開催日:12月31日
開催地:ジョージアドーム(ジョージア州アトランタ)
ワシントン大 | アラバマ大 | |
12勝1敗 | 戦績 | 13勝0敗 |
44.4 | 平均得点 | 40.5 |
17.2 | 平均失点 | 11.7 |
267.2 | 平均パスYD(攻) | 226.3 |
210.0 | 平均ランYD(攻) | 245.3 |
192.5 | 平均パスYD(守) | 184.5 |
123.5 | 平均ランYD(守) | 63.4 |
J・ブラウニング 3280YD/42TD/7INT |
QB | J・ハーツ 2592YD/22TD/9INT |
M・ガスキン 1339YD/10TD |
RB | D・ハリス 986YD/2TD |
J・ロス 1122YD/17TD |
WR | A・スチュワート 852YD/6TD |
試合展望
アラバマ大
今季のプレーオフ準決勝第1試合目はピーチボウルでのアラバマ大(全米1位)対ワシントン大(全米4位)のマッチアップ。シーズン終了後約1ヶ月が経ちますが、いよいよ夢のナショナルタイトルゲーム進出をかけて両校が激突します。
開幕前から全米1位のランクを守り続けているアラバマ大がプレーオフ進出を果たしたのはさして驚きもしません。しかしワシントン大がここまで生き残れた事には多少の驚きを隠せません。ワシントン大が近年全米の表舞台を騒がす事がなかった事もありますが、それに加えて彼らとペンシルバニア州立大、そしてミシガン大の3チームでどのチームがプレーオフでの第4の椅子に座ることが出来るだろうか、という議論があり、結果的にワシントン大が上記の2チームを出し抜いてプレーオフ進出を果たしたからです。12勝1敗という戦績から彼らがプレーオフ進出を決めたのは当然と言えば当然ですが、アラバマ大のように誰の文句も無く(アンチアラバマ大ファンですらそれは認めざるを得ない事実でしょう)プレーオフ進出をつかみ取ったと言うわけではないということです。
両チームとも素晴らしい成績を残してきましたが、それもここで負けてしまっては全ては水の泡。夢への切符をかけた大晦日の決戦を制するのはどちらでしょうか?
どんなスポーツでもポストシーズン、すなわちプレーオフのような状況では「絶対」という言葉は存在しません。しかし今季のアラバマ大を見ていると一体どのチームが彼らを倒すことが出来るのだろうと思わざるを得ない「絶対的」な強さを感じます。
特にディフェンス力は他の追随を許さない全米ナンバーワンのスコアリングディフェンスを誇ります(1試合平均11.8失点)。レギュラーシーズン11月の4週間の間、彼らはどの対戦相手にもTDを許しませんでした。この対戦相手の中にはルイジアナ州立大やアーバン大も含まれている事を考えるといかに彼らのディフェンスが鉄壁であるかを示していると思います。
フロントセブンのうちの4選手、ジョナサン・アレン(Jonathan Allen)、ルーベン・フォスター(Reuben Foster)、ティム・ウィリアムス(Tim Williams)、ライアン・アンダーソン(Ryan Anderson)は来春のNFLドラフトで第1巡で選択されるのではないかと称されている選手たち。それだけも彼らのディフェンス力を測ることが出来ます。彼らが支配するランディフェンスも全米1位(1試合平均63.4ヤード)。彼らから得点を奪うのは容易な事ではありません。しかもアラバマ大ディフェンスは彼ら自身が得点することが出来るという強さも持ち合わせています。その証拠に今シーズンディフェンスがインターセプションやファンブルリカバリーなどから得たTDの数は14に登ります。要するにディフェンスが最低でも84得点したという計算になります。末恐ろしい・・・。
そんな強力なディフェンス力に後押しされるオフェンス陣もトータルオフェンスで全米24位というトップクラス。特に彼らの十八番であるランディフェンスは1試合平均245ヤードで全米13位を誇ります。アラバマ大は3人のトップクラスのRBを擁しており、ダミアン・ハリス(Damien Harris)、ボ・スカーボロー(Bo Scarbrough)、ジョシュア・ハリス(Joshua Harris)の3人で合計2000ヤード越えのランヤードを記録。それに輪をかけて驚異的なのが若干1年生のQBジャレン・ハーツ(Jalen Hurts)です。機動力系のQBであるハーツは841ランヤードに12TDと普通のRB並みの活躍。投げてはパス成功率65.3パーセントに22TDと安定したプレーを見せてきました。まだルーキーなだけに9つのINTも記録していますが、こららのほぼすべてが試合の前半の様子見の状態で起きたミス。試合の流れに乗れば乗るほどハーツは安定感を増し、今ではアラバマ大オフェンスに不可欠な存在となったのです。
