ジョージア大の新ヘッドコーチ、カービー・スマート(Kirby Smart)監督のチーム改革は日々続いているようですが、先日所属選手の転校に関するルールを改めちょっとした話題になっています。
前ヘッドコーチ、マーク・リクト(Mark Richt/現マイアミ大監督)氏時代、所属選手が転校(トランスファー)することにリクト監督は何の制限も課しませんでした。つまりもし選手が出て行きたいならば咎めることをせず、またどこへトランスファーしようが口を出さいない。ジョージア大のライバルであるジョージア工科大へ行こうが、同じSECのフロリダ大へ行こうが選手の自由にさせたのです。理由は「人生は一度きりなのだから」ということらしいのですが、なんとも潔い理由です。
しかしこのポリシーはスマート監督によって大きく転換されました。
先月RBのA.J. ターマンがジョージア大からトランスファーすると表明しましたが、スマート監督はターマンのトランスファー先を大きく制限しました。
ターマンがスマート監督から言われたのは、ターマンの出身州であるフロリダ州の学校のみトランスファーを許すが、フロリダ州内のチームでもライバルのフロリダ大と前コーチのリクト監督が指揮するマイアミ大への転校も許可しない、ということでした。つまりトランスファー先はフロリダ州立大、セントラルフロリダ大、サウスフロリダ大、FAU、FIUに絞られます。
このニュースが流れてからさらにスマート監督はこのポリシーにひねりを入れてきました。ターマンはフロリダ州外のチーム転校を許されることになりましたが、やはり例外はあり、ライバル・ジョージア工科大とSECに所属するどのチームにも鞍替えすることはできないというものでした。
よくよく考えてみればこの制限は当然のものと言えます。自分のチームがリクルートしてきたタレントを対戦する可能性のあるチームに流出させるような、「敵に塩を送る」ようなことを許さないのは分かる話です。
「このような制限を儲けるのは至極普通なことです。」とスマート監督も話しています。
たしかにどのSECチームも似たような制限をトランスファーに関してかけています。
ターマンがトランスファーを決意した直後、スマート監督は記者たちにこんなことを言っています。
「私がジョージア大に来たことで(前コーチのリクト監督がいる)マイアミ大に選手が行く選手が今後増えてしまうことを防ぐためにトランスファーに関するルールを変えた。チームを去ったコーチに選手たちが追随しないようにするルールというのは至極普通のことであるということをわかっていただきたい。」
実際ターマンがジョージア大を去ることになった時、スマート監督は他のSECチームの監督たちに助言を仰いだそうですが、どのチームもスマート監督が新しく取り入れたような制限を設けていたことを知ったそうです。
「今回の新ルールに関して私は他のチームと同じようなポリシーを立ちあげたかったのです。それは決してターマンを傷つけるためのものではありません。ジョージア大にとって有益となるルールを定め、他のSECチームと比べても遜色ないものを作り上げるために決定した事項なのです。」とスマート監督は説明しています。
「何か別のものから新しいものへ変わるというのは時に簡単なことではありません。今回のこともそうですが、私にとっては(新ルールの内容は)いたって普通のことだと思います。」
今回の新ポリシーの件、スマート監督の言い分は非常によくわかりますし、理にかなっていると思います。しかし、トランスファーを自由に許していたリクト監督と彼が率いてきたチームの寛容さだけが目立ってしまい、スマート監督の「器量の小ささ」がクローズアップされてしまったように思えます。もちろん「器量が小さい」わけではないのですが、「去る者追わず」というポリシーをしても勝ち続けていたリクト監督時代のジョージア大と比べると、なんとなく「余裕のなさ」が浮き出て仕方がありません。
とはいえ、このポリシーが浸透すればこの話は昔話として忘れられていくことでしょう。どちらにしてもスマート監督は、ナショナルチャンピオンにはなれなかったとはいえ常勝チームを牽引してきたリクト監督を越えなければならないわけで、すぐにでも結果を出さなければスマート監督ばかりかリクト監督を「解雇」した大学側にも批判の矛先が向くことは大いに予想されます。ですから、彼にとってはどんな手を使ってでも勝ち続けなければならない、という使命感にさらされていると思われます。