2017年度、後がないカレッジコーチ六選

2017年度、後がないカレッジコーチ六選

近年カレッジコーチには未だかつてないほどのプレッシャーが掛けられます。それが試合に勝たなければならないというプレッシャーだったり、より良い選手をリクルートしなければならないというプレッシャーだったり・・・。彼らが稼ぐサラリーも異常なまでに高額になるばかりですから、それに見合うだけの働きを大学側が望むのも当然と言えば当然ですが。

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ベースボール・マガジン社 (編集)

結果が出るまでどれくらい関係者たちが我慢できるかはチームによって異なりますが、名門になればなるほど早いうちに確かな結果を残さなければ彼らの監督の椅子も危うくなっていくものです。今回は2017年度シーズン開幕を前に今年こそ大きな結果を残さなければ後がないかもしれない監督を6名挙げてみたいと思います。

ブライアン・ケリー(Brian Kelly):ノートルダム大

ノートルダム大が2012年度にナショナルタイトル戦に出場してから早くも4年の月日が流れましたが、彼らの戦力は年々低下の一途を辿るばかりです。今年でノートルダム大8シーズン目を迎えるケリー監督は昨年度4勝8敗と惨敗。ボウルゲーム出場も2009年度ぶりに逃してしまい、今季は大きな挽回を期待したいところです。

昨年はフィールド上での体たらくだけでなく、NCAAからの制裁を喰らい2012年と2013年の記録を抹消されてしまうなど良いところがありませんでした。もし彼の卓越したリクルーティング力がなかったらチームはすでに彼をクビにしていただろうとまで囁かれています。

2017年度シーズンはケリー監督及びノートルダム大フットボール部にとって試練の年となるでしょう。


クリフ・キングスバリー(Kliff Kingsbury):テキサス工科大

チームの元スターQB、その若さ、そしてスタイリッシュなキングスバリー監督は就任時から地元ルボック市で歓迎ムード一色でした。しかし2013年の就任以来これまでボウルゲーム出場回数はたったの1回。そのボウルゲーム(2015年度のテキサスボウル)も敗戦を喫しており、出場したからといって手放しで喜べる記録ではありません。

彼の初年度出会った2013年度は8勝5敗とまずまずのスタートを切りましたが、以降はその記録を上回ることは叶わず、通算成績も24勝26敗と負け越しています。

ルボック市での歓迎ムードはとうの昔にさり、残っているのはファンのため息と歯ぎしりのみ。今年大きなことをやってのけなければ、キングスバリー監督の帰る場所はなくなるかもしれません。

ブッチ・ジョーンズ(Butch Jones):テネシー大

その素晴らしいリクルーティング力で知られるジョーンズ監督。またテネシー大の前任チームであるセントラルミシガン大では27勝13敗、シンシナティ大では23対17敗という結果を残していますので、指揮官としても決して無能な人物というわけではないはずです。テネシー大では彼の初年度となった2013年こそ5勝7敗と奮いませんでしたが、その後は7勝6敗、9勝4敗、9勝4敗と3年連続勝ち越し、そして最近2年間は9勝を上げ、3年連続ボウルゲームで勝利するなど数字は残しています。

しかし、ジョーンズ監督率いるテネシー大は往々にして肝心な試合で結果を出せずにいます。

前述の通りリクルーティングに精通しているジョーンズ監督は多くのハイレベルなリクルートをテネシー大に勧誘することに成功してきており、チームのポテンシャルは高いはずなのですが、どうしてか9勝を挙げた、さらに上へのレベルに達することができずにいます。

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昨年で言えばプレシーズンの評価が非常に高かったテネシー大はSEC西地区レースでアラバマ大に太刀打ちできるとまで言われたほどでした。実際彼らは開幕後破竹の5連勝を飾り、全米ランキングでも8位にまで上り詰めました。しかしそこからまさかの3連敗。そして悪いことに同州ライバルでありながらその力の差は歴然としているヴァンダービルト大にレギュラーシーズン最終戦で破れるという無様な格好を見せてしまいました。

勝ち越しシーズン、ボウルゲームでの勝利、大いに結構。しかしテネシー大のファンたちが心底望むのは悲願のリーグタイトル、そして1998年度以来長く待たれているナショナルタイトル獲りなのです。そのタイトル獲得に大いに貢献した元監督フィリップ・フルマー(Phillip Fulmer)氏を引き摺り下ろしてまでタイトル採りにこだわった大学側への不信感も相まって、今年ファンを満足させるだけの結果をジョーンズ監督が残せなければ、いよいよ本格的にジョーンズ監督不要論が沸き起こることでしょう。

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リッチ・ロドリゲス(Rich Rodriguez):アリゾナ大

アリゾナ大で6シーズン目を迎えるロドリゲス監督。2014年には10勝4敗と二桁勝利数を獲得しましたが、それ以外では正直アリゾナ大は全く注目されないチームになってしまいました。2014年の10勝シーズンを境に2015年度は7勝6敗、そして昨年度は3勝9敗とその傾向は悪くなるばかりです。昨年は最終戦でライバル・アリゾナ州立大に56対35で勝利して一矢報いましたが、そこにたどり着くまでに8連敗を犯すというファンから希望を根こそぎ奪い取るシーズンを送ってしまったのです。

