前回の記事での紹介しましたが、今年のNFLドラフトは完全バーチャル形式で行われることになります。理由はお察しの通り現在世界を蹂躙し続けているコロナウィルスの影響を受けてということですが、対人の接触を極力避けるように指示されているアメリカでは当然と言える処置でしょう。
ただいまいちその形式がどのようなものなのかピンときませんが、これまでのように現場で行われる場合ならば観客を入れ、各チームの首脳陣がベースを構え、指名選手を発表する人がおり、指名された選手は舞台に登場してお披露目が行われます。当然裏方には多くのスタッフも従事しており、最近では多くのゲストが指名選手を発表するために訪れるということもありました。
またテレビカメラはドラフト会場に直接足を踏み入れなかった指名選手の自宅にお邪魔して指名される瞬間をライブでお茶の間に届けるようなこともしていました。しかしソーシャルディスタンスのお達しもあり完全バーチャル形式でドラフトが行われるということになると、このあたりのTVでの絵面はどうなってしまうのでしょうか?
4月23日(第1日目):第1巡目
4月24日(第2日目):第2巡目&第3巡目
4月25日(第3日目):第4巡目〜第7巡目
またGM(ゼネラルマネージャー)ら首脳陣が順番に選手を指名していくという基本的な形式は不変なわけで、これには水面下で様々な取引が制限時間内に行われています。これら全てのプロセスをIT技術を駆使したバーチャルで問題なく行えるのかという問題も出てきます。
そこでNFL全32チームのGMらはその予行練習としてバーチャルのモックドラフトを本番に先駆けて行う(既に行ったかも?)ようです。一昔前なら電話一本でもやれないことはなかったのでしょうが、規模が大きくなりすぎてそういうわけにはいかなくなってしまいましたからね。
そんな感じで今年のドラフトは未知数ばかりのイベントとなりそうですが、今回の記事では前回までから引き続き今ドラフトで注目されそうな選手を紹介します。今回はWR編です。
目次
シーディー・ラム(オクラホマ大)
今ドラフトのWR選手の中でも最もパワーのあるWRと目されるのがオクラホマ大出身のシーディー・ラム(CeeDee Lamb)です。
体格が既にNFL級(身長6フィート2インチ/約187cm、体重191パウンド/約86kg)であり、大学時代には数々のアクロバティックなスーパーキャッチを披露してきました。それは1327ヤードに14TD、1回の平均レシーブヤードが20ヤード以上という昨年の数字からも見て取れます。
今ドラフトのWR陣で見ると俊足という訳ではありませんがそれは彼の捕球能力やルートの取り方で十分に補えるでしょう。カレッジ時にプレスマンカバレージの経験が実はあまりないということでプロの世界でどれだけやれるかは未知数ではありますが、今ドラフトでトップWRであることは間違いありません。
ジェリー・ジュディ(アラバマ大)
アラバマ大といえばかつてはランヘビーなオフェンスで有名でしたが、過去10年ではフリオ・ジョーンズ(Julio Jones、現アトランタファンルコンズ)、アマリ・クーパー(Amari Cooper、現ダラスカウボーイズ)、カルヴィン・リドリー(Calvin Ridley、現アトランタファルコンズ)などプロ級のWRを輩出してきました。そして今回その一員に加わらんとするのがこのジェリー・ジュディ(Jerry Jeudy)です。
2018年度のビレントニコフ賞(最優秀WR賞)を獲得したジュディはとにかくルートの取り方が絶品な選手。加速度も申し分なくロングボールにも柔軟に対応できるスピードを持っています。オープンフィールドでボールを捕球したならば誰にも止めることは出来ません。
ビレントニコフ賞を獲得した2018年度と比べると昨年は数字が落ちましたが(1315yd/14TD vs 1163yd/10TD)、これはチーム内に彼の他にもハイレベルなWRが3人もいたことも影響しているのでしょう。既出のラムと同じく大学時代にプレスカバレージをあまり受けなかったジュディですが、彼のスキルは多くのNFLチームにとって魅力的なものとなるのではないでしょうか。
ヘンリー・ラグス・III(アラバマ大)
今紹介したジュディと同じくアラバマ大出身のヘンリー・ラグス・III(Henry Ruggs III)は昨年746ヤードに7TDとジュディに劣りますし、体格的にも小柄ではありますが、NFLスカウトからは上々の評価を得ているようです。
それはひとえにそのスピードに依るところが大きいです。ショート、ミドル、ロングとどのレンジからでもヤードを稼ぐことが出来るのは大きな魅力。また昨年だけで言えば落としたパスはたったの1度きり。非常に頼りになる選手と言えそうです。
