いよいよシーズンも大詰め。今週末が終わればあとはカンファレンスタイトルゲームを残すのみとなります。今週末は全米各地で多くの宿敵同士の対決、いわゆる「ライバリー」が行われます。すでに木曜日と金曜日にもランクチームの試合が行われましたが、ここでは土曜日に行われる注目の試合を数ゲーム取り上げてみたいと思います。
アラバマ大@アーバン大
全米1位のアラバマ大と6位のアーバン大のライバリー対決、世に言う「アイロンボウル」が今週末一番の目玉ゲームです。この試合はカレッジフットボール界でも随一のライバリーであるだけでなく、この試合の勝者がサウスイースタンカンファレンス(SEC)西地区優勝となり来週のタイトルゲームに出場する大事な試合であり、さらにカレッジフットボールプレーオフ(CFP)進出においても非常に重要な対戦となるのです。
アラバマ大は今季未だ負けなし。彼らの特徴はニック・セイバン(Nick Saban)監督がこれまで世にお送り出してきたアラバマ大チームのお手本とも言える強力なディフェンスにランオフェンスを取り入れてラインでのバトルをジリジリと制するチーム。今年は昨年や一昨年ほどの鉄壁さは感じられませんが、それでもそのバランスは全米トップクラスであることは間違いありません。
ただ心配されるのは怪我人が続出したディフェンス陣、特にLB陣の選手の状況です。報道によると怪我をした選手たちはそれぞれ今週練習に復帰していると言うことですので、それは朗報です。しかし彼らがどれだけ回復しているかは試合が始まってみないとわかりません。またスターDBミンカー・フィッツパトリック(Minkah Fitzpatrick)は太ももの怪我で先週は温存されましたが、彼の出来も試合の鍵を握っていると言えます。
オフェンス陣は磐石でQBジャレン・ハーツ、RBダミエン・ハリス(Damien Harris)、ボ・スカーボロー(Bo Scarbrough)らの走りとWRカルヴィン・リドリー(Calvin Ridley)、ヘンリー・ラグス(Henry Ruggs III)、アーヴ・スミス(Irv Smith Jr.)といった能力のあるレシーバーも揃っており、派手さはなくても相手ディフェンスを十二分に切り崩せるユニットを持ち合わせています。
一方のアーバン大はこれまですでに2敗していますがこれまで5連勝中。特に2週間前には当時全米1位だったジョージア大に40対17と大勝しています。彼らの強みは攻守双方のラインです。OLもDLもアラバマ大に匹敵、もしくは上回るほどの重厚なユニットで非常に骨太なチームに仕上がってきました。そして今季高得点を続けるオフェンスを率いるのがQBジャレット・スティッドハム(Jarrett Stidham)。ベイラー大からの転校生であるスティッドハムはパス成功率約68%で16TD奪いINTは4つしか犯していません。機動力もそれなりにあり、これまで機動系QBに案外脆いことで知られているアラバマ大ディフェンスを撹乱する力を十分備えている選手です。
注目すべきはこの試合がアーバン大のホームであると言うことです。2週間前のジョージア大戦ではジョーダンヘアスタジアムに集まった9万近いファンの大声援に後押しされて見事トップチームを蹴散らしました。アーバン大がリードを奪う展開になればファンもそれに同調してアラバマ大にアウェーの洗礼を浴びせることでしょうから、そうなればアーバン大の押せ押せムードにアラバマ大が飲み込まれる可能性は十分あります。そしてこのライバリーは現在アラバマ大が3連勝中。現在の4年生のほとんどはアラバマ大に勝ったことがないことになり、彼らにとって最後のホームゲーム、そして最後の「アイロンボウル」と言う舞台で是が非でも勝利を狙ってくるでしょう。このシーズン終盤でアラバマ大に土がつく可能性は大いにあると見ます。
クレムソン大@サウスカロライナ大
サウスカロライナ州内対決となるこのライバリー。クレムソン大はCFPに向けてもう負けられない展開ですが、このサウスカロライナ大を甘く見ると足元をすくわれる可能性はあります。昨年は56対7でクレムソン大が圧勝しましたが、今年のサウスカロライナ大は昨年のチームとは一味もふた味も違います。現在彼らは8勝3敗で24位にランクされており、それら3つの敗戦ゲーム(ケンタッキー大、テキサスA&M大、ジョージア大)でも全て2TD差以下の僅差で敗れていますが、それは昨年よりもディフェンス力が向上したからに他ありません。すでにボウルゲーム出場権を獲得しているサウスカロライナ大にとってライバルであるクレムソン大のプレーオフ進出を阻止することは何よりも増して気分を爽快にさせる出来事のはずです。
ウエストバージニア大@オクラホマ大
