Coaching Carousel 2017 – ミシシッピ州立大の場合

ミシシッピ州立大はカレッジフットボール界でも1、2を争う強豪カンファレンスであるサウスイースタンカンファレンス(SEC)にて創設以来のメンバーですが、近代カレッジフットボールでは長く表舞台に立てなかったチームでした。

筆者がカレッジフットボールにハマりだした1998年頃、彼らはジャッキー・シェリル(Jackie Sherrill)氏に率いられていました。1980年代にテキサスA&M大で成功を納めていたシェリル氏がミシシッピ州立大にやってきたのが1991年。彼はここで13年間指揮を執るわけですが、1999年度の10勝2敗シーズンに見られるようにある程度強豪ひしめくSEC西地区でその存在感を見せることができたシーズンもありました。

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90年代から2000年代前半にミシシッピ州立大を率いたシェリル氏

しかし彼らがSECタイトルを最後に獲得したのが1941年で一番それに近づいたのも1998年の西地区制覇のみで彼らがリーグのトップを争うようなシーズンは皆無と言ってもよかったのです。

2003年に引退したシェリル氏を引き継いだのがミシシッピ州立大だけでなくSECの歴史でも初めてとなった黒人監督のシルベスター・クルーム(Sylvester Croom)氏でした。アラバマ大でかのポール・ブライアント(Paul “Bear” Bryant)監督の下でプレーしたクルーム氏は母校でコーチングの道を歩んだ後NFLの世界に身を投じましたが、シェリル氏の後釜として大抜擢されました。ただ4年目の2007年には8勝5敗で最優秀監督賞を貰う偉業も達成しましたが、その翌年には4勝8敗としたったの5年でその監督の座を追われたのです。

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ミシシッピ州立大、そしてSECで初の黒人HCとなったクルーム氏

そして2009年。当時SECだけでなく全米レベルでその名を馳せていたフロリダ大でオフェンシブコーディネーターとして活躍していたダン・マレン(Dan Mullen)氏に白羽の矢が立ちます。当時フロリダ大を率いていたアーバン・マイヤー(Urban Meyer)監督の右腕としてボーリンググリーン州立大時代からマイヤー監督の下でQBを育ててきました。ボーリンググリーン州立大ではジョシュ・ハリス(Josh Harris)、ユタ大ではアレックス・スミス(Alex Smith)、フロリダ大ではクリス・リーク(Chris Leak)とティム・ティーボ(Tim Tebow)を指導した実績をもつ敏腕コーチとして赤丸急上昇中だったところ、ミシシッピ州立大が彼を新コーチに選んだわけです。

そのマレン監督率いるミシシッピ州立大が強豪ひしめくSECで狼煙をあげるのにはそう時間はかかりませんでした。初年度こそ5勝7敗でボウルゲーム出場を逃しましたが、2年目の2010年には9勝4敗でゲーターボウルに出場。ファイナルランキングでも15位につけその存在感を見せつけます。その後もコンスタントに勝ち星を重ねられるチームを毎年輩出し、8年連続ボウルゲームにチームを送り出すまでに至りました。

マレン監督のミシシッピ州立大でのハイライトは2014年。当時開幕時にはランクさえされていませんでしたが、シーズンが始まると連勝を重ね、4戦目に当時8位のルイジアナ州立大、5戦目に6位のテキサスA&M大、そして6戦目には2位のアーバン大を次々となぎ倒し、とうとう6週目には全米1位にまで上り詰めたのです。ランク外から6週目に全米の頂点に立つのは史上最速ということで、今までのミシシッピ州立大ならば考えられなかったことです。

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ミシシッピ州立大のアップグレードに大きく貢献したマレン監督

