1998年、ボウルアライアンスの後継として生まれたのがボウルチャンピオンシップシリーズ(BCS)です。
BCSではこれまで参加させることができなかったBig TenとPac-10を引き入れるためにローズボウル運営者を説得することに成功。これで初めてメジャー6カンファレンス全てが足踏みを揃えることになりました。
そしてBCSではそれ専用の「BCSランキング」が新たに用意され、これまでのように単純にAPランキングとコーチランキングを足すだけのものではなく、これらにさらにコンピューターランキングなどを付け加えた、より複雑な計算式によりランキングを導き出し、そのトップ2チームを「ナショナルタイトルゲーム」て争わせるという形に落ち着きました。
1998年から始まったBCSではローズボウル、シュガーボウル、フィエスタボウル、オレンジボウルの4つのボウルゲームで「ナショナルタイトルゲーム」を順番にホストしていきました(この4試合はBCSボウルと呼ばれました)。この形は2005年度シーズンまで続きますが、2006年からは単独の「BCSナショナルチャンピオンシップゲーム」が増設され、これが「真のナショナルチャンピオンシップゲーム」として開催されることとなったのです。このシステムは2013年度シーズンまで用いられることになります。
BCSの最大の目的は誰にも文句を言わせないトップ2チームを独自の計算式により導き出すことでした。この計算システムは年を追うごとに少しずつテコ入れをされていきましたが、それでも世間からの批判をまのがれることはできませんでした。
例えばサザンカリフォルニア大、オクラホマ大、アーバン大の3チームが全てレギュラーシーズンを全勝で終えた2004年度、BCSランキングはサザンカリフォルニア大とオクラホマ大をトップ2に指名し、アーバン大はタイトルゲームから漏れてしまいました。この時はどのチームがナショナルチャンピオンシップに進出してもおかしくはなく、しかしそれが3チーム現れてしまったために起きた出来事でした。
またシステムは向上したとはいえ、メジャー6カンファレンスに有利なシステムであったことは変わりなく、2012年度にタイトルゲームに進出したノートルダム大(独立校)を除いてメジャー6カンファレンス以外でBCSチャンピオンシップゲームに進出したミッドメジャーチームはしばらくの間ありませんでした。
ただミッドメジャーチームにまったくチャンスがなかったわけではありません。ボウルコーリションやボウルアライアンスと違い、戦績次第では彼らにもBCSボウルのいずれかに出場できるチャンスが与えられていたのです。
実際2004年にはレギュラーシーズンを全勝で終えたユタ大(マウンテンウエストカンファレンス)がミッドメジャーチームで初めてBCSボウル(フィエスタボウル)に出場。この時のユタ大は現オハイオ州立大のアーバン・マイヤー(Urban Meyer)監督が率いていましたが、対戦相手のピッツバーグ大(Big Eastチャンピオン)を35対7で見事倒して見せました。
さらに2006年から改定されたセレクションルールでは中堅チームでもBCSランキングにて高順位にランクされていれば夢のBCSボウルに出場することが可能になりました。その条件とは以下の二つです。
- BCSランキングで12位以上のミッドメジャーチーム
- BCSランキングで16位以上でなおかつメジャーカンファレンス優勝チームよりも上位にランクされたミッドメジャーチーム
BCSボウルゲームに出場を果たしたミッドメジャーチームは以下の通りです。
2004年度 | ユタ大(MWC、BCS6位、フィエスタボウル出場) |
2006年度 | ボイジー州立大(WAC、BCS8位、フィエスタボウル出場) |
2007年度 | ハワイ大(WAC、BCS10位、シュガーボウル出場) |
2008年度 | ユタ大(MWC、BCS6位、シュガーボウル出場) |
2009年度 | ボイジー州立大(WAC、BCS6位、フィエスタボウル出場) |
テキサスクリスチャン大(MWC、BCS4位、フィエスタボウル出場) | |
2010年度 | テキサスクリスチャン大(MWC、BCS3位、ローズボウル出場) |
