いよいよ2015年度のポストシーズン、ボウルゲームが始まりました。
以前にも述べましたが、今季はボウルゲームが40試合もあります(ナショナルチャンピオンシップを除く)。そして未だに40と言う数字は多すぎると思いますし、それにより今季は負け越しチームも数合わせのために出場出来てしまうと言う事態が起きて、ボウルゲームの有り難みが薄くなってしまったと思うのです。
その意見は変わる事は無いと思いますが、ふたを開けてみると以外にもマッチアップ的に「弱い」試合でも内容が予想に反して良かった試合が多かったです。通常年末年始に向けてビッグネームが対戦するボウルゲームが増えていくので、12月19日に行われた5つのボウルゲームは名前だけだと正直「しょぼさ」は否めないのですが、それぞれが土曜日の茶の間を楽しませるだけのゲームを提供してくれました。
ニューオーリンズボウル:ルイジアナ工科大47、アーカンソー州立大28
元フロリダ大のQBで現在大学院生としてルイジアナ工科大を率いたジェフ・ドリスケル(Jeff Driskel)はなんと457ヤードものパスを投げ3つのTDを奪い、このニューオーリンズボウルでアーカンソー州立大に47対28と圧勝。ドリスケルが最後の最後にNFLスカウトに目に留まるような素晴らしいパフォーマンスでカレッジキャリアを終えました。
ドリスケルは今季実に7試合で300ヤード以上のパスを投げてきましたが、400ヤード以上も肩で稼いだ試合はこれが初めてでした。
ドリスケルのパスを受け取ったプレーヤーの一人であるRBケネス・ディクソン(Kenneth Dixon)はRBながらこの試合では112ヤードのパスをキャッチし、自身が記録したランヤードよりもヤードを稼いだのでした(91ヤード)。またディクソンはこの日合計4つのTDを奪い、NCAAの歴代TD数1位に躍り出ました。ちなみにこのレコードを打ち立てた後、まだ試合中にも関わらず従来の背番号「28」から「1」に着替えました。というのも元々「1」を背負うWRカルロス・ヘンダーソン(Carlos Henderson)がこの試合で怪我をしてサイドラインに下がったためディクソンが「1」をまとうことが出来たのです。
ドリスケルは先にも述べた様に元々フロリダ大のQBでしたが、2013年に足の骨を折りその後のシーズン欠場を余儀なくされ、その救済処置として5年目のプレー資格をNCAAから与えられたのです。彼のフロリダ大でのベストシーズンは2012年、1646パスヤードに12TDを記録した年でしたが、怪我から復帰した2014年は1092ヤードに9TDを記録。しかしインターセプションが10つとかさみ、結局シーズン途中でトレオン・ハリス(Treon Harris)に先発の座を奪われました。
ルイジアナ工科大に転向して来た今季はトータル4032パスヤードに27TD(8インターセプション)とカレッジキャリアでベストのシーズンを送り、ルイジアナ工科大で9勝4敗という成績を残しました。ドリスケルはNFLドラフトで下位ラウンドで選択されると言うのが下馬評ですが、この日のパフォーマンスで確実に彼の株は上がった事でしょう。
ニューメキシコボウル:アリゾナ大45、ニューメキシコ大37
昨年はPac-12チャンピオンシップに出場し、今季も開幕から3連勝としたアリゾナ大にはファンから大きな期待をかけられましたが、QBアヌ・ソロモン(Anu Solomon)そしてオールアメリカンLBのスコビー・ライト(Scooby Wright)を怪我で欠くと状況は一変。シーズンを通して敗戦を重ね、今回のボウルゲーム出場も6勝6敗とギリギリで獲得。
シーズン初旬の期待度からすれば今シーズンは残念なシーズンとなったアリゾナ大でしたが、それでもこのニューメキシコボウルでニューメキシコ大に45対37で勝利した事で少しは上向きの状況で今シーズンの全日程を終えることが出来ました。
ソロモンは2つのパスTDと1つのランTDを決め、アリゾナ大は一時は18点差まで点差を開きましたが、そこからニューメキシコ大が反撃を開始。しかしライトの2つのQBサックを含む11タックルのおかげもありニューメキシコ大の追撃を阻止し逃げ切る事が出来ました。
