2021年度のカレッジフットボールも早いもので9月を終え10月に突入。これまで4週分を消化し早くも勢力図はプレシーズンと比べると大きく動いています。そこで今回は9月のカレッジフットボール界を振り返りこの4週間で何がどう変わったのかを見ていきたいと思います。
新たな顔ぶれ
どのシーズンにおいてもプレシーズンランキングというのは当てにすることは出来ないものです。その殆どは前のシーズンの状態、前年度からどれだけの戦力が流出したか、そしてリクルーティング力によってどの程度の次世代の戦力が育っているかをベースに、投票者が机上の空論的にランキングを与えていきます。
しかしシーズンが始まってしまえば思った通りの展開などほぼ起きはしません。アップセットあり、怪我あり、不調ありで当初のランキングが示した上位チームの顔ぶれが変わることは当然あり得ることです。
ただ常勝チームの面子は割と変わらずにいるものですが、今年はプレシーズンと現在(第5週目)の顔ぶれはかなり違っています。
プレシーズン | 第5週目 | |
1 | アラバマ大 | アラバマ大 |
2 | オクラホマ大 | ジョージア大 |
3 | クレムソン大 | オレゴン大 |
4 | オハイオ州立大 | ペンステート |
5 | ジョージア大 | アイオワ大 |
6 | テキサスA&M大 | オクラホマ大 |
7 | アイオワ州立大 | シンシナティ大 |
8 | シンシナティ大 | アーカンソー大 |
9 | ノートルダム大 | ノートルダム大 |
10 | ノースカロライナ大 | フロリダ大 |
ご覧の通りプレシーズン時にトップ10入りしたチームで現在もトップ10内にいるのはアラバマ大、ジョージア大、オクラホマ大、シンシナティ大、ノートルダム大の5チームのみ。つまり半分のチームはすでにトップ10外へ転落してしまったことになります。しかもその顔ぶれがクレムソン大、オハイオ州立大、テキサスA&M大といった大御所だからなお驚きです。
一方でオレゴン大、アイオワ大、アーカンソー大といったここ最近トップ10入りしていなかったチームが上位に食い込んでいるのは非常に新鮮に映りますし、やはり同じ顔ぶればかりで飽き飽きしていたファンにとっては良い傾向にあるのだと思います。
それにしてもなぜクレムソン大やオハイオ州立大といった常勝チームがすでに敗戦を喫してランクを下げてしまったのでしょう?これは彼らだけに言えることではなく他にもサザンカリフォルニア大、ルイジアナ州立大、ウィスコンシン大といった強豪チームにも当てはまることなんですが・・・。
トランスファーポータルと新ルール
一つにはトランスファーポータルの存在が挙げられます。
トランスファーポータルとはここ数年でよく耳にするようになった言葉ですが、転校(トランスファー)したい選手がこのポータルに登録することによって全国の大学チームに自分の存在を知らしめることが出来、登録選手は以降転校先を探すために各地のチームのコーチらとコンタクトをとることが許されます。
同時にチーム側からすると戦力補充のために転校生をこのポータルで探し出すことができるという利点もあります。
ポータルに登録したからと言って必ずしも転校しなければいけないわけではなく、ニーズがないとわかれば登録解除して元の鞘に戻ることも可能。ただ登録したことによって少なくともその選手には所属するチームに何らかの不満があることはバレてしまいますが。
そしてこのトランスファーポータルの存在と相まって注目されたのが今年から転校生は新天地ですぐに試合出場が許されることになったことです。
これまでは特例の除いて転校生は転校先で1年間試合に出場することは出来ませんでした。このルールが選手たちが気軽に転校してしまうことの歯止めになっていたのです。チームからしてみればせっかく苦労してリクルートしてきた選手をおそれと手放したくはありません。ましてやそんな選手が同じカンファレンス内のライバルチームにでも流出すれば目も当てられないからです。
しかし今年から各地でこのルールが撤廃され、出場機会を求める選手たちがトランスファーしその転校先ですぐさま戦力として起用されるケースが増えたのです。
常勝チームは多くの4つ星、5つ星選手たちを抱えていますが、それはチーム内での熾烈な先発争いを意味します。高校時代にスター選手として活躍しもてはやされた選手でも強豪校に入部すれば2軍に甘んじるケースも少なくありません。そういった選手たちが別の大学ならば先発出場してバリバリやれると感じて転校していくわけです。
