マイミ大QBマーテルが2019年度からプレー可能に
オハイオ州立大からマイアミ大へ逃げたした転校したQBテイト・マーテル(Tate Martell)ですが、この度NCAAから次期シーズンからマイアミ大で即プレー可能という特別許可をいただきました。
オハイオ州立大時代のテイト・マーテル
昨年までドゥウェイン・ハスキンズ(Dwayne Haskins)のバックアップを務めてきた元5つ星リクルートのマーテルでしたが、ジョージア大からQBジャスティン・フィールズ(Justin Fields)が転校してくるとわかるとその1週間後にはオハイオ州立大から去ることを決意。そして新天地に彼が選んだのがマイアミ大でした。
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通常学士課程を終了していない選手が転校する場合、転校先で1年間はプレー資格が与えられないというルールがあります。これはだれでもかれでも簡単に転校してしまわないようにするためにNCAAが定めた抑止力なのですが、稀に情状酌量の余地があるとNCAAが判断した場合に即プレー可能という特別処置をNCAAが施す場合があります。
フィールズの場合はジョージア大で人種差別を受けたという建前を武器にNCAAからこの特別許可を引き出しました。マーテルはオハイオ州立大でコーチ陣の一新があり(アーバン・マイヤー監督が引退したため)、それを理由に転校せざるを得なかったためNCAAからの特別許可を待っていたのです。
しかしカレッジフットボール界でコーチ陣が入れ替わるのは日常茶飯事。それに関連して自分をリクルートしてくれた監督やコーチが居なく立ってしまうというのは珍しくありません。ですからマーテルのケースは特別処置を施すほどの事例ではないと思っていたのですが、NCAAはマーテルに即プレー可能というプレゼントを送ったのです。
これは大変危険な処置なのではないかと危惧しています。というのも先にも述べた通りマーテルのような背景を持つ選手は少なくないわけで、今回のケースを許したことにより今後同じようなケースでトランスファーを決意した選手には全員に即時プレー資格を許可しなければならなくなります。パンドラの箱を開けてしまったのではないかと個人的には憂慮しています。
サザンミシシッピ大がブライルス氏に触手を伸ばすも・・・
2008年からベイラー大を率いたアート・ブライルス(Art Briles)氏はかつてはカレッジフットボール界のお荷物と言われていたこのチームをトップ10にランクされるまでに強化し、2013年度と2014年度はハイズマントロフィーも獲得したQBロバート・グリフィン・III(Robert Griffin III、現ボルティモアレイヴンズ)らを擁しカンファレンスタイトルも獲得。その手腕は当時の情勢を見ても全米トップクラスに数えられていました。
アート・ブライルス元ベイラー大監督
しかしその影で彼がリクルートしてきた選手たちが次々と悪事を働き、選手によるレイプ事件が明るみになると大学はその責任を取らせるためにブライルス氏を解雇。その後はどのチームからも敬遠され続け、現場復帰を果たせていません(2019年からイタリアのチームの監督に就任することにはなっていますが)。
そんな中、彼の手腕を見込んでカレッジフットボール界に復帰させようと動いた人物がいました。「グループオブ5」カンファレンス群の一つであるカンファレンスUSA所属、サザンミシシッピ大のジェイ・ホプソン(Jay Hopson)監督です。彼は空きが出ていたオフェンシブコーディネーターにブライルス氏が適任ではないかということで面接を行い、仕事をオファーするところまでいっていたということでした。
しかしそれを知った大学側は即座にこの決定を拒否。過去のスキャンダルを背負ったブライルス氏をわざわざ自分の庭に招き入れることはしたくなかったのでしょう。
ただブライルス氏を雇いたかったホプソン監督はこの大学の決定をよく思いませんでした。以下が彼の発表した声明です。
「大学側の決定には従います。しかしその決定に納得はしていません。私はアート・ブライルスとアシスタントコーチのポジションに関する面接を行いました。そして私は彼にはセカンドチャンスが与えられるべきだと信じています。面接で彼の対応は素晴らしかった。彼は(ベイラー大のスキャンダルにおいて)犯罪を犯したわけではありません。確かに彼の判断や行動は的確ではなかったかもしれませんが、そういった責任をサザンミシシッピ大で負うのは私であり、彼ではないのです。彼は将来また大学チームを率いる素質を持っています。現在3年間どこからも仕事をもらっていない彼は十分罪を償ったと思います。」
ホプソン監督の言い分は非常にわかります。しかしベイラー大のスキャンダルがあまりにも大きく社会的影響を与えたため、なかなかブライルス氏に最初に仕事を与えたチームになりたがる大学が居ないのも分かる話です。事が事なだけに大炎上を起こす可能性を含んでいるからです。3年という時間もまだまだ短い気がしますし。
元ミシガン大監督ホーク氏が古巣へ
ミシガン大と言えばカレッジフットボール界でも名門中の名門であり、常に注目され常に勝つことを義務付けられているようなチームです。実際彼らが持つ通算勝利数953勝は業界ナンバーワンの記録ですし、フットボールボウルサブディビジョン(FBS)に限れば歴代2位番目タイとなるナショナルタイトル獲得数(11回、ノートルダム大とタイ。1位は17回のアラバマ大)を誇っています。
確かにここ20年以上全米制覇から遠ざかっていますが、それでも毎年彼らの一挙手一投足に注目が集まり、彼らが強くなければカレッジフットボール界は面白くないというのが実際のところ。そんなミシガン大のブランドを地に落とした人物が居ます。2011年から2014年までチームを率いたブレディ・ホーク(Brady Hoke)氏です。
ミシガン大元監督のブレディ・ホーク氏
初年度の11勝2敗は素晴らしい滑り出しでしたが、そこから年を追うごとに成績は下落の一途を辿り、2014年には5勝7敗と負け越し。この責任を取る形でホーク氏は解雇に。ホーク氏の前任であるリッチ・ロドリゲス(Rich Rodriguez)氏体制での失敗も相まって2008年から2014年までのミシガン大は強豪の面影を失っていました。現在カリスマ監督のジム・ハーボー(Jim Harbaugh)監督に率いられているミシガン大は、カンファレンスタイトルなどにはまだ手が届いては居ないものの、ミシガン大というブランド力回復にはなんとかこぎつけているところです。
そのホーク氏ですが、ミシガン大から解雇されてからはオレゴン大やテネシー大のDLコーチを務め、昨年はカロライナパンサーズのDLコーチに就任していました。が、12月には解雇され無職の状態が数カ月続いていました。しかし今回彼を起用したチームがあります。サンディエゴ州立大です。
実はホーク氏はミシガン大監督に就任する前まで2年間サンディエゴ州立大の監督を務めていた過去があります。彼はここで2年しか指揮を取りませんでしたが、1年目が4勝8敗、2年目に9勝4敗と盛り返してそれが評価されてミシガン大にやってきたのです。が、ミシガン大のような大御所を指揮するには少々コーチ歴がうすすぎる気もしましたが、それが的中した形でミシガン大では大失速したのです。
かつて監督を務めたチームに戻り、一介のアシスタントコーチを務めるというのは簡単なことではないでしょう。が、コーチングも仕事であり働かざる者食うべからず、とも言いますから。もっともミシガン大を契約途中で解雇されたとき発生したバイアウト費(違約金)が約300万ドル(1ドル100円計算で約3億円)を懐に入れていますから、生活に困ることはないのでしょうけれど。