'25

ランキング

順位表

プレシーズン

ボウルゲーム

予定/結果

順位表

過去20年間におけるお金がらみのスキャンダルトップ5

過去20年間におけるお金がらみのスキャンダルトップ5

近年はアメリカの大学スポーツ界においてNIL(Name/Image/Likeness)を通じてお金を稼げるようになりました。更には今年7月から大学が直接学生アスリートに収益を分配できる「レヴェニューシェアリング」が導入され、一昔前ならどのような方法でも自分のスポーツに関わることを通じてお金を稼ぐことは御法度だったことを考えると、時代は大きく変わったといえます。

NILはもともと学生アスリートが自身の肖像権やタレント力を使って収入を得てもいいという仕組みであり、彼らが金銭面的な利益を得るサポートをする目的で許可が下りたものです。例えば同じ大学生でも音楽部の学生が自分でコンサートを開いてその音源を売ることが許されるのに、似たようなことが学生アスリートには許可されないのはおかしいというのが思考の根底にあったりします。

アスリートたちはそれぞれのスポーツをプレーする対価として金銭を受け取ることは長らく禁止され続けてきました。いわゆる「Pay for Play」というものに当たりますが、これがNCAA(全米大学体育協会)が学生アスリートたちをアマチュアに留めておくための最後の砦でした。しかし前述の通り「レヴェニューシェアリング」が現実のものとなったため、大学スポーツがアマチュアスポーツである、とは言いづらくなってしまったのが実情です。

カレッジフットボール史上、いい選手を獲得しようとする大人たちは様々な手を使って有能リクルートたちを自分の懐に入れようと試みは形を変えながら存在し続けてきました。NILも同様で、そう言った大人たちが巨額のNILディールを餌に高校生たちを釣っているという状況は表立ってあからさまに行っているものから、表面に出てこないものなど様々です。

そして前述の通りNILのルールには厳しく取り締まるようなものがないため、様々な理由をこじつけて大人たちが大金をちらつかせ、それを理由に高校生が進学先を決める・・・なんていう状況が起きています。ただ、表向きはNILの対価ということ、そしてそれを取り締まるルールが甘いためこのようなことが起きているのです。

昔はこのような仕組みはありませんでしたが、バレないように選手にお金を渡して勧誘したりチームに引き留めたりすることは横行していたと言います。もちろんバレれば当然NCAAからの鉄槌が下るわけですが、それは何も現玉(古いか笑)だけに限ったことではなく、支払いをチャラにしてもらったとかそういう行為もタブーなわけです。

そこで今回は、過去に世に出てバレてしまった、お金がらみのスキャンダルトップ5を紹介していきたいと思います。

(今回の内容なポッドキャストの#112の一部を書き起こして内容を編集したものです)

https://open.spotify.com/episode/1rZ4qGAFmn7z8ubJrhMf8r?si=Bzisov0MRiO7uE_8KRwXCw

created by Rinker
ベースボール・マガジン社 (編集)

5:ノースカロライナ大選手のスキャンダル

2010年、ノースカロライナ大の選手がスポーツエージェントが主催したマイアミでのパーティーに参加。この際ギフトやお金をエージェントから受け取っていたという事実が発覚。結果5人に処罰が下され、うち2人は2試合の試合出場禁止処分、別の2人に無期限謹慎処分、そして最後の1人は退部処分となりました。

また同じ頃フットボールの数人が替え玉を使って論文を提出していたことが発覚。これを含め合計13人の選手が何かしらの処分を受けるというスキャンダルに発展。

また当時の監督補佐だったジョン・ブレイク(John Blake)氏が辞任、2011年には監督のブッチ・デーヴィス(Butch Davis)氏が解雇、そしてNCAAからは2010年のボウルゲーム出場禁止処分、15人分のスカラシップ(スポーツ奨学金)剥奪、そして3年間の猶予処分を受ける羽目になります。

4:スポーツエージェント、ラッシュ氏の告白

同じく2010年、スポーツエージェントのジョシュ・ラッシュ(Josh Luchs)氏が、かつて1990年から1996年の間に最低でも30人のカレッジ選手にお金を渡していたことを暴露しました。