ロドリゲス監督はウエストバージニア大で名声を挙げ、名実ともに名コーチの仲間入りを果たしていましたが、2008年にミシガン大の監督に就任してから風向きが変わり始めます。ミシガン大では15勝22敗でたった3年で解雇されてしまい、多くの人たちがロドリゲス監督はウエストバージニア大に留まっておくべきだったと思ったものです。そして未だそこで落ちてしまった株をなかなか取り返すことが出来ないでいます。今年アリゾナ大で結果を出さなければ、ロドリゲス監督は自身の株を取り返す前に再び職を失うことになりかねません。

クリス・アシュ(Chris Ash):ラトガース大

昨年がアシュ監督にとってラトガース大初年度であったのにも関わらず、このリストに彼の名前が入っているのは時期早々だという人もひょっとしたらいるかもしれません。普通なら3年ほどは成績いかんによらず監督に猶予を与えるものでしょうから。特にリクルーティングを経てチームを自分色に染めるにはある程度の時間を要しますからね。

しかしラトガース大での昨年の様子を見れば、もしアシュ監督が昨年と同様の結果しか残せなければ、ひょっとしたらラトガース大での3年目はないかもしれません。

2016年度のラトガース大の成績は2勝10敗と散々でした。しかし、もともとフットボール強豪校で知られていたチームではありませんでしたし、オハイオ州立大のトップコーディネーターではありましたが、アシュ監督にして見れば初めての監督職ということもあり、数字だけ見ればこの結果も致し方ないのかな・・・と一瞬思えてしまいます。

しかしシーズンの内容が悪かった。開幕後3試合中2勝を飾り、チームの状況も悪くないかと思わせてくれましたが、そこから9連敗しBig Ten内のカンファレンス戦では0勝9敗。しかもオハイオ州立大には58対0、ミシガン大には78対0(!!)、昨年絶不調だったミシガン州立大にすら49対0、そしてペンシルバニア州立大にも39対0と前代未聞の負け方を喫してしまったのです。

不思議なのはオハイオ州立大ではアシュ監督はディフェンシブコーディーネーターを務めていたというようにディフェンス寄りの監督にも関わらずこのように守備陣が崩壊してしまったことです。ラトガース大が上に挙げたようなカンファレンス内の強豪校を叩きのめすとは誰も(おそらくラトガース大のファンでさえ)思っていないでしょう。しかし、上記のように相手に完全に手玉にされるような負け方を続けるようならば、彼に未来はないと言わざるを得ません。

全く先が見えないチーム作りをしているようではリクルートたちは寄り付かなくなりますし、そうなればさらにチームは悪循環を繰り返してしまいます。そうならないように結果がでなければたった2年でも大学側が先手を打ってアシュ監督を見限る可能性も考えられるでしょう。

スティーブ・アダージオ(Steve Addazio):ボストンカレッジ

ボストンカレッジを率いるようになってすでに4年の月日が経ったアダージオ監督。昨年目は彼の「ベストシーズン」となった7勝6敗という成績を納め、クイックレーンボウルでメリーランド大から勝利を奪うというかろうじて勝ち越しシーズンを現実のものとする締めくくり方をすることができました。

しかし4年間で「7勝6敗」がもっともよかった成績、というチームしか育成できずにいるアダージオ監督が果たしてあとどれだけボストンカレッジに居座れるか・・・。

2013年度から7勝6敗、7勝6敗、3勝9敗、7勝6敗と鳴かず飛ばずな成績しか残せないでいるアダージオ監督率いるボストンカレッジですが、問題なのは所属するアトランティックコーストカンファレンス内での成績。4勝4敗、4勝4敗、0勝8敗、2勝6敗とカンファレンスタイトルはおろか、地区タイトルすら取れる見込みがありません。

そして現在の体育局長であるマーティン・ジャーモンド氏の契約が最終年を迎える今年、来たるシーズンでもパッとしない成績しか残せなければジャーモンド氏の後継者が改革の一環としてヘッドコーチの首をすげ替えるという大鉈を振るう決断を下したとしても不思議ではありません。アダージオ監督の命運は今年度のカンファレンス戦いかんにかかっていると言えるでしょう。

まとめ

いかがでしたか?昨今のカレッジフットボール界では勝利至上主義が今まで以上にはびこっており、監督たちには大変大きなプレッシャーがのしかかっていることでしょう。時にそれは理不尽に思えることもありますが、大金を支払っているのに結果を残さないとあれば大学側も苦渋の選択を迫られることになります。俗に「ホットシート(Hot Seat)」と呼ばれる、後のないコーチたちは他にも存在することでしょうが、今年は特にこの6人のヘッドコーチたちが率いるチームの動向に注目してみたいと思います。

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