カレッジフットボールプレーオフ(CFP)に進出する4チームを選ぶCFPランキングがいよいよ今週火曜日(10月31日)に発表されました。初回のCFPランキングでトップに立ったのは、APランキングで開幕以来ずっと首位を守り続けていたジョージア大ではなくオハイオ州立大でした。
今後CFPランキングはあと5回リリースされますが、12月3日のファイナルランキングでトップ4チームが晴れてプレーオフの舞台に立つことになります。今後この4つの椅子を狙うチームたちは1敗することも許されないという厳しい状況に立たされることになります。
そんなCFPランキングが発表された直後の週末。このランキングの顔ぶれをシャッフルするようなドラマが生まれるでしょうか・・・。
目次
#14 ルイジアナ州立大 @ #8 アラバマ大
SEC西地区優勝争いで最大級に重要なマッチアップです。
2014年にCFPが導入されて以来最多の7回出場を誇るアラバマ大ですが、今季のチームは過去と比べると最もチーム力が劣ると言われています。特にオフェンスにおいては得点力がイマイチで、過去に在籍したトゥア・タガヴァイロア(Tua Tagovailoa、現マイアミドルフィンズ)、マック・ジョーンズ(Mac Jones、現ニューイングランドペイトリオッツ)、ブライス・ヤング(Bryce Young、現カロライナパンサーズ)のようなNFL級のQBもおらず、デリック・ヘンリー(Derrick Henry、現テネシータイタンズ)、ジョシュ・ジェイコブス(Josh Jacobs、現ラスベガスレイダース)、ナジー・ハリス(Najee Harris、現ピッツバーグスティーラーズ)、ジャミアー・ギブス(Jahmyr Gibbs、現デトロイトライオンズ)のようなRBもおらず、ジェリー・ジュディ(Jerry Jeudy、現デンバーブロンコス)、デヴォンテ・スミス(DeVonta Smith、現フィラデルフィアイーグルス)、ジェイレン・ワドル(Jaylen Waddle、現マイアミドルフィンズ)、ジェミソン・ウィリアムス(Jameson Williams、現デトロイトライオンズ)のようなWRもおらず・・・。
そんな感じで火力的にはここ最近でもっとも湿っぽいと言われているアラバマ大は2戦目にテキサス大に敗れたばかりか、僅差で低スコアな試合を多くこなしてきていますが、なんだかんだ言ってここまで7勝1敗。その原動力は強力なディフェンス陣にあります。
アラバマ大の失点数はここまで16.5点(全米12位)、1試合の非ヤードゲインが306ヤード(全米15位)、1プレーの非ヤードゲインが4.3ヤード(全米10位)、1プレーの非ランヤードゲインが3.1ヤード(全米15位)、1プレーの非パスヤードゲインが6.2ヤード(全米18位)とスタッツ的には軒並みトップレベルを誇っています。
またスコア力が乏しいオフェンスですが、乏しいなりに試合を重ねるにつれて成長も見られます。OL陣のパスプロには進歩の兆しが見られますし、何よりもQBジェイレン・ミルロー(Jalen Milroe)のポケット内でのプレゼンスは評価に値すると思います。元々走るのが得意ですが、ポケット内でオープンレシーバーを探そうとしている努力が垣間見れますし、強肩から繰り出されるロングパスは魅力です。ショート/ミッドレンジのパスの精度が上がればさらに攻撃に幅は生まれそうです。
一方のルイジアナ州立大は開幕戦でのフロリダ州立大戦、そしてミシシッピ大戦に敗れて2敗を喫していますが、現在12位のミズーリ大に対する勝利(ミズーリ大は当時21位)を含む3連勝中。SEC戦ではミシシッピ大との敗戦1敗だけですから、このアラバマ大との試合に勝てば残りのSEC戦(フロリダ大、テキサスA&M大)を考えると西地区優勝は射程圏内です。
ルイジアナ州立大の強みはオフェンス。現在1試合の平均得点数が43.9点(全米2位)、1試合平均獲得ヤード数が543.1ヤード(全米1位)、1プレーの平均獲得ヤード数が7.9ヤード(全米1位)、1プレーのラッシュヤード平均数が5.7ヤード(全米7位)、1試合の平均パスヤード獲得数が343.0ヤード(全米2位)と爆発的なオフェンス力を誇っています。
その主軸となるのがQBジェイデン・ダニエルズ(Jayden Daniels)。トータルパスヤードが2575ヤード(全米4位)、パスTD数25(全米1位)、パス成功率が73.1%(全米6位)、QBレーティングが204.4(全米1位)と今季を代表するQBに成長。ハイズマントロフィーレースにおいてダークホース的な選手と目されています。
また彼のメインターゲットであるWRマリク・ネイバーズ(Malik Nabers)はここまでトータルレシーブヤードが981ヤード(全米2位)、TD数が9つ(全米5位タイ)で、今季ナンバーワンWRと言われるオハイオ州立大のマーヴィン・ハリソン・Jr(Marvin Harrison Jr)と甲乙つけ難い逸材とも言われます。さらにTD数で全米1位タイとなる11TDを記録しているブライアン・トーマス・Jr(Brian Thomas Jr)も健在で、まさに破壊力抜群なルイジアナ州立大オフェンスと強固なアラバマ大ディフェンスの矛と盾のガチンコ勝負となりそうです。
そんな中でキーとなるのはルイジアナ州立大のディフェンス。ポテンシャルはあると言われながら今季のルイジアナ州立大のディフェンスはスタッツの上では軒並み中堅かそれ以下のレベル。アラバマ大のOCトミー・リース(Tommy Rees)氏は相手ディフェンスの穴を攻めていくのが上手いコーディネーター。ボールコントロールを軸に攻めていくスタイルのアラバマ大をルイジアナ州立大ディフェンスが止められるのか。それにはQBミルローに絶え間なくプレッシャーをかけていく必要がありそうです。
