皆さんは「XFL」を覚えていらっしゃるでしょうか?1999年に華々しく誕生した新アメフトリーグは派手な演出やセクシーなチアリーダーらに囲まれ大きな期待を胸に始動しましたが、残念ながらたったの1年で経営が行き詰まり解散となってしまいました。そのXFLがなんと2020年に復活するらしいのです。
「今更必要なのか?」とその必要性を疑ってしまいますが、そのXFL復活のニュースが出たのもつかの間、彼らのカムバックに水を差す情報が飛び込んできました。
それは別の新リーグ「アライアンスオブアメリカンフットボール(Alliance of American Football、AAF)」なるものが新設されるというものでした。
これは春に8チームで10週間に渡り行われ、最後は4チームのプレーオフでチャンピオンを決めるという正真正銘のプロリーグです。これを立ち上げたのは米三大ネットワークの一つのNBCのお偉方であるディック・エバソール(Dick Ebersol)氏の息子であるチャーリー・エバソール(Charlie Ebersol)氏。そして彼を支える重役には元著名アメフト選手がずらり。トロイ・ポラマル(Troy Polamalu、元サザンカリフォルニア大→ピッツバーグスティーラーズ)、J.K.マッケイ(J.K. McKay、元サザンカリフォルニア大→タンパベイバッカニアーズなど)、ハインズ・ワード(Hines Ward、元ジョージア大→ピッツバーグスティーラーズ)、ジャスティン・タック(Justin Tuck、元ノートルダム大→ニューヨークジャイアンツなど)などが顔を連ねています。
この新リーグ、2019年に発足するということですから、XFLにとっては先を越されることになり、彼らはリーグが始まる前からすでに危機状態にあるとも言えます。
もちろんAAFを立ち上げるからには本家本元であるNFLと同じことをしても意味がないわけで、彼らは大御所との違いを見せるために以下のような点を新リーグに導入するとしています。
- キックオフの廃止。
- 試合の進行を早めるためにコマーシャルタイムアウトの廃止。プレークロックは30秒に。
- PATの廃止。TD後は必ず2ポイントコンバージョンを行わなければならない。
- 脳震とう防止のため頭部への接触を厳しく制限、など。
チームの編成は参加する地域に重きを置かれ、選手のドラフトもそのフランチャイズが設置されるエリア出身の選手を優先的に選択していくことになっているそうです。
選手とファンの距離を縮め、ファンと選手ファーストのリーグ構築を理想に掲げるAAF。うまくいくかどうかは眉唾物ですが、一方で著名選手でもNFLでうまくいかなかった選手や、NFLドラフトにかからなくてもある程度のタレントを有する選手などの受け皿としてはある程度の理解を示す事ができます。見る側としてのニーズがあるのかどうかが問題となりそうですが・・・。
そんなAAFですが早くも最初のフランチャイズが決定しました。フロリダ州のオーランド市です。ここにはNFLのチームはありませんが、ディズニーやらユニバーサルスタジオなどエンターテイメントの地域としては確立されており、またフロリダという暖かい気候からも納得できる立地条件だと言えます。
そしてこのチームの初代監督にはフロリダ大・サウスカロライナ大で監督を務めたスティーブ・スパリアー(Steve Spurrier)氏が就任する事が発表されました。
It’s OFFICIAL: The legendary Head Ball Coach, @SteveSpurrierUF has joined The Alliance as head coach in Orlando. All the details at https://t.co/FPPxtbeBjO #JoinTheAlliance #AllianceORL pic.twitter.com/1Q4eQRq1is
— AAF (@TheAAF) April 7, 2018
このニュースが発表される数日前、あるインタビューでスパリアー氏はコーチングの現場から離れて寂しい思いをしていると吐露していました。その矢先にAAFでの現場復帰となったわけですからなんとも奇妙なものです。
ご存知かと思いますが、スパリアー氏はフロリダ大でその名を欲しいままにした名将。2002年から2003年までNFLワシントンレッドスキンズでプロの世界にも挑戦。ここでは失敗に終わりましたが、その後は2005年からサウスカロライナ大の監督として弱小チームを戦えるチームに変貌させました。そして2015年のシーズン中盤に突如としてコーチングから引退。以降はフロリダ大のアンバサダーを務めていました。
【関連記事】サウスカロライナ大のスパリアー監督が引責辞任
【関連記事】スパリアー氏が母校に「凱旋」
「AAFはコーチングの現場に復帰するのに非常にユニークなチャンスを与えてくれました。春季というシーズンにプレーしたくて飢えている能力のある若い選手たちをコーチでき、彼らのプロ生活を引き延ばす、あるいは新たなチャンスを提供するのに大きな役割を果たしてくれそうです。この新たなチャレンジにすでに気合が入っており、今からでもすぐにスタートしたいくらいです。」と現場復帰するスパリアー氏はその抱負を語ってくれました。
72歳になった今でもコーチしたくてうずうずする辺りはもう職業病なのかもしれませんね。
ちなみに南カリフォルニア地区にもAAFのフランチャイズが設置されるようですが、ここには元コロラド大・ワシントン大・UCLAの監督で現在テレビ解説者のリック・ニューハイゼル(Rick Neuheisel)氏の就任が濃厚だという報道もあります。
カレッジフットボール界からAAFへ転身するというアイデアが今後増えていくとすれば、現在いまだに現場に復帰できていないレス・マイルズ(Les Miles、元ルイジアナ州立大)氏、ブレット・ビルマ(Bret Bielema、元アーカンソー大)氏、リッチ・ロドリゲス(Rich Rodriguez、元アリゾナ大)氏、さらにはスキャンダルでいまだに揺れているアート・ブライルス(Art Briles、元ベイラー大)氏などのコーチたちの現場復帰の受け皿にもなるのかもしれません。