2016年度シーズンにレギュラーシーズン無敗で惜しくもコットンボウルでウィスコンシン大敗れたものの13勝1敗と言う素晴らしいシーズンを送ったウエスタンミシガン大。そのリーダーであったP.J.フレック(P.J. Fleck)監督はその手腕を認められBig Tenカンファレンスのミネソタ大に「昇格」していきました。
ウエスタンミシガン大の急成長はフレック監督の存在無しには語れませんが、彼が同チームをここまで強いチームに育て上げた要因には彼が選手のモチベーションを上げるのに非常に秀でていたと言うことが挙げられます。まだ37歳と若いフレック監督は学生選手との距離も近く、威厳でまとめ上げるベテランコーチ(例えばアラバマ大のニック・セイバン監督とか)とは違い、選手に近い目線でやる気を促進させるタイプのコーチ(クレムソン大のダボ・スウィニー監督もこの分野に入るでしょう)。
そんなフレック監督がウエスタンミシガン大で掲げていたスローガンが「ロウ・ザ・ボート(船を漕げ)」と言うものです。この言葉の由来は「船に乗っているみんなが全員同じ方向を向いて全力で船を漕げば目的地まで早くたどり着ける」と言うことから、ウエスタンミシガン大で合言葉となり、チームを一丸にするのに大きな役目を果たしました。
この言葉はフレック監督の造語であり、ウエスタンミシガン大の成績が上向きになればなるほど注目されていった言葉となりました。そして大学側はこれを商標登録し、まさにフレック監督率いるウエスタンミシガン大にはなくてはならないアイテムとなったのです。
しかし今オフ、フレック監督の才能に目をつけたミネソタ大がフレック監督をヘッドハント。「グループオブ5」の中堅校であるウエスタンミシガン大からフレック監督が出て行くのは時間の問題とされていたため、この退団はある程度予想はついていました。そして今回話し合いが行われていたのは、このフレック監督が発案した「ロウ・ザ・ボート」のキャッチフレーズをどうするか、と言うことでした。
フレック監督とこのスローガンがあまりにも強烈に結びついているため、ウエスタンミシガン大がこのスローガンをフレック監督不在でも使い続けるのは違和感があります。しかしこのスローガンはすでにウエスタンミシガン大が商標登録しているのでこの取り扱いをどうしようかとミネソタ大とウエスタンミシガン大の間で交渉が行われていたらしいのですが、今回その解決案が提示されました。
ウエスタンミシガン大が所有していたこの商標登録を正式にフレック監督個人のものに移行し、晴れてミネソタ大でこの「ロウ・ザ・ボート」と使えることになりました(もっと言えば将来的にはフレック監督がいく先々で使用可能に)。
その代わりフレック監督はウエスタンミシガン大に今後5年間の間合計50万ドル(500万円)の奨学金を寄与することになったのです。
このスローガンのもとにミネソタ大はフレック監督が演出した昨年度のウエスタンミシガン大のような素晴らしいシーズンを送ることができるでしょうか?