1ヶ月前のニュースになりますが、Big Tenカンファレンス所属のラトガース大でオフェンシブコーディネーターを務めていたジェリー・キル(Jerry Kill)氏が2017年度シーズンを持って現場から引退する事になりました。
現在56歳のキル氏は年齢的に決して引退するような歳ではありませんが、持病の癲癇(てんかん)が悪化し通常業務に支障をきたすという理由だけでなく、今後の生活にも関わってくるという事で今回のこの決断に至ったようです。
キル氏の癲癇持ちはよく知られており、2005年に患って以来彼に長い事つきまとってきました。ミネソタ大の監督を務めていた2013年にはそのせいでかなりの数の試合を欠場しなければならないほどだったのです。そしてついに2015年のシーズン途中に現場から退くことを決意。そこから1年間は療養に努めていました。
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2016年にカンザス州立大のスタッフとしてコーチング以外の仕事をしていましたが、容態が安定して主治医からゴーサインをもらうと昨年ラトガース大のオフェンシブコーディネーターに抜擢されていました。9月に一度軽い癲癇を起こしましたがこの時は数日でチームに復帰。しかしやはり現場での激務は体にこたえたようで、シーズンが終わった12月半ばに慣れ親しんだカレッジフットボール界から去る決断を下したのです。
「ジェリーそして彼の家族がこれまでチームのために尽くしてくれた事に感謝します。ジェリーは我々コーチ陣並びに選手たちに多大なる影響を及ぼしてくれました。彼らはこれからもずっとラトガース大とともにあります。」とはラトガース大のクリス・アシュ(Chris Ash)監督。
以下がキル氏自身のコメントです。
「私はクリス・アシュ監督及びパット・ホブス(ラトガース大体育局長)にラトガース大でコーチできるチャンスを与えてもらって大変感謝しています。またチームの選手たち、そして彼らの家族、ファン、メディア、その他大勢の方々が私やレベッカ(奥様)にしてくれた事全てに感謝します。ラトガース大はアシュ監督の下これからもっと強くなります。アシスタントコーチとして選手やコーチたちと過ごせた日々は何よりも変え難いものになりました。
「私は34年間コーチングに携わってきましたが、その中でたくさんの若い選手たちにポジティブな影響を与える事ができたと思いたいです。なぜならそれが私がコーチをし続けてきた一番の理由だからです。(中略)私は恵まれたコーチングキャリアを築けてきました。そして何も心残りはありません。私はこのフットボールというスポーツが大好きなのです。これまで関わってきた全てのコーチたちが私をより良い人間に育ててくれました。私はこれまで私の持てる全てを注いできました。そして全てを使い尽くしたのです。」
アシュ監督初年度のOCとしてチームを率いたキル氏ですが、得点数は全米121位、トータルオフェンスでは129位と全く奮いませんでしたが、キル氏に関する話を読んでいると、彼が非常に好かれ尊敬されていた人物であったからなのか、あまり悪いことを書く記事を見つけることはできませんでした。
勝利至上主義がはびこる現在のスポーツ界ですが、それだけでなく選手の人格形成にも真剣に取り組んできたキル氏のような人物がカレッジフットボール界からいなくなるのは残念なことです。
ちなみにラトガース大はキル氏の後任にかつてラトガース大でOCを務め、ここ数年はNFLでコーチをしていたジョン・マクナルティ(John McNulty)氏を呼び戻す事に決定。彼はラトガース大が一時期非常に調子が良かった時の監督、グレッグ・シアーノ(Greg Schiano、現オハイオ州立大DC)の右腕として2004年から2008年までラトガース大でOCをした事がありました。アシュ監督のデビューは4勝8敗とほろ苦いものになったのでマクナルティ氏の新オフェンスの元一つでも多くの白星を稼ぎたいところです。