来季からフロリダアトランティック大の監督に就任が決まっているレーン・キフィン(Lane Kiffin)氏がコーディネーターを務めるオフェンスは選手の特徴を十分に生かしたオフェンスで、その最大の強みともいえるオフェンシブラインを軸にランゲームを中核にパスも織り交ぜて相手ディンスをじっくりと攻略していくタイプ。様子見の前半こそ大量得点とはなりませんが、キフィン氏らオフェンスコーチ陣の優れた分析力で相手を料理していきます。アラバマ大のランゲームが活かされるのはWRアーダリウス・スチュワート(ArDarius Stewart)、WRカルヴィン・リドリー(Calvin Ridley)、TE O.J.ハワード(O.J. Howard)らへのパスプレーがあってこそ。
唯一彼らに穴があるとすればキッカーのアダム・グリフィス(Adam Griffith)ぐらいでしょうか。FG成功率が73.1%(26回中19回成功)という数字は決して高い数字ではありませんし、これまでも数々のチップショットを逃してきた姿を見てきています。僅差のゲームになった時、彼のプレーいかんで勝敗に影響が及ぶことになる可能性もあります。
ワシントン大
ワシントン大で今季3季目となるクリス・ピーターセン(Chris Petersen)監督もアラバマ大の強さは十分承知しています。気の早いワシントン大ファンは下のようなボードを掲げて強気の姿勢を見せていますが・・・
「アラバマ大と戦わせろ!」というニュアンスのメッセージですが、これを見たピーターセン監督は「時として自分の言葉には気をつけるべきです。欲しがっているものが本当に欲しいものなのか・・・。私だったらこんなボードは掲げないですね。」と言ったらしいです。また地元が同じNFLシアトルシーホークスを引き合いに出して、「シーホークスが同じ街にいてよかった。彼らに紅白戦を申し込んでアラバマ大戦に備えるのもいいかもしれません。」とジョークを交えてアラバマ大の強さを噛みしめていました。
しかし、ワシントン大がアラバマ大に赤子の手を捻るようにやられてしまうと言う訳ではないと思います。ワシントン大のオフェンスは大量得点が旨のダイナミックオフェンス。全米6位となる1試合平均得点数44.4点という数字からもそれが分かると思います。実に13試合中10試合で40点以上を獲得してきたワシントン大はPac-12カンファレンス優勝決定戦でもコロラド大相手に41対10と大勝。見事カンファレンスチャンピオンに輝いたのです。
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オフェンスの要はハイズマントロフィー候補にも名を連ねたQBジェイク・ブラウニング(Jake Browning)。42TDの上にインターセプトされたパスの数はたったの7つと非常に優れたパサーです。彼のパスを受け取るジョン・ロス(John Ross)並びにダンテ・ペティス(Dante Pettis)はパス能力、サイズ、スピードとも申し分無し。彼ら2人で31TDを量産している事から見ても彼らがどれだけ相手に取って脅威となるかが分かると思います。
また地上戦においてもRBマイルズ・ガスキン(Myles Gaskin)という頼れるラッシャーが控えており、ワシントン大のオフェンスは非常にバランスが取れています。
そしてワシントン大ディフェンスも非常に効果的に相手オフェンスを攻略してきました。ランディフェンスは全米17位、平均失点数では全米13位と数字の上ではアラバマ大にそこまで差を開けていないように思えます。特にディフェンシブバックフィールドにはスピードのあるDB陣が構えており、アラバマ大オフェンスのスピードにも十分耐えうる力を持っていると言えそうです。
見どころ
無敵・アラバマ大にワシントン大がどう立ち向かうか・・・という構図になっていますが、ワシントン大がアラバマ大から金星を奪う可能性は十分あると思います。それを実現させるにはどうすれば良いかと言う事です。