2012年度 | ノーザンイリノイ大(MAC、BCS15位、オレンジボウル出場) |
2012年のノーザンイリノイ大はBig Eastチャンピオンであるルイビル大(21位)よりも順位が上回ったため出場が可能になりました。
BCSは短命だったボウルコーリションやボウルアライアンスと違い1998年度から2013年度まで16年間続きました。しかしBCSがうまくマッチアップを組めるかどうかはほぼ時の運で、無敗チームが2チームのみであればナショナルチャンピオンシップの組み合わせはこの2チームで決まりですが、そうでない場合には必ず出場できないチームが文句をつけることになり、誰もが納得するマッチアップを組める年はそう多くはありませんでした。
実際に無敗同士が合間見えたタイトルゲームは、
- 1999年度シュガーボウル
フロリダ州立大(11勝0敗)vs バージニア工科大(11勝0敗) - 2002年度フィエスタボウル
オハイオ州立大(13勝0敗)vs マイアミ大(12勝0敗) - 2004年度オレンジボウル
サザンカリフォルニア大(12勝0敗)vs オクラホマ大(12勝0敗) - 2005年度ローズボウル
テキサス大(12勝0敗)vs サザンカリフォルニア大(12勝0敗) - 2009年度BCSナショナルチャンピオンシップ
アラバマ大(13勝0敗)vs テキサス大(13勝0敗) - 2010年度BCSナショナルチャンピオンシップ
アーバン大(13勝0敗)vs オレゴン大(12勝0敗)
例えば・・・
1998年度
カンザス州立大はレギュラーシーズンを12勝1敗で終え全米3位にランクされましたが、彼らよりランクが下のオハイオ州立大(4位)、フロリダ大(8位)がBCSボウルに招待され、カンザス州立大は格下のアラモボウルに出場を余儀なくされました。これはオハイオ州立大とフロリダ大の方がブランド力が強く、集客力があるとされたからです。これを受け、翌年からBCSランクで3位(もしくは3位チームがカンファレンスチャンピオンならば4位)にランクされているチームには自動的にBCSボウルへの出場権が与えられる「カンザス州立大ルール(3-4ルール)」が採用されるようになりました。
またこの年全勝したトゥレーン大はミッドメジャー出身ということでBCSシステムから無視されることになってしまいました。
1999年度
再びカンザス州立大がブランド力の無さに泣かされました。この年6位にランクされたカンザス州立大でしたが、8位のミシガン大に追い越されBCSボウル出場を逃し、さらにシーズン中にミシガン大を倒したミシガン州立大(9位)もミシガン大よりランクを下回りこちらもBCSボウル出場ならず。このことでBCSが非常に有名校寄りであるとう批判が起きました。
2000年度
ナショナルタイトルはフロリダ州立大(1敗)とオクラホマ大(無敗)の間で行われましたが、APランキングとコーチランキングで共に2位にランクされ、フロリダ州立大に唯一の土をつけたマイアミ大(1敗)がタイトルゲームに出場できないというおかしな現象が起きました。さらにそのマイアミ大から白星を奪ったワシントン大(1敗)はタイトルゲーム出場の話題にも挙がりませんでした。しかもフロリダ州立大はオクラホマ大に破れ、マイアミ大とワシントン大はそれぞれのボウルゲームで快勝したため、この年のタイトルゲームのマッチアップも失敗だったと罵られたのです。
2001年度
今度はAPランキングとコーチランキングで全米4位のネブラスカ大がナショナルタイトルゲームに選ばれるという事態が起きました。ネブラスカ大はレギュラーシーズン最終戦まで無敗でしたが、最後にコロラド大に62対36と大敗。これにより彼らはAPとコーチランキングで順位を落としますが、コンピューターランキングはこのコロラド大での敗戦を重要とせず、コロラド大(2敗)とオレゴン大(1敗)を飛び越してネブラスカ大がタイトルゲームに出場を決めました。これに関する批判を受け、BCSはBCSランキングのコンピューターランキングと他の「ヒューマンランキング(AP/コーチ)」の比重を変えることになりました。
2003年度
