カレッジフットボールの世界で全米ナンバーワンになるには、ポストシーズンに行われるCFP(カレッジフットボールプレーオフ)に進出し、このトーナメントで最後まで勝ち抜かなければなりません。2014年に開始されたプレーオフ形式は2023年度まで4チーム参加のトーナメントでしたが、昨年から参加チームが12チームにまで一気に拡大し、トーナメントのエンタメ性は格段に上がることになりました。
このプレーオフに進出するチームを決めるのに重要となるのがCFPランキングです。開幕後からここまで世間で使用されてきたのはAPランキング(記者投票)とコーチランキング(監督投票)の2つのランキングでしたが、ここからはこのCFPランキングの順位が最重要となってきます。
一見分かりずらいCFPランキングとそのフォーマット。ここではあらためてそれらの解説をしていきたいと思います。
目次
CFPランキングとは?
CFPランキングはAPランキングやコーチランキングのような投票者によるランキングではなく、13人の選考委員が話し合いによって決めるランキングとなります。この選考委員会には大学長、体育局長、元選手、元監督といった様々なバックグラウンドを持った人物が参加しており、かつては元国務長官だったコンドリーザ・ライス(Condoleezza Rice)女史も選考委員会に名前を連ねていたこともあります。
この13人が毎週集まり、その週に行われた試合を分析しながら毎週火曜日夜にランキングをリリースしていきます。そして最終ランキングである第6回目のランキング(12月7日発表)の情報をもとに12チームの参加チームが選出されるわけです。
選考基準
選考委員会たちが格付けしていく際に基準にしている点は以下のものと言われています。
勝敗数
単純明快。勝ち数が多く負け数が少ない方に価値がおかれます。現在まで3敗したチームがプレーオフに出場したことがないため、ボーダーラインは2敗と言われています。
ストレングス・オブ・スケジュール
どれだけ強い相手と対戦するスケジュールが組まれたかを示す指数。
直接対決の結果(Head-to-Head)
シーズン中に直接対決している場合はその試合結果も反映されます。
共通の対戦相手との結果比較
複数のチームを比べる際、もし両チームに共通の対戦相手が存在した場合、そのチームとの試合結果も考慮されます。
カンファレンスで優勝したかどうか
後述します。
ストレングス・オブ・レコード
さらに近年ではストレングス・オブ・レコードと言う指数も重要視される傾向にあります。これは、そのチームがいかに厳しいスケジュールをこなしてきたのかを示す指数です。
例えばあるチームが2つ(AとB)あったとしてこの2チームを格付けする際、まず最初にみるのはストレングス・オブ・スケジュールです。もしAチームのスケジュールに組まれた対戦相手にランクチームが複数いて、一方Bチームの対戦相手にランクチームが全くいなかったとします。この場合Aチームのスケジュールの方が当然過酷なスケジュールだ、と言う判断ができます。
そしてもし実際のレコード(戦績)Aチームが8勝2敗でBチームが10勝0敗となった場合、10勝しているBチームの方が勝ち星が多いことになりますが、たとえ2敗していてもAチームの方が強いチームと戦ってきた場合にはAチームのレコードの方に価値を見出す、と言うものです。
また別の説明の仕方として、AチームとBチームが対戦相手を入れ替えた時に、それぞれがどれくらいの戦績を残せるか、かを考慮していくという言い方もできます。
例えば、強豪ばかりと戦ってきたAチームのスケジュールを仮にチームがこなしたとした時、Bチームも8勝2敗かそれ以上のレコードを再現できるか、と言うことです。それができなければAチームのストレングス・オブ・レコードはBのそれよりも高いと言うことになると言うわけです。
つまりストレングス・オブ・レコードとは、組まれたスケジュールの中で実際にどれだけの結果を残せたのか、を示す指数だといえます。弱いチームとばかり対戦して全勝したとしてもそれがどれだけの価値があるのかとか、1敗2敗したとしても強豪校ばかりとの対戦をこなしていればそのチームの戦績には価値がある、といった判断するのに使用される評価です。
