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メイフィールド/ライリー体制の再来?

メイフィールド/ライリー体制の再来?

今週末、オクラホマ大のファンはミシガン大との大一番を前に、まるでデジャヴュのような感覚を覚えているかもしれません。というのも、彼らは現在と驚くほど似た状況を以前にも経験しているからです。現在オクラホマで起きていることは、10年前、ノーマンで起こったことと奇妙なほど酷似しているのです。

オフェンシブコーディネーターの類似点:ライリーとアーバックル

まずはオフェンシブコーディネーター(OC)の状況から見ていきましょう。2014年シーズンに8勝5敗と不振に終わりオフェンスに苦しんだ後、ディフェンス志向のヘッドコーチだった当時のボブ・ストゥープス(Bob Stoops)監督は、シーズン終了後に共同OCだったジョシュ・ハイぺル(Josh Heupel、現テネシー大監督)氏とジェイ・ノーヴェル(Jay Norvell、現コロラド州立大監督)氏を解雇するという難しい決断を下しました。そして、全国的な捜索の末、イーストカロライナ大のOCだったリンカーン・ライリー(Lincoln Riley、現サザンカリフォルニア大監督)氏を迎え入れ、オフェンスの采配を任せたのです。

そのオクラホマ大は2015年にオフェンスで大きく進化を果たし、Big 12カンファレンス優勝と11勝1敗のレギュラーシーズンを経てカレッジフットボールプレーオフ(CFP)出場をも果たしました。必ずしもライリー氏の存在だけがこの快進撃の理由だったとは言えませんが、少なくとも大きな影響を与えたことは確かです。

そして10年後。オクラホマは2024年シーズンに6勝7敗と低迷し、特にオフェンスで非常に苦戦。ディフェンス志向のヘッドコーチであるブレント・ヴェナブルズ(Brent Venables)監督は、シーズン途中にオフェンスのプレイコール担当であるセス・リトレル(Seth Littrell)氏を解雇し、シーズン後に共同OCのジョー・ジョン・フィンリー(Joe Jon Finley)を降格させましたが、シーズン後にヴェナブルズ監督はワシントン州立大のOCだったベン・アーバックル(Ben Arbuckle)氏を起用。まだ今シーズンのオクラホマ大のオフェンスがどうなるかを言うには時期尚早ですが、開幕戦でのイリノイ州立大戦を見たファンたちはは2015年のような旋風を期待しています。

10年前との類似点はこれだけではありません。ライリー氏とアーバックル氏はどちらもエアーレイド(超パス重視オフェンス)オフェンスの使い手。またどちらも現役時代はQBとしてプレーし、コーチとしても名QB選手育成コーチとしての評判を得ています。そして、どちらのコーチも非常に若くしてプレイコールを開始し(ライリー氏は2010年にECUのOCに、アーバックル氏は2022年にウェスタンケンタッキー大のOCに)、オクラホマ大にやって来た時もどちらも非常に若かったという共通点があります。

アーバックル氏は、オクラホマのOCとしてスタートしたライリー氏が’辿った教訓を踏襲する必要があります。というのも、真のオフェンスの力を引き出すためには、ランとパスのバランスを取る必要があると学ぶのにライリー氏は約半シーズンかかりました。一方アーバックル氏には、自分のオフェンスが機能するまでテコ入れをし続けるための時間は半シーズンも残されていません。何故なら彼は今週末にミシガン大のディフェンスという強敵に立ち向かわなければならないからです。

オクラホマ大のファンは、ライリー氏が2021年度シーズン後にオクラホマ大を去りサザンカリフォルニア大へ行ったことに対して、いまだに恨みを抱いているかもしれませんが、現在のOCであるアーバックル氏に、ライリー氏の面影を見てしまうのは容易に想像できます。両者ともエアーレイド系のオフェンスで相手ディフェンスを崩し、非常によく似たオフェンススキームを使いこなしているからです。ともすれば、オクラホマ大はアーバックル氏がライリー氏がOCとして成し遂げたような得点力のあるオフェンスを駆使することを期待してしまいます。ヴェナブルズ監督は、彼の元上司であるストゥープス氏が10年前にオフェンスを立て直すために使った同じ手段に回帰しており、その結果として当時のような、全米タイトルを狙えるくらいのチーム力が身につくことを画策しているはずです。

