
昨年のオハイオ州立大を回想して真っ先に思い出すのはウィスコンシン大との激戦でも、ミシガン大とのオーバータイム戦でもなく、残念ながらカレッジフットボールプレーオフ(CFP)準決勝戦のクレムソン大との完封負けに尽きます。この屈辱的な敗戦は現役選手やアーバン・マイヤー(Urban Meyer)監督らコーチ陣には受け入れがたい現実でしょう。しかし常に全米制覇を課せられた彼らにとっては、究極的に言えばどんな形であろうが負けは負けであり、それは接戦だろうが乾杯だろうが目標を達成できなかったという意味では負け方はあまり関係ないのです。
マイヤー監督らにしてみればシーズンの最後に優勝トロフィーを手にしていなければその他の結末は色あせてしまいます。彼らは今年こそ2014年度以来の栄光を手にしようと開幕を今か今かと待っているはずです。彼らが昨年の雪辱を果たすことが出来るのか、今シーズンのチームの展望を見てみましょう。
オフェンス
昨年のオハイオ州立大のオフェンスは毎試合冴えているわけでも、安定感があるわけでもありませんでしたが、終わってみればスコアリングオフェンスで全米13位に落ち着きました。それを現実のものとさせたのはスーパースター選手が居ない中で非常にバランスの取れた攻撃を繰り広げることが出来たからでしょう。
そんなシーズンを経て今季のオハイオ州立大のオフェンスは全米でもトップレベルの評価を受けています。それを指揮するのは新オフェンシブコーディネーターの一人であるケヴィン・ウィルソン(Kevin Wilson)氏です。ウィルソン氏は昨年までインディアナ大の監督を務めていましたが、弱小とされてきたインディアナ大のオフェンスををたったの数年で戦える集団に変えた張本人です。彼の下オハイオ州立大オフェンスは昨年CFP準決勝戦でクレムソン大から味わされた完封負けの屈辱を払拭すべく新たなシーズンを迎えます。
その先鋒となるのが今年4年生になったQB J.T.バレット(J.T. Barrett)です。これまで彼は先発の座を数々のQBと争ってきましたが昨年は唯一無二の存在としてチームをリード。そして今年も有終の美を飾るべくチームに戻ってきました。Big Tenカンファレンスでも最高レベルと謳われるOL陣を盾に今シーズンも大暴れしそうです。しかし彼らに全く弱点があるわけでもなさそうです。というのも昨年バレットはトータル28つものサックを喰らったという数字が残っているからです。バレットはどちらかと言うと足を使うQBですから、このサック数は一概にOL陣のせいとは言えませんが、気になる数字ではあります。
またこの強固なOL陣の恩恵を受けるのが若干2年生のRBマイク・ウェバー(Mike Weber)です。機動力のあるバレットとともにオハイオ州立大のランアタックは脅威となるでしょう。問題はWR陣です。というのも昨年のトップ3レシーバーがチームを去ってしまったからです。プレーのチャンスを待ちかねていたヤングバッカイズたちの出番が回ってきたというわけです。このチャンスを活かすも殺すも彼ら自身にかかっています。
ディフェンス
毎年のように多くのディフェンダーをNFLに送り出しているオハイオ州立大ですが、今年もそれにもれず多くの主力が抜けた穴を埋めなければなりません。しかしその度に新体制でシーズンに臨んできましたが彼らの結果をみればどれだけ前年度の主力が抜けても戦力を落とすことなくシーズンを乗り越えられたことを証明しています。
特にフロントセブンには昨年のQBサック数トップ5人が全て今年も戻ってきます。その中でも先発の4人は合わせて28サックを量産し早くもプロ入り確実の声が高いです。全米で見ても5本の指に入るポジションと言えるでしょう。
ディフェンシブバックからはNFLドラフトでのファーストラウンダー、マリク・フッカーが去りましたが、昨年の先発Sデーモン・ウェブ(Damon Webb)、CBデンゼル・ワード(Denzel Ward)が健在なのは強みですし、何よりもこのポジションも上記と同じように次世代を担うプレーに飢えた選手たちが溢れています。
