いよいよポストシーズンのボウルゲームシーズンが到来!学校では期末試験に追われる大学も多いでしょうが、カレッジフットボール界ではここから年末年始に向けて合計40試合(ナショナルタイトルゲームを含む)が行われることになります。これに参加するのは78チーム。FBS(フットボールボウルサブディビジョン)には130チームが所属していますから、この半数以上がボウルゲームに出場できるという計算になります。これが多いと感じるか多くないと感じるかはそれぞれだと思いますが、何にせよ商業色の強いエンターテイメント的な位置づけにあるのが現状です。もちろん今年のカレッジフットボールプレーオフ(CFP)準決勝に指定されているオレンジボウル(アラバマ大vsオクラホマ大)とコットンボウル(クレムソン大vsノートルダム大)は別物扱いですが・・・。
今年のボウルシーズンは手始めに12月15日の土曜日にいきなり5試合が行われました。それらの試合を簡単に振り返ってみたいと思います。
キュアボウル
トゥレーン大41、ルイジアナ大24
今季ボウルシーズンの開幕戦となったキュアボウル。この試合ではトゥレーン大がルイジアナ大(ラフィエット校)を41対24で下し、ボウルシーズン初勝利チームに輝きました。
前半を24対10で折り返したトゥレーン大でしたが、後半に入りルイジアナ大が反撃を開始。第4Q序盤には27対24と点差を3点に縮めましたが、「失うものは何もない」というボウルゲームならではのメンタリティーで4thダウンのトライを2度も成功させ、トゥレーン大が追加点を奪うと結果的に17点差をつけて逃げ切って勝利を奪いました。
この勝利で7勝目をあげたトゥレーン大は記録的には勝ち越しシーズンを送ったことになります。またトゥレーン大としては今回のボウルゲームでの勝利は2002年にハワイボウルで挙げた以来のもの。結果的にいい形でシーズンを終えることが出来ました。
ニューメキシコボウル
ユタ州立大52、ノーステキサス大13
今季二桁勝利数を挙げチーム史上最高とも言えるシーズンを送ったユタ州立大。しかしそのチームを指揮したマット・ウェルズ(Matt Wells)監督は既にテキサス工科大の新監督に就任することが決定しており、このニューメキシコボウルには不参加となっていました。しかし彼らにとってウェルズ監督不在は決して弱みにはならず、ノーステキサス大を52対13で一蹴し今季11勝目を挙げ、おそらくシーズン後には創部以来4度目となる、APランキングのファイナルランキングトップ25入りを果たすことになるでしょう。
ラスベガスボウル
フレズノ州立大31、アリゾナ州立大20
この日唯一の「パワー5」カンファレンス出身チーム(アリゾナ州立大)が出場したボウルゲームとなったこのラスベガスボウル。フレズノ州立大は最新ランキングで21位で所属するマウンテンウエストカンファレンスのチャンピオンとして出場したこの試合でアリゾナ州立大を下し、12勝2敗という後にも先にも無い素晴らしい成績を残して今季のキャンペーンを終えました。
17対17の同点で後半を迎えた第3Q、フレズノ州立大はデジョンテ・オニール(Dejonte O’Neal)への素晴らしいスクリーンパスでエンドゾーンにオニールが飛び込んだかと思われましたが、その直前でなんとボールをファンブル。フレズノ州立大はつい観点のチャンスを逃して嫌な空気が流れました。さらに後に訪れたスコアのチャンスではQBマーカス・マクマリヨン(Marcus McMariyon)のパスがインターセプトされそれがもとでアリゾナ州立大にFGを決められます。しかもそのあとの攻撃でもマクマリヨンが再びINTパスを犯し、流れが完全に断ち切られたかに見られました。
しかしフレズノ州立大のディフェンスが踏ん張ってアリゾナ州立大に追加点を許さず、なんとか耐えしのぐとRBロニー・リヴァース(Ronnie Rivers)の2つのランTDで逆転。そのままフレズノ州立大が逃げ切って12勝目を挙げました。そのリヴァースは212ランヤードに2TDで見事MVPに選ばれました。この12勝というのはフレズノ州立大にとってはシーズン新記録でもあります。それもこれも母校に監督として凱旋したジェフ・テッドフォード(Jeff Tedford)監督の手腕によるところが大きいです。彼が就任する以前の2年間は4勝20敗だったところ、前年と今年の戦績は22勝6敗ということで、完全にテッドフォード監督がチームを生まれ変えたと言えます。
