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Big Tenの悪あがき

オハイオ州立大ミシガン大ペンシルバニア州立大といった現在のカレッジフットボール界を盛り上げてくれる強豪チームを抱えるBig Tenカンファレンス。残念ながら彼らは既にコロナ禍を受けて2020年度シーズン開幕を延期することを既に発表しています。

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ベースボール・マガジン社 (編集)

以前お伝えしたようにカレッジフットボール界は1部の上位ディビジョンであるFBS(フットボールボウルサブディビジョン)に所属するカンファレンスと一部のFCSカンファレンス以外全ての秋スケジュールにが白紙になりました。そしてFBS内でも ここで紹介するBig Tenカンファレンス並びにPac-12カンファレンスミッドアメリカンカンファレンスマウンテンウエストカンファレンスが不参戦となっています。

Big Tenが不参戦を表明したのは割と早い段階でしたが、いわゆる「パワー5」カンファレンスでもアトランティックコーストカンフレンスBig 12カンファレンスサウスイースタンカンファレンスはシーズン開幕予定であり、今の所この決断に変更は見られません。

そうなるとBig Tenカンファレンスに所属する大学たちは「他のカンファレンスが開催できて何故俺たちが開催できないんだ!」と激怒し、カンファレンスがこの決断を覆すように声を上げてきました。

ワレン氏の決断は英断かそれとも愚断か

もっともカンファレンスがこの決断に至った背景には彼らのメディカルアドバイザーたちのコロナウイルスに関する健康への悪影響の危惧があったからなのですが、最終的に決断するために投票があったとか無かったとか情報が錯綜。コミッショナーのケヴィン・ワレン(Kevin Warren)氏もあとになってコミニケーション不足を認めていましたが、トップダウンでの統率力の無さが浮き彫りになった形になりました。

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Big Tenコミッショナーのケヴィン・ワレン氏

ワレン氏は決断を覆すことはないと断言しましたが、収まらない批判の声を受けて再び所属大学の大学長が集い今秋開催の是非を問う投票を実施し、11対3で秋季開催を見送る決議が支持されました。

ここでBig Tenに所属する大学らの泣き言(笑)がようやく収まるかと思われましたが、この事態になんとアメリカ合衆国大統領、ドナルド・トランプ(Donald Trump)氏が介入。彼はワレンコミッショナーに直接電話をかけてBig Tenフットボールの秋開催を早急に決めることを要請。その会談は「とても建設的だった」(大統領談)ということですが、プレジデント直々にそんなことを言われてしまったワレン氏としてはおそらくまた面倒が増えたと頭を抱えたことでしょう。

トランプ大統領はコロナ禍で落ち込んだ経済を回復し11月の選挙を有利にすすめるために、何としても現在の生活をもとに戻したいと躍起になっており、学校もリモートではなく対人授業にするよう強く進めていますし、ビジネスもなるべく早くリオープンするように推し進めています。その延長線上にこのBig Ten開催を要請した経緯があるのでしょう。

この大統領の勅令ともいえる進言でBig Tenカンファレンス内では再び今秋開幕の機運が高まります。ある筋の情報では10月10日開幕を目指して調整中などという話も出ており、おそらく各チームはシーズンがなくなってしまった現在でもトレーニングを続けているとは思いますが、そんな先の見えない中で練習をこなしている選手たちにとってはある意味一筋の光となったことでしょう。


コロナウイルスと心筋炎

が、ここに来てまた新たな報道が。というのもペンシルバニア州立大のスポーツ医学チームの主治医の話によると、Big Ten内でコロナウイルスに感染した選手らのうち30から35パーセントのケースに心筋炎(Myocarditis)の疑いが見られるというものでした。

心筋炎とコロナウイルスの関連性は度々報じられてきました。心筋炎はウイルス感染から引き起こされると言われ、その症状には心臓機能が弱り心不全に陥る可能性があると言われており、心肺機能に負担のかかるスポーツ選手にとっては無視できないコンディションなわけです。

当然コロナウイルスに関してはまだまだ未知な部分が多く、当然ながら長期的なウイルスによる影響などは分かるはずもありませんが、危険性が解明されないままスポーツ活動に参加することがいいことなのか悪いことなのかというディベートはなされてきてはいました。

しかしこの30から35パーセントというのはいささか多い数字に聞こえます。まだ正式な文献などで発表はされていませんがこの情報は一斉に大学スポーツケイメディアで報道され、それを受けてかBig Tenの関係者の話では10月10日開幕などありえないという談も出ています。

リーダーシップの欠如

しかしよくよく考えてみれば、Big Tenがシーズンを延期すると発表して以来選手たちは自分自身がプレーしたいという気持ちがあったとは言え大人の都合に振り回されている感は否めません。医学的に見て安全ではないというアドバイザーたちの進言のものに下された決断であるにも関わらずそれに従えないのは、何としても選手らにプレーさせてあげたいという親心もあるのでしょうが、やはり開催出来ないことで食らうことになる大幅な赤字ビジネス、他カンファレンスが開催に向かってまっしぐらになっていることに対するやっかみやエゴ、そしてなによりもリーグオフィスに対する不信感が存在するからでしょう。

Big Tenカンファレンスが全米で最も安定し成功したカンファレンスに成長したのは前コミッショナーであるジム・デレイニー(Jim Delany)氏の尽力によるところが大きいとされています。デレイニー氏は1989年から2020年までの約30年もの間このリーグの長として君臨しリーダーシップを誇示し続けてきました。現在のCFP(カレッジフットボールプレーオフ)の全身となるBCS(ボウルチャンピオンシップシリーズ)システムの設立にも大きな役割を果たし、そのカリスマ性から彼の発言力は強大なものとなっていました。

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前Big Tenコミッショナー、ジム・デレイニー氏

その彼が引退しあとを引き継いだのがワレン氏ですが、その1年目にこのような重要な件案を扱わなければならなくなった彼には同情しますが、もしデレイニー氏がトップだったとしたらここまでカンファレンスの決定に食い下がるような大学も現れなかったことでしょうから、開催を見合わせた決断の良し悪しに関わらずここまでの混乱を生むことはおそらく起きなかったことでしょう。

臨床データであるとは言え、Big Tenの身内であるペンシルバニア州立大から上記のような健康上の危惧が発表された今、果たして彼らはそれでも今季開催を諦めるつもりはないのでしょうか・・・。

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