昨年ディフェンディングチャンピオンとして2連覇を目指したアラバマ大は順調に開幕以来14連勝を飾り、ナショナルタイトルゲームでは2015年度と同一カードのクレムソン大と対戦。接戦となりましたが惜しくも35対31で敗れ連覇はなりませんでした。普通ならアラバマ大のような成績を残せればたとえ全米王座となれなくても十分なシーズンだったと言えるでしょうが、ニック・セイバン(Nick Saban)監督率いる王者アラバマ大にかけられたハードルは非常に高いものであり、そのせいで昨年のタイトルゲームでの敗北は大きな失望となってしまったのでした。
というわけでアラバマ大は昨年のリベンジに燃えていることでしょうが、昨年のチームからは実に12人の先発選手がプロへと旅立って行きました。しかしチームではその強力なリクルーティングのおかげで毎年多くの主力選手が抜けたとしてもその次に控える選手たちがその穴を完璧なまでに補完できるほどの層の厚さを誇示しています。すでに今季もアラバマ大はカンファレンスタイトルを獲得するだけでなく、再びナショナルタイトルを狙える最有力候補に挙げられているほどです。
多くの主力選手が抜けた一方で今季のチームには昨年のメンバーが12選手も戻ってきます(オフェンス6人、ディフェンス6人)。それではアラバマ大の今季のユニットをオフェンスとディフェンスごとに見ていきましょう。
オフェンス
昨年まで3年間チームのオフェンシブコーディネーターを務めてきたレーン・キフィン(Lane Kiffin)氏はフロリダアトランティック大のヘッドコーチに就任するために昨年のタイトルゲーム1週間前にチームを去りました。その後釜としてタイトルゲームでOCを務めた元サザンカリフォルニア大監督のスティーブ・サーキジアン(Steve Sarkisian)監督もまたタイトル戦後にNFLアトランタファルコンズのOCに就くべくアラバマ大から離れていきました。そこでセイバン監督が次期OCに選んだのがNFLニューイングランドペイトリオッツのTEコーチであったブライアン・デイボール(Brian Daboll)氏です。彼はカレッジレベルでOCを務めた経験は一度もありませんが、クリーブランドブラウンズ、マイアミドルフィンズ、カンザスシティチーフスでその大役を任された経験があります。アラバマ大のオフェンスがデイボール氏の指揮下でどう生まれ変わるのか注目が集まります。
今年の先発QBは昨年1年生ながらその才能を開花させチームをプレーオフまで導いたジェイレン・ハーツ(Jalen Hurts)が今年もその役を任されることでしょう。昨年パス成功率約63%、2780パスヤード、23TD、9INTというパス成績に加え、彼の機動力で13TDを含む954ヤードを足で稼ぐ活躍を見せました。チームには昨年彼が先発QBの座を争ったブレイク・バーネット(Blake Barnett)、クーパー・ベイトマン(Cooper Bateman)はそれぞれアリゾナ州立大、ユタ大へと転校してしまったため、ハーツの他にプレー経験のある選手が全くいないとう状態になってしまいました。しかしチームにはすでにハーツと先発の座を争えるとまで言われている1年生のトゥア・タガヴァイロア(Tua Tagovailoa)が後に控えており、ハーツが怪我さえしなければQB陣は若いとは言え手薄というわけではなさそうです。
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しかし何と言ってもアラバマ大のオフェンスはRB陣。全米中見回しても彼らほど層の厚いRB陣はいないと言ってもおかしくはないでしょう。昨年のツートップ、ダミエン・ハリス(Damien Harris)とボ・スカーボロー(Bo Scarbrough)は健在ですし、さらに3人目ながらかなりの貢献度を発揮したジョシュ・ジェイコブス(Josh Jacobs)も擁しています。そして機動力の高いQBハーツも加えればアラバマ大の地上戦力は最強と言われても頷ける話です。
レシービング陣からは昨年のトップ4のうち3人(WRアーダリウス・スチュワート、WRゲーリッグ・ディーター、TE O.J. ハワード)がプロの道へ進みました。大きな戦力を失ったことは確かですが、チームには未だに多くの素晴らしいレシーバー達が存在しています。その中核を担うのがWRカルヴィン・リドリー(Calvin Ridley)です。1年生時にはルーキーセンセーションとなったリドリーも今年で3年生。スチュワートが居なくなったことでいよいよ彼が真のメインターゲットとなります。
OL陣ではインサイドの3人は今年も健在ですが、アウトランドトロフィー(ベストラインマンに贈られる賞)受賞選手であるLTキャム・ロビンソン(Cam Robinson)がチームを去り、ブラインドサイドを新たに任せられるラインマンを補充しなければなりません。が、アラバマ大のOL陣もまた層の厚いポジションですのであまり問題にはならないでしょう。
ディフェンス
ここ最近のアラバマ大ディフェンスは全米でも最強レベルですが、特に昨年のそれは格別でした。相手に許したヤード数は1試合平均で全米2位となる262ヤード。そしてランディフェンスだけに限ってみれば平均たったの64ヤードしか相手に許していませんし、失点数も平均13点。もちろんこれらは全米トップの数字です。このディフェンスを組み立ててきたのがディフェンシブコーディネーターのジェレミー・プルイット(Jeremy Pruitt)氏。彼はオフシーズンのコーチマーケットで常に他のチームからヘッドコーチにと狙われてきた人物でしたが、それを蹴って今年もアラバマ大に残留。6人の先発選手が戻ってくることもあり、彼らは再び全米トップレベルのディフェンスを保持することになりそうです。