QBの類似点:メイフィールドとマテアー

しかしオクラホマ大ファンは、素晴らしいオフェンスのプレーコーラーがいるだけでは試合に勝つことができないことも知っています。結局のところ、ライリー氏がオクラホマ大で監督をしていた際の評価は、QBの腕前次第で評価されてきました。

今週のミシガンとの対戦は今年のオクラホマ大の行く末を占う上で重要になりますが、これを考える上で今年のチームが10年前のチームと似ている点がさらに浮上してきます。ライリー氏が2015年にオフェンスを引き継いだ時、彼らは新たなQBを探し出すことが最重要課題となっていました。そこで先発の座を勝ち取ったのは、他でもないベイカー・メイフィールド(Baker Mayfield、現タンパベイバッカニアーズ)でした。彼はテキサス州オースティン出身で、小柄だったことからかリクルーティングの網に引っかかりませんでした。結局テキサス工科大ウォークオン(スカラシップ無し)で入りましたが、ここを1シーズンで退部し、オクラホマに再びウォークオンとして転校しました。

そしてオクラホマ大でライリー氏のもとメキメキと頭角を表していったメイフィールド。それはライリー氏の操るオフェンスが、テキサス工科大で当時の監督だったクリフ・キングスバリー(Kliff Kingsbury、現ワシントンコマンダーズOC)氏がライリー氏と同じエアーレイド系のコーチだったからで、チームが変わってもシステムが似通っていた事が影響していたのかもしれません。

メイフィールドのリーダーシップ、決して諦めない姿勢、そして誰にも負けたくないという闘争心はオクラホマ大で実を結び、2015年にはハイズマントロフィーの投票で4位、2016年には3位、そして2017年には遂にこの栄冠を受賞するまでに至りました。さらに彼はチームを3年連続のBig 12カンファレンスタイトルと2度のCFP出場に導きもしました。言ってみれば、ライリー氏以上にメイフィールドこそが数年間低迷していたOUのオフェンスを軌道に乗せる原動力だったのかもしれません。

現在のオクラホマ大の先発QBであるマテアーをメイフィールドと直接比較するのは、意味のないことかもしれませんし、マテアーが今すぐにメイフィールドほどの高いスタンダードに応えることはできないかもしれません。しかし、この二人には多くの類似点を見ることができます。

マテアーもまた、テキサス州ダラス出身の小柄でなかなかリクルートでうまくいっていない選手でした。彼にスカラシップを提示した唯一のパワーカンファレンス校(当時)は現在Pac-12カンファレンス所属のワシントン州立大だったので、すでにコミットしていたセントラルアーカンソー大に入部の断りを入れでワシントン州立大に入学する決断を下します。そのワシントン州立大で2シーズンをバックアップとして過ごした後、マテアーは2024年に遂に先発の座を射止めブレークすることになります。

現在、マテアーはオクラホマ大に転入しましたが、既述の通りワシントン州立大で一緒だったOCのアーバックル氏と共にオクラホマ大へやってきたため、過去アーバックル氏の下で2シーズン学んできたのと同じシステムでプレーすることになります。この状況に加え、彼の闘争心と情熱は、かつてのメイフィールドのスタイルを思い起こさせずにはいられません。彼は、若い頃のひげを蓄える前のメイフィールドにさえ似ています(笑)。

オクラホマ大ファンがアーバックル氏の操るオフェンスが大いに相手ディフェンスを切り刻んで欲しいと願うのと同様に、アーバックル氏もまた、ライリー氏がオクラホマ大にいた頃にメイフィールドを必要としたように、彼のシステム下で成功を体現してくれるQBを必要としています。だからこそ、昨年12月にオクラホマ大がマテアーをトランスファーポータル経由でで獲得できたことは非常に重要でした。つまり、マテアーはアーバックル氏自身よりもオクラホマのオフェンスを再建するための最も重要な鍵なのです。

大一番の第2戦目:ミシガン大戦

では、オクラホマ大とミシガン大との一戦はここまでの話にどう絡んでくるのでしょうか?