その中には、1992年のドラフトで総合23番目でチャージャーズに指名された元テネシー大のDLクリス・マイムス(Chris Mims)、1994年のドラフトで総合10番目にカーディナルズに指名された元UCLAのLBジャミアー・ミラー(Mamir Miller)、そして1998年のドラフトで総合2番目にチャージャーズに指名された元ワシントン州立大のQBライアン・リーフ(Ryan Leaf)らが含まれていました。

これはエージェントがお金を払うことで、将来その選手がプロになった時に自分をエージェントとして雇ってもらうための便宜と考えられており、当然そんなことは許されている活動ではありません。カレッジ選手はエージェントとコンタクトを取ることも許されていないので、もしバレていれば即刻プレー資格剥奪ものの違反行為だったといえます。

また、噂ではこのようなことが起きていると囁かれていたものの、ここまで大っぴらにそれを暴露したことはそう多くなかったため、このことが明らかになった時の衝撃の大きさはなかなかのものでした。

3:レジー・ブッシュのスキャンダル

2005年にカレッジフットボール界を駆け抜け、個人賞の最高峰であるハイズマントロフィーを獲得したサザンカリフォルニア大のRBレジー・ブッシュ(Reggie Bush)。しかし、後年彼が在学中に30万ドル(1ドル100円計算で約3000万円)をエージェントから受け取っていたことが発覚。

これを受けて2010年にブッシュ氏は獲得していたハイズマントロフィーを自ら返還しましたが、トロフィー受賞者が自らトロフィーを返還したのはこれが初めてのことでした。

さらにサザンカリフォルニア大には重い制裁が下されます。彼がお金を受け取った日以降の大学の勝利数が全て剥奪(2004年の最後の2試合、そして2005年の全記録)、またそれにより2004年に手に入れていた全米優勝も白紙に。

2010年と2011年のボウルゲーム出場も禁止され、2010年から3年間スカラシップを与えることができる数が30人分も削減されてしまいました。お金に絡むスキャンダルがNCAAをどれだけ怒らせるかが明らかになった事例といえます。

この時を境にサザンカリフォルニア大は10年間ブッシュ氏との関係を断ち、彼はキャンパスに足を踏み入れること許してもらえませんでした。しかし2020年にuscとの関係を修復し、彼が返還したトロフィーも2024年に手元に戻ってきました。

2:オハイオ州立大のタトゥーゲイト

2010年(この年は何かと事件が多かった)、当時のスターQBだったテレル・プライヤー(Terrelle Pryor)を含む5人のオハイオ州立大選手が2008年度シーズンにBig Tenカンファレンスを優勝した際に授与された優勝リングを売りさばいて利益を得たばかりか、地元のタトゥーショップにサイン入りグッズなどを渡す代わりにタダでタトゥーを入れてもらったことが発覚(いわゆる「タトゥーゲイト」)。

そのどの行為もNCAAにより禁止されているもので、この5選手には2011年の開幕から5試合の試合出場禁止処分が言い渡されました。プライヤーは結局2011年度に大学には戻らず、プロ入りを目指し、2011年の補填ドラフトにてレイダース入りを果たします。

ただ大学では当時の監督だったジム・トレッセル(Jim Tressell)監督が解雇。というのも、トレッセル氏はこの5人がNCAAの規則違反を犯しているのを知りながらそれを隠そうとしていたことがバレたからです。

さらに2010年に記録した12勝1敗のうち全ての勝利数が剥奪。公式記録は0勝1敗に。2025年8月現在、NCAA1部チームの勝利数記録においてオハイオ州立大はアラバマ大(974勝)についで歴代2位となる978勝ですが、この制裁がなければ990勝で1位のミシガン大(1012勝)を追っていたことになります。

ちなみに2011年開幕直前にトレッセル監督が解雇になってしまったオハイオ州立大は臨時コーチとして当時ディフェンシブコーディネーターを務めていたOBでもあるルーク・フィッケル(Luke Fickell)監督を指名。この年は1988年以来となる6勝7敗の負け越しシーズンとなってしまいました。そのフィッケル監督は現在ウィスコンシン大の監督を務めています。

1:キャム・ニュートンのプレー資格

2007年から2008年までフロリダ大に所属し、2007年にはティム・ティーボ(Tim Tebow)のバックアップを務めていたQBキャム・ニュートン(Cam Newton)。しかし2008年には窃盗事件やアカデミックな問題を抱え、この年出場した全米優勝決定戦の3日前にトランスファーを好評。

