6
27
2021年の全米チャンピオンを決めるためのプレーオフ「カレッジフットボールプレーオフ(CFP)」。その栄えある舞台に駒を進めることが出来たのが4チームありますが、その準決勝第1試合目となるのが第1シードのアラバマ大と第4シードのシンシナティ大が対戦するコットンボウルです。
📌 場所:テキサス州アーリントン市
⏰ 日時:12月31日米東部時間午後3時半(日本時間1月1日午前5時半)
ここまでの歩み
アラバマ大
昨年完全優勝を果たしたアラバマ大は開幕時から全米1位発進。優勝チームのロースターからはQBマック・ジョーンズ(Mac Jones、現ニューイングランドペイトリオッツ)、RBナジー・ハリス(Najee Harris、現ピッツバーグスティーラーズ)、WRデヴォンテ・スミス(DeVante Smith、現フィラデルフィアイーグルス)、WRジェイレン・ワドル(Jaylen Waddle、現マイアミドルフィンズ)といった主力スキル選手らを失い若い新体制で臨みました。
若さはあれど彼らにとって救いだったのはQBブライス・ヤング(Bryce Young)の存在。ヤングは2年生で今季から先発を任されたルーキーとは思えないパフォーマンスでチームを牽引。そんな中開幕5連勝を飾ったところでチームはテキサスA&M大戦を迎えます。
テキサスA&M大を指揮するジンボ・フィッシャー(Jimbo Fisher)監督はかつてアラバマ大のニック・セイバン(Nick Saban)監督に仕えたことがありこれはある種の師弟対決でもありましたが、ここまでセイバン監督は師弟対決において無敗。フィッシャー監督がその壁を破れるか注目を浴びましたが、見事に王者アラバマ大を41対38で下しアラバマ大は今季初黒星を喫してしまいます。
この敗戦によりアラバマ大はランクを5位まで下げ、以後絶対に負けられない状況に追い込まれます。OLの弱体化とパスディフェンスの脆さが指摘される中それでも何とか勝ち進んだ彼らはレギュラーシーズン最終戦で宿敵アーバン大との対戦を迎えます。
この試合ではお互いのディフェンスが相手を凌駕する展開で進みますが、特にアラバマ大は第3Qまで無得点。この時点で10対0とし敗戦濃厚となりましたが、FGと残り2分からの劇的な同点ドライブで試合はオーバータイムへ。そして4度のOTの末に何とかアラバマ大が白星をもぎ取ったのでした。
サウスイースタンカンファレンス(SEC)西地区代表として出場したSEC優勝決定戦では東地区覇者で12勝0敗の全米1位ジョージア大と対戦。ジョージア大は今季全米屈指のディフェンスを擁しアラバマ大は劣勢に立たされるかと思われましたが、QBヤングの大活躍もあり41対24で快勝。2年連続7度目のCFP進出を決めたのです。
シンシナティ大
NCAA(全米大学体育協会)の最上位カンファレンス10つをあわせてフットボールボウルサブディビジョン(FBS)と呼びますが、その中でもさらに上位5カンファレンス群を「パワー5」カンファレンス、その下を「グループオブ5」カンファレンスと区別化されています。シンシナティ大の所属するアメリカンアスレティックカンファレンス(AAC)は「グループオブ5」の一員であります。
そのシンシナティ大を率いているのはルーク・フィッケル(Luke Fickell)監督。1990年代にオハイオ州立大でOLとして活躍。コーチ道を歩み始めてからはその殆どの時間を母校で過ごし、2011年には臨時監督としてオハイオ州立大を率いもしました。
そんな生粋のオハイオ州立大っ子のフィッケル監督は2012年以降も同校でアシスタントコーチを務めますが、2017年に同じオハイオ州にあるシンシナティ大の監督に就任。臨時監督としてではない自身初の正監督としてチームを任されることになります。
初年度こそ負け越しますがそこからシンシナティ大はフィッケル監督指揮下で大躍進。2018年と2019年に11勝を挙げ全米ランキング25位以内に残ると、2020年度は新型コロナウイルスのパンデミックの影響で試合数が制限される中9勝1敗。レギュラーシーズン中は無敗を貫き、出場したピーチボウル(ニューイヤーズ6ボウルの1つ)でジョージア大と対戦し24対21と惜敗。しかし「パワー5」チームとでも対等に渡り合えることを示せたという面では大収穫でした。
