全米4位のアラバマ大オフェンスが全米2位のクレムソン大ディフェンスと対峙する・・・。言葉で並べれば大変ジューシーなマッチアップですが、しかしこれだけでは試合がどうなるかなんてわかりません。数字的な実力は肉薄していますが、どのユニットにも一長一短あるわけで当然各チームはその穴を探してそこを突こうとするわけですね。
素人の筆者が細かいところまで分析することはおこがましいですが、ファンとしてこの試合を見るに辺り「このマッチアップは是非注目してほしい」という部分はあります。今回はそんな見どころを見ていきたいと思います。
タガヴァイロア対クレムソン大バックフィールド
アラバマ大QBトゥア・タガヴァイロア(Tua Tagovailoa)は今季全米2位となるQBレーティングを保持しています。1位はオクラホマ大QBで今季ハイズマントロフィーを受賞したカイラー・マレー(Kyler Murray)です。ハイズマントロフィーを争ったこの二人が全米トップのQBレーティングを誇るというのはうなずける話です。もっといえば過去15年間で見ても今季のこの二人のQBレーティングはトータルでも1位と2位という数字を叩き出しており、いかにタガヴァイロア(そしてもちろんマレーも)が史上稀に見る逸材であるかがわかります。
そのタガヴァイロアの針の糸を通すような正確なパスアタックを迎え撃たなければならないのがクレムソン大のDB陣。全米24位(1試合平均274.1ヤード)という数字は決して悪いものではありませんが、タガヴァイロア率いるアラバマ大のパスオフェンスが全米6位(1試合平均325.6ヤード)ということを考えれば、この試合でいかにクレムソン大のパスディフェンスが光るかに注目したいところです。
もちろんパスディフェンスだからといってそれを担うのはDB陣だけではなく、フロントセブンのプレッシャーあってこそのパスディフェンスともいえますが、2戦目のテキサスA&M大戦ではQBケレン・モンド(Kellen Mond)に430ヤード(3TD)、そして12戦目のサウスカロライナ大戦ではQBジェイク・ベントレー(Jake Bentley)に510ヤード(5TD)を許すという脆弱さを露呈してしまいました。この点は気になるところです。
アラバマ大RB対クレムソン大DL
アラバマ大は今季全米34位(1試合平均202ヤード)というランオフェンスを擁しています。この数字は通常のアラバマ大にしてみればちょっと少なめですが、それは彼らがタガヴァイロアというパサーを手に入れパスに力を入れ始めたことが影響しているとも言えます。単純にランプレーが減ったというわけです。
それでもアラバマ大にはダミアン・ハリス(Damien Harris)、ジョシュ・ジェコブス(Josh Jacobs)、ナジー・ハリス(Najee Harris)という三者三様のデキるRBが揃っています。このトリオが全米でも指折りの力を持つDL陣の合間を縫って距離を稼ぐのを狙います。が、それは簡単なことではありません。
クレムソン大DLにはクリスチャン・ウィルキンス(Christian Wilkins)、クレリン・フェレル(Clelin Ferrell)というNFL級の選手が揃っているからです。彼らならばアラバマ大OL陣にプレッシャーをかけ続けRB陣を一列目ないし二列目でスローダウンさせることも出来るでしょう。しかしそのOL陣には次期NFLドラフトで一巡目候補と目されるジョナ・ウィリアムス(Jonah Williams)がいますし、3人のRBを使い分けてスタミナを温存すればひょっとしたらクレムソン大の鉄壁にもヒビを入れることは出来るかもしれません。
アラバマ大にとって朗報なのはクレムソン大DLデクスター・ローレンス(Dexter Lowrence)が薬物検査で黒と出てしまい、準決勝戦だったコットンボウルに引き続きこのナショナルタイトルゲームも出場禁止となってしまったことです。コットンボウルでのノートルダム大との試合では彼の不在は対して影響を及ぼしませんでしたが、アラバマ大が相手となると話は別です。
ローレンス対アラバマ大バックフィールド
クレムソン大QBローレンスは今年まだ1年生ながら全米17位のQBレーティングを誇ります。前述したタガヴァイロアのものとは比べ物にはなりませんが、今後どんどん成長していくことが見込まれるため伸びしろは大きいと言えます。
彼を待ち受けるアラバマ大ディフェンスは全米22位となるパスディフェンスを持つ中々のユニット。対するローレンスらのパスオフェンスは全米24位。ポケットの中で冷静でいられればいられるほどローレンスのパスは冴えますから、まずは前列からプレッシャーを掛けてもらってローレンスにディフェンスを読む時間を与えないことが先決です。そしてFSディオンテ・トンプソン(Deionte Thompson)ら身体能力の高いDB陣がクレムソン大のティー・ヒギンズ(Tee Higgins)、アマリ・ロジャーズ(Amari Rodgers)、ハンター・レンフロー(Hunter Renfrow)らWR陣を迎え撃ちます。
クレムソン大OL陣対アラバマ大DL陣
ローレンスのパスアタックが活かされるかどうかはアラバマ大ディフェンスバックフィールドのカベレージに左右されますが、それ以上にルーキーQBをOL陣がいかに守ってあげられるか、にかかっています。ローレンスのQBレーティングが全米17であることは先にも紹介しましたが、一方でプレッシャー下の彼のQBレーティングは全米120位以下にまで落ち込むという統計も出ています。
ですからクレムソン大がバランスの取れたオフェンスを見せるためにはいかにローレンスが守られるかで決まってくると言えます。どんなに有能なQBだったとしても彼は未だ1年生。高校を卒業してから1年しか立っていないのですから。
そしてこここそがこの試合の運命の分かれ目といえるのではないでしょうか。というのもアラバマ大のDL陣はクレムソン大のそれに負けじとも劣らない強力ユニットであり、その最たる人物であるクウィンエン・ウィリアムス(Quinnen Williams)はまだ2年生ながらその年の最優秀インテリアラインマンに贈られる栄誉あるアウトランドトロフィーを獲得した逸材。そして彼とともに相手OLの脅威となるのはアイゼア・バグス(Isaiah Buggs)、リークォン・デーヴィス(Reakwon Davis)というこれまたパワフルなパスラッシャーたちです。クレムソン大OL陣はここまでおそらくアラバマ大ほどのDL陣を相手にしてきていないでしょうから、ここで彼らの真価が問われます。
クレムソン大WR陣対アラバマ大CBサーテイン
準決勝だったオレンジボウルではアラバマ大はオクラホマ大に対して28対0というこれ以上無い出だしで前半から飛ばし、前半の時点で試合は決まったものだと誰もが思いました。しかし後半はQBマレーのマジックで点差をジリジリと詰め寄られました。そしてこの時目立ったのはオクラホマ大オフェンスが執拗にアラバマ大CBパトリック・サーテイン(Patrick Surtain Jr.)にチャレンジを仕掛けていったということです。まだ1年のサーテインは次々とローレンスのカモにされ、彼のサイドでパスが通されていったというシーンを何度も見ました。
もちろんこれをクレムソン大コーチ陣は十分熟知していることでしょうから、このタイトルゲームでもサーテインが狙われる可能性はあります。ここに背の高いヒギンズや大ベテランのレンフローがマッチアップされれば、サーテインにとっては長い1日となりそうです。