BCSの弱点は唯一無二のトップ2チームを選ばなければならないという根底にあり、前述の通りシーズン次第でマッチアップが上手くいったりいかなかったりしたことです。
トーナメント形式のプレーオフを行うべきだという声は昔から挙がっていました。しかしボウルゲーム開催者の利権問題やスケジュールの問題などの障害があり現実的な話し合いまでには至りませんでした。それでも長年蓄積したBCSに対する不満や批判から新たなシステムを求める声は高まり続けました。
そして2012年、その声に押されメジャーカンファレンスの代表者達は2014年から4チームによるプレーオフを開催すると決定。その名も「カレッジフットボールプレーオフ(CFP)」。FBS史上初となるトーナメント方式のプレーオフが現実のものとなったのです。
CFPではコンピューターランキングなどは存在せず、13人の選考委員会がシーズン後半に5週間に渡り「CFPランキング」を公表。その最終ランキングで1位から4位にランクされた4チームがプレーオフに進出。そして準決勝戦を勝ち抜いた2チームが晴れてCFPナショナルチャンピオンシップで対戦するという形式です。
トーナメント導入に関して危惧されたのは長い間愛されてきたボウルゲームの存在感が失われてしまうのではないか、ということでした。これを回避するために取られた策としてCFPでは主要ボウルゲーム6つを「ニューイヤーズ6ボウル」と位置づけて、これらのボウルゲームから毎年2つずつ順番に準決勝戦として使用することにしました。その「ニューイヤーズ6」は以下のボウルゲームです。
- ローズボウル
- シュガーボウル
- オレンジボウル
- コットンボウル
- フィエスタボウル
- ピーチボウル
ランク付けにおいて選考委員が注目するポイントは勝敗、カンファレンスで優勝したかどうか、上位チームの直接対決の結果、そしてけが人の状況や、試合が行われた時の天候までも加味されます。そして最も重要とされるのが「ストレングスオブスケジュール」です。
「ストレングスオブスケジュール(SOS)」とはそれぞれのチームがこなしたスケジュールがどれだけ厳しいものだったかどうかを指す言葉で、これはCFPだけでなくBCSでも参考にされていました。ランキングを決める際、特に複数のチームが僅差で並んでいた場合に用いられる要素です。
例えば全勝チームが2つあったとして、どちらの方を上位にランクすべきかを考える時、それぞれのチームの対戦相手を見比べ、より厳しいスケジュールを勝ち抜いたチーム、つまりSOSが高いチームが上位にランクされる傾向があります。
これまでのシステムと違い、CFPの選考委員界はAPランキングやコーチランキング、コンピューターランキングなどを基本的には使用しません。それまでのチームのプレーのレベル、勝敗、SOS、統計などの情報を元に最終的に彼らの投票のみで順位付けが行われます。
2014年に開始されて以来今のところ評価は上々ですが、やはり批判がないわけでもありません。
一番指摘されているのはこれまでのシステム同様最終ランキングトップ4に入るにはそれなりブランド力がないとだめ、というような傾向があると言われていることです。そしてSOSが重要であることによって無敗の中堅校よりも1敗した強豪校の方が贔屓されるという事態も起きています。
しかしこの議論はなかなか難しいです。パワー5(メジャー6カンファレンスやBCSカンファレンスに代わる呼び名:ACC、Big 12、Big Ten、Pac-12、SECの5カンファレンスを指す)所属で強豪ばかりと戦いこれを勝ち抜いたチームと、そこそこのチームとばかり対戦して勝ち抜いてきたチームの勝利の価値を単純に比較することはできません。それに例え中堅校でスケジュールが強豪チームのものよりも緩かったとしても、彼らが全勝すればそれはそれで非常に価値があるものだと考えられるからです。
何れにしても長く待たれたトーナメント形式のプレーオフが実現したことは非常に大きな進歩と言えるでしょう。FCSのプレーオフは16チーム制を敷いており、FBSのCFPはたったの4チーム制であることは議論の余地はあると思いますが。個人的にはFBSもFCSの形式を踏襲できればいいなとは思いますが、そうなればレギュラーシーズン中の試合数を制限しなければならず、それはおそらくビジネスの関係で(試合数が少なくなればチケットのセールスやテレビ放映権の収入も減るため)ほぼ不可能でしょうから、しばらくはこの4チーム制が続いていくのでしょうね。
2014年以降のナショナルチャンピオン
年度 | チャンピオン |
---|---|
2014 | オハイオ州立大 |
【CFPナショナルチャンピオンシップ】 オハイオ州立大 42, オレゴン大 20 【準決勝戦】 オハイオ州立大 42、アラバマ大 35(シュガーボウル) オレゴン大 59、フロリダ州立大 20(ローズボウル) |
|
2015 | アラバマ大 |
【CFPナショナルチャンピオンシップ】 アラバマ大 45, クレムソン大 40 【準決勝戦】 アラバマ大 38、ミシガン州立大 0(コットンボウル) クレムソン大 37、オクラホマ大 17(オレンジボウル) |
|
2016 | クレムソン大 |
【CFPナショナルチャンピオンシップ】 クレムソン大 35, アラバマ大 31 【準決勝戦】 クレムソン大 31、オハイオ州立大 0(フィエスタボウル) アラバマ大 24、ワシントン大 7(ピーチボウル) |
|
2017 | アラバマ大 |
【CFPナショナルチャンピオンシップ】 アラバマ大 26, ジョージア大 23 【準決勝戦】 ジョージア大 54、オクラホマ大 48(ローズボウル) アラバマ大 24、クレムソン大 6(シュガーボウル) |
|
2018 | クレムソン大 |
【CFPナショナルチャンピオンシップ】 クレムソン大 44, アラバマ大 16 【準決勝戦】 アラバマ大 42、オクラホマ大 31(オレンジボウル) クレムソン大 30、ノートルダム大 3(コットンボウル) |
|
2019 | ルイジアナ州立大 |
【CFPナショナルチャンピオンシップ】 ルイジアナ州立大 42, クレムソン大 25 【準決勝戦】 ルイジアナ州立大 63、オクラホマ大 28(ピーチボウル) クレムソン大 29、オハイオ州立大 23(フィエスタボウル) |
|
2020 | アラバマ大 |
【CFPナショナルチャンピオンシップ】 アラバマ大 52, オハイオ州立大 24 【準決勝戦】 アラバマ大 31、ノートルダム大 14(ローズボウル) オハイオ州立大 49、クレムソン大 28(シュガーボウル) |
|
2021 | ジョージア大 |
【CFPナショナルチャンピオンシップ】 ジョージア大 33, アラバマ大 18 【準決勝戦】 アラバマ大 27, シンシナティ大 6(コットンボウル) ジョージア大 34、ミシガン大 11(オレンジボウル) |
|
2022 | ジョージア大 |
【CFPナショナルチャンピオンシップ】 ジョージア大 65, テキサスクリスチャン大 7 【準決勝戦】 ジョージア大 42, オハイオ州立大 41(ピーチボウル) テキサスクリスチャン大 51、ミシガン大 45(フィエスタボウル) |