そのシーズンを受けて今シーズンは何と開幕8位発進。この時点でシンシナティ大には「グループオブ5」勢として初のプレーオフ進出なるかという大きな期待が集まったのです。
「グループオブ5」勢として彼らがCFP進出を果たすには無敗でシーズンを終える必要がありますが、彼らにとっての鬼門は4戦目の名門ノートルダム大戦。この試合で勝つことが出来れば(しかもアウェー戦)彼らの存在感を大いに全米中にアピールできるからです。そして見事に彼らはこの試合を24対13でモノにします。
ただ、AAC所属ということもありシンシナティ大の対戦相手は軒並み中堅ばかり。彼らにとってノートルダム大を倒したことは大きなターニングポイントとなりましたが、トップ4の壁は厚いままでした。しかしながら幸運なことにミシガン州立大、オレゴン大、オハイオ州立大といったトップチームが次々と黒星を喫してCFPレースから脱落していったのです。
その間どんな形であれ白星を重ね続けて続けたシンシナティ大は全勝でAACチャンピオンシップゲームに進出。ここでヒューストン大と対戦し35対20とこれを撃破。またオクラホマ州立大がBig 12カンファレンス優勝決定戦でベイラー大に敗れるなどしたため遂に「グループオブ5」チームとして初めてシンシナティ大がプレーオフ進出を決めたのでした。
注目の選手
アラバマ大
ブライス・ヤング(Bryce Young、QB)
今季そのシーズンに最も活躍した選手に贈られるハイズマントロフィーを受賞。そこまで大きなフレームの持ち主ではありませんが、ポケット内での冷静さ、球離れの速さ、ディフェンダーから逃げるのに十分な機動力を持ち合わせた逸材。NFL入りは2023年以降となりますが、将来が楽しみな選手。
イヴァン・ニール(Evan Neal、OT)
下馬評では次のNFLドラフトで1巡目候補とされていますが、今シーズンは言われるほどの活躍をしている風には見えませんでした。しかしSECチャンピオンシップゲームのジョージア大戦では襲いかかるディフェンスの波状攻撃をしっかりと制御。この準決勝戦、そしてその先にある決勝戦という大舞台でも引き続き大いにアピールしたいものです。
ウィル・アンダーソン(Will Anderson、LB)
今季タックル・フォー・ロス(TFL)で32.5回を記録して全米トップに立ったアンダーソン。シーズンを通してその脆さが指摘され続けいてたアラバマ大ディフェンスをまとめ上げた影の立役者。アラバマ大のレジェンドLBデリック・トーマス(Derrick Thomas)と既に比較されている逸材は将来性抜群です。
シンシナティ大
デスモンド・リダー(Desmond Ridder、QB)
4年間チームの先発QBを任され続けた頼れるリーダー。精神的にもチームんい欠かせない大黒柱であり、シンシナティ大のここ最近の快進撃を支えてきた選手です。パサーとしてものすごく優れているというわけではありませんが、身体能力に優れその力だけで窮地を脱することが出来る稀有な才能の持ち主。
ジェローム・フォード(Jerome Ford、RB)
今季見事に1000ヤード超えを達成たフォードは実は2018年から2年間アラバマ大に在籍。ナジー・ハリスやブライアン・ロビンソン(Brian Robinson)らをチームメイト持ち、2020年度にシンシナティ大に転校。彼にとっては他の誰よりも思い入れの強いゲームとなるに違いありません。
コビー・ブライアント(Coby Bryant、CB)
今年最優秀DB選手に送られる「ジム・ソープ賞」を受賞した選手。シンシナティ大は今季パスディフェンスエフィシェンシー(どれだけ効果的に敵の攻撃を防御したか)で全米1位、相手のパス成功率で全米4位、パスインターセプションで全米3位、パスで許したヤード数で全米3位とパスディフェスにおいて全米随一となりましたが、このブライアントはその中核的存在。
注目のマッチアップ
シンシナティ大フロントセブン vs アラバマ大オフェンシブライン
今季若いと言われたアラバマ大を繋ぎ止めていたのは紛れもなくQBヤングのパフォーマンスです。ジョージア大とのSEC優勝決定戦ではOL陣が奮闘しましたが、それ以外の試合ではポケットが崩れることもしばしば。その状況でもポジティブなヤードをヤングが生み出したことによってドライブを継続し得点を重ねることが出来たのです。
