サウスカロライナ大はこの度ウィル・ムスチャンプ（Will Muschamp）監督と契約を更新することを発表しました。
サウスカロライナ大で2期目を終えたばかりのムスチャンプ監督ですが、前監督であるスティーブ・スパリアー（Steve Spurrier）氏が3勝9敗（スパリアー氏自身はシーズン途中で引退を表明しましたが）と惨敗で終えた2015年後に後を引き継ぎ、初年度となった2016年は6勝7敗と負け越しましたが昨シーズンは大幅に勝ち越し9勝4敗でシーズンを終えることができました。
ウィル・ムスチャンプ監督
シーズン中の負け試合も一方的にやられるという展開はなく、プレーオフに出場を果たした対戦当時2位のジョージア大には24対10と食らいつきました。また同じくプレーオフに出場した当時4位のクレムソン大には34対10と敗れましたが、前年度には56対7と大敗したことを考えれば大きな進歩と言えるでしょう。
ムスチャンプ監督は2001年にニック・セイバン（Nick Saban、現アラバマ大）監督がルイジアナ州立大を率いていた時にLBコーチとして彼に従事。そこからチームのディフェンシブコーディネーターに昇格すると2003年のナショナルチャンピオン獲得に大いに貢献。そしてセイバン監督がマイアミドルフィンズの監督に就任するとムスチャンプ氏も共にプロの世界へ飛び込みます。その1年後にはカレッジフットボール界に復帰してアーバン大のDCに。ここでアーバン大ディフェンスを全米トップレベルに育て上げると瞬く間に彼は当時のカレッジフットボール界で赤丸急上昇のアシスタントコーチとして名を上げることになります。
その波に乗り2008年にテキサス大から引き抜かれたムスチャンプ監督は当時のテキサス大のHCであったマック・ブラウン（Mack Brown）元監督が引退した際の次期HCを約束される存在にまでなりました。しかしブラウン氏がいつ引退するかもわからない状態の中、クレムソン大、ワシントン大、テネシー大などの大御所チームたちがムスチャンプ氏を勧誘するなど他のチームで監督になれるチャンスはあり、ムスチャンプ氏にとってはテキサス大で半ば飼い殺しにされる状態が続いたのです。
しかし2010年に転機が訪れます。フロリダ大で当時健康上の理由から絶頂期であったにもかかわらずコーチ業から引退を表明したアーバン・マイヤー（Urban Meyer、現オハイオ州立大）監督の後継者に大学側はムスチャンプ氏を指名。そして彼はこれを受諾してテキサス大を去り、待ちに待ったHCのポジションを拝命したのです。
フロリダ大時代のムスチャンプ監督
が、2012年に11勝2敗と好成績を残した以外はパッとせず、初の監督となったフロリダ大での戦績は4年間で28勝21。ハードルの高いフロリダ大ではファンや関係者を満足させることはできず、2014年シーズン後に解雇されてしまいます。
コーディネーターとして名を馳せるも、HCとしては失敗してしまったムスチャンプ氏にセカンドチャンスが訪れるかどうかは定かではありませんでしたが、彼にそのチャンスを与えたのがサウスカロライナ大だったわけです。
そして2シーズン目となった2017年度は前述の通り周囲の予想を覆す成績を残し、最終戦となったシトラスボウルでのミシガン大戦にも勝利。非常にいい形でシーズンに幕を閉じることができました。この結果と流れを見て大学側はムスチャンプ監督の指導力を評価し今回の契約更新という運びになったのでしょう。
当初は2020年までの契約でしたが、今回の更新で2023年まで契約延長。また昨年度の年収が310万ドル（約3億3000万円）だったところ来年度は420万ドル（約4億5000万円）と増額。彼のアシスタントコーチたちのサラリーも増額なったということです。
2017年度はSEC東地区はジョージア大が他を寄せ付けない感じでしたが、それに便乗する形でサウスカロライナは地区で2位につけました。しかしスランプに陥っている東地区内のフロリダ大とテネシー大は双方とも新監督を迎え来季のカムバックを狙っていますから、ムスチャンプ監督率いるサウスカロライナ大は心してかからないと2017年度の成績を上回ることは難しいでしょう。そういった意味ではムスチャンプ監督の真の手腕は来年以降に明らかになるとも言えそうです。