2015年のオクラホマ大も、シーズンの第2週目にアウェイでテネシー大と対戦する大一番のノンカンファレンス戦を控えていました。その年の開幕戦である格下・アクロン大戦での物足りない勝利(41対3)の後では、オクラホマ大のファンはメイフィールドとライリー氏のコンビがどれほどのものなのかまだ確信が持てませんでした。

そしてこのテネシー大戦は、メイフィールドが本格的にカレッジフットボール界でデビューした試合でしたが、彼は大胆な14点差の第4クォーターでの逆転劇を主導し、31対24のダブルオーバータイムでの勝利を収めました。この豪快なメイフィールドの活躍は、長らく泥沼に陥っていたオクラホマ大のオフェンスに一筋の光を与え、見事な逆転勝利をやってのけるまでに至りましたが、この試合がオクラホマ大でのメイフィールドとライリー氏の時代を本格的にスタートさせたと言っても過言ではありません。

(今シーズン後半にオクラホマ大とテネシー大が対決することになっていますが、その試合が近づけばこの2015年時の激戦が再び話題に上げられるでしょうね)

そして今年のオクラホマ大は10年前のあの輝きを再び取り戻そうとしています。今週末、ミシガン大がオクラホマ大のあるノーマン市に乗り込んでくる中、オクラホマ大は初戦でのイリノイ州立大戦でのいささか物足りない勝利に満足していません。今回のミシガン大戦は、マテアーがカレッジフットボール界にその存在感を示す絶好のチャンスであり、全米の注目が集まるこの試合で、彼のガンスリンガーぶりを発揮するチャンスです。

もし今回オクラホマ大がホームでミシガン大に勝てば、2025年シーズンそしておそらくそれ以降の成功に向けて彼らを導くための起爆剤となるでしょう。結局のところ、メイフィールドとライリー氏が2015年のテネシー戦とその後のシーズンで行ったことは、10年経ってその形をマテアーとアーバックル氏の関係性に投影されていると言えるかもしれません。

長期的な影響とレガシー

メイフィールドはトレヴァー・ナイト(Trevor Knight)に代わってオクラホマの先発QBを務めましたが、その彼がQB1になった影響によるオクラホマ大オフェンスのアップグレードぶりはファンたちを大いに盛り上げました。オクラホマ大がロースターにおいてQBという最も重要なポジションで、その存在だけで試合の流れを変えてしまうような選手を見つけたのは長らくぶりのことでした。これは、OCとしてハイペル氏が指揮を執っていた2013年と2014年のナイト、ブレイク・ベル(Blake Bell)、コーディ・トーマス(Cody Thomas)といった選手らが先発QBをしていた時と比べると大きな違いでもありました。

オクラホマ大でライリー氏のエアレーイドオフェンスがメイフィールドによってその威力を大いに見せつけたことで、2015年シーズン後にはテキサスA&M大からカイラー・マレー(Kyler Murray)を転校生として迎え入れることになりました。マレーはメイフィールドの卒業後に先発を任されましたが、2018年には名フィールドに続きハイズマントロフィーを獲得するまでに至りました。そしてメイフィールドとマレーがライリー氏の指揮の下4年間で様々な成功を収めたことで、オクラホマ大は2018年シーズン後にアラバマ大からジェイレン・ハーツ(Jalen Hurts、現フィラデルフィアイーグルス)を転校生として獲得することに成功。ハーツは2019年にハイズマントロフィー投票で2位になり(ちなみに1位はルイジアナ州立大のジョー・バロウ)、Big 12のカンファレンスタイトル獲得に大きく貢献。オクラホマ大にとって2015年から2020年までの間で6年連続で5回目のカンファレンスタイトルとなりました。さらにオクラホマ大は2015年から2019年までの5年間で4回CFPに出場も果たしています。