一方アリゾナ州立大は今季NFLのベテランコーチ、ハーム・エドワーズ(Herm Edwards)を監督に迎えましたが、現場から長期間離れていたこと、そして大学レベルでのコーチの経験が皆無であったことから、周りのアリゾナ州立大への予想は非常に低いものでした。しかし7勝6敗という数字は決して手放しで喜べるものではないにしても、エドワーズ監督指揮下のアリゾナ州立大に一筋の光を見たことは事実でもあります。
アリゾナ州立大及びフレズノ州立大、来年も見逃せないチームとなりそうです。
カメリアボウル
ジョージアサザン大23、イースタンミシガン大21
あいにくの雨の中で開催された今年のカメリアボウル。ジョージアサザン大とイースタンミシガン大という「グループオブ5」同士の対戦ということで、あまり注目していませんでしたが、蓋を開けてみればこの日で一番盛り上がったゲームとなりました。
今ではレアとなったオプションオフェンスを取り入れるジョージアサザン大はQBシャイ・ワーツ(Shai Werts)がオプションQBらしく79ヤードを足で稼いで2つのTDを奪うと、彼はさらにピッチマンとして3人のRBに合計235ヤードのランヤードをお膳立て。またオプションオフェンスならではのボールコントロールでイースタンミシガン大オフェンスをベンチに釘付けにしました。特に彼らの試合開始から2度目のドライブでは95ヤードを9分以上かけて行進し、試合のペースを自分たちの懐に引き寄せたのは圧巻でした。
これでジョージアサザン大は今季10勝3敗とし、昨年2勝10敗だったことを考えれば今シーズン大御所たちの話題の影に隠れたベストリフォームを達成したチームだと言えます。ちなみにこの10勝3敗というのは2014年にFCS(フットボールチャンピオンシップサブディビジョン)からFBSに昇格して以来ベストの戦績でもあります。
ニューオーリンズボウル
アパラチアン州立大45、ミドルテネシー州立大13
上に挙げたユタ州立大と同じく、HCであるスコット・サターフィールド(Scott Satterfield)監督がルイビル大監督就任のためにチームを去ってしまったアパラチアン州立大。しかしそんな逆風もなんのその、チームはミドルテネシー州立大相手に大暴れ。前半だけで24対6というリードを奪ったアパラチアン州立大はその後も後ろを振り返ることなく得点を重ね続け、45対13という大量リードを奪って見事今季の戦績を11勝2敗として、サターフィールド監督不在でもやれるというところを見せつけました。
アパラチアン州立大は特にこの日ディフェンス陣が冴え、カンファレンスUSAのMVPに輝いたミドルテネシー州立大QBブレント・ストックスティル(Brent Stockstill)に6度もQBサックを食らわせました。また彼らはストックスティルから2つのパスINTを引き出すことにも成功。相手攻撃陣を自陣に侵入させることなく味方オフェンスの大きな援護射撃となったのです。
アパラチアン州立大は既に新監督にノースカロライナ州立大のオフェンシブコーディネーターであるイーライ・ドリンクウィッツ(Eli Drinkwitz)氏を起用することを決めています。FCS時代からその名を馳せてきた彼らがドリンクウィッツ新監督のもとでもその流れを来年以降も継続できるか見ものです。
セレブレーションボウル
ノースカロライナA&T大24、アルコーン州立大22
セレブレーションボウルはFBSのボウルゲームではありませんが、HBCU(Historical Black Colleges and University、主に黒人選手だけで構成されているチーム)同士の非公式なナショナルタイトルゲームとして4年前に設立された、割りと新しいボウルゲームです。毎年ミッドイースタンアスレティックカンファレンス(MEAC)とサウスウエスタンアスレティックカンファレンス(SWAC)の優勝チームが対戦することになっていますが、両カンファレンスとも所属するチームはみなHBCUばかり。またFCSのポストシーズンゲームはトーナメント方式のプレーオフ制を敷いており、実質的にこのセレブレーションボウルはFCSレベルで行われている唯一のボウルゲームということになります。
今年このセレブレーションボウルに勝利したのはノースカロライナA&T大ですが、創設以来4回のうち彼らは3回出場の経験があり、しかもその3回とも勝利を収めているというHBCU界のアラバマ大のような存在。あまりメディアに出てこない彼らの試合が全米のお茶の間に届けられるチャンスとなったセレブレーションボウル開催の意義は非常に大きいと思います。
またHBCUチームはダンスを織り交ぜたマーチングバンドを擁することで有名でもあります。ハーフタイムに行われた両校のバンドパフォーマンスもまた他のFBSチームのものとはひと味もふた味も違うユニークなもので見るものを大いに楽しませてくれました。