タイトル争いはオクラホマ大、ルイジアナ州立大、サザンカリフォルニア大の三つ巴に。オクラホマ大はカンファレンスタイトルゲームでカンザス州立大に返り討ちにあい土壇場で1敗を喫してしまいます。AP/コーチランキングの「ヒューマンランキング」はこのオクラホマ大の終盤での敗戦を重く見て彼らの順位を3位に下げますが、負けたタイミングを加味しないコンピューターランキングはこの敗戦後もオクラホマ大を1位に選出。これによりオクラホマ大がタイトルゲームに進出することになりました。そしてオクラホマ大の対戦相手には、サザンカリフォルニア大よりもスケジュール的に優れていたとされるルイジアナ州立大が選ばれ、サザンカリフォルニア大はローズボウルに出場(ミシガン大と対戦)。タイトルゲームではルイジアナ州立大が、ローズボウルではサザンカリフォルニア大がそれぞれ勝ちましたが、APランキングは最終ランキングでサザンカリフォルニア大をトップに指名。よってナショナルチャンピオンが再び2つ(BCSチャンピオン=ルイジアナ州立大、APランキングチャンピオン=サザンカリフォルニア大)選出されることになってしまったのです。
2004年度
何としてもBCSボウルに出場したかったテキサス大は当時の監督マック・ブラウン(Mack Brown)氏がAPとコーチランキングの投票者に働きかけて、当時最後の椅子を争っていたカリフォルニア大よりもテキサスを上位にランクするよう企てたという話が上がりました。投票者が誰だかわからないのでこの疑惑は明らかになることはありませんでしたが、ブラウン氏のプレッシャーによって票の操作が行われていたというのが一般の見識のようです。
2006年度
強豪チームが1敗で並んだこのシーズン、「同じカンファレンスから3チーム以上BCSボウルゲームに出場できない」というBCSのルールがアーバン大とウィスコンシン大に不利に働きました。というのもSECからはフロリダ大(この年の全米チャンピオン)、ルイジアナ州立大、そしてアーバン大が、そしてBig Tenからはオハイオ州立大、ミシガン大、ウィスコンシン大がランキング上位に顔を連ねましたが、フロリダ大、ルイジアナ州立大、オハイオ州立大、ミシガン大がBCSランキングでアーバン大とウィスコンシン大よりも上位にランクされたため、この2チームは前述のルールのせいでBCSボウルに出場することはできませんでした。アーバン大はレギュラーシーズン中にフロリダ大、ルイジアナ州立大両校から勝利を奪っていたにも関わらずです。
2009年度
2つのミッドメジャーチーム、テキサスクリスチャン大とボイジー州立大がBCSランキングで高順位を獲得(4位と6位)。彼らは晴れてBCSボウルゲームに出場する資格を得たのですが、BCSは彼ら同士をフィエスタボウルでマッチアップさせたのです。ミッドメジャーチームにしてみればBCSボウルという大舞台でメジャーチーム達と対戦したいと考えていたことでしょうが、BCSはメジャーチームがミッドメジャーチームに敗れることを恐れてこのような対戦カードを用意したとも言われ、このマッチアップには大変な批判が起きました。
2010年度
前年度に引き続きテキサスクリスチャン大が全勝でレギュラーシーズンを終えます。しかし同じく全勝のオレゴン大とアーバン大に競り負けテキサスクリスチャン大はローズボウルに出場。ここでウィスコンシン大を22対19で撃破します。実はこれに先立ちオハイオ州立大の大学長がミッドメジャーチームが対戦してきた相手を「Little Sisters of Poor(か弱いお嬢ちゃん達)」と酷評し、そんなチームとしか対戦していないミッドメジャー(テキサスクリスチャン大やボイジー州立大)はナショナルタイトルゲームに出場する資格はない、ととんでもない発言をしていました。テキサスクリスチャン大のローズボウルでの勝利はこの大学長の馬鹿げた主張をねじ伏せるには十分で、彼のお膝元のオハイオ州立大のあるコロンバス市でもこの大学長の主張を受け入れずに逆にテキサスクリスチャン大のローズボウルでの勝利を讃える広告を張り出したほどです。
2011年度