まずワシントン大はQBブラウニングにパスを投げさせる時間の猶予を与えなければなりません。唯一の敗戦ゲームとなったサザンカリフォルニア大戦、そして辛くも逃げ切ったユタ大戦ではブラウニングが執拗にプレッシャーを浴び苦戦しました。ブラウニングが彼らしいプレーを発揮するには、アラバマ大ディフェンスフロントセブンの怒濤のプレッシャーをワシントン大OLが食い止められるかが鍵となりそうです。
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そしてブラウニングの負担を減らす為にもワシントン大はある程度のランゲームでの成功が必須条件です。全米ナンバー1ランディフェンスを誇るアラバマ大相手にこの注文は厳し過ぎるかもしれませんが、ブラウニングのパスに頼らざるを得ず攻めが単調になるのはアラバマ大の思うつぼです。そして先にも述べたようにアラバマ大ディフェンスはターンオーバーから得点が出来るチーム。ワシントン大はランとパスのバランスアタックが必要となってきます。
実際アラバマ大が苦戦したミシシッピ大戦ではこのディフェンスが43失点も犯してしまいました。その一因としてミシシッピ大はアラバマ大相手に101ヤードのランヤードを稼げた事が挙げられると思います。101ヤードとは大したことが無いかもしれませんが、彼らの平均被ランヤードが60ヤードそこそこであることを考えるとこれはやられてしまった部類に入ると思います。そしてミシシッピ大QBチャド・ケリー(Chad Kelly)は3TDを含む421パスヤードを記録したのですが、これも彼らが地上戦である程度の成果を挙げられたからに他ありません。アラバマ大ディフェンスに考えさせる時間、つまりパスが来るのかランが来るのか惑わす事が出来れば、チャンスは訪れると言う事です。ただ、このミシシッピ大のパフォーマンスをしても彼らはアラバマ大を倒せなかったという事実もあるのです。
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似たようなケースではアーカンソー大戦も挙げられます。彼らはアラバマ大から30点をもぎとりましたが、この試合でアーカンソー大は48回のパスに36回のランと比較的ランを組み込んだオフェンスで立ち向かっていきました。彼らが稼いだランヤードは73ヤードとミシシッピ大よりは少なめですが、それでもアラバマ大の平均被ヤードよりは上回っています。そしてこの試合でもQBオースティン・アレン(Austin Allen)は400ヤード以上をパスで稼ぐことが出来ました。アーカンソー大もミシシッピ大と同じくアラバマ大に負けてしまうのですが、少なくとも彼らに多少なりのダメージを与える事に成功したのです。
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あとはアラバマ大のスロースタートを利用するべきです。私の記憶する限りアラバマ大は今季試合開始後からロケットスタートを切ったゲームは無かったように思えます。出だしは非常に保守的で相手の出方を見るような試合展開を繰り返してきました。その中でQBハーツはいくつかのミスも犯しています。この事実を利用しない手はありません。序盤からの攻勢がワシントン大に求められそうです。
アラバマ大のランオフェンスを止めるのは簡単な事ではありません。もし序盤から失点する事がないにしてもアラバマ大に走られ続ければいずれワシントン大のディフェンスはスタミナを無くします。彼らにゲームの流れをコントロールされれば、ディフェンスが削られるだけでなくオフェンスが攻勢に出るチャンスすら無くします。ワシントン大のDBはシドニー・ジョーンズ(Sidney Jones)にブッダ・ベーカー(Budda Baker)という優れた選手がおり、アラバマ大のレシーバー陣を押さえる事は出来るでしょうが、彼らの主力は地上戦です。ということでワシントン大ディフェンスはアラバマ大のランオフェンスを少しでも抑え、彼らの流れに持ち込まれないようにすべきです。
どちらにしてもアラバマ大を倒すのは相当難しそうです。ワシントン大が今季ベストのパフォーマンスを演じることが出来、尚かつアラバマ大が運良く(運悪く)絶不調な事になればワシントン大にも道は開けるかもしれませんが、厳しい統率力で知られるニック・セイバン(Nick Saban)監督がそんな事にはさせないでしょう。ただピーターセン監督はボイジー州立大時代にフィエスタボウルでトリックプレーを使い強豪・オクラホマ大を倒した実績もあります。ピーチボウルでもセイバン監督の度肝を抜くようなトリックプレーで勝利をかすめ取る・・・なんてこともあるかもしれませんん。
AGS予想勝者
アラバマ大