みなさまいかがお過ごしでしょうか?
世間ではドラフトが終わり既に2週間が経ちました。いよいよアメフトの世界も一時の静寂の時間へ突入しています。
筆者はと言うと仕事が在宅になり8週間が経ちましたが、子供は家にいるし仕事はいつもよりも増してミーティング(Zoom)が増えてしまって変に忙しくなるという・・・。そんな感じで更新が滞っております。
本来ならば1週間前にアップしておきたかったドラフト関連の記事があったのですが、上記の通り色々立て込んで今日まで準備できませんでした。
かなり賞味期限切れ気味ではありますがせっかくなので世に出しておきたいと思います。
今年の「Mr. Irrelevant」
今年の総合ドライチ選手はルイジアナ州立大出身のQBジョー・バロウ(Joe Burrow、シンシナティベンガルズ)でした。そこから順番に各チームが7巡かけて選手を指名していったわけですが、始まりがあれば終あり・・・。今年も最後の最後でギリギリ「拾われた」 選手もいたわけです。
NFLドラフトではその年の最後に指名を受けた選手を「Mr. Irrelevant」と名付けています。「最も注目の薄い選手」とでも和訳できるでしょうか。
参考記事NFLドラフトに関する逸話ドラフトされたのにもかかわらずこんな言われようになるのもまた一興ですが、今年の「Mr. Irrelevant」はジョージア大出身のLBテイ・クラウダー(Tae Crowder)で選択したのはニューヨークジャイアンツでした。
1巡目から指名される順番が下がるたびに一般的な評価は落ちていくわけで、中には7巡目で指名された選手でも大成する選手はいるにはいますが、基本的には7巡目の選手のほうが上の選手よりも生き残る可能性は低くなるというのが自然です。
そんな中でも更に一番最後に滑り込みで選ばれたのが「Mr. Irrelevant」なわけですが、過去最近5年間の「Mr. Irrelevant」がいまどうしているかを見てみると・・・。
2015年
ジェラルドクリスチャン(Gerald Christian)
ルイビル大TE→アリゾナカーディナルズ
ドラフトされた初年度の最後のプレシーズンゲームで膝の靭帯を断裂してIR入り。翌年リリースされるとバッファロービルズさらには古巣のアリゾナカーディナルズを渡り歩きますが、試合には一度も出場できずにNFLからは撤退。2018年に立ち上がった新リーグ「Alliance of American Football(AAF)」のアトランタレジェンズの一員として参戦しますが、AAFが資金不足で立ち行かなくなってリーグ自体が崩壊。以来現在までFA状態です。
2016年
カラン・リード(Kalan Reed)
サザンミシシッピ大CB→テネシータイタンズ
2016年の初年度はファイナルロースターに残れずカットされますが、練習選手としてタイタンズに残留。同じ年の11月にアクティブロースターに昇格。その年と2017年には合計で7試合に途中出場。しかし2018年に足の骨を骨折。そのままリリースされるとシアトルシーホークスに拾われますが、2019年のプレシーズンに首に怪我を負いシーズン絶望となり今年3月にチームからリリースされ現在はFA状態です。
2017年
チャド・ケリー(Chad Kelly)
ミシシッピ大QB→デンバーブロンコス
クレムソン大を経てミシシッピ大に流れ着いたケリーはここで名を挙げますが2017年度のドラフトでは「Mr. Irrelevant」に。初年度はシーズン前に負った手首の怪我のせいでIR入り。翌年となる2018年にはケイス・キーナム(Case Keenum、元ヒューストン大)のバックアップに指名され、第6週目に試合終了時のスナップを受ける形でNFLデビュー。しかし2019年に不法侵入の疑いが浮上してチームを解雇さてしまいます。
現在は2019年にインディアナポリスコルツに拾われて以来同チームでアクティブロースターとして生き残っています。
2018年
トレイ・クウィン(Trey Quinn)
サザンメソディスト大WR→ワシントンレッドスキンズ
全米の高校で最多レシーブヤード(6566ヤード)という記録を持っている元サザンメソディスト大のクウィンは「Mr. Irrelevant」としてワシントンレッドスキンズ入り。初年度にはファイナルロースター入りし開幕を迎えるも怪我に悩まされますが、ルーキーとして3試合に出場を果たします。2019年にはさらに試合出場数を伸ばし(12試合)、開幕戦となったフィラデルフィアイーグルス戦でNFLキャリア初となるTDを記録。現在もレッドスキンズの一員としてリーグに留まっています。
2019年