そのほかには「アイテスト(Eye Test)」と呼ばれる、完全主観の印象とか、スコアのポイント差(マージン・オブ・ビクトリー)、つまり大差で勝った試合結果を評価するとかいった審査基準もあったりします。
リリース予定
CFPランキングは今後毎週火曜日に発表され、第6回目となる12月7日(この日だけ日曜日、各カンファレンスの優勝決定戦が終わった翌日)のファイナルランキングの結果により12チームの出場チームが選出されます。
第1回目:11月4日
第2回目:11月11日
第3回目:11月18日
第4回目:11月25日
第5回目:12月2日
第6回目:12月7日(ファイナル)
12チーム選出方法
プレーオフに進出するには2つの道があります。現在のフォーマットは「5-7フォーマット」と言われる場合もあります。
カンファレンス優勝チーム(5チーム)
俗に言う「パワー4」カンファレンス群に所属する、ACC(アトランティックコーストカンファレンス)、Big 12カンファレンス、Big Tenカンファレンス、SEC(サウスイースタンカンファレンス)の各カンファレンス優勝チームには自動的にプレーオフ出場権が与えられます。
さらに中堅カンファレンス群である「グループオブ5」(Pac-12カンファレンスも含めてグループオブ6と言われる場合もある)のアメリカンカンファレンス、カンファレンスUSA、ミッドアメリカンカンファレンス、マウンテンウエストカンファレンス、サンベルトカンファレンスの各優勝チームの中でランキングが最も高い1チームにもプレーオフ出場権が無条件で与えられます。
グループオブ5カンファレンス群に所属している大学がCFPランキングトップ25位に入っていない場合でも、選考委員会がグループオブ5の各カンファレンス優勝チーム5校をランク付けしてその中で最もランクの高いチームにプレーオフの舞台への切符が与えられることになるのです。
アットラージ枠(7チーム)
12個用意されているプレーオフ出場の椅子のうち、カンファレンス優勝チーム5つを除いた7個の空いた椅子に座るチームを決めるのに使用されるのかCFPランキングです。この残された枠のことをアットラージ枠(At-Large)と呼びますが、この7個の枠をファイナルCFPランキングの上位チームから順番に埋めていくことになります。
上位12位に入っても出場できるとは限らない
このような選出方法となっているため、CFPランキングで上位12位以内に入っていない場合でもカンファレンスで優勝すればそのチームには自動的にプレーオフ出場権が与えられるので、12個ある椅子が全てCFPランキング上位12チームに与えられることにはなりません。
例えば昨年のCFPでは、ACCのチャンピオンであるクレムソン大はファイナルCFPランキングで16位となり、上位12位以内に食い込むことはできませんでしたが、ACCのチャンピオンに与えられる自動出場権獲得によりプレーオフに進出を決めました。さらに12位だったアリゾナ州立大はBig 12カンファレンスの優勝チームだったため、彼らにも自動出場権が与えられたため、結果的に11位だったアラバマ大が上位12位以内にランクインしたにも関わらず弾かれてしまったというケースが発生しました。
ノートルダム大(無所属/独立校)
このようにプレーオフ出場には2つの道(カンファレンス優勝とアットラージ枠)が用意されていますが、カンファレンスに属していない無所属・独立校はカンファレンス優勝を経由してのプレーオフ出場という道がありません。現在独立校として生き残っているのはノートルダム大とコネチカット大のみ。実質的にプレーオフ出場を狙えそうなのがノートルダム大のみであることを考えると(失礼!→コネチカット大)、彼らがプレーオフに出場するにはアットラージ枠を使う以外方法はありません。そういう意味では選択肢が狭まって不利とはいえます。
とはいえ、12チーム制度となった昨年にノートルダム大は見事にCFPランキングで5位に入って見事にプレーオフに出場し、結果的にはナショナルタイトルゲームにまで進出するに至りました。彼らにしてみればファイナルランキングで10位ないし11位以内に入ることが必須条件となります(その時の状況による)。