2009年にはテキサス州の短大へ編入し短大の全米優勝を果たすと、2010年にフロリダ大と同じSEC所属のアーバン大へ転校が決まります。

しかしアーバン大のキャンパスを踏む前に、彼を同じくリクルートしていたミシシッピ州立大に対して、ニュートンの父親が「息子がそちらでプレーするためにはスカラシップだけでなく最大で18万ドルを用意する必要がある」と迫っていたということが明らかになります。

こういった行為はNCAAルール違反であり、ニュートンがアーバン大に入部してシーズンが開幕した後もこの話で持ちきりでしたが、レギュラーシーズン終盤に遂にニュートンのプレー資格が無効という決断が下されますが、SEC優勝決定戦の前日にニュートンのプレー資格が回復。

これはニュートンの父が単独で行っていた行為であり、ニュートン自身さらにはアーバン大はこのことに関与していなかったことが証明されたためです。

こうして無事にSECタイトルゲームに出場したニュートン率いるアーバン大はサウスカロライナ大に56対17と大勝。ニュートンはそのままハイズマントロフィーを獲得しますが、もしNCAAが下したプレー資格剥奪が回復していなければこのトロフィー受賞は幻と消えていたことでしょう。

ちなみにこの時のアーバン大は全米1位チームとして2位だったオレゴン大BCS(ボウルチャンピオンシップシリーズ)ナショナルタイトルゲームで激突。これを22対19で下し見事13勝0敗で全米タイトルを獲得したのでした。

結局ニュートン側への金銭の譲渡はアーバン大からは確認されませんでしたが、父親単独でこのことをやったことに疑惑の声は未だ残っていますし、単独での行動だったとしても、選手を特定のチームでプレーさせるためにそのインセンティブを要求するという行動自体が明るみに出たことが、似たようなことが他でも怒っているのではないかという疑念を有無には十分な事件となりました。

デスペナルティー

以上ご紹介したのは過去20年間でのスキャンダルですが、カレッジフットボール界におけるお金がらみの最大のスキャンダルといえばやはりサザンメソディスト大(SMU)の事件です。​​

彼らは1980年代に選手に不正に金銭を譲渡し、またリクルーティング違反を頻繁に起こしたことにより1年間の対外試合禁止という後にも先にも彼らぐらいしか無い厳しい制裁を喰らいました。俗に言う「デスペナルティー」です。

1年間(1987年)の全ての対外試合禁止だけでなく、彼らには以下の制裁が下されました。

  • 1988年度シーズンのホームゲーム禁止
  • ボウルゲーム出場禁止(1989年まで)
  • 4年間で55人分のスカラシップ削除
  • 最大5人(通常は9人)のコーチ陣
  • キャンパス外でのリクルーティングの禁止(1988年まで)

1987年度に試合ができなかったことと、このスキャンダルで多くの選手が流出したことで翌年となる1988年度シーズンを戦えるほどの戦力が残っていないと判断した大学側は2年目も自主的にシーズンをキャンセルしました。

これ以前には1981年と1982年にナショナルチャンピオンにまで輝くほどの力をもっていたSMUでしたが、このデスペナルティのお陰で彼らの戦力がガタ落ち。昨年度はCFP(カレッジフットボールプレーオフ)進出を見事に果たしましたが、それまで彼らは長い間暗黒の時間を過ごしてきたのです。

NCAAの仕事の大きな一つにはアマチュアリズムを守るという事が挙げられます。NILでお金を得ることはアマチュアリズムを逸脱することにはなりませんが、いつの時代にもルールを最大限に利用して利益を得たり、自分の思い通りにしようとする大人が現れたり、またそれをなすためにルール違反を犯す大人も出てきます。

もちろんルール違反であることを承知の上でお金を手にする学生アスリートには制裁は下されるべきですが、お金至上主義になりつつある現在のカレッジスポーツ、特にフットボールやバスケットボールには大きな不安を感じずにはいられません。

この記事が気に入ったら拡散&フォローお願いします!
ツイート
この記事が気に入ったら拡散&フォローお願いします!
ツイート
このエントリーをはてなブックマークに追加
このエントリーをはてなブックマークに追加
RELATED POSTS 
関連記事

ANY GIVEN 
SATURDAY

全米カレッジフットボールファンサイト