ケイレブ・ウィルソン(Caleb Wilson)
UCLA TE→アリゾナカーディナルズ
2019年ドラフトの「Mr. Irrelevant」となったウィルソンはその年のファイナルロースターには惜しくも残れず一度リリースされますが練習選手として残留。その年の12月にワシントンレッドスキンズと契約を結び以来現在まで同チームにアクティブプレーヤーとして在籍しています。
さて今年の「Mr. Irrelevant」であるクラウダーの行く末は・・・。
セイバン監督の偉業
ここ何年も毎年のようにプロの世界へ選手を送り出してきているのがアラバマ大です。今年はルイジアナ州立大(15人)、オハイオ州立大、ミシガン大(それぞれ10人)に次ぎ4番目となる9人を輩出。1巡目にはQBトゥア・タガヴァイロア(Tua Tagovailoa、マイアミ・ドルフィンズ)、OTジェドリック・ウィルス(Jedrick Wills、クリーブランドブラウンズ)、WRヘンリー・ラグス(Henry Ruggs、ラスベガスレイダース)、ジェリー・ジュディ(Jerry Jeudy、デンバーブロンコス)と4人の選手が指名されていきました。1巡目だけで見ればルイジアナ州立大の5人に次ぐ多さです。
これによりアラバマ大のニック・セイバン(Nick Saban)監督がこれまで育て上げたファーストラウンダーの総勢が38人となり、昨年まで1位タイだったブッチ・デービス(Butch Davis、元フロリダインターナショナル大)の34人を抜き去って単独首位に躍り出ました。
38人のうち過去12年間指導してきたアラバマ大出身選手33人。残りは2人がルイジアナ州立大時代の選手、そして3人がミシガン州立大時代に指導した選手たちです。セイバン監督があと何年現役監督として居続けるかわかりませんが、この記録はしばらく彼自身によって更新され続けていきそうです。
フロリダ州を制したのは・・・
フロリダ州といえばフロリダ大、フロリダ州立大、マイアミ大といった名門校を思い出すと思いますが、実はその他にもFBS(フットボールボウルサブディビジョン)に所属するチームが存在します。ただ当然注目度から言えば先に上げた3チームが歴史的にも実力的にも群を抜く・・・はずなのですが。
チームの花形ポジションといえばはやりQBだとおもうのですが、過去3年のドラフトを振り返ったときフロリダ州出身のチームでもっとも多くのQBを輩出したのは実は上のどの3チームでもなかったのです。
ご承知の通り2020年のドラフトでは総合1位のジョー・バロウ(ルイジアナ州立大)や5位のトゥア・タガヴァイロア(アラバマ大)らを筆頭にSEC(サウスイースタンカンファレンス)出身選手が目立ちましたが、合計で13人のQBがドラフトされた中、フロリダ州の「Big 3」出身選手は皆無。それを尻目に第4巡目にニューヨークジェッツにドラフトされたのはフロリダインターナショナル大のジェームス・モーガン(James Morgan)でした。
フロリダインターナショナル大は前出のブッチ・デービス監督に率いられていますが、デービス監督はかつてマイアミ大で指揮を執ったことのある名将。大学自体はFBSの中でも中堅カンファレンス群とされる「グループオブ5」に位置付けされるカンファレンスUSA所属ですが、そんなチームからQBがドラフトされたというわけです。
実は2018年にもアレックス・マガウ(Alex McGough)が7巡目にシアトルシーホークスから指名されており、これで過去3年で2人ものQBがフロリダインターナショナル大からプロ入りを果たしたことになります。
そしてもっと掘り下げてみると過去最近5年間で「Big 3」出身のQBでドラフト指名された選手は実に1人のみ(2017年のマイアミ大出身のブラッド・カーヤ、デトロイトライオンズから指名)。つまり過去5年間だけ見るとフロリダインターナショナル大出身のQBの数のほうが「Big 3」出身のトータルの数よりも上回ったということになります。
もっともQBがドラフトされるというのはタイミング的なこともありますし、一概にフロリダインターナショナル大がフロリダ州でのQB王国という結論に至るのも、「Big 3」全体の格が落ちているというのも短絡過ぎます。ただフロリダ大は上昇気流に乗っているものの、フロリダ州立大とマイアミ大はいまいち感は否めません。しかも昨シーズンマイアミ大はそのフロリダインターナショナル大に30-24で敗れてしまいました。これはマイアミ大にとって対フロリダインターナショナル大戦の初黒星となってしまったのです。
果たして「Big 3」の名誉挽回が来年あるのでしょうか・・・。
4チームの共通点とは?