ディフェンス陣の鍵はどれだけ自身が持っているタフネスさを持続できるかにかかっています。フィジカル加減が物を言うランディフェンスにおいては、昨年100ヤード以上走られた試合が6試合しかなかったことを考えれば、ランを止めることに関しては問題はないでしょう。しかしそれを大事な試合で発揮できるかが勝負となるのではないでしょうか。
例えば昨年オハイオ州立大と対戦したウィスコンシン大は自分たちの十八番であるランオフェンスを直でオハイオ州立大ディフェンスにぶつけてきました。その結果オハイオ州立大は辛くも白星を拾いましたが、その代償として236ランヤードもウィスコンシン大に許してしまったのです。そして先に挙げたクレムソン大との屈辱の試合でも彼らは相手に205ヤードも足で稼がれてしまいました。因みにもっと言えば昨年絶不調であったミシガン州立大にすら207ランヤードを献上したのです。
見どころ
シーズン2戦目にしてオハイオ州立大は昨年のBig 12チャンピオン、オクラホマ大をホームで迎え撃ちます。カンファレンス戦であるウィスコンシン大戦、ペンシルバニア州立大戦、ミシガン大戦で勝ち星を挙げるのももちろん大事ですが、CFPに再び進出するにはこの交流戦(ノンカンファレンス戦)に勝利することが何よりも必須事項となります。実際昨年度もオクラホマ大のホームで白星を挙げたことが、1敗を喫しなおかつカンファレンスタイトルを奪えなかったにも関わらず彼らをプレーオフに進出させたきっかけとなったのです。
オクラホマ大戦を生き延びればその後の5連戦は問題なく勝ち星を重ねることができると思われます。しかしバイウィーク明けの10月28日のペンシルバニア州立大戦あたりから彼らのスケジュールはタフになっていきます。ペンステートのあとはアイオワ大、ミシガン州立大と続き、イリノイ大戦を挟んでシーズンフィナーレのミシガン大戦を迎えます。オハイオ州立大のスケジュールは終盤になるほど厳しくなっていくのです。
そのファイナルストレッチの対戦相手の顔ぶりを見ればオハイオ州立大がパーフェクトな12勝0敗でレギュラーシーズンを終えられるかはわかりませんが、可能か不可能かでいえば可能だとも言えます。しかし今述べた終盤に行われる強豪4チームとの試合をどれか一つでも落とせば、東地区代表への道に黄色信号が灯ることになるでしょう。
ですが、オハイオ州立大の目標はプレーオフに再び帰ってくることです。Big Tenのタイトルを取ることももちろん重要ですが、昨年彼らはそれをなし得なかったのにもかかわらずCFPに進出できることを自ら証明しました。過去3年間で2度プレーオフ進出を成し遂げているわけですから、今年3度目の出場を果たせばそれはアラバマ大に次ぐ出場記録となります。もちろん選手、コーチ、ファンたちは全米のてっぺんを狙ってくるでしょうし、今年のオハイオ州立大はそれを体現できるだけのポテンシャルは秘めているようです。
2014年度以来のナショナルタイトル獲得となるでしょうか?

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8月31日 | ![]() | インディアナ大 |
9月9日 | ![]() | オクラホマ大 |
9月16日 | ![]() | 陸軍士官学校 |
9月23日 | ![]() | ネバダ大ラスベガス校 |
9月30日 | ![]() | ラトガース大 |
10月7日 | ![]() | メリーランド大 |
10月14日 | ![]() | ネブラスカ大 |
10月28日 | ![]() | ペンシルバニア州立大 |
11月4日 | ![]() | アイオワ大 |
11月11日 | ![]() | ミシガン州立大 |
11月18日 | ![]() | イリノイ大 |
11月25日 | ![]() | ミシガン大 |
*太字はホームゲーム
所在地
オハイオ州コロンバス
所属カンファレンス
Big Ten(東地区)
ホームスタジアム
オハイオスタジアム
通算戦績
886勝322敗53分け
通算ボウルゲーム戦績
22勝25敗
ヘッドコーチ
アーバン・マイヤー
61勝6敗(5年目)
【通算:165勝29敗】
前回全米優勝年度
2014年度
前回Big Ten優勝年度
2014年度
前回ボウルゲーム出場年度
2016年度(CFP)