そういった能力のある選手たちをトランスファーポータルから探し出してチームの即戦力として補充するという新しい形のチーム強化方法が確立されつつあるのです。
その恩恵を受けている最たるチームは現在8位のアーカンソー大。彼らは積極的に経験や才能のある転校生を受け入れて戦力増強に成功しています。その他にも同じような手法でチーム力を挙げているチームはかなりいるのです。
その逆にこの手法を頑なに拒んでいるといわれるのがクレムソン大。彼らはリクルートしたときからの生え抜き選手でチームを構成することにこだわっています。当然リクルーティングではそのブランド力からいい選手がどんどん入っては来ますが、年によっては先発選手がNFL入など果たすことでごっそり抜けてしまう場合もあります。
それを埋める手法として転校生を積極的に利用しないクレムソン大は、QBトレヴァー・ローレンス(Trevor Lawrence)やRBトラヴィス・エティエン(Travis Etienne、ともに現ジャクソンビルジャガーズ所属)らが抜けたあとを埋められないばかりか、在校生にけが人が続出して戦力が薄くなってしまってもそれを増強することが出来ずにいるというわけです。
スーパーシニア
もう1つには俗に言う「スーパーシニア」の存在も挙げられます。
昨年新型コロナのパンデミックに襲われたカレッジフットボール界では特例として全選手に1年分の試合出場資格を無償で授与されました。これは当時このウイルスが長期的に人体に及ぼす影響がわからない中でそのリスクを背負ってシーズンを迎えなければならない選手たちに対する優遇政策で、たとえそのリスクを考えてオプトアウト(参加拒否)したとしても試合出場資格を温存できるという特例でした。
オプトアウトした選手は結果的に一握りしか出てきませんでしたが、前述の通り全選手にこの特例が与えられたため、昨年4年生(シニア)で4年分のプレー資格を使い切ってしまった選手たちにももう1年分のプレー資格が与えられることになりました。つまり5年目の4年生が多く生まれたことになります。そんな彼らのことを「スーパーシニア」と呼ぶのです。
ところで以前からカレッジフットボール界には「レッドシャツ」という概念があります。これは選手らにより経験を積ませるために「レッドシャツ」認定を受けた選手には1年間のプレー資格が与えられない代わりにチーム内で練習することを許されるという制度です。ロースターが詰まっていたりした場合には即戦力とならない選手が「レッドシャツ」となるケースはよくあることです。
たまに耳にすることがあるかもしれませんが、「レッドシャツフレッシュマン」といえば1年生(フレッシュマン)ながらすでにチーム在籍は2年目という数え方ができるわけです。
そして今回新型コロナで1年間のプレー資格が与えられたことでこの「レッドシャツ」選手たちは最大6年間チームに在籍することができるようになりました。さらに怪我で戦線離脱を余儀なくされた選手に稀に与えられる「メディカルレッドシャツ」を持っている選手は最大7年間もチームに居ることが可能となったのです。
このようにしてベテラン選手の数が増えたチームは経験値の高いチームとしてその恩恵を十二分に受けています。その多くは常勝チームと言われる連中ではなくその下にいるようなチームが多いように見受けられます。何故なら常勝チームはシーズン後に多くの戦力をNFLドラフトを経て失っていくからです。
タレントの差はあったとしても、経験値は今すぐにどうこうなるような要素ではありません。以下にタレント力で劣っていたとしても、ベテラン選手が多く在籍するチームは自ずと経験値の高いチームとなりそれが戦力として出ているというわけです。
これらが今季オハイオ州立大やクレムソン大の調子が上がらないことと、今まであまり上位に顔を見せてこなかったチームが躍進している現状に影響を及ぼしているのではないでしょうか。
9月の通信簿
A
アラバマ大
開幕から首位をキープ。さすが前年度覇者というところ。
ジョージア大
全米随一のディフェンス力を誇るジョージア大は試合を追うごとにオフェンス力もアップ。アラバマ大に肉薄します。
オレゴン大
Pac-12カンファレンス所属チームで唯一の無敗チーム。
ペンシルバニア州立大
昨年悪夢の5連敗を喫したペンステートはその汚名を挽回する通り現在4連勝中。
アイオワ大
派手さで売らないブルーカラーなアイオワ大がこの位置にいるのは新鮮です。
シンシナティ大
「グループオブ5」の期待の星。勝ち進めば何かが起きるかも。
アーカンソー大
今年のシンデレラチームの最大手。どこまで突っ走ることができるのか?