ナショナルタイトルゲームは同じSEC西地区出身のアラバマ大とルイジアナ州立大のリマッチとなりました。ルイジアナ州立大はレギュラーシーズン中にアラバマ大を破り、さらにカンファレンスでも優勝していましたが、アラバマ大はライバル・アーバン大に大勝し、さらにオクラホマ州立大がアイオワ州立大に敗れたため、オクラホマ州立大はコンピューターランキングで2位にランクされるも、ヒューマンランキングで2位だったアラバマ大に結果的にBCSランキングにおいて僅差で敗れアラバマ大がタイトルゲームに進出。カンファレンスタイトルゲームにも進出出来ず、尚かつ一度ルイジアナ州立大に負けたアラバマが選ばれてしまったわけです。ゲームではアラバマ大がリベンジを果たし優勝しましたが、これによって起こった議論により、タイトルゲーム出場するには所属カンファレンスで優勝することが最低限の条件になりました。
そしてこの頃からBCSシステムの脆弱性はアメリカ国会でも議題にあげられるほどで、結果的にBCSは2013年度シーズンを最後に廃止され、その跡を継ぐ形で新たに設立されたのがカレッジフットボールプレーオフでした。
1998年から2013年までのナショナルチャンピオン
年度 | チャンピオン | 選出団体 |
---|---|---|
1998 | テネシー大 | コンセンサス |
【BCSナショナルチャンピオンシップ】 テネシー大 23, フロリダ州立大 16(フィエスタボウル) |
||
1999 | フロリダ州立大 | コンセンサス |
【BCSナショナルチャンピオンシップ】 フロリダ州立大 46, バージニア工科大 29(シュガーボウル) |
||
2000 | オクラホマ大 | コンセンサス |
【BCSナショナルチャンピオンシップ】 オクラホマ大 13, フロリダ州立大 2(オレンジボウル) |
||
2001 | マイアミ大 | コンセンサス |
【BCSナショナルチャンピオンシップ】 マイアミ大 37, ネブラスカ大 14(ローズボウル) |
||
2002 | オハイオ州立大 | コンセンサス |
【BCSナショナルチャンピオンシップ】 オハイオ州立大 31, マイアミ大 24(フィエスタボウル) |
||
2003 | ルイジアナ州立大 サザンカリフォルニア大 | BCSチャンピオン APランキング |
【BCSナショナルチャンピオンシップ】 ルイジアナ州立大 21, オクラホマ大 14(シュガーボウル) |
||
2004 | サザンカリフォルニア大 | コンセンサス |
【BCSナショナルチャンピオンシップ】 サザンカリフォルニア大 55, フロリダ州立大 19(オレンジボウル) |
||
2005 | テキサス大 | コンセンサス |
【BCSナショナルチャンピオンシップ】 テキサス大 41, サザンカリフォルニア大 38(ローズボウル) |
||
2006 | フロリダ大 | コンセンサス |
【BCSナショナルチャンピオンシップ】 フロリダ大 41, オハイオ州立大 14 |
||
2007 | ルイジアナ州立大 | コンセンサス |
【BCSナショナルチャンピオンシップ】 ルイジアナ州立大 38, オハイオ州立大 24 |
||
2008 | フロリダ大 | コンセンサス |
【BCSナショナルチャンピオンシップ】 フロリダ大 24, オクラホマ大 14 |
||
2009 | アラバマ大 | コンセンサス |
【BCSナショナルチャンピオンシップ】 アラバマ大 37, テキサス大 21 |
||
2010 | アーバン大 | コンセンサス |
【BCSナショナルチャンピオンシップ】 アーバン大 22, オレゴン大 19 |
||
2011 | アラバマ大 | コンセンサス |
【BCSナショナルチャンピオンシップ】 アラバマ大 21, ルイジアナ州立大 0 |
||
2012 | アラバマ大 | コンセンサス |
【BCSナショナルチャンピオンシップ】 アラバマ大 42, ノートルダム大 14 |
||
2013 | フロリダ州立大 | コンセンサス |
【BCSナショナルチャンピオンシップ】 フロリダ州立大 34, アーバン大 31 |
ラスト : カレッジフットボールプレーオフ