とはいえ、失った選手の数そして質も大きいのは確かです。DEジョナサン・アレン、LBライアン・アンダーソン、LBティム・ウィリアムス、LBルーベン・フォスター、DBエディー・ジャクソン、DBマーロン・ハンフリーらNFL級の選手たちが皆チームを去りました。層が厚いと言われるアラバマ大でこれらの抜けた穴を埋めるだけの力があるのかが注目されます。
DL陣ではDEダショーン・ハンド(Da’Shawn Hand)が最近飲酒運転の疑いで逮捕されましたが、実際のところ運転はしていなかったということで、セイバン監督は彼に処罰を下すのを保留しています。彼とDTダロン・ペイン(Da’Ron Payne)はすでに未来のプロ選手としてプレーすることはほぼまちがい無いでしょうから、ハンドが開幕戦から出場するのかどうかは大きな鍵です。
昨年115タックルに5QBサックを記録したフォスターと9QBを記録したウィリアムスが去ったLB陣ではラシャーン・イヴァンズ(Rashaan Evans)とショーン・ディオン・ハミルトン(Shaun Dion Hamilton)が次なるディフェンスのスターとなるべくプレーのチャンスを伺います。イヴァンズは昨年53タックルに4QBサックを記録。またハミルトンは12月に膝の靭帯損傷でプレーオフを棒にふるまで64タックルを記録した才能あるLBたちです。
DB陣からはマーロン・ハンフリーとエディー・ジャクソンが抜けましたが、Sミンカー・フィッツパトリック(Minkah Fitzpatrick)とSロニー・ハリソン(Ronnie Harrison)が今年も健在。CBのポジションはアンソニー・アヴァレット(Anthony Averett)、トニー・ブラウン(Tony Brown)、トレヴォン・ディグス(Trevon Diggs)がカベレージに合わせて登場することになるでしょう。昨年はビッグプレーを稀に許すという面はあったのもの、常時相手チームのWRにとってはやりにくい状況を多く作ってバックフィールドを守ったこのユニット。相手がアラバマ大の強力フロントセブンを攻略できないとなればパスに活路を見出す他なくなりますから、場合によってはアラバマ大ディフェンスの鍵は彼らセカンダリーに託されているのかもしれません。
見どころ
アラバマ大は開幕戦でいきなりフロリダ州立大との対戦が待っています。昨年の開幕戦もサザンカリフォルニア大というビッグマッチでしたが、この時は52対6でUSCを一蹴。しかし今回のフロリダ州立大相手ではそう簡単にはいかないでしょう。これを乗り越えると9月30日からミシシッピ大、テキサスA&M大(アウェー)、アーカンソー大、テネシー大、ルイジアナ州立大という厳しい5連戦が待っています。そして当然最終戦はアーバン大との「アイロンボウル」。過去3年間アラバマ大が連勝を飾っていますが、ライバルゲームは何が起こるかわからない「魔物」が住んでいるものです。油断は大敵です。
もしアラバマ大がフロリダ州立大との開幕戦を制することができればそれでチームの流れがガッチリと決まり、おそらく最終戦まで無敗で突き進む可能性が高いです。そうなればSECタイトル4連覇も現実味を帯びてきますし、カレッジフットボールプレーオフ(CFP)進出も当然視野に入ってきます。そしてたとえフロリダ州立大戦で敗れたとしても、その後の出来次第では上に挙げたシナリオをなぞることは十分考えられます。強力なコーチ力と統制力でチームをまとめるセイバン監督が浮き沈みの激しいチームを世に送り出すとは考えられませんから、2014年に導入されたCFPに毎年出場しているアラバマ大が2017年度も再びこの晴れ舞台に立つ様子は容易に想像できるというものです。
果たして昨年度クレムソン大から味わった屈辱を晴らすことができるでしょうか・・・?
9月2日 | フロリダ州立大 |
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9月9日 | フレズノ州立大 |
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9月16日 | コロラド州立大 |
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9月23日 | ヴァンダービルト大 |
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9月30日 | ミシシッピ大 |
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10月7日 | テキサスA&M大 |
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10月14日 | アーカンソー大 |
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10月21日 | テネシー大 |
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11月4日 | ルイジアナ州立大 |
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11月11日 | ミシシッピ州立大 |
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11月18日 | マーサー大 |
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11月25日 | アーバン大 |
所在地
アラバマ州タスカルーサ
所属カンファレンス
SEC(西地区)
ホームスタジアム
ブライアントデニースタジアム
通算戦績
878勝327敗43分け
通算ボウルゲーム戦績
37勝25敗3分け
ヘッドコーチ
ニック・セイバン
114勝19敗(11年目)
【通算:203勝61敗1分け】
前回全米優勝年度
2015年度
前回SEC優勝年度
2016年度
前回ボウルゲーム出場年度
2016年度(CFP)