目で指名された選手でも大成する選手はいますが、基本的には7巡目の選手のほうが上の選手よりも生き残る可能性は低くなっていきます。
その7巡目の中でも更に一番最後に滑り込みで選ばれたのが「Mr. Irrelevant」なわけですが、過去最近5年間の「Mr. Irrelevant」が今どうしているかを見てみると・・・。
2021年
グラント・スチュワード(Grant Stuard)
ヒューストン大LB→タンパベイバッカニアーズ
2021年の「Mr. Irrelevant」であるスチュワートは主にスペシャリストとしてプレーし、2023年には第13週目のテネシータイタンズ戦でブロックパントをリカバーしてリターンTDも決めています。そして2024年には10月20日に行われたマイアミドルフィンズ戦で初先発出場を果たし、チームハイとなる19個ものタックルを決めました。現在はLAラムズに所属しています。
2022年
ブロック・パーディ(Brock Purdy)
アイオワ州立大QB→サンフランシスコ49ers
2022年の「Mr. Irrelevant」であるパーディは、ルーキーシーズン開幕当初に先発QBだったトレイ・ランス(Trey Lance、元ノースダコタ州立大)が怪我で戦線離脱し、彼に取って代わって先発を任されたジミー・ガロポロ(Jimmy Garoppolo、元イースタンイリノイ大)も第13週目に怪我で負傷したことで彼に出番が回ってきます。ここで予想外の活躍を見せチームをプレーオフまで牽引。結局NFC優勝決定戦まで進出しますが、ここで肘を怪我して目立った活躍ができず敗退。
以降怪我から復帰した以降はチームの絶対的QBとして活躍し、2024年度はスーパーボウルにも出場。惜しくもカンザスシティチーフスに敗れはしましたが、結果的に今の所このパーディが「Mr. Irrelevant」の中で最大の出世株といえそうです。
2023年
デスジュアン・ジョンソン(Desjuan Johnson)
トレド大DE→LAラムス
2023年の「Mr. Irrelevant」であるジョンソンですが、2023年度はLAラムズの一員として11試合に出場し5つのソロタックルに2つのQBサック、1つのファンブルフォースを記録するなど、主力ではないにしろ試合に出場。上記のスチュワードがラムズに今年から移籍してきたことで、なんとチームに二人の「Mr. Irrelevant」が所属することに。
2024年
ジェイレン・キー(Jaylen Key)
アラバマ大S→NYジェッツ
2024年の「Mr. Irrelevant」であるキーは2024年度のNYジェッツでのアクティブロースターに残ることができず一度リリースされ、プラクティススクワッドとして再契約しますが、10月に再度リリースされ、シンシナティベンガルズとプラクティススクワッド契約。しかし昨年のファイナルロースター残れず、現在はFA状態です。
2025年
コビー・マイナー(Kobee Minor)
メンフィス大CB→NEペイトリオッツ
2025年の「Mr. Irrelevant」であるマイナーは2025年度のNEペイトリオッツでのアクティブロースターに残ることができず一度リリースされますが、プラクティススクワッドとして再契約。そして今年1月にはアクティブロースターのメンバーとして契約を結びました。
松澤寛政選手の大偉業!
しかし、何と言っても今年のドラフトで日本人ファンを沸かせたのは、ハワイ大出身のK、松澤寛政選手がUDFA(ドラフト外フリーエージェント)契約をラスベガスレイダースと結んだという大偉業でしょう。
NFLドラフトでの指名こそ逃したものの、ドラフト終了直後にレイダースから声がかかり、3年契約を勝ち取った松澤選手。これで日本人初のNFL選手誕生に一歩近づいたことになります。
「ドラフト外」と聞くと一見地味に聞こえるかもしれませんが、NFLの世界ではUDFAからスター選手に駆け上がるケースもなくはありません。 むしろ、球団が「どうしても欲しい」と直接交渉して獲得する枠でもあります。今後開催されるキャンプやプレシーズンマッチで実力を証明し、最終的な53人の登録枠に残れば、「日本人初のNFL選手」という歴史的な偉業が達成されます。
高校(幕張総合高校)まではアメフト経験がなく、サッカーに打ち込んでいました。しかし、大学受験に失敗したことをきっかけに19歳で渡米。そこで初めてアメフトの試合を生で観戦し、人生が一変します。「キッカーになればNFLに行けるかもしれない」と決意したそうです。
日本に帰国後、キックの技術はなんとYouTubeの動画を見て独学で習得。渡米資金を貯めるため、東京のステーキハウスで3年間アルバイトをしながら、黙々と練習を続けました。そしてアメリカの多くの大学にみずからフィルムを送り、唯一オファーをくれたホッキングカレッジ(オハイオ州にある短大)へ進学。そこで結果を残し、2024年度からハワイ大への編入(ウォークオン)を勝ち取ります。
そしてカレッジ最終シーズンとなった2025年度、松澤選手のポテンシャルが完全に開花。開幕25本連続フィールドゴール成功(FBSの全米タイ記録、ハワイ大新記録)、フィールドゴール成功率93.1%(29本中27本成功)という数字を残し、年間最優秀キッカー賞である「ルー・グローザ賞」のファイナリストとなり、そしてハワイ大学史上初の「コンセンサス・オールアメリカン(全米ベストイレブン)」に選出されるなどカレッジのキッカー界隈で旋風を巻き起こしたのでした。
レイダースと契約した松澤選手ですが、ここからは本当の勝負が始まりです。
チームのルーキーミニキャンプ、そして夏のトレーニングキャンプで首脳陣にアピールし、プレシーズンマッチで結果を残さなければなりません。しかし、初の日本人NFL選手誕生への道が現実味を帯びてきたのは間違いありません。「Tokyo Toe」というニックネームでカレッジ界を沸かせた松澤選手の公式戦デビューでの勇姿を見る日がすぐそこまで来ています。
👇 記事が気に入ったらいいねやリツイートで拡散お願いいたします!
【記事更新】
— Any Given Saturday (@ags_football1) April 25, 2025
2025年のNFLドラフトがついに開幕。4月24日の初日は第1巡目の32選手が無事選択されていきました。その様子を簡単に振り返ります。https://t.co/6UpZ9660a3