昨年1年生ながらセンセーショナルなデビューを飾ったルイジアナ州立大のLBハロルド・パーキンス・Jr(Harold Perkins Jr)は今季ここまでなりを潜めていますが、この大舞台でこそ彼の活躍が必須条件です。特にこの試合はアラバマ大のホームゲームですし、またアラバマ大は昨年ルイジアナ州立大に敗れた苦い思い出がありますから、雪辱に燃えているはず。
深南部フットボールを代表するライバリーゲームでもあるこの一戦は必見です。
その他の試合
#12 ミズーリ大 vs #2 ジョージア大
SEC東地区の首位争いは現在全米2位のジョージア大と驚きの12位ミズーリ大の2校となっています。
ジョージア大はAPランキングで開幕以来1位を死守してきましたが、先日発表されたCFPランキングで1位の座をオハイオ州立大に明け渡しました。当然彼らとしては嬉しくないことでしょうから、その鬱憤をホームで晴らしたいところ。
ジョージア大がCFPランキングで1位を取れなかった理由の1つがストレングス・オブ・スケジュールが弱かったからだと思われます。ここまでジョージア大はランクチームとの対戦が6戦目のケンタッキー大(当時20位)のみで、そのケンタッキー大も現在はランクされていません。CFP選考委員会はジョージア大が対戦してきた相手が弱かったと判断したためオハイオ州立大をトップに推したのでしょう。
そう言った意味では全米12位のミズーリ大と対戦することはジョージア大にとっては好都合。彼らを倒せばストレングス・オブ・スケジュールの評価は多少なりとも上昇するでしょうし、そうなれば今後ジョージア大がCFPランキングの上位に残るのに大いに役立つはずです。
ミズーリ大はここまで7勝1敗と絶好調。QBブレディ・クック(Brady Cook)はここまで2259ヤードのパスに15TD、3INTという数字を残していますが、アウェーでのパフォーマンスがすこぶる良く、パスの成功率が74.3%と敵地での勝負強さを示しています。このジョージア大戦もまた敵地での試合となるため、ミズーリ大がアップセットを食らわすにはクックのこのアウェーでの強心力が不可欠となりそうです。
#5 ワシントン大 @ #24 サザンカリフォルニア大
全米5位のワシントン大と全米24位のサザンカリフォルニア大の一戦も今週末の注目ゲームです。
ワシントン大はここまで8勝無敗と連勝街道をひた走っていますが、直近2試合(アリゾナ州立大、スタンフォード大)では勝ったものの、格下と思われていたチームに割と苦戦したのが気がかり。先にオレゴン大との決戦を制しはしましたが、現在6位で波に乗っているオレゴン大と比べるとモメンタムの鈍り具合が心配です。
もっともハイズマントロフィーレースで有力候補と言われるQBマイケル・ペニックス・Jr(Michael Penix Jr)率いるオフェンスはオフェンスのスタッツで軒並み全米トップ10入りを果たしていますので得点することに関しては心配無用。
対するサザンカリフォルニア大もオフェンス力「だけ」は一級品。多くのスタッツカテゴリーでワシントン大と肩を並べる数字を持っています。問題はディフェンス。失点数は平均32.6点(全米107位)、平均非ヤードゲイン数420.9ヤード(全米105位)、平均非ランヤードゲイン数172.1ヤード(全米96位)、平均非パスヤードゲイン数(全米90位)とどれをとっても下から数えた方が早いという体たらくさ。
おそらくこの試合は点取合戦になることでしょう。エンタメ性抜群のゲームが期待できそうですが、最後に笑うのは果たしてどっち・・・。
#23 カンザス大 @ #7 テキサス大
先週ヒューストン大に41対0で圧勝したことでAPランキングに食い込んできたカンザス州立大は初回のCFPランキングでも23位に滑り込んできました。その彼らが全米7位のテキサス大のホームに乗り込みます。
オクラホマ大との一戦に敗れたことで黒星を喫したテキサス大ですが、そのオクラホマ大が先週カンザス大に敗れたことでランクを落とし、テキサス大がオクラホマ大よりも上に立ちました。カンファレンス優勝決定戦出場においてCFPランキングでの位置はそこまで意味をなしませんが、テキサス大としてはこのモメンタムを維持して行きたいところです。
テキサス大はエースQBクウィン・ユワーズ(Quinn Ewers)が肩の怪我でもうしばらく復帰できないことを考えれば、彼のバックアップであるマリク・マーフィー(Maalik Murphy)にその座を託すほかありませんが、そのマーフィーは前戦のブリガムヤング大戦では2つのTDパスを成功させるも1つのパスINTと1つのファンブルも犯しており、ターンオーバーが心配。
ただテキサス大にはRBジョナサン・ブルックス(Jonathon Brooks)やWRゼヴィアー・ウォーシー(Xavier Worthy)、WRアドナイ・ミッチェル(Adonai Mitchell)といった優れたスキルプレーヤーが脇を固めますから、彼らに仕事をさせてあげればテキサス大オフェンスは安泰だと思います。
カンザス州立大はランを主体にしたオフェンスで1試合の平均ランヤードは225.7ヤードでこれは全米4位の数字。これに「Bend but dont’ break」(押され続けても決してやられない)の精神のディフェンスを擁する堅実なチーム。昨年のBig 12カンファレンス王者の意地を見せることができるでしょうか?