フロリダ大、ミシガン大、ミシガン州立大、サザンカリフォルニア大の4チームは有名校として知られていますが、2020年ドラフトにおいてもそれぞれのチームからプロ選手が誕生しました。それだけ聞けば別に何ら特別なことではなさそうですが、実はこれにはある記録が含まれているのです。
というのも今年この4チームから最低でも1人が選手がドラフト指名を受けたことにより、ドラフトがほぼ現行のシステムとなって以来(Common Draft Eraとも呼ばれる)この4チームが唯一毎年途切れることなく出身選手がプロ選手になっているという記録を更新したのです。
Common Draft Eraとはアメリカンフットボールリーグ(AFL)とナショナルフットボールリーグ(NFL)が合併した1966年以降のドラフト、つまり1967年以降のドラフト制度のことを指します。ということは今挙げた4チームは1967年以来53年連続でプロ選手を世に送り出しているということになります
実は昨年までこの4チームの他に名門ネブラスカ大も記録を更新し続けていましたが、昨年のドラフトでついに同校出身選手が誰一人としてドラフトされなかったためにこの連続記録が途絶えてしまいました。
ちなみにこの4チームの中でもミシガン州立大は1940年以来80年連続でドラフト経由でぷろに選手を送り込んでいるそうです。史上最初のNFLが行われたのが1936年のことですからミシガン州立大がプロフットボールに創成期から深く関わっていたことをうかがい知ることが出来ますね。
ブルーチップたる所以
大学フットボール界においてリクルーティングは最重要課題の一つであり、高校時代に評価の高い選手(ブルーチップ)をどれだけ勧誘できるかがチームの命運を握っているとさえ言えます。
たしかにチームのリクルーティングランキングが上位に位置しているからといって自動的にそれがナショナルタイトル獲りに直結するとは一概には言えませんが、もともとのポテンシャルはトレーニングでどうこうできるものではありませんから、それが高い選手が多ければ多いほど戦力が上がるのは当然といえば当然です。
ではそれがドラフトではどのように反映されているのでしょうか?
今年のドラフトだけ見てみると1巡目と2巡目、つまり即戦力クラスの選手64名のうち50%となる32選手が大学入部時代に4つ星評価を受けていたという数字が出ました。さらに別に11人の選手が5つ星選手だったということで半分以上の選手が4つ星より上だったことになります。
中には総合6番目に指名されたオレゴン大のQBジャスティン・ハバート(Justin Herbert、ロサンゼルスチャージャーズ)のように3つ星だった選手も食い込んでいますが、数字だけ見るとνガンダムブルーチップは伊達じゃない、といえそうですね。
気は早いけれど・・・気になる!
ドラフトもすっかり終わってアメフト界は静寂の時を迎えていますが、終わったばかりだと言うのに来年のドラフト候補の名前が既に上がり始めています。
オンラインのベッティングサイトの一つである「BetOnline」では来年の総合ドライチ候補のオッズが発表されています。
トレヴァー・ローレンス(クレムソン大QB):-400
ジャスティン・フィールズ(オハイオ州立大QB):+500
ペネイ・セウェル(オレゴン大OT):+1200
グレゴリー・ロウセウ(マイアミ大DE):+1800
ジャマー・チェイス(ルイジアナ州立大WR):+2000
ご覧の通りクレムソン大のローレンスがダントツです。
昨年3667ヤードに36TDを記録し、チームを2年連続でCFPナショナルタイトルゲームを導いたシグナルコーラーですから、彼が最有力候補に挙げられるのは至極自然なことです。しかし昨年同じように名前が挙げらたアラバマ大のタガヴァイロアは総合5番目でしたし、まさか昨年のこの時点でバロウが総合ドライチを獲得するなんて誰も予想していませんでしたから、例えローレンスが現時点で安全牌と言われたとしても何が起こるかはわかりませんよね。