ミシシッピ大
ハイズマントロフィー候補QBマット・コラル(Matt Corral)に注目。
ブリガムヤング大
昨年の躍進がまぐれではなかったことを証明するように今季も4連勝中。
ミシガン大
対戦相手が格下ばかりとはいえここまで無敗なのは評価に値します。
ミシガン州立大
昨年トータル2勝しか出来なかったことを考えればここまで4勝0敗なのが奇跡的。
その他
コースタルカロライナ大、フレズノ州立大、オクラホマ州立大、ベイラー大、ノースカロライナ州立大、ウェイクフォレスト大、ボストンカレッジ、サザンメソディスト大、メリーランド大、ケンタッキー大
B
オクラホマ大
いまだ無敗とはいえオフェンス力に不安材料が。
ノートルダム大
こちらも無敗ですがいまいち真の力を計り知れていません。
フロリダ大
彼らは限りなくAに近いB。1敗したアラバマ大戦では王者を大いに追い詰めました。
オハイオ州立大
すでにオレゴン大に1敗を喫した彼らのディフェンスに一抹の不安が。
テキサスA&M大
開幕前に6位だっただけにすでに1敗してしまったのは痛いところ。
UCLA
フレズノ州立大に敗れたとはいえ、今季のサプライズチームの1つ。
テキサス大
アーカンソー大に敗れ1敗するも新先発QBケーシー・トンプソン(Casey Thompson)に入れ替えてから調子を上げています。
その他
バージニア工科大、ジョージア工科大、ピッツバーグ大、カンザス州立大、ラトガース大、パデュー大、オレゴン州立大、アリゾナ州立大、アーバン大
C
クレムソン大
10月前にまさかの2敗。この時点でプレーオフ進出の可能性がほぼなくなってしまいました。
アイオワ州立大
プレシーズンランク7位ながらすでに2敗。オフェンスにパンチ力なし。
ノースカロライナ大
プレシーズンランク10位ながらすでに2敗。ハイズマントロフィー候補QBサム・ハウウェル(Sam Howell)が不発。
ウィスコンシン大
プレシーズンランク12位ながらすでに2敗。お箱のランゲームは機能せず期待のQBグラハム・マーツ(Graham Mertz)もがっかりなパフォーマンス続き。
サザンカリフォルニア大
プレシーズンラキング15位ながらすでに2敗。開幕後2戦目を終えてクレイ・ヘルトン(Clay Helton)を解雇。
ルイジアナ州立大
プレシーズンランキング16位ながらすでに1敗。2年前の前年度覇者としては物足りません。
インディアナ大
プレシーズンランキング17位ながらすでに2敗。昨年の快進撃はまぐれだったとは思いたくないけれど・・・。
D
マイアミ大
プレシーズンランキング14位ながらすでに3敗。完全にオーバーレーテッド(過大評価)なチームでした。
ワシントン大
プレシーズンランキング20位ながらすでに2敗。開幕戦ではFCSのモンタナ大に敗れるなど期待を大きく裏切りました。
フロリダ州立大
開幕戦でノートルダム大に善戦するも9月は勝ち星なし。約40年ぶりの開幕4連敗。
ネブラスカ大
古豪復活を目指すもここまで2勝3敗。「ゴールデンボーイ」スコット・フロスト(Scott Frost)監督のクビもいよいよ怪しくなってきました。
アリゾナ大
元ニューイングランドペイトリオッツQBコーチであるジェド・フィッシュ(Jedd Fisch)監督初年度は4連敗と厳しいスタート。
ヴァンダービルト大
FCSのイーストテネシー州立大に敗れ、ジョージア大には62対0と完封負け。1年目のクラーク・リー(Clark Lea)監督にとって茨の道が続きます。
2021年度シーズンは早くも10月に突入しましたが、開幕からここまでに行われた試合などを通して9月のカレッジフットボール界を振り返ってみます。
— Any Given Saturday (@ags_football1) October 1, 2021
詳しくはこちら
⬇️⬇️⬇️https://t.co/r5tT01vin1
👆記事が気に入ったらいいねやリツイートで拡散お願いいたします!