シード権
12チーム制度となった昨年は上位4チームにファーストラウンドバイ(お休み)の特権が与えられていました。この4チームの選出方法は、各カンファレンスの優勝チーム5つのうち、順位が高い方から上位4チームにトップ4つのシード権が与えれるというものでした。
しかし昨年は、グループオブ5のボイジー州立大(ランキング9位)とBig 12カンファレンスのアリゾナ州立大(ランキング12位)という、下位ランクのチームに上位4つのシード権が与えられるというケースとなり、プレーオフなら最強の上位4チームにこのシード権を与えるべきだったという批判が沸き起こりました。
ちなみに昨年ファイナルランキングでトップ4以内に食い込むもカンファレンスチャンピオンではなかったために上位4シードを与えられなかったのは、3位だったテキサス大と4位だったペンシルバニア州立大でした。
これを受け、今年のプレーオフからは単純にファイナルランキングの上位4チームに与えられることになり、カンファレンス優勝チームである必要は無くなりました。
プレーオフのフォーマット
ファーストラウンドは第5シードから第12シードの8チームが対戦することになりますが、これらの試合は全てシード権が高いチームが自らのキャンパスで試合を開催するという、画期的なフォーマットになりました。ホームチームとしてのアドバンテージが大いに期待できる訳です。
このファーストラウンドを勝ち上がった4チームが上位4シードチームとそれぞれ準々決勝戦を行うことになりますが、この4試合とその後に行われる準決勝戦の2試合の6試合は、これまで「ニューイヤーズ6」と呼称されきた、カレッジフットボール界でも著名な6つのボウルゲームによって行われます。その6つのボウルゲームとは・・・
ローズボウル(ローズボウルスタジアム・カリフォルニア州パサデナ)
フィエスタボウル(ステートファームスタジアム・アリゾナ州グレンデール)
シュガーボウル(スーパードーム・ルイジアナ州ニューオーリンズ)
オレンジボウル(ハードロックスタジアム・フロリダ州マイアミ)
ピーチボウル(メルセデスベンツ・ジョージア州アトランタ)
コットンボウル(AT&Tスタジアム・テキサス州アーリントン)
この6つのメジャーボウルゲームが毎年ローテーションを組んで準々決勝と準決勝を開催するという仕組み。そしてCFPナショナルタイトルがこれらを勝ち抜いた2チームによって争われるわけです。このタイトルゲームはスタンドアローンのチャンピオンシップゲームとなります。試合会場は以下のように予定されています。
2025年度:ハードロックスタジアム(フロリダ州マイアミ)
2026年度:アレジアントスタジアム(ネバダ州ラスベガス)
2027年度:スーパードーム(ルイジアナ州ニューオーリンズ)
2028年度:レイモンドジェームススタジアム(フロリダ州タンパベイ)
2029年度:ハードロックスタジアム(フロリダ州マイアミ)
まとめ
過去10年続いた4チーム制のプレーオフが2024年から12チーム制に拡張され、参加チームの門戸が大きく開かれました。それによりこれまで同じような顔ぶれのチームしか出場していなかったプレーオフの参加チームの顔ぶれが大きく変わり、ナショナルタイトルを狙えるチャンスが増えたことで、シーズン終盤の大一番やカンファレンスチャンピオンシップゲームにより注目が集まるようになりました。
また、ファーストラウンドがキャンパス開催となったことも大成功だったといえます。個人的なことを言うと、昨年ファーストラウンドとして行われたペンシルバニア州立大とサザンメソディスト大の試合を観戦しに行きましたが、負けたらそれで終わりというレギュラーシーズンの試合とはまた違った緊張感や盛り上がりがあり、興行としてもとてもうまくいったシステムだといえます。
この記事がリリースされる頃にはすでに第1回目のランキングが発表済みですが、ここからファイナルランキングが発表されるまでの5週間は、これまでとは違ったサバイバルレースの様相を呈す5週間となります。今後は毎週発表されるCFPランキングを注目しながら流動的となるCFP出場権争奪レースを見守りたいと思います。