パスディフェンスは数字の上ではトップクラスのシンシナティ大ですが、ヤングにフロントセブンがプレッシャーを掛けることが出来ずに彼にポケット内で多くの時間的猶予を与えでもすれば、恐らくそのシンシナティ大ですらヤングに攻略されてしまうでしょう。少しでもアラバマ大のOL陣の壁をすり抜けてヤングにプレッシャーを与えることが最低限の課題といえそうです。
ジェミソン・ウィリアムス vs コビー・ブライアント/アーマッド・ガードナー
アラバマ大のWRジェミソン・ウィリアムス(Jameson Williams)は今季1445レシーブヤードに15TDとチームナンバーワンレシーバー。昨年までオハイオ州立大に所属し、アラバマ大が彼らとナショナルタイトルゲームで対峙した際には敵選手としてアラバマ大に立ちはだかった人物。その彼が転校して直ぐにここまで貢献するとは王者アラバマ大もトランスファーポータルの恩恵に大いにあやかっています。
その俊足ウィリアムスと相まみえるのが先に紹介したシンシナティ大CBブライアントと彼のバディでもあるアーマッド・ガードナー(Ahmad Gardner)。ここまで彼らが対戦してきたどのWRよりも確実に秀でていると思われるウィリアムスをどう抑え込むかに注目が集まります。
ジェローム・フォード vs アラバマ大ランディフェンス
前述の通りシンシナティ大のRBフォードは元アラバマ大選手ということでこの試合に掛ける意気込みは並々ならぬものだと思われます。自分を先発に使わなかったことを後悔させてやると気合が入っているに違いありません。
しかし一方で彼もまたアラバマ大ディフェンスの力は在校時代から骨身にしみているはず。アラバマ大の今季ここまでのランディフェンスは1試合平均90ヤード弱と全米4位の実力。あのジョージア大ですら1キャリー平均3.6ヤードしか走らせてもらえませんでした。シンシナティ大としてはランが抑えられてパスの一辺倒だけにはなりたくないはず。そのためにもフォードが効力の高いランアタックを繰り広げられるかが気になります。
総括
アラバマ大は2年連続全米制覇に向けて準備を粛々と進めているところ。CFPという大舞台出場もこれで7度目となりビッグステージには慣れています。だからといって敵をなめてかかるということはニック・セイバン監督が居る限りありえません。そういった意味ではアラバマ大有利とみるのがごく自然です。ハイズマントロフィー受賞QBを従え、所属するSECという猛者集うカンファレンスを制したという自負が彼らを強くしています。
ただ気がかりなのはチームナンバー2WRジョン・メッチー・III(John Mechie III)がSEC優勝決定戦で膝の前十字靭帯(ACL)を断裂してしまいCFPに出場できなくなったこと。ウィリアムスというナンバーワンWRが健在とはいえ1000ヤード超えを成し遂げたメッチーの不在は不安材料です。
シンシナティ大は「グループオブ5」カンファレンス勢初のCFP参戦。失うものは何もありません。が、だからといって玉砕する気は毛頭ないはずです。全米唯一の無敗チームとして「自分たちはパワー5チームと対等に渡り合える」というところを見せようと士気は上がっていることでしょう。
とはいえここまでの対戦相手の中にアラバマ大のようなダイナミックなオフェンスを操るチームは皆無でした。はたして彼らの誇る全米トップ級のパスディフェンスは本物かどうか・・・ディフェンディングチャンピオン相手に真価が問われることになりそうです。
🚨朗報🚨
今年は「日テレジータス」でコットンボウル他合計5つの試合が生放送されますよ!是非この機会にこのビッグゲームを日本で観戦してみてください!
👇記事が気に入ったらいいねやリツイートで拡散お願いいたします!
今年度のCFP準決勝第1試合となるコットンボウル(12月31日米東部時間午後3時半)は第1シードのアラバマ大と第4シードのシンシナティ大との対戦となりました。それに際し両校のこれまでの歩み、注目の選手、注目のマッチアップを取り上げてみました。
— Any Given Saturday (@ags_football1) December 26, 2021
詳しくはこちら
⬇️⬇️⬇️https://t.co/KsBh2pZMP3