#9 オクラホマ大 @ #22 オクラホマ州立大
オクラホマ大とオクラホマ州立大のオクラホマ州内ライバリーは「ベッドラムシリーズ(Bedlam Series)」と呼ばれる著名な宿敵決戦ですが、118回目の対決を迎える今回でしばらくこの対戦は小休止を迎えることになりそうです。
というのも来年からオクラホマ大がBig 12カンファレンスからSECへ移籍することで両校が離れ離れになるからなのですが、Big 12カンファレンスを出ていくオクラホマ大を裏切り者として見ているオクラホマ州立大のマイク・ガンディ(Mike Gundy)監督としてはなんとしてもこの対戦で勝利を収めておきたいところ。
オクラホマ大は前述の通りカンザス大にまさかのアップセットを喰らって初黒星を喫して初回のCFPランキングで9位発進。Big 12カンファレンスで優勝すればプレーオフ進出の可能性は残されますが、カンザス大との敗戦そしてライバル・オクラホマ州立大との今週末の対決で彼らの命運は決まりそうです。
元々お互いを忌み嫌う間柄ながら、さらにこれがしばらく最後の対戦となることで余計に注目度が集まります。開催地はオクラホマ州立大。個人的にはアップセットの匂いがぷんぷんします・・・。
バージニア工科大 @ #13 ルイビル大
ACCの優勝決定戦出場を賭けたレースは無敗のフロリダ州立大、それを1敗で追うルイビル大とバージニア工科大の構図になっていますが、そのルイビル大とバージニア工科大がこの週末に直接対決を迎えます。
ルイビル大は今季からOBのジェフ・ブローム(Jeff Brohm)監督が率いますが、その初年度から7勝1敗(カンファレンス戦績4勝1敗)と快進撃を続けています。ホームでは今の所5連勝中と相性抜群なところにバージニア工科大を迎えます。
一方のバージニア工科大はここ数年なりを潜めており、昨年から指揮を取るブレント・プライ(Brent Pry)監督も初年度3勝8敗で負け越し、今年も開幕後1勝3敗と振るいませんでしたが、最近4試合では3勝1敗と持ち直し、カンファレンス戦績でも3勝1敗と数字の上では優勝決定戦を狙えなくもない位置についています。
勝った方がフロリダ州立大との一騎打ちに一歩近づきます(フロリダ州立大が今後負けないという前提で)。果たして勝つのはどっち?
#21 カンザス大 @ アイオワ州立大
Big 12カンファレンスの優勝決定戦出場を賭けた争いは6チームによる混沌状態にありますが、上記に挙げたテキサス大とカンザス州立大の一戦と同じように、アイオワ州立大とカンザス大の試合の結果もこのレースに影響を及ぼすことになりそうです。
アイオワ州立大はマット・キャンベル(Matt Campbell)監督に率いられて今年で8年目。2021年までは現在サンフランシスコ49ersで活躍するQBブロック・パーディ(Brock Purdy)と現在NYジェッツで活躍するRBブリース・ホール(Breese Hall)らを擁して台頭しましたが、彼らがいなくなってからはしばらく下火に。
若く手腕のある監督として株を上げていたキャンべル監督でしたが、昨年負け越してしまい、今年も開幕後は2勝3敗と負けが先行するシーズンが続いていましたが、直近3試合で3連勝。カンファレンス戦績では4勝1敗で意外にも優勝戦戦に残っています。
対するカンザス大は先週当時6位だったオクラホマ大を倒す大金星を挙げ、現在カンファレンス戦績で2敗していますが、1敗の5チームに全てもう1つ土がつけば、オクラホマ大に勝ったことが今後どこかで活きてくる可能性もあります。ただこのアイオワ州立大戦で負けて3敗目となればそれも水の泡。
アイオワ州立大が勝って優勝戦線に生き残るか、はたまたカンザス大が勝って優勝戦線をカオスにするか・・・。