先日今シーズンの活躍が認められた選手たちに様々なアワードが送られたことを紹介しましたが、これらのアワードはNCAA(全米大学体育協会)が定めたものではなく、様々な非営利団体が設立した賞です。オクラホマ大QBカイラー・マレー(Kyler Murray)が獲得したばかりのハイズマントロフィーも同じ。ですからハイズマントロフィー、マックスウェル賞、AP年間最優秀選手賞のような、似たようなアワードが複数存在したりするのです。
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そして今年AP年間最優秀監督賞を受賞したのはノートルダム大のブライアン・ケリー(Brian Kelly)監督。名門チームを全勝でプレーオフに導いた彼の手腕が認められての受賞となったのでしょう。
しかし今シーズン最優秀監督賞を貰ってもおかしくないコーチは他にもいます。そんな中、別の年間最優秀監督賞である「エディー・ロビンソン・コーチ・オブ・ザ・イヤー」がアラバマ大バーミンガム校(UAB)のビル・クラーク(Bill Clark)監督に授与されました。
UABのビル・クラーク監督
エディ・ロビンソン(Eddie Robinson)とは現在で言うFCS(フットボールチャンピオンシップサブディビジョン)に所属するグランブリング州立大(ルイジアナ州)の監督を合計56年勤め上げ、通算戦績は408勝165敗15分けで2011年にペンシルバニア州立大のジョー・パターノ(Joe Paterno)元監督に抜かれるまでNCAA1部で最多勝利数を誇る監督として知られていました。その功績が認められ1997年にはカレッジフットボール殿堂入りも果たしています。
その巨匠の名前が冠された栄誉あるこの最優秀監督賞を受賞したクラーク監督。今季10勝3敗で所属するカンファレンスUSAで初のタイトルを獲得したUABですが、2年前まで一時廃部状態に追い込まれていたということを考えるとたったの2年でここまでチームを変革したクラーク監督の手腕は確かなものです。
財政難のため大学がフットボール部廃部を決めたのが2014年。結局卒業生らの熱望で完全に廃部にはなりませんでしたが、2015年と2016年は休部となり実戦から2年も離れていたのです。にも関わらず復帰から2季目で10勝シーズンを送ってカンファレンスタイトルまで手にしたUAB。遅かれ早かれ大手チームがクラーク監督に触手を伸ばすことでしょうが、彼の成した業績は今季を飾るサクセスストーリーの1つに確実に数えられます。
その功績を称えるべくUABはクラーク監督と新たに5年の契約延長を締結。またサラリーも上乗せとなりこれで彼の年収は145万ドル(1ドル100円計算で1億4500万円)にアップ。これでこれまでカンファレンスUSA内で最高取得者だったノーステキサス大のセス・リトレル(Seth Littrell)監督の140万ドルを抜いたことになります。
UABフットボール部は創部1991年と割りと若いチームですが、NCAA1部に昇格した1996年以来クラーク監督が就任した2014年までの間7勝以上を上げたシーズンは2000年と2004年の2度しかありません。そのクラーク監督は昨年8勝、そして今年は10勝とこれまでのUABフットボール部のスタンダードをガラリと変えてきました。そんな彼に上に挙げたようなご褒美が与えられることは当然のことだと思います。
エディー・ロビンソン賞のその他のファイナリストにはノートルダム大のケリー監督、セントラルフロリダ大のジョシュ・ハイペル(Josh Heupel)監督、陸軍士官学校のジェフ・モンケン(Jeff Monken)監督、オクラホマ大のリンカーン・ライリー(Lincoln Riley)監督、アラバマ大のニック・セイバン(Nick Saban)監督、クレムソン大のダボ・スウィニー(Dabo Swinney)監督、そしてフレズノ州立大のジェフ・テッドフォード(Jeff Tedford)監督という錚々たるメンバー。それらの監督を押しのけてこの賞を獲得したクラーク監督は今後コーチング市場で注目の人物となることでしょうね。