すでに来週のBig 12カンファレンスタイトルゲームに出場が決まっているオクラホマ大。ウエストバージニア大は攻撃の要であるQBウィル・グリアー(Will Grier)が指の怪我で欠場することがすでに明らかになっており、オクラホマ大にとっては特に心配するような試合にはならないでしょう。ただ先週カンザス大との試合でいざこざを起こしたQBベーカー・メイフィールド(Baker Mayfield)がこの試合先発出場しないばかりでなくキャプテンシーも剥奪されると言う厳しい処分がチームから科されており、彼がどのタイミングで途中出場してそしてハイズマントロフィー最有力候補選手としてどのようなパフォーマンスを見せてくれるか注目したいです。
【参考記事】エクストラポイント【第12週目】
ウィスコンシン大@ミネソタ大
今年で127回目を迎えるこのライバル対決。今の所59勝59敗8分けとまさに五分五分の記録を残しています。「ポール・ブンヤンの斧(Paul Bunyan’s Axe)」をかけて争われるこのマッチアップですが、今年はウィスコンシン大が全米5位でプレーオフ進出を伺っているとう状況で彼らにとっては余計に負けられない試合となります。特にマイアミ大が金曜日にピッツバーグ大に敗れたため、上記の「アイロンボウル」でアーバン大がアラバマ大に大勝でもしない限り、ウィスコンシン大がミネソタ大に勝ちさえすれば彼らがいよいよ上位4チームの仲間入りを果たすことが予想されています。ミネソタ大は今季1年目のP.J.フレック(P.J. Fleck)監督の下まだ再建途中という感じが否めませんから、ウィスコンシン大が12勝目をあげるチャンスは十分あると言えます。
ジョージア大@ジョージア工科大
ジョージア州内のライバリーであるこの一戦。現在7位のジョージア大は再びプレーオフランキングでトップ4に返り咲くためにこの試合と翌週のSECタイトルゲームで勝利を挙げてCFP選考委員会に大きなアピールをしたいところ。最近25年間の対戦成績は20勝5敗でジョージア大が大きくリードしていますが、ここ3年間ではジョージア工科大が2勝1敗という数字を残してもいます。そのジョージア工科大は現在5勝5敗でポストシーズンのボウルゲーム出場権を獲得するまであと1勝必要という状況です。ジョージア大がナショナルタイトル獲りをかけているのに比べればモチベーションは劣るかもしれませんが、何が何でも負けたくないライバル相手にいつも以上の力が出ることは考えられることです。しかも彼らの操るトリプルオプションオフェンスは普段から研究しなければそう簡単に攻略できるオフェンスではありません。ただ、ジョージア大は昨年の敗戦を教訓としてこれまでジョージア工科大対策をシーズン開始前から立ててきたという話もあり、ここで彼らの悲願である全米制覇への道を閉ざされるようなことは誰一人として頭の中にはないはず。いい試合が期待できそうです。
オハイオ州立大@ミシガン大
「アイロンボウル」と並びカレッジフットボールを代表するライバリーであるこの試合。9位のオハイオ州立大はこのミシガン大戦に負けたとしてもすでに来週末のカンファレンス優勝決定戦出場が決まっていますが、プレーオフ進出への微かなチャンスを残すためにもこの試合を落とすことは許されません。一方のミシガン大は開幕前にはトップ10入りを果たしていましたが、脆弱なオフェンス力というボロを隠すことができず周囲の期待に答えるようなシーズンを送ってこれませんでした。ディフェンスは未だ全米上位レベルですが、このオフェンスが足を引っ張っており、同じく強力なディフェンス力を誇るオハイオ州立大の守備陣相手に彼らが大量得点するような展開は考えられません。スコア的にはディフェンス同士の戦いで接戦になるかもしれませんが、オハイオ州立大有利なのは変わらなそうです。
ワシントン州立大@ワシントン大
別名「アップルカップ」と呼ばれるこのライバル対決。ワシントン州立大が勝てばPac-12カンファレンス北地区代表チームとして来週のタイトルゲームでサザンカリフォルニア大と対決することになります。ワシントン大はすでにタイブレーカーで北地区の優勝争いから脱落していますが、もし彼らがこの試合に勝てばスタンフォード大が北地区優勝となり、北地区を誰が制すかがかかっている重要な試合となります。ワシントン大としてはCFP出場のチャンスもカンファレンスタイトルのチャンスもすでになく、モチベーション的にはライバルチームを倒すということのみですが、4年生たちにとっては最後のホームゲームですので、憎きライバルに自分たちのホームグラウンドでタイトル戦出場の美酒を味あわせたくはないはず。ワシントン州立大はルーク・フォルク(Luke Falk)、ワシントン大はジェイク・ブラウニング(Jake Browning)というカンファレンスを代表するQBが率いており、ハイスコアゲームとなること請け合いです。