メイフィールドが2015年にオクラホマ大にやってきて作り上げたものは、ドミノ効果を生み出しました。ライリー氏は彼が指導したQBとしての腕前のおかげで、後にスペンサー・ラトラー(Spencer Rattler、現ニューオーリンズセインツ)やケイレブ・ウィリアムズ(Caleb Williams、現シカゴベアーズ)といった5つ星リクルートを獲得することに成功。どちらのQBもオクラホマ大ででそれぞれの活躍を見せましたが、ライリー氏は2021年後にサザンカリフォルニア大の監督に就任するためにオクラホマ大を去り、その後はディロン・ガブリエル(Dillon Gabriel、現クリーブランドブラウンズ)がヴェナブルズ監督指揮下の最初の2年間でQBを引き継ぎます。

ただ、ガブリエルは堅実なプレーヤーで、特に2023年度シーズンは彼の存在を大きく世に知らしめる活躍をしましたが、メイフィールド、マレー、ハーツがオクラホマ大で見せたようなレベルの存在感を見せつけることはできませんでした。それからもわかり通り、ライリー氏時代のQBたちが残した結果が、途方もなく大きいインパクトを残したということが言えます。ガブリエル本人の能力を否定するものではありませんが、ガブリエル時代の2年間でオクラホマ大がBig 12タイトルを獲得したり、CFPに出場したりすることはありませんでした。

オクラホマ大では昨年、元5つ星で有望株のジャクソン・アーノルド(Jackson Arnold、現アーバン大)が注目を集め、状況は大きく好転すると考えてられていましたが、それはすぐに破滅的な結果となりました。ガブリエルがオレゴンへ大へ転校し、彼のOCだったジェフ・レビー(Jeff Lebby)がミシシッピ州立大の監督に就任するために移籍したことで、オクラホマ大は1998年以来最低のオフェンス成績を記録してしまいました。メイフィールドが9年前にQBの系譜で築き上げたすべての勢いは燃え尽きてしまったのです。

アーノルドは現在アーバン大に、リトレルはテネシー大のハイペル監督の下でオフェンスアナリストとして働いている中で、今年マテアーとアーバックルのデュオがワシントン州立大から舞台をオクラホマ大に変えて再び交わり、10年前のメイフィールドとライリー氏の成功を再現しようとしています。もしマテアーがオクラホマ大でアーバックルのエアーレイド系オフェンスの可能性を再び証明することができれば、それは将来的に現在在籍している後輩であるマイケル・ホーキンス・Jr(Michael Hawkins Jr)、ボウ・ベントレー(Bowe Bentley)、そしてまだ見る未来のオクラホマ大QBにとって大きなうねりとなる可能性があります。

繰り返しになりますが、マテアーをメイフィールドに、アーバックル氏をライリー氏に比較するのは意味のないことであるかもしれません。しかし、それがオクラホマ大がマテアーとアーバックル氏をチームに迎え入れたときから期待されていたオフェンスの成果なのです。ミシガン大との第2週目での試合が2025年シーズンのすべてではありませんが、もしこの試合に勝つことができれば、オクラホマ大を近年の最高のシーズンに導いてきた優れたQBとエアーレイド系オフェンスの系譜を再構築するための偉大なる第一歩となるでしょう。

さらに、現在のヴェナブルズ監督下においては、ライリー氏時代のユニットをはるかに上回るディフェンスを擁しているため、ディフェンス畑を歩いてきたヴェナブルズ監督が采配を振るい、オクラホマ大のディフェンスが今年さらに堅実な年になると期待される中、おそらくマテアーとアーバックル氏のデュオは、メイフィールドとライリー氏のデュオほど突出している必要はないかもしれません。

そうなればライリー氏時代のオクラホマ大のあの強さをさらに上回るチームに生まれ変わっている可能性は十分にあります。それを試すための試金石としてミシガン大は相手にとって不足なし。激戦必死となりそうなこの大一番を楽しみに待ちたいと思います。

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