不安要素はこれまで紹介した2人と同じくプレスマンカバレージ状態でどこまで能力を発揮できるかということですが、ジュディとともに第1巡目候補の注目WRです。
ジャスティン・ジェファーソン(ルイジアナ州立大)
昨年度の全米王座であるルイジアナ州立大出身のジャスティン・ジェファーソン(Justin Jefferson)といえばやはり準決勝戦となったオクラホマ大とのピーチボウルで見せた、前半だけで4TDというとんでもないパフォーマンスを思い出します。
このときはハイズマントロフィー受賞QBジョー・バロウ(Joe Burrow)という存在があってこそだったとも言えますが、パスをキャッチできる範囲の広さとディフェンスの穴を見つける眼力、そして窮地に陥ったときでも道を切り開ける身体能力はカレッジレベルでは天下一品です。
その能力ゆえ前出の選手たちと同じくプレスカバレージの経験が薄いのが気がかりですが、彼もやはり第1巡目候補選手といっても過言ではないでしょう。
ティー・ヒギンズ(クレムソン大)
強豪クレムソン大で名を馳せたティー・ヒギンズ(Tee Higgins)ですが、6フィート4インチ(約193cm)に216パウンド(約98kg)という恵まれた体型はトレーニングだけでは手に入れることはできない天性のもの。これを生かして大学時代には数々のビッグプレーを披露してチームに貢献してきました。それは過去2年間で2000ヤード超えのレシーブに25TDという数字にも現れています。
ただレベルが他のカンファレンスよりも劣っていたACC(アトランティックコーストカンファレンス)に所属していたクレムソン大の一員としての数字という点、そして怪我の影響もあったとは言えプレーオフ2試合で合計85ヤードと失速してしまったことはスカウトの目にネガティブに映ってしまったかも。
またプロデーでの4秒54という40ヤードタイムからも分かる通り快速とは程遠い選手でもあります。レシーバーとしてはポテンシャルはあるものの、No.1ターゲット候補かと言えばそれは疑問であることは否めません。
ブランドン・アイユク(アリゾナ州立大)
個人的に押したいのがアリゾナ州立大のブランドン・アイユク(Brandon Aiyuk)です。
昨年12試合中100ヤード以上稼いだ試合が5試合。その中でも38対34の激闘を制したワシントン州立大戦での196ヤードに3TD、また当時全米6位のオレゴン大を打ち負かした大試合では試合を決定づけた逆転TDを決めるなど161ヤードを稼いで勝利に貢献するなどしてその存在感を見せつけました。
どんな状況からでもプレーを決めることが出来、1対1での勝負強さもピカイチ。それに加えリターナーとしても非凡な才能を擁しています。荒削りであることは確かですが、それも含めてプロの世界で化けるんじゃないかと密かに分析しています。
その他の候補者たち
今年のドラフトでは上に挙げた5人の他にも大変優秀なWRたちが大勢揃っています。毎年ドラフトでは豊作となるポジションが変わったりするものですが、今年のWR陣は確実に粒ぞろいだということが言えると思います。
ラヴィスカ・シェナウト(Laviska Shenault Jr.、コロラド大)
デンゼル・マイムス(Denzel Mims、ベイラー大)
ジェイレン・リガー(Jalen Reagor、テキサスクリスチャン大)
マイケル・ピットマン(Michael Pittman Jr.、USC)
K.J.ハムラー(KJ Hamler、ペンシルバニア州立大)
タイラー・ジョンソン(Tyler Johnson、ミネソタ大)
チェイス・クレイプール(Chase Claypool、ノートルダム大)
ドノヴァン・ピープルズ・ジョーンズ(Donovan Peoples-Jones、ミシガン大)
デヴィン・デュヴァニー(Devin Duvernay、テキサス大)
ヴァン・ジェファーソン(Van Jefferson、フロリダ大)
アントニオ・ガンディ・ゴールデン(Antonio Gandy-Golden、リバティー大)
ブライアン・エドワーズ(Bryan Edwards、サウスカロライナ大)
K.J.ヒル(K.J. Hill、オハイオ州立大)
ジュワン・ジェニングス(Jauan Jennings、テネシー大)
ガブリエル・デーヴィス(Gabriel Davis、セントラルフロリダ大)
リン・バウデン(Lynn Bowden Jr.、ケンタッキー大)
ジェームス・プロシェ(James Proche、サザンメソディスト大)
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