この年は現NFLダラスカウボーイズで活躍するQBダーク・プレスコット(Dak Prescott)を擁して9連勝を重ね、全米1位の座も4週間死守しましたが、10戦目にアラバマ大(5位)に敗れると最終戦でライバル・ミシシッピ大にも敗れ、ボウルゲームでもジョージア工科大に土をつけられて10勝3敗としますが、マレン監督がチームをここまで強くしたこと、しかもプレスコットのようなハイズマントロフィー級の選手をチームに引き入れることができた彼のリクルーティング術も相まってマレン監督の株は上がり続けていったのです。

そんなマレン監督を欲しがる他のチームは大勢おり、毎年彼がどこかのチームに引き抜かれるのではないかと言われてきましたが、マレン監督は9年間もミシシッピ州立大があるスタークスビル市に居続けました。SEC所属のチームという事実、年数かけて培ってきたリクルーティングのネットワーク、そして年を追うごとにアップグレードし続けてきたチーム内外の環境もあって、マレン監督があえて外に出て行く必要性を感じなかったのでしょう。彼がそのままミシシッピ州立大でコーチ人生を終えて居たら彼は大学の英雄となって居た可能性も十分あったはずです(もちろん勝ち続けるという前提の話ですが)。

しかし転機が訪れます。ミシシッピ州立大の体育局長でマレン監督の直属のボスであったスコット・ストリクン(Scott Stricklin)氏が2016年にフロリダ大の体育局長に任命されます。そして2017年にはフロリダ大がジム・マクエルウェイン(Jim McElwain)監督をシーズン途中で解雇するのです。

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フロリダ大はマクエルウェイン氏の後釜に当時セントラルフロリダ大で無敗シーズンを送っていたスコット・フロスト(Scott Frost)監督にラブコールを送りますが、彼には断られてしまいます。そして第二の候補者に挙げられていたのがマレン監督でした。それはかつてミシシッピ州立大での上司だったストリクリン氏がフロリダ大の体育局長であったことを考えれば至極普通のことでした。しかもマレン監督は前述の通りフロリダ大でオフェンシブコーディネーターを務めていたという縁もあるのですから。

ということでマレン監督はライバルのミシシッピ大との「エッグボウル」が終了するとフロリダ大からのオファーを受諾。ボウルゲームを指揮することなくミシシッピ州立大を去って行くことになったのでした。

しかしシーズン後に監督の交代劇を経験していた他のチームと違い、ミシシッピ州立大の次期監督探しはかなり早い段階でその終わりを告げました。というのもマレン監督辞任の四日後にはその後継者が決まっていたからです。

その人物とはペンシルバニア州立大でオフェンシブコーディネーターを務めていたジョー・モアヘッド(Joe Moorhead)氏。2016年から2年間に渡ってペンステートのオフェンスを任されていたモアヘッド氏でしたが、この間チームは大躍進。2016年にはBig Tenカンファレンスを制し、また昨年度も一時は全米2位にまでおどり出るなど大活躍。その原動力はRBサクオン・バークレー(Saquon Barkley)やQBトレース・マクソーリー(Trace McSorley)らだったかもしれませんが、モアヘッド氏の手腕も決して忘れることはできません。

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ペンステートでOCを務めたモアヘッド氏

また彼はペンステートの前にFCSフォーダム大で監督経験があります。彼の母校でもあったフォーダム大では4年間で38勝13敗、2014年には所属するペイトリオットリーグのチャンピオンにも輝いています。もちろんその手腕を買われてペンステートに移ったわけですが、その当時からペンステートのジェームス・フランクリン(James Franklin)監督はモアヘッド氏がいずれはFBSチームのヘッドコーチになる、それだけの器だと太鼓判を押していました。

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マレン監督がオフェンス主義の監督であったことを考えると、同じくオフェンスマインドのコーチであるモアヘッド氏が後任に抜擢されることは合点がいきます。ここ数年はマレン監督がリクルートした人材が揃っていますから、モアヘッド氏の腕次第でミシシッピ州立大がSEC西地区でも存在感をアピールする可能性は十分にあります。

来年以降のミシシッピ州立大から目が離せません。