2007年以来のボウルゲーム出場となったニューメキシコ大でしたが、アリゾナ大得意のハイスピードオフェンスに翻弄され、アリゾナ大は合計19分しか攻撃権が無かったにもかかわらず勝利をものにしました。
ラスベガスボウル:ユタ大35、ブリガムヤング大28
ユタ大とブリガムヤング大というユタ州内のライバル対決となった今年のラスベガスボウル。試合は第1Qから非常に荒れた展開となりました。
第1Qだけでユタ大が35対0というとんでもない出だしとなりました。その点の取り方(もしくは取られ方)はもはや痛々しいという言葉しか見つからないほど。ユタ大が奪った5つのTDは全てブリガムヤング大が犯したターンオーバーが原因となったからです。
第1Qを終えた時点ですでに観衆の関心はユタ大があとどれだけ得点を重ね続けるか、と言う事に移っていた様に思えました。しかしブリガムヤング大は第2Q以降なんとか立て直し28点連続得点を奪いますが、やはり最初の35連続失点が響きついに大逆転までには至りませんでした。
逆にいえばユタ大はブリガムヤング大からの「棚ぼた」得点を第1Qに加えただけで彼らのオフェンシブスコアは無かったことになります。この極端な試合展開は両チームの選手達に様々な形で記憶に残る事でしょうが、ユタ大ヘッドコーチ、カイル・ウィッティンガム(Kyle Whittingham)が言う様に「要は勝てばそれでいいのだ」という事に尽きると思います。
ブリガムヤング大は必至の追撃も及ばず、今季でブリガムヤング大を離れバージニア大の監督に就任が決まっているブロンコ・メンデンホール(Bronco Mendenhall)監督へ最後に勝利をプレゼントすることが出来ませんでした。
カメリアボウル:アパラチアン州立大31、オハイオ大29
アパラチアン州立大とオハイオ大との対戦となったカメリアボウルはディフェンスが大きな見せ場を作り、チームの勢いが入れ替わり、さらには劇的なキックが色を添え、後半にリードが入れ替わる見応えのある試合となりましたが、結果的にアパラチアン州立大が第4Qに17点リードされていたのをひっくり返してチーム史上初のボウルゲーム勝利を挙げました。
第4Qに24点を奪い逆転勝利を挙げたアパラチアン州立大のヘッドコーチ、スコット・サターフィールド(Scott Satterfield)ですら、「長年コーチをして来ているが、こんな試合に出会った事は無い」と言うほどドラマチックなエンディングをエンスツしてくれたゲームでした。
第4Q開始時には24対7でオハイオ大がリード。ここからアパラチアン州立大QBテイラー・ラム(Taylor Lamb)の2つのTDパスとRBマーカス・コックス(Marcus Cox)のランTDで21連続得点を上げ28対24とアパラチアン州立大がリードを奪い完全に勢いはアパラチアン州立大のものと思われました。しかし残り時間6分10秒でコックスが自陣エンドゾーンでタックルされセーフティーを奪われ点差を2点差に縮められると残り1分51秒でオハイオ大キッカー、ヨシア・ヤズダニ(Josiah Yazdani)の21ヤードキックが決まりついにオハイオ大が土壇場でリードを奪い返します。
アパラチアン州立大は万事休すと思われましたが、QBラムの32ヤードのスクランブルランとバックアップRBジャリン・モア(Jalin Moore)がオハイオ大ディフェンスを突き破る15ヤードと6ヤードのランプレーでキッカー、ザック・マティクス(Zach Matics)に23ヤードのフィールドをお膳立て。これをマティクスが試合時間残り2秒で見事成功させドラマだらけの第4Qを制しアパラチアン州立大が初ボウルゲーム勝利を手に入れたのです。
キュアボウル:サンノゼ州立大27、ジョージア州立大16
今季増えすぎたボウルゲーム数に対してボウルゲーム出場資格が与えられる、ⅵ勝以上したチームの数が足らず、3チームが負け越ししたにもかかわらずボウルゲームに招待されました。サンノゼ州立大はその3つのうちの1チーム。選ばれた理由はチームの学業のないし卒業率がよかったから、という事ですがチームはそれに気後れせず逆に見返してやるとばかりの気迫のプレーが光り、一時はリードされていた試合を第4Qに逆転してジョージア州立大から勝利をもぎ取る根性を見せてくれました。